今回で四巻の内容は終了です。
念のために述べておきますが、多重クロスしている元の世界の話は、基本的に外伝以外で取り上げるつもりは毛頭ないのでご安心ください。
あの後目が覚めると、私は校長室に呼び出された。用件は昨晩のこととわかっていたため、話すことは既にまとめてある。今回必ず話さなければならないのは、ヴォルデモートの復活である。その復活の材料に私の血も使われたため、あの男と私の間に、今までよりも強力なつながりが出来たということ。今まで以上に彼からの干渉に対して警戒しなければならないだろう。
「復活したのじゃな?」
今私は校長室にいる。そこでダンブルドア先生と魔法大臣、そしてシロウたちを交えて事の次第を報告している。とりあえず自分に起こったことを包み隠さず話した。ダンブルドア先生は話を進めるたびに視線を厳しいものにし、大臣は顔色をどんどん悪くし始めた。
私が偽のムーディに攫われてから復活の材料に血を取られ、それから一騎打ちの末に運よくその場を脱出できたところまでを話した時、大臣は口を開いた。
「まさか死喰い人まで召集していたのか。ということはその場にいなかったのはアズカバンに収監されているモノか恐れて逃げたものだけか?」
「そうじゃろうな。この先、召集にはせ参じた者たちが暗躍するじゃろう」
「疑いたくはないが、今魔法省に務めている元死喰い人も警戒しておいたほうがいいだろうな」
多少は大臣も柔軟な思考ができるようになったのか、意固地になることなく話を進めていく。ヴォルデモートが復活した今、この国内で比較的安全な場所は、このホグワーツぐらいしかないのではないのだろうか? 仮にこのままプリベット通りに還ったとして、叔母たちに被害が及ぶのではないだろうか。
自身のこれからの身の振り方を考えていると、ダンブルドア先生が何やら部屋中の絵画に向かって何やら指示を出していた。大臣はいつの間にやら部屋から退室し、帰ったらしい。シロウもいつの間にかいなくなり、部屋には私とダンブルドア先生だけだった。
「……あの、先生」
「どうしたのじゃ?」
「私は……プリベット通りに帰るべきでしょうか? 叔母たちを巻き込むと考えるとどうしても」
「君の心配は大いに分かるよ。じゃが大丈夫じゃ、あそこは確かに魔法省等には君の帰省先と割れてはおるが、わしとミスター・エミヤの守護が働いておる。少なくともわしに迫るほどの魔法使いかエミヤの様な魔術師、それとしもべ妖精の様な存在以外に割れることはない」
「それにミスター・エミヤの話では、今年から更に守護を強めるそうじゃ。彼の奥方たちの助力でやるそうじゃから、更に破るのは難しくなろうぞ」
ダンブルドア先生は優しげな声で私に語りかけてきた。確かに安心できる。イリヤさんたちの力が加わるのなら、今までよりも叔母たちの安全は保障されるだろう。でも傷を介した繋がりにどこまで効力があるかわからない。そろそろ私も、守られるだけではなく何かしらの自衛手段を覚えるべきだろう。
でもしばらくは長期間休みで魔法が使えない。フレッドたちが改変した魔法使い用魔術式も、私たちは杖で行使する必要があるために、休み期間中は使用できないだろう。とすれば必然的に精神面を鍛えることになる。そういえばこの前シロウとスネイプ先生が話しているのが聞こえたけど、何やら"閉心術"やら"開心術"という単語が出てきた。言葉から察するに、対象の心の内をこじ開ける術と、それに抗う術という位置づけだろう。あとでスネイプ先生に基礎を教授してもらおう。
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光陰矢の如しとはよく言ったもので、最終課題からはや二週間、オレ達は帰省の汽車に乗っていた。その間に凛たちは剣吾と共に元の世界に帰り、ホグワーツに来ていた他二校も己が地へと戻っていった。何やらミス・マルタンから住所の書かれた紙をもらったが、まぁ手紙を書いてほしいということだろう。話すことは特に思いつかないが。
「まさかあんたらが来ていたとは」
汽車の揺れに、いつものメンバーが心地よさそうに眠っているのを確認してからカードを出す。手元が光ると、そこには五枚のカードが現れた。それぞれ暗殺者、術者、槍兵、弓兵が描かれた金のカード。そして一枚だけ、鎖にがんじがらめにされた人間が描かれた漆黒のカードがあった。
剣吾達の話を聞いた限りでは、ランサーでクー・フーリン、キャスターにメディアが呼ばれたらしい。そして彼女の絨毯爆撃に巻き込まれて、紅葉が両足を損傷、全治二週間でその間しばらく車いすらしい。庇われた生徒にはその後娘にやったことに対してお仕置きを敢行したが、まぁ治る怪我で良かったと少し安心している。
「……できれば、オレがあんたらの力を借りることがなければいいが」
アヴェンジャーは既に同化しているため、力を借りる借りない以前の問題である。だがもしこの先、彼らの力を使わざるを得ない事態になったとき、果たして自分は制御できるのか。解析して僅かにわかっていることは、このカードはこの世界ではないどこかで生成されたらしい。そしてカレイドステッキを介して使うことが出来る、若しくは自身に"
そして弓兵のカード。これは他のカード違ってとても不安定なものだった。対象英霊が定まっていないのではなく、そもそもクラスが安定していないようだった。この理由が何なのかわからないが、下手したら弓兵のカードがもう一枚存在する可能性が否めない。警戒するに越したことはないだろう。
「そういえば、今のところ
残るクラスはライダー、バーサーカー、そしてセイバー。さらに最悪の可能性としてもう一枚のアーチャー。このまま順当に五次の英霊が喚び出されたのならば、ライダーはメデューサ、バーサーカーはヘラクレス、セイバーはアルトリア、アーチャーはギルガメッシュ。どれも強敵ぞろいで、しかも全員全てにおいてオレよりも実力が遥か上。英雄王は奴が慢心し且乖離剣を使わなければ勝つ可能性は出てくるだろうが、バーサーカーとセイバーに関しては絶望しか見えない。
「本当に、オレの運のなさは恨むよ。まさか『
とはいえ、泣き言は言っていられない。今年からヴォルデモートによる攻撃が、大なり小なり始まる。既にイリヤや凛、桜によってあの子の住居の守護は固くなっているが、それでも一抹の不安はある。
空はオレの精神状態とこれから先の未来を表現するかの如く、鈍い色の曇天である。この先、面倒なことが起こらなければいいが。
――始めましょうか。
――闇の帝王が復活したなんて戯言を言っている大馬鹿を黙らせないと
――ふふふ、安心してください大臣。この私が目を覚まさせてあげますわ。
――あんな老い耄れや小娘の言葉なんて、信じなくてもいいのですから。
はい、ここまでです。長らくお付き合いありがとございました。
いやはや、他の小説も書いていたとはいえ、まさか一巻で一年費やすとは思ってもみなかったです。
さて報告ですが、私めは九月の四日から約一ヶ月、カナダに留学に行きます。ですのでその間、私は小説を更新できませんのでご了承ください。
もしかしたらこの二日で、いづれかの更新か新しいネタを書くかもしれません。
ではまた。