錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

76 / 115


ではバトルパートです。戦闘描写も久しぶりだなぁ。
それと今回後書きにてある通達をします。また同様の内容を活動記録にも載せます。

それではごゆるりと。





6. Frwydr yn erbyn y ddraig goch

 

 

 

 

 第一の課題はドラゴンを出し抜くことだった。

 選手はドラゴンをやり過ごしながら他の本物の卵に混じってる金の卵を取らないといけないらしい。正直言うと、いくら魔法使いで成人している人限定といっても、これは少々オーバーキルなのではないかと思う。

 しかし私の心配など誰も気にしてないのか、会場は進行役が出てきた瞬間大きく盛り上がった。私たちがいる闘技場は新しく作られており、サッカースタジアムが2個ほどある広さは確実に持っている。ここまで広くしないと、ドラゴンもうまく動けないのだろう。

 それでもセドリックさんはスウェーデン・ショート-スナウトとの戦いの時点で、すでに火傷という大怪我を負っている。続くフラーさんにダームストラングの二人、更にもう一人のボーバトンの生徒も、卵を壊した怒りで狂暴化した龍の攻撃を受けたり掠ったりで、大なり小なり怪我を負ってしまっている。

 これでも恐らく一般的なドラゴンよりも本能が強い種類なのだろう。基本的にワイバーンと呼ばれる種類の5体だった。普通に考えるなら最後に残ったシロウもワイバーン型だろう。でも何か胸騒ぎがする。

 そしてその予感は悪いほうに的中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外からバグマン氏の実況が響く中一人、また一人とテントから出ていき、最後に俺一人だけが残された。

 

 

『おおーっと!? ディゴリー選手を火炎が襲う、これは大丈夫か!?』

 

『おー……危うく!! さぁ慎重に……なんと、今度こそやられてしまったと思ったのですが……いやしかし!!』

 

『良い度胸をみせました。そして……卵を取りました!!』

 

 

 どうやら各々金の卵は取れたらしい。ただ卵を破壊したり、大怪我を負ったりとで減点をされているようだ。まぁ正直オレは優勝になんざ興味はない。だからいくら減点されようがどうでもいい。

 

 

『さぁ第一の課題もいよいよ最後の挑戦者を残すだけになりました!! ホグワーツ魔法魔術学校代表、シロウ・エミヤ選手!!』

 

 

 名前を呼ばれたため、椅子から立ち上がって闘技場へ向かう。広く作られたフィールドの中央は(うずたか)くなっており、幾つかの卵と共に金色の卵が安置されている。流石は魔法というべきか、このような会場を短期間で作成する力は称賛ものだ。

 大きな地響きと共に、暴風がオレと観客を襲った。怯むことなく目を発生源に向けると、人の何倍もの大きさはある、それこそ剣吾がよく観ていた特撮の巨大怪獣並みの全長はあるかもしれん。

 混じるもののない、美しい紅に身を染める一体の龍が、威風堂々とオレを見下ろしていた。

 

 

――貴様か

 

 

 突如声が響き渡る。どうやらこの赤き龍の声みたいであり、その声は観客にも聞こえているようだった。

 

 

――なぜだ。なぜ貴様がそれを……

 

「……何の話だ?」

 

――しらばくれるか。ならば力尽くで聞きだすまでだ。

 

 

 これは……不味いかもしれない。目の前の龍の口に魔力が集まっていることがわかる。

 

 

『おおーっと、いきなりブレスが来るのか!? エミヤ選手はどう対処するのか?』

 

 

 実況が何か喚いているが、こちらはそれどころではない。あの集約する魔力の量からして、オレだけが防御しても観客に被害が及ぶ。かといって彼女の聖盾(プライウェン)を使っても、俺にダメージが通りすぎてしまう。ここはアイアスで防御し、残りをあいつに受け持ってもらうとしよう。

 

 

「……剣吾!! 結界を張れ!!」

 

「もう準備してる。水の護り(ラグス・エオロー・ソーン)!!」

 

 

 剣吾の言霊と共に、観客の前に巨大なルーン文字が浮かびあがり、障壁を形成する。水を象徴するラグスのルーンに守護のエオロー、危機回避のソーンの重ね掛けであるため、ある程度の攻撃はしのげる筈。問題はこの場に水がないため、本来の力よりも劣ってしまうことぐらいか。

 

 

――答えろ!! 何故貴様があの娘の鞘を持っている!!

 

 

 怒号と共に、火炎放射器を何十本も束ねたぐらいの太さの火炎が迫る。正直これは投擲攻撃ではないため、アイアスの守護がどこまで効くかわからないが。一応のダミーのために、左手にアゾット剣を握り、右手に添えておく。

 

 

「――投影開始(トレース・オン)、『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』!!」

 

 

 右手を掲げると、目の前に七枚花弁の大輪が咲いた。花は俺に向かう炎を防ぎ一本の炎を幾筋にも分割した。いくつかの炎は観客席へと向かったが、剣吾の結界よって防がれた。伊達に人形師や宝石翁の下で修業を重ねたわけではないな。

 暫く炎は浴びせられていたが、三十秒ほどでその勢いは止まった。煙や砂塵が舞う中に、オレは盾を消して武器を取り出す。その時アゾット剣は服の内側にしまい込み、他人に見えないように完全に隠す。これにより、俺の取り出す武器はアゾットが変わったものと錯覚するはず。

 日本神話において鍛冶の神、火の神として祀られている神の名を賜った刀、その贋作品。神造兵器だが、格を落すことによって炎を切り裂く能力を持つ刀として投影できる。

 

 

――我が火炎を防ぐか。ならばこれはどうだ!!

 

 

 もう一度口を開いた龍の口から、次は十数個の火の玉を俺に対し吐き出す。その全てが狙い過たず俺に殺到してくる。

 

 

『あーっと、ブレスの次は火の玉か!? でもどうやって防いだんだ?』

 

――さぁ、これはどう対応する?

 

「……幾つか避けられないな、仕方がない。焔を切り払え、『火之迦具土神(ヒノカグツチ)』!!」

 

 

 空へと放たれた焔玉のうち、いくつかを切り払う。その際発生した爆煙に紛れつつ、刀を消して今度は巨大なトゥーハンデッド・ソードを投影で創り出す。この剣は、ニーベルンゲンの歌に出てくる大英雄、ジークフリートの持つ竜殺しの大剣。

 

 

「贋作とはいえ、貴方ならこの剣の恐ろしさは分かるだろう!!」

 

――何だと!? 貴様は鞘一つだけで飽き足らず、その忌々しい剣も持っているのか!!

 

「竜を()とし、世界を落陽へと至らしめよ。――『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!!」

 

――小賢しい!!

 

 

 真明解放をした竜殺しを振るうが、オレは奴の振るう尻尾に弾き飛ばされ、地面に激突した。体に響く痛みから察するに、少なくともあばら骨を二、三本やられている。流石に上手く事が運ぶわけないか。

 バルムンクを消し去り、次にもう一度懐からアゾットを取り出す。そのタイミングで煙も晴れ、改めて相手の全身が浮かび上がる。

 

 

『ななななんとぉ!! あれだけのブレスや火の玉を受けても、エミヤ選手は難なく防いだぁ!! しかし流石に尾の攻撃は防げなかったか?』

 

 

 相変わらず実況は五月蠅い。こちらとしては今はもう、課題がどうこう言っている場合ではないのだが。今も緑の双眼を爛々と燃やし、ドラゴンはオレを睨みつけてくる。どうにかして一旦闘技場から離れなければ、オレも満足に全力を出すことが出来ない。

 どうすれば……

 そういえば、昔ハーマイオニーが魔法の練習がてら光を杖から出していたな。魔法の効果は、太陽の輝きを一時的に作り出す。確か呪文は。

 

 

「『太陽の光よ(ルーモス・ソレム)』!!」

 

 

 アゾット剣を掲げて呪文を唱えると、闘技場は目を潰さんばかりの光に照らされた。流石の赤い龍もこれには耐えられず、目を瞑っている。

 

 

――おのれ。だが目を潰しても匂いでわかるぞ、小僧。

 

 

 皆の視線がないうちに俺は急いで体を強化し、跳躍してこの場を離脱した。誰の目も届かず、存分に戦える場となると、俺の固有結界が最適だろう。だが張るとなると、現在監視の目の届かない場所、例えば湖畔とかまで行かなければならない。

 会場の外に出ると、入場までいなかった天馬が一頭、外で待っていた。そしてまるでオレに乗るよう催促するように、オレをジッと見つめていた。

 

 

「湖畔まで行ってくれ。頼めるか?」

 

 

 背に乗って聞くと、天馬は一つ嘶いて翼を羽ばたかせた。後方からは咆哮が聞こえ、会場から大きな影が飛ぶのが見えた。

 さて、ここからは第二ラウンドと洒落込むとしようか。古の赤よ。

 

 

 

 

 






ドラゴンの声は立木ボイスでお願いします。
そして文中に出てきた「爆煙」という言葉ですが、タバコの用語ではなく、本小説のみの表現として使用しております。意味としては、爆発によって生じた煙です。

さて前書きでも触れましたが、皆様に一つ連絡をします。
凍結するとしていた二作品ですが、Fateの方はいずれ再開することにしました。理由につきましては、個人メッセージや感想などで、連載再開を望む声が多かったからです。
とはいえ、流石に4つを同時に書くこともまた難しいです。
ですので、デレマスが終わり次第、連載を再開しようと思っております。

今回の通知は、活動報告でもさせていただきます。

さて、次回は第二ラウンドです。流石に一話に詰め込むのは無理でした。

それでは皆さん、また今度。




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。