それではごゆるりと。
それにしても、どなたか挿絵書いてくださる方いませんかね。絵がついたらもう少し色がつくと思うんですよね。ですが何分私は絵が下手でして。
詳しくは活動報告で。
吸魂鬼騒動があった次の日から授業は始まった。俺たち三年の最初の授業は必須の「闇の魔術に対する防衛術」、予想通りルーピンが教授を受け持っていた。
で、だ。
去年とおなじ教室に入ると、部屋の中央にはガタガタ揺れる衣装ダンスがあった。
「やぁグリフィンドール三年生のみんな、初めまして。私はこの授業を受け持つことになったリーマス・ルーピンだ」
顔に薄い引っ掻いたような複数の傷跡を残すルーピンの登場により、ざわついていた室内は静まった。ルーピンはそのまま衣装ダンスの前に立ち、みんなを見回すように俺たちに顔を向けた。
「みんなはこの衣装ダンスが気になっているようだね。この衣装ダンスには『
ボガードとは、対象の最も恐れている存在、事象に変化する魔法生物。心の弱いものはそれによって精神を患うことになるらしいが、さてどうだろうな。
そして今日はその撃退方法を練習するってことか。
「呪文は『
面白おかしいものか。となるとボガードは相手の恐怖対象は詠むことが出来ても、愉悦対象は見破れぬと。
「じゃあみんな、準備はいいかい? まずはネビルからだね」
ルーピンに呼ばれたネビルが前に出て、そのあとに続くように皆が並んだ。俺はシェーマスの後、マリーの前か。しかし、俺の怖いものは……
一人考え事に耽っていると衣装ダンスが開き、中からセブルスが出てきた。成程、ネビルが怖いのはセブルスだったか。まぁ確かに、あいつは生徒の恐怖の対象でもあるからな。
「り、り、リディクラス!!」
ネビルが恐る恐る唱えた呪文は効力を出し、スネイプの衣装は何とも婆臭い魔女の服装になっていた。生徒たちはそれを見て忍び笑いを漏らし、冷静なルーピンでさえも笑いを堪えられていない。
「さぁ次行って!! どんどん行こう!!」
室内にあった蓄音機からは感じのいいジャズが流れ、指示通り次々に生徒がボガードと対峙していく。ネビルの次のロンでは巨大な蜘蛛に変化し、呪文によって足をなくした。パーバティーは巨大なコブラに変化し、呪文により巨大なビックリ箱に変化した。シェーマスでは『
そしてついに俺の順番がきた。
しかし俺が前に立っても、一向に形が定まらない。それどころか先ほどから次々に形を変えている。
「混乱してきたぞ!! もうすぐだ!!」
ルーピンがそう言うと同時にボガードが変化したクマがこちらに双眼を向けた。同時に部屋の中には真っ赤な炎、
「聖…杯…」
部屋の中央に立つは、泥をこぼす黒い太陽を掲げた真っ黒な聖杯。
―― 助けてくれぇ!?
―― いやだ、死にたくない!!
―― お…か…さん…
―― 火が…火がぁ!?
―― あおあぁぁああ……
―― 熱い…熱いよう…
紛れもなく、俺の原初。ご丁寧に焼ける人間も、聖杯も、煙も瓦礫も、そして一人歩く俺も再現してやがる。
「まだ見せるか、俺にこの光景を忘れるなと。助けを求める人々を見捨てたことを忘れるなと。『座』に行っても未来永劫忘れるなと、そう言いたいのか」
意識せず、自然と口から言葉が出てきた。
「なに…これ…」
「うっぷ…」
「いや…いやぁ…」
早くこの状況をどうにかせねば、これは他の生徒には悪影響過ぎる。
「こっちだぁ!!」
突如俺の前にルーピンが躍り出た。とたん、ボガードは地獄から満月へと変化した。とりあえずこの状況は脱した。何人かの生徒は気絶しているか。当然だろう、むしろ吐くにとどまっているほうがおかしい。
マリーは……平気なのか?
「簡易のラインと契約越しに…何度か見たから」
「…既に見ていたのか」
「うん…その先も、
「そうか…」
とりあえず気絶した人、体調を崩した人を医務室に運び込み、俺はルーピンに呼び出された。大方、ボガードの件だろう。
「…なんで呼び出されたかわかるね?」
「…ボガードの件だろう?」
「ああ、あれ一体なんだ?」
「……詳しく語る気はない」
「しかし、それじゃあ『だが…』…?」
「簡単に答えよう。あれは俺の過去、俺の最初の記憶、俺の原初だ」
「なん…だって…?」
俺はそれから簡単に、俺が並行世界の住人であることや聖杯戦争、守護者や英霊などのことを除いてルーピンに説明した。最初は半信半疑だったルーピンも、次第に真剣味を帯びた表情になった。しかしまぁ、好奇心旺盛なのは判るが、扉の外で盗み聞きしているのは分かっているぞ、シェーマスにロン、ディーンにマリー、ハーマイオニーよ。
「とりあえず、今回はここまでだ。詳しいことはまた後日、ついでにある件についても話そうと思う。だが、盗み聞きされている状況ではな」
俺は立ち上がると同時に後方の扉を開いた。そして雪崩れこむ同級生たち。唯一マリーだけは立っていたが。
「気づかないと思っていたか? どうせ最初から聞いていたのだろう?」
「あ、あはは…」
「…ごめん」
謝られてもな、いずれは明かすことになるものだしな。
「今更だ。それより済まなかったな、あのようなものを見せて…」
「いや…まぁ…」
「……」
とりあえず移動しよう確か次は占い学だったかな。
◆
教室を移動すると、少し鼻がおかしくなりそうな香の匂いがささった。そして二人一つの机には紅茶が準備されていた。
「いらっしゃい、ようこそ私の授業へ」
それにしても、この先生は好きになれないな。
トレローニー先生はしばらく授業の説明をし、今日の講義は簡単な茶の葉占いをすることになった。しかし、紅茶の入れ方がなっていない。お湯の熱、ポットに入れるタイミング、その他もろもろが甘すぎる、ってシロウなら言いそうだ。
そして残った茶葉の形を占う作業をペアで行うことになった。でも正直全然できない。私にはただの茶葉の塊にしか見えない。シロウも同じみたいだ。
そうこうしているうちに、私とシロウの座っている席にトレローニー先生が近づいてきた。
「そちらのお二人はどうですか?」
「? まだですね」
「でしたら、私が見て差し上げま…は、はぁあ!?」
シロウのカップを見た瞬間、先生は悲鳴を上げてカップを取り落とし、カップを割った。いったい何を見たのだろう。
「あ、あなた……そんな…」
「……」
「もしやあなたは……『世界』の…」
「そこまでだ」
トレローニー先生の言葉を遮ったシロウ。その声には有無を言わせない力があった。その発言にはグリフィンドール生はおろか、合同授業を受けていたハッフルパフ生も沈黙していた。それほどにまで聞かれたくないことなのかな。「世界」って、いったい何のこと?
「占いは当たりもするし、外れもする。不確かであり、確かでもある分野だ。ぞんざいに扱う気は無いが、俺は信じない」
シロウはそう告げると有無を言わさず荷物をまとめだした。そして鞄を背にかけると一言、
「授業には出る。知り合いがルーン占いをするものでな。信じてないだけで興味はある」
そう告げて教室を後にした。その後の教室はいたたまれない空気が支配したため、私も荷物をまとめて教室を後にした。なんだか今日は午前だけでいろいろと濃いなぁ。
はい、ここまでです。
というわけで、士郎の無意識下の恐怖は最初の地獄でした。
ハリポタの次回は魔法生物飼育学ですね。
それではまた。次の投稿は……まだどっちにするか決めてません。ですが今週中に更新しますのでご安心を。