英雄転生~神か悪魔か~   作:逆に天才

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女帝のペルソナを使用可能になった翌日の出来事です。

本編に入れるとどうしても違和感が出るので、番外編という形で書かせていただきました。


~幕間~ 愚者、ベルベットルーム

2つ目のアルカナ女帝の力を手に入れた翌日、僕は病院に来ていた。

 

別に病気や怪我をしたわけではない(したとしても魔法で一発)。

 

今日ははやての通院日ということで特別についてきているのだ。

 

 

「え~とはやての主治医は石田光司先生?だったっけ?」

 

「そんな希望の船に乗るような名前やないわ!石田幸恵先生や!」

 

 

そんな他愛もない話をしながら待合場で待っていた。

 

 

「どうはやてちゃん調子は?あらあなたは?」

 

 

僕らに美しい女医の先生が話しかけてくる。この人が石田先生だろうか。

 

 

「あ、先生こんにちわ!この人はわたしの家に居候してる穀潰しや」

 

「ご、穀潰しって、もっといい紹介のしかたがあるんじゃないのはやてちゃん?」

 

 

初対面の人間に対しての紹介の仕方ではないと思う…、そんな意味を込めてはやてに視線を送るがものの見事に無視された。

 

 

「それじゃあちょっと行ってくるで、ここから動いたらアカンで」

 

 

そんな小さな子どもじゃないんだから…、そう抗議しようとした時にはすでに行ってしまった後だった。

一人待合室で待つ。周りを見渡して見ると意外と親子連れが多いことがわかる。その光景を見ているとまるで自分だけが世界から孤立したような錯覚を覚える。

そんなセンチメンタルな気分に浸っていると、放送が入ってくる。

 

 

《狭間人成さま、狭間人成さま、地下一階心療内科総合受付までお越しください》

 

 

若い女性の声だった。不思議と雑踏にまぎれてもよく通る澄んだ声。僕は街灯に群がる蛾はこんな気持なのだろうかと思いゆっくりと腰を上げた。

 

 

#####

 

そこはおよそ病院のイメージとはかけ離れた場所だった。さっきまで僕がいたところは本館と呼ばれるところらしく、今いるのは旧館だそうだ。

薄暗くジメジメしており、人の気配は一切しない。ただ時折どこからかうめき声のようなものがするから一応は患者がいるらしい。

地下一階への扉は長らく使われていないようだった。ドアノブには厚いほこりがかぶっており正直触るのにも勇気がいりそうだ。

それに触れようとした瞬間ゆっくりとドアが開かれた。どうやら招かれているらしい。夢遊病患者のようにおぼつかない足取りをしながらそのドアを通り抜けた。

 

 

さっきまでいた旧館よりも人の手が入っていないことがわかる。廊下に転々とろうそくが建てられておりなんとか足元は見えるようになっていた。

歩いていると正面で突然バッと照明がつく。鉄格子の向こう側に変わったナース服を着た女が立ちすくんでいた。

 

 

「突き当りの部屋で我が主がお待ちしております」

 

 

女はそう言って深々と腰を曲げた。ちらっと見えただけだが瞳の色が黄色だった。更に髪の毛は白髪でおよそナースとは言いがたい。それが僕の抱いた印象だった。

軽く手をげ了解の意を示す。この女はずっとこの暗闇の中待っていたのだろうか、だとしたら女の主はかなりの狂人だろう。改めて心の準備をする。

突き当りの部屋につく。部屋のネームプレートはかすれてよく見えない。よくよく見ると監、という文字が見えた。ろくでもない部屋だということは分かった。

ゆっくりとドアを開ける。油が切れているのか耳障りな音をたてているが無視だ。

 

 

部屋の中は外とは全く違った。壁や天井をすべて青一色で染め上げており、奇妙な感覚に囚われる。周りを見渡すと絵師のような男が一人、歌を歌っている女が一人、さらにさっきの女とピアノを引いている男がいる。

 

 

「君が狭間人成君だね?まあ掛け給え」

 

 

いつの間にか顔半分に仮面をつけた男が座っていた。言葉に甘え椅子に座る。イタリア製の最高級ソファーのような柔らかさだ。その男はタロットカードをシャッフルしながらこちらを見つめてくる。その瞳を長時間見ていると吸い込まれるような感覚に陥る。

 

 

「ルイ・サイファーから話は聞いている。君は力がほしいのだろう?」

 

「ああ、そうだ。あんたがフィレモンさんで合ってるの?」

 

「いかにも私がフィレモンだ。同時にこのベルベットルームの主である」

 

 

だが普段管理は部下に任せているのだがね、と言った。僕は奇妙なシンパシーを彼に感じていた。彼もまた僕と同じでどこか人とは違う、だが彼はそれで満足している。そう感じたのだ。

彼はさっきの女に指示を出す。恭しくアタッシュケースを持ってきた。フィレモンはそれを無造作に開ける。

 

 

「確かジュエルシードとか言ったかね。これはそれのオリジナルなのだよ」

 

 

そう言って彼はジュエルシードを手に持つ。確かによくよく見てみるとあるべき刻印がないことが見て取れる。

 

 

「これを作ったものは私の天敵と呼べるものでね、あまり気は向かなかったがこの部屋の客人となると言われてはねえ」

 

 

そう言って愚痴をこぼす。またルイによる被害者が一人増えてしまった。被害が公表されていないものもあるが、このまま行くと宇宙規模で被害者の会ができそうだ。

 

 

「さあ持ってご覧、君の力になるはずだ」

 

 

無造作に投げ渡される。いつもの様に力が流れ込んでくる感覚がする。

 

 

『われは愚者のアルカナを司る者、汝の力を認め愚者の力を授けよう』

 

 

その声が頭に聞こえたかと思うと急に意識が朦朧としてきた。

 

 

「ペルソナのことで相談があるならいつでもここに来なさい。最高のスタッフがいつでも君をバックアップしよう。それとその鍵を使えばどこからでも来れる、覚えておいてくれ」

 

 

その言葉を最後に僕の意識は闇へと引きずり込まれた。

 

#####

 

誰かの声が聴こえる…、誰の声かはわからない。ただ聞き慣れた声だということはわかる。

僕は頬への強い痛みで覚醒する。僕にビンタをしたのは多少怒り顔のはやてだ。

 

 

「いつまで寝ているつもりなんや!さっさと帰るで!」

 

 

とりあえずそんな怒っていては可愛い顔が台無しだと言っておく。そうしたら赤く顔を染めてワタワタし始めた。間違ったかな?

まだ寝ぼけている頭を振りながらゆっくりと立ち上がる。その時チャリっと何かが落ちる音がした。

 

 

「なんやその青い鍵?初めてみるなあ」

 

 

はやてが立ち直り疑問を口にする。長椅子の上に執拗に青に染めたような鍵が落ちていた。僕はさっきまでの出来事が夢ではないことを確信し少し笑う。はやてのご機嫌を取るため帰りに翠屋によっていく約束をし、家へゆっくりと帰っていった。

 




どうも皆様逆に天才と申すものです。

番外編2お楽しみいただけたでしょうか。この病院は海鳴大学病院という病院でとらはからの引用です。あと地味にとらいアングルデルタとかいうタイトルを思いつきました。ベルト争奪戦だぜヒャッハー!

それでは皆様本編でお会いしましょう。それまで悪魔に体を乗っ取られぬように。
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