大変遅くなりました。
課題もひと段落着き、ようやく時間もできたので更新しました。
纏まりがないですが、ごゆっくりと。
新年度が始まって早一週間、ハグリッドとシリウスさんの指導の下で飼育学を学んだり、ロンの失言で占い学の宿題がどっさり出たりと、中々ハードな一週間を過ごしている。
そして週末金曜日の昼食中のこと。マルフォイが『日刊予言者新聞』という魔法界の新聞を持って私とロンのところにやってきた。満面の笑みを浮かべてい様子からして、私たちにとって不快な話なのだろう。
「おーいウィーズリー!! 君の父親が乗ってるぞ!!」
マルフォイの掲げている新聞の一面めには、ワールドカップの時の魔法省の失態について書いてあった。ワールドカップの時の杜撰な警備。主犯たちのマグルに対する被害。そして理不尽にも非難されているアーサーさんに関する記事だった。
ロンのお父さん、アーサーさんは魔法省の「マグル製品不正使用取締局」に勤めているけど、今回の主犯たちがマグル製品に魔法をかけていたらしく、それを見抜けなかったとして非難されていた。
「この写真の建物は豚小屋かい? それともこんなものが君らの家なのかい?」
マルフォイの挑発が続く。近くにいたほかの生徒は、スリザリン生を除いて嫌そうな顔をしている。心なしか、私の隣でナッツを食べていたハネジローも毛が立っている気がする。
「そう言えばポッターはこの家に泊まったそうだね」
嫌らしいニヤニヤを浮かべながら、今度は私に顔を向ける。
「教えてくれ。これは本当に家なのかい? そしてそれともウィーズリーたちは豚と寝床をともにしているのかい? それとも、ウィーズリーの母親は本物の豚なのかい?」
流石の言い草に、私もいい加減に腹が立ってきた。でもここで言い返したり殴りかかったりすれば、マルフォイと同類になってしまうから必死に自分とロンを抑えていた。ロンは今にも殴りかかりそうだったので、身体強化をして何とか私一人で抑えている。
「何の騒ぎだ?」
そこに白髪紅眼、長身の男子生徒がやってきた。その肌は黒くなく、東洋人よりも若干白いような色である。シロウの長男の剣吾君だった。どうやら騒ぎを聞きつけてこちらに来たらしく、わざと遠回りしてマルフォイの後ろから近寄ってきた。わざわざ気配遮断まで使って。
「…何だい君は? 邪魔しないでくれるかい?」
「邪魔? なんのだ?」
マルフォイがたてついていくが、すっとぼけるような発言をして躱す剣吾君。まるで生意気な子供と大人のやり取りを見ているようで、次第に怒りも収まってくる。
「だいたい君は外の人間のくせに、僕たちの事情に口出ししないでくれ。どうせ君も、エミヤの親戚なんて嘘で入ってきたんだろう? これ以上その汚らわしい”穢れた血”の口で言葉を発さないでくれ。どうせ下賤な君のことだ、君の家族も低俗極まりない、人というのもはばかれるようなものなんだろう?」
「……」
「図星かい? まったくこんな奴をこの学校に入れるなんて、この学校も堕ちたものだよ。父上が知ったらなんとおっしゃるか…」
挑発と侮辱の対象は、ロンから剣吾君へと移った。聞くのも嫌な暴言にまた怒りを蓄積し始めていると、剣吾君が目配せしているのに気付いた。どうやらわざと標的を自分に向けさせたらしい。その証拠に、マルフォイは体ごと剣吾君のほうを向いている。
(…マリーさん、今のうちにロナルドさんを)
(ありがとう、剣吾君。あとでお礼するわ)
(お気になさらず。さぁ早く)
剣吾君に促され、急いでロンをつれてこの場を離れる。大広間の出口に近づいたとき、後方から大きな物体が回転しながら飛来し、大広間からでて壁に激突した。壁にぶつかって床に落ちたそれはどうやらマルフォイだったらしく、床に這いつくばって呻いていた。
「…存外に弱いな。あれほど大口を叩いていたものだから、てっきり力に自信があると思っていたが」
背後からゆっくりと近づいてくる人物。振り返らなくてもわかる、濃密な怒気を纏った剣吾君だった。まるでモーゼの海割りのごとく、人込みが分かれる中歩んできた剣吾君は、ゆっくりとマルフォイに近寄った。
「ノックしてもしもぉーし。生きてるか―?」
剣吾君の問いに呻き声で答えるマルフォイ。その反応に、心底呆れたような表情を剣吾君は浮かべた。
「あ、生きてる。まぁいいや、そのままの態勢で聞け」
「小僧、人を貶すときはそれ相応の覚悟を持て。正直今回の貴様の発言は百回殺されてもおかしくない内容だぞ? たかが魔法を使えるだけで神にでもなったつもりか? 人外の化け物と理性持つ生き物の違いは出生じゃない。その者がどのような心を持っているかが重要なのだ。よく覚えておけ。今の貴様は、それこそ人と呼べないほど心が歪みきっている」
それだけ言うと剣吾君は立ち上がり、その場を後にした。その後しばらく、マルフォイは悪夢に魘されたらしい。
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更に2週間が経過し、9月末の金曜日となった。この日は授業が早く切り上げられ、全校生徒は玄関近くに集められていた。時刻は夕方六時ごろ、ちょうど夕食時に来るようになっていたみたいで、今はキッチンがてんやわんやらしい(シロウと剣吾君談)。
暫く待機していると何やら遠くのほう、上空に黒い小さな点が見えた。よく見ると、微妙に上下に揺れている。
「…父さん。 俺人生で初めて見た」
「実に約二十年ぶりだが、まさか再びあの姿を見ようとは。恐らく、ある意味彼女の子孫になるのか」
片や興奮した面持ちで、片や辰化しそうな面持ちで言葉を紡ぐ親子。どうやら二人は黒い点の正体が見えているらしい。私ももう少し近づけばわかるのだけれど。
暫く待っていると黒い点はだんだん大きくなり、ようやくなにかわかることが出来た。
それは巨大な馬車だった。車を引いている馬はペガサスで、見る者を魅了するような真っ白な毛並みをしていた。車は巨大で、通常のもの数倍の大きさを誇っていた。
まるで家のような馬車の扉が開くと、ハグリッドと並ぶほどの巨大な女性と十数人ほどの男女生徒が降りてきた。
「これはこれはマダム・マクシーム。息災かのぅ」
「ダンブリー・ドール!! お変わーりありーませんか?」
「お陰様で上々じゃ」
女性とダンブルドア先生が挨拶を済ますと、女性、マダム・マクシームは自らの生徒たちに手招きすると、生徒たちは全員寒そうにしながらマダムの許に近寄った。見る限り全員17~18歳ほどの年齢に見える。
ふとペガサスたちに目を向ける。4頭のペガサスは落ち着きなく足踏みしたり、首を振ったりしている。そしてどの子も一様にシロウを見つめてる。でも今までの生き物たちのように敬い畏れるようなものではなく、もっとこう懐きというようなものを感じられた。
「んー? ウーマたちが落ーち着きまーせん」
「ふむ、そうじゃのう……」
ダンブルドア先生は考え込むような素振りを見せながら、視線だけシロウに向けていた。あー、先生の考えてることが手に取るようにわかる。あれはシロウに押し付けるつもりだ。
「のうミスター・エミヤ、そしてミスター・アインツベルン。この子たちをお願いできるかのぅ」
校長先生の言葉に、盛大にため息をつく衛宮親子。しかし特に文句を言うことなく、ペガサスに近寄った。
「やはりというべきか、彼女が召喚した彼女の子ともいうべきものの子孫なのだな。魔眼はないみたいだが、その特徴的な瞳と虹彩の色は彼女のだ」
「へぇ。父さんの話でしか聞いたことなかったけど、確かに美しい」
シロウと剣吾くんに連れられたペガサスたちは、大人しくハグリッドの小屋の方向に連れていかれた。
暫く待っていると、再び周囲がざわつき始めた。視線を騒ぎの許へと向けると、いつの間にやら湖に巨大な帆船が姿を現した。大きさ的にはホグワーツの大広間ほどはあるだろう。湖の湖畔にその身を寄せた船は、胴体の脇にできた入口から、ダンブルドア先生並みに年老いた先生と多数の厳つい男子生徒が降りてきた。
「ダンブルドア!!」
先頭の老人が上機嫌で校長先生に駆け寄っていく。
「懐かしいのぅカルカロフ」
先生も応えるように老人に駆け寄り、両の手を握って握手をした。その時老人の目が見えたが、私はその瞳奥に非常に冷たいもの、そして感覚的に彼が臆病そうな印象を受けた。そして不自然に左手を隠すように動くさま。カルカロフ本人は隠しているつもりだろうが、事実周りの人や彼の生徒たちは気にしていないが、ダンブルドア先生もチラリとカルカロフの左腕に目を向けていた。
はい、ここまでです。
マルフォイのセリフ、元ホムンクルスで今は人形の体であるイリヤと、彼女を母に持つ剣吾とシルフェリアに対する最大の侮辱と言っても過言ではないです。剣吾君はなけなしの理性を持って素の本気で殴り飛ばすに留めました。
さて次回は炎のゴブレットの登場、マリーは巻き込まれるのか、それとも観戦になるのか。お楽しみに。