錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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お待たせしました。では更新いたします。





1. ワールドカップと襲撃

 

 

 

「いやはや皆さん、息災でしたか?」

 

「ええ、おかげさまで。息子さん達もウィーズリーさんもお元気そうで」

 

「はい。妻共々、家族一同元気にやっております」

 

 

 エミヤ夫人達と談笑しながら、私たちは指定の場所に向かっていた。どうもエミヤ一行と私たちのテントは隣同士らしい。だから結構な大人数が、色とりどり、様々な飾りのついたテントの列を縫うようにして移動する。

 

 

「毎度のことだが」

 

 

 ウィーズリーおじさんは微笑みながら、でも少しの呆れを交えながら口を開いた。

 

 

「大勢の魔法使いが集まると見栄を張りたくなるらしくてね。あんな感じで派手になっちゃったりすることが大概なんだ。認識阻害を張っているとはいえ、一応ここはマグルの土地なのにね」

 

「「まったくだ(ね)」」

 

 

 おじさんの発言に、エミヤ夫妻が同調する。

 

 

「魔の道に入った、いや、『普通』から逸脱した存在である私たちは、隠蔽を常に心がけねばならないというのに」

 

「本当よ。この世界は暮らしやすいのではなく、『魔法』に絶対的な信頼を持ちすぎね」

 

「慢心はいらぬ悪状況を生み出しかねん。そこらへん、この世界は認識が甘すぎる」

 

「あはは…」

 

 

 もうボロクソな言われよう。サクラさんは三人に対して苦笑を浮かべている。でもまぁ、確かにシロウたちの言っていることは的を射ているため、反論のしようがない。彼らの言葉が聞こえた名前も知らない魔法使いたちは、気まずそうな顔や眉を顰めたりしていた。

 辿り着いた場所にはまだテントは立っておらず、エミヤとウィーズリーを示す立札が地面に刺さっっているだけだった。私たちは荷物を置くと、早速テントの設営に取り掛かった。といっても魔法は使わず、手作業で組み立てる、加えて手慣れてるエミヤ一家の指導もあって、何故か十分ほどで二つのテントが立った。

 

 

「よし、と。地図を見る限り、この場所は競技場のすぐ裏手の森の端らしい。とても近い場所だ」

 

「試合はいつからなの?」

 

「試合は明日の夜、8時からだ。それまでの食事等は一切魔法なしでやるぞ!! 一度やってみたかったんだ」

 

 

 夜に試合があるのか。私たちは問題ないけど、シィちゃんは大丈夫なのだろうか?

 

 

「シィ、眠くなったら寝ても大丈夫だからな」

 

「ん、パパかママに抱っこしてもらう」

 

 

 成程。シィちゃんは自分が眠る時間を決めてるわけだ。ならあまり心配はいらないかな。

 それから私たちはシロウたちの指導の下、何故か野営の基礎を学びつつ、食事やお風呂(これまた何故か大きなドラム缶製の)などの準備を済ませた。流石経験者だけあって野草毒草などの知識も沢山あり、私たちは普通じゃ学べない知識を取り込んでいった。

 

 

「そういえば剣吾」

 

「ん?」

 

 

 到着してから次の日、昼食を摂っているときに浄ノ助さんが口を開いた。白銀浄ノ助君、日本の不良のような見た目とは違い、勉強ができるらしい。基本的な会話は私たちに合わせてくれており、英語で話してくれている。ちなみにシィちゃんたちが英語を話せているのは気にしていない。アオイさんやアヤネさんは、魔道具で常時翻訳されているらしい。

 

 

「この前世界を超えたらしいが、何してたんだ?」

 

「ああ、あのときか。あれは師匠に頼まれてな、とある世界に救援に行ってたんだよ」

 

「ならなんであんな落ち込んでたのよ?」

 

 

 アヤネさんも便乗して剣吾君に質問する。ウィーズリー一家、特にパーシーさんやチャーリーさんビルさんは、貴重な体験談に興味津々らしい。でも健吾さんは首を振り、それ以上は語ろうとしなかった。でもそれだけで分かった。彼にとって、重要な出会いと別れがあったのだろう。

 

 

「暗い話はここまでにして、今回の試合、クィディッチって競技の詳しい話が聞きたいけど」

 

「「任せろ!!」」

 

 

 話題を変えた剣吾君に、フレッドとジョージが乗っかった。シロウ以外のメンバーも詳しいことは分からなかったらしく、それから試合の時間まではロンを加えたウィーズリー三兄弟によるクィディッチ解説を聞いていた。ついでに言うと、シィちゃんは途中からお昼寝に入ってジニーが面倒をみてた。

 私はというと。

 

 

「成程。夢という形で経験の共有か」

 

「今までこんなことはあったの?」

 

「いいえ、今年に入ってからです」

 

 

 奇妙な夢についての相談をしていた。エミヤ夫妻におじさんを交えて話を聞いてもらっている。予めどう話すかは要点を纏めていたので、すぐに話し合いは始まった。

 

 

「…一つ考えられるとすれば奴が…ヴォルデモートが力を増していることだろうな」

 

「力を増している?」

 

 

 おじさんが怪訝そうな顔をする。

 

 

「ペティグリューが逃走したことにより、奴を復活させるために動ける部下が一人増えた。恐らく、感覚共有はその過程で発生した魔力の制御ミスによるものだろう。その傷を介してな」

 

 

 シロウは私の首元を指差して言葉を発した。やはり数か月前、ペティグリューを逃がしたことが痛手だった。ヴォルデモートは近いうちに必ず復活する。そして私の前に立ちはだかる。

 

 

「そのヴォルデモ―太? ヴォルヴォロス? ってやつは、今は一人じゃ何もできないんでしょ? だからマリーから覗かれていることにも気づけない」

 

「でもいつか、近いうちに気づくと思います。そして聞いた通りの人間なら、それを躊躇なく利用してきますよ」

 

「サクラの言う通りよ。ロクでもない奴はロクでもない方法を躊躇なく使うわ」

 

「なにか対策はないだろうか」

 

 

 エミヤ夫妻は考え込み、現状を打開する策を練り始めた。私も何かないかと考えを巡らせていた。

 そのときふと一つのイメージが思い浮かんだ。傷跡は、ヴォルデモートと私を繋ぐ、見えない絆のようなものとダンブルドアはおっしゃっていた。ということは、これはシロウとの間に繋がっているラインのようなものではないのか。

 その旨を話すと、満場一致でその方法が取られることになった。そして今年在学中に、基本は一緒にいれるシロウから、たまにリンさんやイリヤさんたちからラインを閉じる方法を教わるということで解決した。

 

 

 

 

 

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 話し合いが終わるころには外は夕方になっており、私たちは早めの夕食をとってスタジアムに移動した。

 スタジアムには既にひとがひしめき合っており、移動するのも一苦労だった。幸い私たちはみんな指定席のチケットだったため、席の心配はしなくてよかった。でもそれでも一つ一つの席の間隔が狭かったため、比較的小柄な私もほんの少し窮屈に感じた。

 その中で、ファッジ大臣の開会宣言のもと始まったワールドカップ。アイルランドとブルガリアの試合は、両チームともに『ファイアボルト』使用しているために、ものすごく目まぐるしく選手が動いている。余りの速さに、アオイさんやアヤネさんはついていくのがやっとみたいだ。エミヤ一家に関しては既に把握しているので、シィちゃんが見えていることには驚かない。

 と、暫く双方が得点しあう状況でシィちゃんがフィールドの一点を指差した。

 

 

「マーちゃん、あれキラキラのボールでしょ?」

 

「え?」

 

 

 シィちゃんの指差す方法に全員が視線を向けると、そこには細かくちょこまかと動いているスニッチがいた。驚いて両チームのシーカー、アイルランドのリンチ選手とブルガリアのクラム選手に目を移すけど、彼ら二人はスニッチを見つけた様子はなかった。改めてエミヤ一族は恐ろしく感じる。潜在能力が計り知れない。

 

 

『おおっと!! ブルガリアチームのシーカーが動いた!! もしやスニッチを見つけたのか?』

 

 

 アナウンスにつられるように、観客の視線がクラム選手に集まる。彼が突進する先には確かにスニッチがあり、アイルランドのシーカーも同様に突進していた。

 観客が応援を飛ばす。実況が喧しいほどの声量で騒ぐ。そして……

 

 

『クラムがスニッチを捕った!! しかし何といことでしょう!? 百六〇対百七〇でアイルランドの勝利です!! スニッチを掴んだのはブルガリア、しかし勝者はアイルランドです!!』

 

 

 実況のアナウンスが鳴り響く。あまりの結果に、私たちは唖然としていた。起きる可能性がある事態ではあるが、実際に直面すると言葉が出てこない。スニッチを掴んだのに勝てないなど、ショック以外の何物でもない。

 

 

 

 試合の興奮冷めやらぬ中、私たちは就寝のためにテントに戻った。私や剣吾君、浄ノ助君やお姉さん二人は既に寝る準備を始めていたけど、ウィーズリー兄妹やハーマイオニーは未だ興奮して騒いでおり、先ほど観た試合内容で盛り上がっていた。外も未だにみんなは騒いでいるらしく、火花が飛んだり、声が聞こえる。

 と、そこで浄ノ助さんと剣吾さんが顔をしかめてテントの外に出て行った。その顔が妙に真剣な時のシロウと重なって見え、私は嫌な予感が頭をかすめた。二人のお姉さんも同じらしく、パジャマに着替えずに身構えていた。

 そこに二人がより不快そうに顔を歪めてテントに戻ってきた。

 

 

「出ろ。上着と杖だけ持って出るんだ」

 

 

 有無を言わさない浄ノ助君の口調に異常を察知したのか、騒いでいたロン達も急いで準備をし、外に出た。

 外に出た瞬間目に映ったのは火の海だった。

 

 

 

 






うーん、纏まりが悪い。
一応学校に行くまでは映画準拠でいってますが、それにしてももう少し書きようがあるのではと感じてしまうホロウメモリアです。
さて、次回は学校に行くところまで行こうと思います。

ではまた。


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