私、重巡洋艦なんです!   作:探照灯要員

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夜警のタイトルはこんな感じで。寝る前の日記みたいな気分で読んでもらえるとありがたいです。

こう、夜って落ち着けますよね。

15/11/18数字表記の訂正


一回目の夜警。

『古鷹さん、起きてください』

 

 小さな声が聞こえて、鼻が引っ張られる感覚。

 

 

 目を開けると、そこには小人が。

 

 ……。

 

 

「んぅ……夢かぁ……」

 

 そうだよ、ゆめにきまっている(棒)

 

『ちょっとちょっと、輪番制で夜警をするって言いだしたの古鷹さんじゃないですか』

 

「……やっぱり、起きなきゃダメ……ですよね」

 

 むくりと起き上がると、確かに重力の影響を受けている胸。眠気を払うように額を撫でるとちょっと質感に違和感のある髪の毛が触れる。ふるふると首を振れば髪の毛が揺れた。視界に映るのは先ほどの焚火。

 

「夢じゃ、ないみたいですね……」

 

『いい夢でしたか?』

 

 いい夢……何も感じずに済む睡眠こそが夢のような存在なのかもしれない。

 

「さぁ、どうでしょう……今も夢の中のような気がします」

 

 目の前の小人は……取り決め通りなら飛行科さん。ひこうかさんって言うと飛行家みたい。

 あ、ダメだ、思考が回ってない。そういえば寝起きあんまり強くなかったなぁ……これって『どっち』の記憶なんでしょう?

 

『じゃあ自分はお休みしますね』

 

「はい……おやすみなさい」

 

 ぱたりと私の装備品にもたれかかると同時に動かなくなってしまう小人。早いなぁ……オリンピックに昼寝の種目があれば金メダル待ったなしだろう。

 

 

 ★ ★ ★

 

 

 星空というのは不思議な存在だ。それぞれの輝きは本来とてつもなく、それこそ太陽以上に大きいはずなのに、あんなにも主張は小さい。それほど遠くに存在するのだ……なんでも、最も速いはずの光をもってしても到達するのには何億年もかかる距離なのだとか。億年って途方もない数字だ。秒数とかに直すと電卓の桁が振り切れそう。

 

 向こうの発した光は何億年もの宇宙の旅を経て、そして地球へたどり着く。

 

 それはつまり、たとえ今その星が消滅しても、私たちは今後数億年の間、その星を視認することが出来るということだ。

 

 不思議である。でも、それはどんな物事にだって当てはまることだ。

 

 

 例えばほら、この私。胸からドックタグを取り出すと相変わらず刻まれているCA-Furutaka01の表記。

 

 条約では一等巡洋艦に分類されることとなる古鷹型。それは登場当初世界を驚かせた……日本いつも世界驚かせてるよね、ほんと何なの……軍艦である。偵察巡洋艦を名乗れる快速と、同程度の艦には絶対負けない火力を保持し、その後伝説を作ってゆく日本一等巡洋艦の先駆けと言える艦艇。

 

 この知識、それは自分が書物やネットで得たものだ。自分は「古鷹」を見たことなんてないし、見たくてもそれは海の底だ。

 

 でも、自分は「古鷹」のことを知っていた。

 

 たとえ消失しようとも、その存在は残り続ける。語り継がれる。さっき星を例に出したが、その星の光が地球に届かなくなっても、きっとどこかの天文書には書き残されることだろう。

 

 

「……」

 

 そう考えると、余計に不思議である。軍艦「古鷹」は沈んだはずだ。自分はそれを知っている。なのにこの寝息を立てて……いるのかは分からないが、とにかく寝ている小人たちは私『が』古鷹だという。

 

 

 私は、何者なのだろうか。

 

 

 確かな法則を持って繰り返し打ち寄せる波……それが砂浜の砂をこする音が、暗闇の先から聞こえる。焚火以外に地上を照らす光はなく、水平線まで真っ黒に染まる海。そしてその上に広がる満天の星空。そういえば、田舎に行くと星空がドーム状に見えたっけか。初めて見たとき、これが天然プラネタリウムかと納得したのをよく覚えている。

 ……おや、田舎に行った時、ということは自分は都市部の人間だったということか。また新しい情報が増えた。役に立つとは思えないが。

 

 ともかくだ、ドームは自分を中心に広がっているわけで。どんなに仰ぎ見てもそこに広がるのは届かない星空だけ。なんというか、隔離されている気分だ。

 

 こういった大自然の中では自分がちっぽけな存在に見えるとはよく言うが、今の自分にとってこのちっぽけな身体自体が大問題なのだ。なんで自分が……なんて言ってもしょうがないのかもしれないが、なぜ女の子で軍艦なのだとは言いたい。すごい言いたい。漢のインペリアルネイビーが泣くぜ……?

 

 

 とはいえ、ごちゃごちゃ言ってる暇があったら動けというものだ。この夜警という暇な時間を使って、この世界のこと、そしてこの世界で自分がどう振る舞うべきかを考えよう。

 

 

 

 まずは、この場所。南緯9度ということが明らかになった今、場所を想像することは可能である。私は焚火の光を頼りに適当極まりない世界地図を描いてゆく。赤道と回帰線を書き込んで一応完成。北半球だから関係ないけど、日本だけがいやに大きくなってしまった。まぁ、自分の住んでることろだけ詳しく書こうとしてしまうのはあるあるだと思う。

 

 さて、南緯9度当たりをなぞってみる。アフリカ、南アメリカ……あ、あとポリネシアとメラネシアだけか。

 

 ……つまりポリネシアかメラネシアのどこかの島ではないだろうか? いや、なんというか、目が覚めたとき南国だなぁと思ったから……これ主観なんだよなぁ、推測は根拠をもとに考えるべきで、主観を根拠にするのはどうかと思う。

 あとついでに、海の方角が東となっているため、ここが大陸の西岸であるということは多分ないだろう。小地形なら大陸西岸でも東に海があるかもしれないが、そんなイレギュラーが当てはまる可能性は低い。

 

 ではとりあえず、自分が南アメリカ東岸かアフリカ東岸にいたとする。あ、念のため言っておくが、ここが完全なる異世界だったらお手上げだ。ここが自分の住んでいた地球だと考えられる根拠は、このドックタグに書かれた『IJN』しかない。私が女の子であることを証明するよりもずっと難しいのだ……え、女の子であることの証明をどうやるか? いや、やらないよ?

 

 さて、大陸ということは陸伝いに移動することが可能ということだ。しかし、正直言って陸路は避けたい。

 海路を使わずに日本に向かうには先進国に向かうのが手っ取り早いだろう。しかしここは南半球。当然ながら先進国は北半球北緯30度以上の地域にそのほとんどがあるわけで、南アメリカならアメリカ。アフリカなら地中海諸国ということになるが……これへ陸路で向かうのは難しい。

 アメリカに必然的にラテンアメリカを通過することになるし、アフリカの紅海沿岸はインフラが整備されていない上に険しい地形が行く手を阻む。大日本帝国が存在しているなら世界の植民地構造は変わっていないと考えるべきだろう……自分の世界での日本は植民地支配へ対抗した国家ということになっているが、その根底にブロック経済の考えがあったことは紛れもない事実だ。

 そして自分の住んでいた世界では、発展途上各国は植民地解放から半世紀経ってもなお治安の悪さとインフラの悪さが改善しないのだ。陸路には期待できない。

 あ、ブラジルってWWⅡの時先進国だったけど……あれはコーヒー先進国の間違いだし、インフラは悪いと思う。南アフリカ東岸ならここはブラジルだろうしね。

 

 

 次に、ここがポリネシアやメラネシアであった場合。

 

 こちらは島なのでどう考えても海路で往くしかない。しかしここがオセアニアなら自分にとって結構有利な条件がたくさん揃っている。この海域には本当に多くの島が存在するので各地で食糧確保のために立ち寄ることが出来るし、親日国が多いオセアニアでならそこまで意気込む必要もない。適当なところまで言ったら道に迷ったとでも言えばいいのだ。

 

 そして何より、日本に近い。

 

 

 

 まぁいずれにせよ……海路で往くしかない。

 いや、わかり易くて大変結構じゃないか! 前向きに考えよう。海路で往くしかないなら燃料は温存しないとな……あれ、既に前向きでない思考になってる気が。

 

 しかし、いきなり北に行くほど自分もバカじゃない。なんせ確実なのは緯度だけだ。島が多いのはオセアニアだが、インド洋にだって島はある。大西洋にもだ。あくまで可能性として太平洋地域を挙げただけだということを忘れてはならない。

 

 

「少しだけでいいから地理情報が欲しいですね……」

 

 ほんと、一分でいいから情報収集衛星(あ、日本の偵s……便利な衛星のことね)を使わせてほしいものだ。無理か。うん、知ってた。

 

 ……ん?

 

 

 ……そうだ、飛行科さんに頼んで航空偵察してもらえばいいじゃないか。あ、でも飛行機あるのかね。早速確認しよう。

 教えてもらった艤装の管理情報を開く。どういうことなのかは分からない(一応説明してもらったが、よく分からない)が空中に投映される弾薬や燃料などの情報……ホント、なんで照和も余裕で超えた大日本帝国の装備が旧式艦艇名乗ってるんですかね。

 

 それはともかく、航空燃料などの項目を確認する。航空機の名称は……やっぱり94式か。航続は……書いてない。使えるのかどうか分からないが、後で飛行科さんに聞くこととしよう。彼が寝る前に聞いておけばよかった。

 

 じゃあ明日は航空機が使えるならそれによる偵察をさせつつ食糧確保、航空機がダメならサバイバルに専念しよう。

 

 もしここが本当にオセアニアなら、なるべく早く出立、日本へ帰る。

 

 ……あ、日本に帰ったらどうなるんだろ。

 

 見通しが立つと次のことが不安になるのは人間の性だ。

 ドックタグがあることからやはり原隊に復帰だろうか? 自分の過去がよく分かっていない以上、強い抵抗はないが……なんだかそれは踊らされている感じで嫌だ……まあ、国民は国のため、国は国民のため。悪いようにはならないだろう。この世界の大日本帝国次第だけど。

 

 

 

 

 

 まぁそんな感じで、夜が明けたら頑張ろうじゃないか。ふと焚火にくべる燃料が減ってきていることに気付く、ちょっと取ってこないといけなさそうだ。

 

 眠っている小人たちの方をちょっと確認。とても気持ちよさそうに眠っている。

 

「小人さん、すぐに戻りますからね」

 

 さあ、燃料を少しばかり集めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 その……すごい素朴な疑問なんだけど……眠っているこの小人たちって、性別は? いやそもそも性別の概念があるのだろうか?

 ……考えるのやめよう。性別の話は当面ご法度だ。なんか考えれば考えるほど自分が私に染まりそうで怖い。

 

 もう染まってるのかも知れないからなおさらだ。

 

 

 ……。

 

 

「あーもう! 前向き前向き!」

 

 

 満点の星空、その下で私は気合を入れなおすように大きく背伸びをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




夜警の話はこんな感じで続けるつもりですが、今回は特段に長くなりましたね。次の夜はもっと短くなるはずです。
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