私、重巡洋艦なんです!   作:探照灯要員

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匿名投稿です。

見知らぬ分野に手を出しているので……ご了承ください。


第一章
私、誰なんです?!


 

 

 

 

「えーと……」

 

 俺、と言ってもいいのか分からないが、ともかく俺は困惑していた。

 

 なんせここがどこか分からない。人間、普通寝たら起きるのは寝た場所であるべきで、夢遊病と言われるそれであったとしても、多くは自分の家=寝床に戻っている事例も多いはずなのだ。

 

 でも、こんな場所知らない。

 

「どう見てもここ、南国ですよね……」

 

 南国というものの定義はよく分からないが、きっとそういう観光パンフに使われそうな景色が目の前に広がっている。

 

 青い海。青い空。水平線上に浮かぶ白い雲。そして、白い砂浜。

 

 こんな場所で生活したいものだ。そう思うんだから、ここは自分が生活していた場所ではない。

 

 そう、少なくとも俺は日本人だったはずで、今口にしているのも日本語のはず。自分が何を言っているのか理解できているのだから、そうに決まってる。

 

「……」

 

 どうしよう、なんというか、目を向けちゃいけない現実が真下にある気がする。

 

 ……というか、重力を感じている時点でもう確定事項なんだけど。でも目を背けるわけにもいかないし……ゆっくりと視線を下に。

 

「……」

 

 主張は激しくないが、しっかりとそこには二つの丘陵が。女性ホルモンを投与すりゃ大きくなるとは聞いているし、本当は重要な部分(バイタルパート)を確認しなきゃならないのだが……スカートの時点で察してくださいと言われているようなもの。さ、流石にこんなお天道様が真上にいるような時間に触るのは気が引ける。

 それ以前に、女の子になっちゃったなんて精神衛生上よくない。

 

 ……いや落ち着け、俺が元々女性であった可能性も残されているじゃあないか……ないか。なんというかさ、自分の高めの声に違和感しかないんだよね。

 

「……」

 

 仕方がない。

 

 受け入れる受け入れないはともかくとし、対処行動は必要だ。行動しよう。

 

「……まずは」

 

 

 

 

 ご飯にしよう。

 

 人間、食べなきゃやってられないし、仕方ないね。

 

 

 

 

 とは言っても……。

 

「……見つかりませんね」

 

 あ、言葉遣いは迷ったけど、ですます丁寧語統一で。なんか男口調もおかしいし(だって男である証拠がない)、かといって女性らしい話し方というのも分からない。標準語万歳。これで日本人としてのアイデンティティは守れる……ハズ。

 

 で、問題は、食料らしい食料が見つからないのだ。どうしよう。結局ここがどこかは分からないし。

 南国の海は食料が豊富だというけれど、それはあくまで漁業をするなら、という話。今は漁業に関する知識も道具もないし、流石に葉っぱを食べ続けるものいやだ……というか、なにが悲しくてサバイバルの心配しなきゃいけないんだろう……もっと心配しなきゃいけないことがあるのに……主に自分の身体のこととか。

 

 あ、そういえば身体。身体なんですけど。

 

 ……なんか、ね。装備品が『装着されている』んですよ。いや、自分の名誉のために言っておきますけど、初期の混乱が収まった後すぐに気づきましたよ?!

 だって腕とかに思いっきり取り付けられているんですもの!

 

 で……いったいこれは何なのだろうか。

 

 少なくとも自分はこんな装置知らない。外部強化骨格とかいうやつ? 強化骨格というよりは取り付け式の携帯火器だろうか? その割にはちょっと火力重視過ぎる雰囲気が漂う装備な気もするけど。

 

 で、そうなると問題になるのが、今は自分となったこの少女はいったい何者なのだろうか? 

 火力重視な火器。取り外したら分かったけどそれはとても身体にフィットしていて、オーダーメイドであることが伺われる。というかこれ、実際にはどうやって使うんだろう? 自分の記憶が正しいならこの装備にいくつか取り付けられた箱は砲塔というやつで、突き出しているのが砲身。つまりここから弾丸が飛び出す仕組みになっているはずだけれど、肝心の引き金、トリガーがない。

 

 トリガーがないのに、どうやって撃つのだろうか。脳波でも読み取るのだろうか。でも威力がわかってない以上撃てと念じる気にもならないし……解体整備の仕方も分からないから内部を調べるもの叶わない。

 どんな些細な事にも専門的な知識が存在する。例えば、かの傑作小銃AKシリーズの解体整備は簡単で、すぐに覚えられると好評だが、教えてくれる人がいなければAKの解体だってできないのだ。

 

 この装備品は複雑怪奇。

 

 と、そんなこんなで装備品は分からないことだらけなので身に着けていた装備品の数々に関しては現実逃避(気にしないように)していたのだが……目が覚めた沿岸部を中心に探して果物の一つも見つからなかったのだ。ここは気分を変えて、自分の身体を調べよう。

 

 

 いや、変な意味はナイヨ?

 

 

 

 ★ ★ ★

 

 

 

「これは……私に関する情報ですね、きっと」

 

 胸をm……上半身を調べている途中に出てきたのはドックタグ。所属や名前、治療に必要な情報である血液型などが刻印されているもので、身元を知るにはこの上ない資料だろう。というか、ドックタグ持っている時点でこの少女が軍属なのは分かった。少女が軍隊なんてヘンテコだけど、装備のほうがヘンテコなので多少はね?

 

 ……さて、ドックタグを取り出すときに丘陵地帯が直接見えてしまったのは置いといて、なんて書いてあるのかな?

 

 

IJN

 CA―Furutaka01

 

 

 有益な情報が得られる……と思ったのだが、血液型が刻印されていない。なんだこのタグは。役立たずじゃないか。01ということは部隊名か何かだろう。第一フルタカ部隊……おお、かっこいいじゃないか。他人事なら。

 CAってなんだろ。認証局(Certificate Authority)とか? いや、部隊なのにそれは変だ。

 

 ……で問題は、だ。

 

 

 IJN?

 

 

 まさかとは思うが大日本帝国海軍(Imperial Japanese Navy)ということなのか? 記憶が正しければ大日本帝国は解体され、自分が住んでいた日本はサンフランシスコ条約で再独立を果たした国家のはず……議会は継続しているので同じ国家としての扱いを受けるし、いまだに紋章も豊臣のそれだったりして、正直何も変わってないと思うけど。

 

「並行世界?」

 

 そういうものなのだろうか。いやまて、タイムスリップの可能性もある。ここはまだ大日本帝国が解体されていない時代で……いや、そんな時代にこんな取り付け式の武器なんてなかったよ。うん。

 

 

 ……というかさ、思った以上に装備ジャラジャラなんだよね、この娘。腰には拳銃やら発煙筒、手りゅう弾らしいものもある。もちろん水筒や携帯食料の類も(数個だが)あるわけで、実は急いで食料を探す必要はなかったようだ。

 

 ……そこ、先に調べろとか言わない。身元が分からず、自分自身にどんな権限があるのかも分からないのに見ず知らずの少女を身体検査できるわけない(建前)だろ!

 

 ともかく、かなり上質な装備を持っているということが分かった。コンパスと羅針盤というようになんか同じようにしか見えない装備もあるけど……少なくとも大日本帝国が持っているレベルの装備ではない。やはりここは大日本帝国存続の世界と考えるしかないだろう。

 

 

 なんか見ず知らずの少女になった上に異世界か……。

 

 

「うーん……壮大すぎる……」

 

 なんだか疲れたので倒れようと思い……それから地べたに寝っ転がるのはどうかと思ったので葉っぱを引きちぎって簡易的な寝床を作る。作ってからハンモックのほうがいいような気がしたが、ハンモックは作るの大変そうだし、まあいいよね。

 

 寝転がってみる。バカみたいにすっきりとした青空。

 

 ……やっぱりスカートは慣れない。そして耳を隠すぐらいに長い髪の毛。確かにロングと呼ぶことは出来ないが、それだって十分長い。首に髪がこすれる感じがやばい。

 やっぱり寝てられないや。

 

 というかまだ陽がちょっと傾いた程度、全然夜には遠かった。

 

 どうしようか……まずは、身の安全。衣食住を整えよう。

 

 

 

 衣は……まあ現状このままで。スカートとかスースーしてあれ何だが、もう慣れろという他ない。身体がそうなっているんだ。慣れたくなくても慣れてしまうだろうし、少なくとも女装癖などと言われることはないだろう。

 

 

 

 次は食。現在の手持ちは携帯食品のみ。ついでにそれだって飢えを誤魔化す程度なので量自体は少ない。そもそも作戦行動中におなか一杯食べることなんてありえない。

 ……何とかして食糧を確保する必要がある。長期保存じゃなくてもいいから。

 

 となると……釣りだろうか?

 

 やり方は分からない、しかし、やるしかないだろう。

 

 

 最後に住。正直、ここがどこか分からない以上は常に移動し続けたほうがいいだろう。少なくともここら辺の気候なら寒さとかは怖くないだろうし。

 

 あ、そういえば、太陽で緯度がわかるんじゃなかったっけ? でもどうやるんだっけ。うむむ……サバイバル関連のノウハウがないのは厳しいですね。

 

 

 

 

「よし、それでいきましょう!」

 

 それにしても、この声やっぱり慣れないなぁ……。なんか自分じゃない気がする。『今は』自分なんだけど。

 周りから聞くとどんな風に聞こえるんだろう? 発言した本人の声は骨を通じて伝わるせいで他の人とは聞こえ方が違うらしいし……。

 

「あ」

 

 周りと言えば。

 

 

「……私って、どんな顔しているんでしょう?」

 

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