錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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更新します。
ヒッポグリフデビューですね。
それではごゆるりと。





5. 疑問と誇り高き生き物

 

 

 

 

 昼食を済ませた後の最初の授業は、マグゴナガル教授の変身術だった。

 しかし教室内の空気は重い。まぁ仕方がないかもしれない。俺の過去を見た奴らも、回復してこの教室にいるのだしな。

 

 

「いったいどうしたのです? 私の授業でこれほどまでに集中力がないのは珍しい」

 

 

 流石に違和感を感じたマグゴナガルが声をあげるが、生徒は黙りこくったままである。しかしここでラベンダーが、気絶した人の一人がマグゴナガルに答えた。

 

 

「…先生」

 

「なんです、ミス・ブラウン」

 

「午前の授業でなんですが…ボガードの授業で…」

 

「何かあったのですか?」

 

「……」

 

 

 しかしここでラベンダーの言葉は止まった。事情を知っている奴らも黙っている。

 ……そうだな。

 

 

「ボガードが、化けましてね」

 

「…いったい何にですか、エミヤ?」

 

「……私の過去に」

 

「ッ!?」

 

 

 俺の発言に教室中が凍り付いた。ちなみにいうと、あの時響いていた数多の悲鳴は言葉は分からずとも、みんな意味がすんなりと入っていたみたいだ。

 

 

「…どこの場所ですか?」

 

「…俺の始まりを」

 

「……そうですか」

 

 

 マグゴナガルはそれっきり黙り、思考に耽った。しかしハーマイオニーの質問がその思考を遮った。

 

 

「先生、一つお聞きしていいですか?」

 

「ん? ええ、何でしょう」

 

「はい実は…」

 

 

 しかし俺はこの質問が出てくるとは思っていなかった。

 

 

「えっと…『世界』ってなんですか?」

 

「世界? この星のことではないですよね?」

 

「はい…トレローニ先生が言っていたので、その意味ではないのではと…」

 

「そうですか…シビルが…」

 

 

 マグゴナガルはしばらく考え込み、一度俺に視線を投げかけてきた。確かにこれは俺に関わること、下手すれば『エミヤ』のように契約する輩も出かねん。

 俺は首を小さく横に振り、話すことに拒否を示した。しかし隣に座っていたマリーには俺の行動が見えてしまったようだ。

 彼女は静かにこちらを見たが、視線をすぐにマグゴナガルに戻した。

 

 

「…すみませんが、私から話すことはできません。どうしても知りたい人は、校長にでも伺ってください」

 

「ですが…」

 

「くどいです、ミス・グレンジャー。私からは話せません。では授業に戻りますよ、今日は……」

 

 

 マグゴナガルは話を打ち切り、強制的に授業を開始した。とりあえず『世界』から話は逸らしたか。しかしボガードの光景が俺の過去と知られた今、はてさて俺に対する反応はどう変化するのだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 変身術の授業が終わった後、私たちは森に移動した。どうも今年はハグリッドが「魔法生物飼育学」を担当するらしい。そしてスリザリンとの合同授業。絶対に何かが起こるのが目に見えてる。

 

 

「お前さんたち揃ったか? そんじゃあ教科書を開け、ヒッポグリフの項目だ」

 

「わかった」

 

「了解」

 

 

 ハグリッドの指示に従い、「怪物的な怪物の本」という教科書を私とシロウは開いた。でもなんか周りから変な視線を感じる。気になって顔を上げると、みんな革ベルトで縛った教科書を持ったまま私たちを見ていた。

 

 

「みんな、どうしたの?」

 

「どうやってこれ開いたの?」

 

「どうやってって……なんかすり寄ってきて自分から」

 

「俺はガタガタ怯えて自分から」

 

「「「シロウェ……」」」

 

 

 うん、シロウならそうだと思った。なんかシロウに慣れてるのってハネジローだけだよね。

 ハグリッドに教科書の開き方を教わり、ヒッポグリフの項目を開いたところで前方から多数の気配が近づいてきた。顔を上げると、目の前には上半身が鷹、下半身が馬の大きな生き物がいた。一頭一頭は異なる羽毛と毛色をしており、木漏れ日にが反射してきれいに輝いていた。

 

 

「さてヒッポグリフについてだが、こいつらは気高い。絶対に侮辱してはならねぇぞ」

 

 

 ハグリッドが簡単にヒッポグリフについて説明するのを私たち、一部生徒を除いて、真面目に聞く。誰だって怪我したくないからね。

 

 

「じゃあそうだな、マリー!! 前に出てくれ、そしてバックビーク、あの灰色のヒッポグリフにお辞儀するんだ」

 

 

 ハグリッドに言われ、バックビークの前に出てお辞儀した、いや、しようとした。

 バックビークは私のお辞儀を待たずにこちらに近寄り、体を摺り寄せてきた。うん、この展開見覚えがありすぎる。

 

 

「……うん、まぁマリーならそうなるじゃろうな」

 

「ハグリッド…先生」

 

「どうした、シロウ?」

 

「俺が行ってもいいだろうか?」

 

「ん? ああ、いいぞ」

 

 

 シロウはハグリッドに許可を得てヒッポグリフたちの前に出た。対象はシロウの髪みたいに真っ白な子。バックビークとは違って目は少しだけ優しげ。

 

 

「お、そいつはメスだな。メスはオスよりも気難しいが……」

 

 

 ハグリッドの解説を背後に、シロウは黙々とヒッポグリフに近づく。やがてその距離が3メートルとなったとき、事は起こった。シロウがお辞儀をしようとしたとき、白い子は大きく鳴き声を上げた。それと同時に、周りの数頭も、バックビークも一緒に鳴き声を上げ、シロウの周りに集まった。

 そこには異様であり、神秘的な光景が広がった。

 この場にいる全てのヒッポグリフはシロウを囲み、頭を下げていた。円陣を組むように並ぶヒッポグリフの中心には、差し込む木漏れ日に照らされたシロウが立っていた。誰も声を上げない、その空気の中、シロウが歩き出すと道を開けるように円陣が崩れた。

 それでも(こうべ)を垂れ続けるヒッポグリフ達。なんだろう、ゴーストたちもヒッポグリフ達も、トレローニ―先生の言っていた『世界』という単語もシロウの過去も、どういう関係を持っているのだろう?

 

 

「これは……いったい…」

 

「どうやらこいつらは…『何だい、簡単じゃあないか!!』マルフォイ?」

 

 

 空気を壊す、気取ったような声。マルフォイがふんぞり返りながら士郎たちのもとに歩いて近づいて行った。

 

 

「やっぱハグリッド(あいつ)の言うことなんて当てにならないな。そう思うだろ? 醜い野獣君たち?」

 

 

 マルフォイがそう言った瞬間白い子の爪が鈍い輝きを放った。そしてそのきらめきがマルフォイに殺到しようとし…

 

 

Desine(止まれ)!!≫

 

 

 シロウの声が響いて全てのヒッポグリフが止まった。そして全員マルフォイを切り裂こうとする爪を収め、しかしその鋭い眼はマルフォイを見据えたまま直立していた。

 

 

「な、なんだ? いったいこいつらは?」

 

「お前がこの子らを侮辱したからだ」

 

 

 シロウはヒッポグリフ達よりも鋭い眼をして、今にも切り裂かれそうな空気を纏いながらマルフォイに近づいた。マルフォイの取り巻き達は、シロウの剣幕に怯えて近づいてこない。

 

 

「おおかた、問題を起こしてハグリッドを退職、またはダンブルドアを不利な立ち位置に立たせるつもりだったのだろうが…」

 

「な、なにを…」

 

 

 ああ~シロウ怒ってるな。夢で見たマジ切れではないようだけど、それでも相当怒っている。

 

 

「俺の目の届く限り、そのような汚い真似はさせん。親の七光りに頼るだけのボンボンは下がってろ」

 

 

 怒気をはらんだ声を浴びせられ、マルフォイは完全に凍り付いてしまっていた。自業自得だね、この先マルフォイのような生徒は改心するのだろうか? 日本の格言で「雀百まで踊り忘れず」ってのがあるけど大丈夫だよね? 期待していいよね。

 そんなこんなで午後も濃い内容になり、夜に布団に入るころには全身と全心が疲労で重たくなっていた。

 

 

 






はい、ここまでです。
ぶっちゃけやっちゃった感が私の中にありますがすみません、現在スランプ中です。
ですが必ず持ち直し、皆さんが楽しく読めるよう精進していきます。
それではまた次回。


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