錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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さてさて、今回はメインのこちらを更新しました。
ではどうぞごゆるりと。





2. 裁判

 

 

 グリモールドプレイス十二番地改め、シリウスさんの実家に来てから早一週間、ついに私の裁判の日になった。とはいえ魔法省への行き方は分かっていないため、その日はアーサーさんに案内してもらった。

 

 

「すまないね。案内は出来るんだが、如何せん私は外来者用の出入り口を使ったことが無くて」

 

 

 そう言いながら故障中の電話ボックスに入り、ダイヤルを押し始める。すると受話器から女性の声が聞こえてきた。

 

 

「あー、マリー・ポッターの裁判で来たのだがね」

 

『かしこまりました。ではこのバッジをつけてください』

 

 

 その音声と共に本来御釣が出てくるところに二つのバッジが出てきた。それを胸に着けると、電話ボックスの中だけがエレベーターの様に地下に入っていった。入口につくと私の目の前には驚きの光景が広がった。

 大きな通路の両側には多数の煙突があり、多くの魔法使いや魔女が出勤している。そして彼らが向かう先には、黄金の魔女やケンタウロス、ゴブリンなどの像で組み合わせられた噴水がある。みんなそれぞれたくさんあるエレベーターに乗り、各々の職場に向かっていた。

 

 

「私の尋問がある場所って、確か神秘部って階層でしたよね」

 

「ああそうだよ。全くなんであんな場所でやるのだか」

 

「変な場所なんですか?」

 

「変というかね、魔法省でも少々変わった人が勤務しているし、ましてや極秘なものが数多くあるという話でね。神秘部について知っている人は、神秘部で働いている人以外知らないという話だ。かくいう私もここについてはほとんど知らないんだ」

 

 

 アーサーさんの解説聞きながら私たちはエレベーターに乗って神秘部に向かった。ついた先は入口とは違って黒いレンガで作られた階層であり、不気味な雰囲気を醸し出していた。成程、アーサーさんが知らぬのも他の勤務者が知らぬのも頷ける。

 回廊を黙って進むと目の前に一つの扉が見えてきた。しかしここでアーサーさんは立ち止まり、私を先に行かせた。

 

 

「残念ながら私はここまでだ。君の裁判には参加できないが、君が無罪であると私は思っている」

 

 

 その言葉を背に、私は虎の中に入っていった。

 

 

「……大丈夫、君は絶対に無実だ。そうだろう?」

 

「無論だ。あの子が罪に問われる謂れはない。地の利はこちらにある。それに……」

 

「……そうか、彼女がいるのか。ならば公平な裁判が期待できるな」

 

 

 

 

 

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 扉をくぐると、テレビで見たような光景が広がっていた。ただ異なるのは聴衆はおらず、尋問官たちと部屋の真ん中に空いた椅子が一脚設置されているだけだった。

 

 

「……五分前だな。早く座り給え」

 

 

 裁判官の席に座る魔法大臣が私に促してきた。私は黙って従い、椅子に座る。と、尋問管の中にカエルが混じっているのが見て取れた。訂正、ガマガエルの様な女性が混じっていた。彼女は確か、二年前にシロウに完膚なきまでに潰された女。禁術を使っても平気な顔をしているということは、何かしら汚い手を使ったということだろう。カエルだけに。

 

 

「時間だ、それでは開廷する。本日の裁判官、コーネリウス・オズワルド・ファッジ。副裁判官アメリア・ボーンズ。被告人マリア・リリィ・ポッター。本件は被告人の『未成年魔法使いの妥当な制限に関する法令』に抵触する可能性のある行いについてのものとする」

 

 

 ファッジ大臣の声が響く。私は大臣が読み上げる私の罪状について聞きながら、尋問官席に座る魔法使いたちを観察していた。半数は興味本位の、五分の一は敵意の、残りは品定めするように私を眺めている。因みにカエ……ガマ女は敵意ある人にカテゴライズ。ニマニマと嫌な笑いを浮かべている。

 

 

「……以上がこの者の行いである。被告人、何かこの場で発言したいことはあるかね?」

 

 

 ファッジ大臣が問いかけてきたので、私は主観になるけど当時起こったことを事細かに説明し、マグルの従兄にも被害を及ぼしたことを報告した。話を終わらせると、今度は尋問管たちによる質疑が始まった。というか私の裁判、弁護人はいないのだろうか。普通なら一人はいそうなのだが。そう考えてると、何やら一枚の紙が大臣に手渡された。

 

 

「……確認した。では被告人、弁護人が到着したらしいので入場させる」

 

 

 その声と共に後ろの扉が開き、三人の人物が入ってきた。一人はダンブルドア先生、もう一人はシロウ、そして最後の一人は、なんとフィッグさんだった。

 

 

「では弁護人、被告人の弁護を」

 

 

 ファッジ大臣の催促に従い、三人はそれぞれ私の弁護を始めた。それにしても、フィッグさんがスクイブだったとは思わなかった。せいぜいシロウを通して少し知っている程度だと思っていた。

 三人がそれぞれ弁護を終えると、あのカエルが変な咳払いと共にしゃべり始めた。

 

 

「ェヘンェヘン!! 失礼ですがダンブルドア先生とそこの男、私めの勘違いでなければ、まるで魔法省がその子に吸魂鬼を嗾けたという様に聞き取れたんですが」

 

「わしはそのような『そういうニュアンスで述べたのだが?』……シロウ?」

 

「なんですって?」

 

 

 シロウがダンブルドア先生に被せるように言葉を述べると、真っ先にボーンズ女史が食いついた。ガマ女は表情を消し、憎悪な目でシロウを見つめている。しかしシロウは気にするまでもないように口を開き、言葉を続ける。

 

 

「可笑しいと思わないのか? 現在、吸魂鬼は魔法省の管轄下にあるという話だ。しかし最低でも二体の吸魂鬼に彼女は襲われた。記録に残るヴォルデモートの傘下に入っていたわけではない限り、奴らが勝手にアズカバンから離れるとは思えん」

 

「……続けて」

 

「となれば、現状奴らを意図的に動かせるのは魔法省の人間のみ、まぁヴォルデモートが復活していれば話は別かもしれんが?」

 

「……馬鹿な」

 

「元手下どもの腕を確認したか? 奴の刻印が真っ黒に浮き上がっているのが、奴の復活の何よりの証拠だが、まぁこの際置いておこう。問題の吸魂鬼についてだが、独自に入手した資料があってね、目を通してもらいたい」

 

 

 シロウが人数分レジュメを配布すると、全員が目を通し始めた。読み進めていくたびに尋問官たちの目は険しくなっていく。そしてガマ女はというと、本人は隠しているつもりだろうが、とても焦っているのがわかる。まぁ同じ尋問官たちは気が付いていないみたいだけど。

 

 

「……これは真かね?」

 

 

 ファッジ大臣が重苦しそうに口を開く。シロウはそれに対し、沈黙で回答を示した。一体何が描かれていたんだろう。

 

 

「ついでに言うと匿名でな、誰が指示したかは知らん。だが今回の件は確実に魔法省に過失がある事態であり、正当防衛が認められるものだと思うが?」

 

 

 シロウは畳みかけるように言葉を紡いだ後、私の後ろの下がっていった。しばらく沈黙が続いた後、ボーンズ女史が口を開いた。

 

 

「被告人を有罪だとするもの」

 

 

 その声が響くと、ちらほらと手が挙げられるのが確認できた。その中にはガマ女も勿論いる。……それほどまでに私を潰したいのか。それとも自分の地位が崩れるのがそれほどにまで嫌なのか。どちらにせよ、性根が腐っていることは間違いなさそうだ。

 

 

「被告人を無罪だとするもの」

 

 

 ボーンズ女史がそう述べると、尋問官たちのほとんどが手を挙げた。ファッジ大臣もその中に混じっており、明らかに私が無罪であると場が語っていた。

 

 

「……では被告人は無罪放免、此度の事案は正当防衛とする。これにて閉廷!!」

 

 

 大臣はそう述べると木槌を一つ叩いた。ようやく肩の荷が下りたように感じ、ほっと一息つく。でもその時背筋に冷や汗が流れた。咄嗟に振り向くと、例のガマ女が無表情でこちらを見つめていた。

 

 

「……奴に手出しはさせん。絶対に」

 

 

 私の隣に来たシロウがそうつぶやく、が、正直それでも嫌な汗が泊まらない。今回の様にシロウが間に合わない可能性もあるかもしれない。シロウは特殊だ、学業もやりながらヴォルデモートへの対策も練り、更に元の世界のことも請け負っている。去年よりも更に忙しくなった彼に頼りすぎるのもどうかと思ってしまう。

 それでももう少し、貴方を頼らせてください。そう意味を込めて彼の背中の裾をそっとつまんだ。

 

 

 





はい、ここまでです。
いやはや、まさかひと月で色々と更新できるとは思いもしませんでした。
さてこちらカナダでは真夜中ですが、そちらは夕方ですかね。実はこちらで風邪を引きかけております。だって朝とか10℃以下の気温だし。季節の変わり目ですので体調を崩されぬよう。
ではでは、またいずれかの小説で。



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