お待たせしました、不死鳥の騎士団第二話です。
それではどうぞ。
待機通知が届いてから三日、何の音沙汰もなく時間が過ぎていく。その間私も何かできないか考えたけど何も考えつかず、結局裁判ではどのように応答すればいいかを事前に勉強するしかできなかった。
そして四日目、シリウスさんから一通の手紙が届いた。曰く、迎えに行くとだけ。恐らくマグルにとって普通でない方法で来るのは確実だ。一応ダーズリー一家に報告してはいるが、出来れば玄関から来てくれることを願うばかりである。
四日目に入り、私たちは夕食後の紅茶を飲んでいた。するとその時インターホンが鳴った。誰か来たのだろうか?
「あっ、私が出ます」
「そう? お願いね」
丁度お茶を飲み終わった私が出ることにし、玄関に向かった。扉を開けると目の前にマグルの恰好をした、でも感覚で魔法使いとわかる人たちが目の前に十人ほどいた。
「おやおや、彼女がマリーかい?」
「あらら、最後に見たときはほんの赤ん坊だったのに」
「え、ええと……」
私を見た途端に騒ぎ出す面々に戸惑いを覚えてしまう。とはいえ、このまま騒がれても近所迷惑になるだけである。
「えっと、余り大きな声で離されると近所迷惑になるんですが」
「ああ大丈夫、遮音魔法と人祓いやってるから」
「……いや、もしものことがあったら大変でしょうに」
なんだろう。魔法使いとしてはごくごく普通のことなんだけど、マグルの常識が抜けているぶん、私や他のマグル出身の子たちは非常に違和感を覚えるだろう。それに彼らが魔法を貼ったのはこの家の敷地外であって、この家には張っていない。よってダーズリー一家が玄関に急いでくるのも仕方ないだろう。
何とか叔父さんを宥め、すでに準備してた荷物を持って再び玄関に向かった。玄関では既にみんな箒に乗っており、いつでも出発可能というふうに並んでいた。
「お待たせしました」
「心配ない。予定より少しだけ早いぐらいだ」
集団に混ざっていた本物のムーディさんが唸るように言う。すると鮮やかな紫の髪をした女性が杖を一振りし、私の荷物をどこかへと送った。こういう時確かに魔法は便利だと思う。しかしその直後、女性は私の箒を見るなり興奮して近寄ってきた。
「わぁ、わぁ!! それってファイアボルトでしょ!? いいないいなぁ!!」
「トンクス!! そんなことは後にしろ、時間がないんだ!!」
「いいじゃないアラスター、少しぐらい」
トンクスと呼ばれた女性はその後私の箒を見続けていたのだが、流石に時間も押していたか観察がすぐに澄んだ。また他の人が杖をその間に振っていたことから、私たちに認識阻害の魔法をかけていたのだろう。
私は箒に跨ると、叔母さんたちに向き直った。
「それじゃあ、行ってきます。次会うときは多分、来年の夏になります」
「……たまには便りでも書け」
「……クスッ、はい」
ぶっきらぼうに呟かれた叔父さんの言葉に思わず微笑を洩らしつつ、私たちは地面を蹴った。
夜のイギリスに舞い上がった私たちは直ぐに空高く舞い上がり、すぐにプリベット通りは小さくなった。私たちが向かう場所、グリモールドプレイスという場所はロンドンの一角にあり、そこまではお空の旅ということである。幸い夜であることもあり、私たちは結構なスピードで飛んでいた。
途中何度かムーディさんの無茶な指示で向かうのが遅くなったけど、当初聞かされていた予定の時間内に現地につくことが出来た。
ただマグルの世界では何故か十二番地は存在しない。恐らく、いや確実に魔法使いが購入したために十二番地の表記をしなくなったのだろう。十一番地と十三番地の間にムーディさんが立ち、その身の丈ほどある長い杖で地面を二度叩くとあら不思議、一瞬で目の前に十二番地の戸口が現れた。
「あれ? たしかここはシリウスさんの」
「そのことは後で説明する。観られる前にさっさと入れ」
ムーディさんに促されて急いで玄関に入ると、縦に長い屋敷に私たちはいた。横幅は非常に狭く、大勢で暮らすには向いていないことは確実である。トンクスに案内されて部屋に向かう途中年老いたしもべ妖精を見かけたけど、私のことを見向きもせずに踊り場のカーテン依閉ざされた場所の掃除をしていた。
案内された部屋に入るとすぐ、私はハーマイオニーに急に抱きしめられた。肩越しに部屋を見ると、ロンやジニーもおり、みんながこの屋敷に集合していることが分かった。
「みんな、なんでここにいるの?」
「あなたが魔法を使ったと聞いて、でも詳しいことは分からなくて」
「騎士団も『例のあの人』が蘇ったことで活動を活発にしてるし」
それだ。その騎士団というのは何なのだろうか。昨年度末もダンブルドア先生が口にしていたし、この建物もまるで組織の本部の様に扱われている風がある。恐らくダンブルドア先生辺りが十五年以上前に結成し、ヴォルデモートに対抗するための組織なのだろう。
でもここが仮に本部だとしたら、少ないながらも情報が入ってくるのではないだろうか? 若しくはこの四日の間に、少しでも自分たちがどこにいてどのような状況であるかは伝えることができたのでは?
「ごめんなさい。でもダンブルドア先生に止められて」
「余り今はコンタクトを取るべきではないと」
「……そう」
ダンブルドア先生に止められていたのなら仕方がない。三人とも申し訳なさそうな顔をしているからとやかく言うのは間違っているだろう。でも少し、ほんの少しだけ彼らに対して、そして子供だからという理由で何一つ情報を開示しようとしない大人たちに理不尽な苛立ちが募った。
はい、ここまでです。次回は裁判編を書こうと思っております。
カナダでの勉学もあと一週間、ラストスパートをかけて頑張ろうと思います。
それでは皆さん、いずれかの小説でお会いしましょう。