第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP32

AD 1946 ベルギカ ライン川流域

 

「間違いないの!?」

「遠いけど、確かに感知した! 間違いなく次元転移反応だよ!」

 

 赤毛で灰色狼の耳を生やしたウィッチが、首元に掴まっている灰色のボディスーツに漆黒の戦闘用アームを装着した武装神姫、悪魔型MMS・ストラーフに問い質す。

 赤毛のウィッチ、元501統合戦闘航空団隊長、現サントロン基地ウィッチ隊リーダー、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐が、目的の場所へと急いでいた。

 

「扶桑、ペテルブルグ、トブルクと来て、次はここか!」

「明らかにウィッチのいる所狙ってるよね~」

 

 栗色の髪をおさげにし、ジャーマンポインターの耳を生やした機関銃二丁持ちのゲルトルート・バルクホルン大尉が聞いていた情報と照らし合わせ、隣に並ぶ小柄で短い金髪にダックスフンドの耳を生やしたウィッチ、エーリカ・ハルトマン中尉がうんざりした顔をしていた。

 

「反応ありました、でも何か妙です」

 

 最後に続く、白髪に紅瞳、白隼の羽を生やし、魔導針を展開しているウィッチ、ハイデマリー・W・シュナウファー少佐が固有魔法で何かを捉える。

 

「気をつけて、何が出てくるか分からないわ。別の基地から、戦闘機隊が先行しているはず」

「ペテルブルグでは大型ネウロイ以上の大物、トブルクだとウィッチの攻撃しか効かない奴だったな!」

「そうだよ! こっちのデータベースにも存在してない敵だよ!」

 

 ミーナの警告にバルクホルンが確認し、ストラーフが肯定する。

 

「確かに前は色んなのと戦ったね~。でっかいエビとか機械仕掛けの神様とか」

「話には聞いてましたが、私達で対処可能なんでしょうか?」

 

 ハルトマンが色々思い出すのを聞いたハイデマリーが、不安を口にする。

 

「! 先行していた戦闘機隊が接触した模様! これは交戦しています!」

「通信繋がる!?」

「ちょっと電波状況悪い、ボクが中継する!」

 

 ハイデマリーの報告にミーナの顔が険しくなる。

 ストラーフが電波を拾ってそれをウィッチ達の魔導通信機へと繋げる。

 

「こちらサントロン基地ウィッチ隊! 先行の戦闘機隊、聞こえますか!?」

『こちらカールスラント第32飛行隊! 元501ウィッチか! すぐに来てくれ! あれは、ネウロイじゃない! なんなんだアレは!』

 

 聞こえてきた通信に、四人のウィッチと一体の武装神姫の顔が同時に険しくなる。

 

「詳しく教えて! 敵の特徴は!?」

『それが、まるで見た事が無い! 生物、いやあれはまるで機械仕掛けの幻獣のようだ!』

「機械仕掛けの幻獣?」

「何それ?」

 

 さらなる報告に、バルクホルンもハルトマンも首を傾げる。

 

「すぐに分かるわ。総員戦闘準備!」

「目標、すぐそこです!」

 

 ミーナの指示に全員が銃の安全装置を外し、ハイデマリーが叫んだ通り、視界に何かと戦っているレシプロ戦闘機が見えてくる。

 

「敵は地上、陸戦型か!」

 

 バルクホルンが叫んだ時、地上から無数の何かが高速で伸びてくる。

 

「何アレ?」

「こちらにも来ます!」

 

 ハルトマンが目をしばたかせるが、ハイデマリーの警告通り、真下から伸びてきたそれ、金属の触手のような物をミーナとハルトマンはかわし、バルクホルンはシールドで受け止める。

 

「く、かなりのパワーだ!」

「敵は複数います!」

「こちらでも確認するわ!」

「見つけた!」

 

 シールドに重く響く衝撃にバルクホルンは顔をしかめるが、ハイデマリーの指摘にミーナは己の固有魔法の空間把握を発動させるが、そこでハルトマンは鬱蒼と生える木々の影にいる敵を確認する。

 

「何だあれは………」

 

 それは、虫のような顔に直立歩行する四肢を持ち、金属の光沢を持った奇怪な存在だった。

 

「あんなのは前見なかったよね?」

「ああ、だが敵なのは間違いない!」

「待って!」

 

 ハルトマンが首を傾げる中、バルクホルンが銃口を向けるが、ミーナが慌てて制止する。

 

「これは、生体反応あり!」

「あれの足元に、人がいるわ!」

「何だと!?」

 

 ハイデマリーもミーナの言わんとする事を察し、バルクホルンは慌てて銃口を上げる。

 

「ここはネウロイとの勢力圏の境界だよ!? なんで人が…」

「いや………」

 

 バルクホルンは木々の間にいるローブのような物を着た人影を見つけるが、その人影が手に何か光る物を手に、こちらを指さした瞬間、金属の怪物から触手が一斉にこちらへと向かってくる。

 

「そういう事か!」

「見えたよ! あの怪物、人が操ってる!」

「何ですって!?」

 

 バルクホルンに続けて、ストラーフがそれに気付き、ミーナが愕然とする。

 

「ミーナどうするの!?」

「こちらウィッチ隊! 下に人がいます! あの怪物は人が制御している模様! 攻撃の中断を…」

 

 ミーナが交戦している戦闘機隊に通信で呼びかけるが、そこで木々の間から飛び立った、今度はハチのような怪物が次々と戦闘機を落としていく。

 

「ああっ!」

「ミーナ、人が操っていてもアレは敵だ!」

「………周囲にいる人達に当てないように応戦!」

「ええ~?」

 

 ハイデマリーの悲鳴に、バルクホルンが叫びながら銃口を向け、ミーナの指示にハルトマンが思わず声を上げる。

 

「それしかない! 上空は私とハルトマンで抑える!」

「地上は私とハイデマリーさんで! ストラーフは…」

「ボクなら掻い潜れる! なんとかその人達を説得してくる!」

 

 ウィッチが二手に分かれる中、ストラーフはその小さな体を活かし、一気に地表へと急降下し、人影のそばに近付く。

 

「ちょっとそこの人! 攻撃を止めて! なんでいきなり…」

 

 間近まで近寄った所で説得を試みたストラーフだったが、そこで急停止する。

 

「おのれ………オノレ………オトメが………」

 

 それは手に紫色のクリスタルのような物を持ったローブ姿の男性だったが、その目は血走り、うつろな声で呟いている。

 何より、その頭部と胸、ローブの一部が切り裂かれ心臓に当たる所にオーブのような物が埋め込まれ、マトモな状態では無いのは一目瞭然だった。

 

「何これ………脳波が………」

 

 ストラーフは自分のセンサーで相手の状態を確認し、その男性の状態をチェックして呆然とするしかなかった。

 

「攻撃を止めてって、言ってるだろ!」

 

 一か八か、出力を最小限にしぼってモデルPHCハンドガン・ヴズルイフを発射。

 放たれた銃弾は男性の頬をかすめるが、傷口から僅かに血が流れだしても動揺の色すら浮かべず、その視線はストラーフの方を向かずに上空のウィッチ達に向けられたままだった。

 

「やっぱり反応無し……マスター………人の方は気にしなくていいみたい………」

『どういう事!?』

「脳と心臓が………外部制御されてる………この人、もう死んでる!」

『何ですって!? でも確かに生体反応が!』

「だから、機械で強引に動かされてる! 機械仕掛けのゾンビ制御装置なんだよ!」

『な………』

『死人を制御装置にしているだと!?』

『ウソ!?』

『そんな………』

 

 ウィッチ達の絶句が聞こえてくる中、ストラーフは恐らくその改造が、相手が生きている内に施された物らしい事にも気付いていたが、あえてそれは黙っておく。

 

『こちら第32飛行隊! ダメだ、一度撤退する!』

「り、了解! あとは任せてください!」

 

 損害が無視出来ないレベルになってきて戦闘機隊が撤退を決断、後を請け負ったミーナが口元を引き締める。

 

「総員、敵怪物を全力撃破! 詳細は後で調査するわ!」

『了解!』

 

 ミーナの出した決断に、全員が返答。

 機械の怪物達と、ウィッチ達の死闘が始まる。

 

「こいつら、ナノマシンの集合体だよ!」

「ワームと似たような存在ね。制御方法以外は」

「来ます!」

 

 ストラーフからの報告を聞きつつ木々の間から次々伸びてくる触手をかわし、掻い潜り、ミーナとハイデマリーは銃撃を開始。

 ミーナが触手の間をすり抜けるように飛び込むと、怪物の頭部にMG42機関銃の銃撃を的確に叩き込む。

 頭部の一部が粉砕された怪物だったが、すぐに再生が始まる。

 

「こういう所までワームと似てるようね。半端な攻撃は効果が薄いわ」

「だったらこちらで!」

 

 ミーナの言葉を聞いたハイデマリーは、己の背丈ほどあるMG151/20機関砲を構え、そこから戦闘機の機銃にすら使われる20mm砲弾を速射、流石にこれは効いたのか、怪物の体が大きくえぐられていく。

 

「合わせて!」

「はい!」

「ボクも行くよ~!」

 

 二人のウィッチの銃撃が同時に放たれ、それに合わせてストラーフもシュラム・RvGNDランチャーを発射する。

 三種の銃撃の応酬に怪物はとうとう限界に達し、突然粉々に粉砕して消えていく。

 

「撃破確認!」

「次に行くわよ!」

「はい!」

 

 即座に次の敵へと向かうミーナとハイデマリーだったが、そこでハイデマリーはある事に気付く。

 

(あれ、確かあそこに………)

 

 先程まで有ったはずの生体反応が消えている事に、ハイデマリーは違和感を感じるが、別の怪物の攻撃の前に考えを一時中断して回避に専念する。

 

(射線からは外れていたはず、どうして?)

 

 その疑問の残酷な答えは、すぐに分かる事になった。

 

「来るぞハルトマン」

「分かってる~」

 

 ハチのような怪物が驚異的な速度で襲いかかってくるのを、バルクホルンとハルトマンは高速機動でかわし、すれ違いざまに銃撃を叩き込んでいく。

 

「かなり速いぞ!」

「ハチは前いなかったな~、魚介類はいたけど」

 

 相手との速度差を実感しつつ、二人は一度背中合わせになる。

 

「コアのような物は無いのか?」

「あっても、この速度差じゃね~」

「なら、どうする」

「簡単!」

 

 ハルトマンはそう言うや否や、向かってくる怪物へと逆にこちらから突っ込んでいく。

 

「シュツルム!」

 

 そこでハルトマンは固有魔法の疾風を発動、彼女の周囲をエーテルの竜巻が発生し、そのまま怪物と激突。

 相手を大きくえぐりながらすれ違い、限界に達したのか怪物はそのまま崩壊して霧散する。

 

「まずは一つ!」

「そうだな、向こうが向かってくるのなら!」

 

 それを見たバルクホルンは、両手のMG42機関銃を突然逆にし、銃身を手に持つと、それを向かってきた怪物へと叩きつける。

 彼女の固有魔法、怪力が付与された機関銃による打撃に、怪物は半身を大きくひしゃげさせ、更にそこへ再度持ち替えて放たれた銃撃でダメ押しされ崩壊していく。

 

「次々行くぞ!」

「もちろん!」

 

 501の二人のトップエース達は、笑みを浮かべて次の目標に狙いを定めた。

 

「これは………」

 

 敵が大分減った所で、ハイデマリーは先程からの感覚が間違ってない事を悟る。

 

「ミーナ中佐! おかしいです! 生体反応が、次々消えてます!」

「どういう事!?」

 

 幾ら死んでいるとは言われても、動いている人間を巻き込まないように戦っているはずなのに、反応が消えていく事をミーナも固有魔法で確認した。

 

「何か、何かおかしいよ!?」

「一体何が…」

「それで、最後だ!」

 

 ストラーフも異常を訴える中、上空の敵を粗方片付けたバルクホルンが、急降下しながら、残った最後の陸戦タイプにありったけの魔法力と共に銃弾を叩き込む。

 上空からの弾幕の直撃に、限界に達した陸戦タイプの怪物が崩壊を始めるが、そこでそばにいる人影も悶え苦しみ始める。

 

「何が………」

「あれを!」

 

 ハイデマリーが思わず指差す。

 その先には、怪物同様、全身を光の粒子のようになりながら消えていく男の姿が有った。

 

「な………」

「消えてくよ!?」

 

 それを見たバルクホルンもハルトマンも絶句するが、ミーナがストラーフと共に消えていく男の方へと向かっていく。

 

「い、一体何が起きて………」

「オノレ………ガルデローベのオトメ………」

 

 最後にそれだけ言うと、男の姿が完全に消え去り、後に残った紫のクリスタルも跡形もなく砕け散る。

 

「消えた………何も残さず………」

「制御装置なんかじゃない。完全な一体型ナノマシン兵器………制御者は、使用する兵器と運命を共にするんだ………」

 

 ストラーフが辿り着いた仮説に、ミーナの頬を冷たい汗が滴り落ちる。

 

「そ、それじゃあ私達があの人達を…」

「いや、心臓も脳も外部から動かされていた。あれを制御するためだけに、改造されて人間ですらない物になってたんだ………」

 

 自分達が謎のナノマシン兵器の制御者達を殺してしまったかと愕然とするハイデマリーだったが、ストラーフはそれを訂正する。

 

「つまり、あれは人をただの制御装置にして動いているのか!?」

「分からない………人体改造の方は後天的にした物かも」

「………JAM」

「多分ね」

 

 つい先日聞いたばかりの、新たな敵の名を呟くミーナに、ストラーフは頷く。

 

「ストラーフ、戦闘データを全ての武装神姫に送って。同様の敵が確認されてないかも」

「OKマスター」

「落とされた戦闘機のパイロットの生存を今確認します」

「コックピットを正確に狙っていた。恐らく生存者は………」

「随分陰険な攻撃してきたね」

 

 ハイデマリーが周辺を探索するが、バルクホルンは小さく首を左右に振り、ハルトマンも小さく頷く。

 

「また、始まるんだな。幾つもの世界をまたいだ戦いが」

「ええ」

「え~、めんどくさい」

「言ってる場合か!」

 

 呟いたバルクホルンの言葉にミーナが頷き、呑気な返答をしたハルトマンが小突かれる。

 

「軍令本部には、どう報告すれば?」

「ありのままを報告するしかないわね。ガランド少将に直に報告する必要も…」

 

 ハイデマリーの問いに答えつつ、ミーナはふと空を見る。

 

(そちらでは、今何が起きているの、美緒………)

 

 

 

AD1929 太平洋 東方帝都・IS合併校 通称・学園 停泊中蒼き鋼旗艦 イ・401

 

「カルナから連絡、カルナダインがもう直到着するそうです」

「支援可能状況を確認、順次当たってもらってくれ」

「うお~、残弾一桁だ………」

「船体にも多少ダメージが。これは、一度帝都に戻る必要がありますね」

『ドッグなんてここに無いしね~』

 

 401のブリッジで、クルー達が事後処置に追われていた。

 

「ある意味、霧との戦いよりもずっと厄介だったな」

「クラインフィールドも無しに、撃っても撃っても効かないなんてイカサマじゃねえか………」

 

 群像のぼやきに、杏平も同意する。

 

「う~ん、このレベルでもダメか~」

「零落白夜の出力をリミッター全解除でやっとだからね~、これに対処出来る武装はどうすればいいかな~」

 

 ブリッジの隅で、蒔絵と束が先程の戦闘をつぶさに解析し、深海棲艦への対処を協議していた。

 

「蒔絵、エミリーが来て欲しいそうだ。嶋少将の指示で、転移装置の設置を最大速度で行う事になったらしい」

「もうこの船で運んできた物資じゃ足りそうもないからな」

「う~ん、分かった。こっちは後でだね」

「じゃ、これはこっちで進めとくね~」

 

 ハルナとキリシマに促され、蒔絵は転移装置へと向かい、解析途中のデータを束はコピーする。

 

「私はコンゴウの所に行ってくる。タカオ、後はよろしく」

『はいはい、やり過ぎだって言っておいて』

「分かった」

「周辺海図を書き直す必要がありそうですね………」

 

 イオナは船体をタカオに預け、僧は戦闘の被害、特にコンゴウの攻撃の影響を確認して声が引きつっていた。

 ブリッジを出ていこうとしていたイオナだったが、そこで足を止めて群像の方を見る。

 

「群像、一つ提案が」

「何だ」

「実は…」

 

 

 

「ようし、そのままゆっくりだゆっくり!」

「キャリア用意しました! IS用ですけど!」

「整備スペース空き準備してます!」

 

 コンゴウの船体から降ろされた零神が、コンゴウの用意したボートで岸まで移動した後、IS学園整備科と東方帝都学園機械科の生徒達によって搬送準備が進められていく。

 

「大分傷んでますね~」

「まあメインフレームまではイってないからな、ちゃんと直せる。早く直さないと音羽に文句言われそうだし」

 

 整備科の生徒達が損傷した零神を見ながら呟くのを、固定していた僚平が笑みで答えてやる。

 

「それに、こんな損傷なら何度もしてる」

「何度も?」

「ネスト、ああオレ達が戦ってたワームの本拠地行った時は、もっとすごかったからな~」

 

 平然と言う僚平に、手伝っていた生徒達が思わず顔を見合わせ、戦歴の違いの一端を垣間見る。

 

「そっちも派手にやられてたろ、大丈夫か?」

「織斑先生から、こっちを優先させてほしいって言われてるんです。学園守備の功労者だからって」

「それ言うなら、艦娘の方やった方いいんじゃねえか?」

「それが………」

 

 

 

「これは、他の設備じゃ無理ね………」

 

 到着してすぐ、次々とトリガーハート用の整備ポッドに入っている艦娘達を見ながら、クルエルティアは呟く。

 

「つくづく、どういう仕組みになってるのかしらね?」

「艤装と呼ばれる武装と、艦娘がリンクしているのは確かだが」

 

 遅れてきたフェインティアとムルメルティアも不思議そうに見る中、ポッド内に入っている瑞鶴の足元、突貫で用意されたハンガーに置かれた艤装が、瑞鶴の治療が進むと同時に、自己修復していく。

 だが見る者が見れば、破損した艤装の周りを妖精達が忙しく動いて修理していた。

 

「吹雪さんの時も思ったのだけれど、私達と似て非なる存在なのね」

「片方直せば両方直るってのは便利でいいけど」

「そう簡単な物ではないのですが。損傷が酷いと工廠での修理が必要ですし」

 

 トリガーハート達の意見に、加賀が少し眉を潜める。

 

「ただ、入渠時間を大幅に短縮出来るのは非常に助かります」

「こちらから言わせれば、活性因子も無しに自己活性だけで直す方がおかしいのよ」

「高速修復材が有ればすぐなのですが………」

「とにかく、私達の分しかないから、あとは順番待ちね」

 

 三つしか用意されてないポッドの端、エグゼリカが入っているポッドを見ながらフェインティアは居並ぶ艦娘達に宣言する。

 

「私達は、まだそこまでひどくないから」

「コンゴウさんが援護してくれたから」

「大分海水被ったけどね………」

「でも、お陰で損傷は少ないのです」

「貴方達はまずシャワーね。躯体洗浄用でよかったら有るけど」

「あ~、でも着替えが………」

「さっきの戦闘でひっくり返ってるかも」

 

 第六駆逐隊の状態に、クルエルティアがシャワーを勧めるが、暁と響がコンゴウの船内がどうなっているか考えたくもない状況に頭を悩ませる。

 

「ご飯も食べかけだったし」

「そうなのです………やる事いっぱいなのです………」

 

 雷と電も頭を抱える中、カルナダインのコンソールがコール音を鳴らす。

 

「はいカルナダイン。あなた達によ」

 

 クルエルティアがコンソールから通信を入れると、そこに吹雪とランサメントが映し出される。

 

『へ~、これで通じるんですね』

『繋がってるぞマスター』

『あ、そうでした。こちらの学園の人達と話付きました。こちらの施設も利用していいそうです。大きいお風呂もあるそうですよ、大井さんと北上さんはもう行きました』

「おっきいお風呂!」

「行こう」

「しばらくシャワーだけだったしね」

「行くのです!」

「じゃあ行ってきなさい。私はここで入渠順番を待つわ」

 

 お風呂と聞いて喜ぶ第六駆逐隊を加賀は見送りながら、加賀は改めて現況を思案する。

 

「このカプセルみたいなの、増やせないかしら?」

「難しいわね。二つは元からだけど、もう一つは香坂財団に特注で作ってもらった物よ。この時代では作れないわ。同様のシステムなら、機械化惑星から取り寄せられるかもしれないけど、時間が掛かるわ」

「詳細はよく分からないけど、すぐには無理って事だけは分かったわ」

「用心重ねて準備しててこれだからね………今後が思いやられるわ」

 

 加賀の質問にクルエルティアが答え、加賀のため息にフェインティアも思わずぼやく。

 

「マイスター、最悪かそれに準ずる結果は出ていない。人的被害は免れた」

「問題は補給ね。例の件、どうなってるの?」

「例の件?」

 

 ムルメルティアの指摘に、フェインティアが吐息と共に腕組みし、クルエルティアが小首を傾げる。

 

「私達艦娘が使ってる艤装は、対深海棲艦用に開発された物。使用される弾薬の類もそうなのだけれど、華撃団で使用している弾薬に類似性が有るから、転用できるか調べてた最中だったの。問題は艦載機ね、あれは専用の矢に魂振を施す事で完成するのだけど、鎮守府の工廠でしか作れないわ」

「………私達と全く違う事は理解したわ」

「同じく」

 

 加賀の説明に、フェインティアはパリで聞いた説明を思い出し、ムルメルティアもあまりの性質の違いに二人そろって渋い顔をする。

 

「そう言えば面子が足りないけど」

「金剛さんなら、霧のコンゴウさんと慰労を兼ねてティーブレイクって言ってたわ」

「相当に派手にやったって聞いてるのに、ぶれないわね、彼女………」

 

 修理よりもお茶を優先させる金剛に、フェインティアは心底呆れるしかなかった。

 

 

 

「うわ~、こりゃダメだね~」

「やっぱり?」

「パイロット保護どころか、システム管理まで落ちちゃってるよ~こんなにアガっちゃってるIS初めて見たよ~」

「道理で指一本動かないわけだ………」

 

 特徴的な喋り方をする同級生が白式の状態をチェックして、完全に沈黙している事にむしろうれしそうにしているのを一夏は微妙な表情で項垂れる。

 

「あかん、完全にかんどるわ。誰かカッター!」

「早く離して………」

 

 一方、白式とドリルプリンセスを繋いでいたワイヤーをほどこうとしていたのぞみが、激しく動きすぎて緩みもしなくなったそれをほどくのを諦め、ワイヤーカッターを探す。

 セットフォームは解いた物の、ワイヤーは外れないので白式にぶら下がっているどりすが涙目で項垂れる。

 

「バッテリーとコードどこだっけ~?」

「うわ、このワイヤーどこから持ってきたんや? こいつじゃ切れへんで?」

「レーザーカッターあるよ~。間違えて一緒に切らないようにね~」

「ちょっと!?」

「あの、早めに………」

 

 あれやこれやと周りで作業をしている間に、何故か一夏とどりすの様子がおかしい事に皆が気付く。

 

「あれ、いっち~どうかした?」

「いや、あの………」

「あの、アイちゃん急いで………」

「それが固うてな。怪我でも痛むんか?」

「「トイレ………」」

 

 一夏とどりすの口から、同じ言葉が出た事で、周りで作業していた者達の動きが止まる。

 

「え~と、もうちょっとチャージしないと解除出来ないかな~」

「これ、何のワイヤーや? レーザーカッターでも切れへんのやが」

「あの、つまり………」

「あとどれくらい?」

 

 海に落ちたまま放置され、冷えたのが原因か明らかにもぞもぞしている二人に、無情な言葉が突き刺さる。

 

「もう少し頑張って~。あ、ISスーツに吸水機能有ったよね~」

「さすがにそれはアレや。ペットボトルか携帯トイレでも用意しとき」

「さ、さすがにそれは」

「絶対いやあああぁぁ!」

 

 二人の顔が青くなり、どりすは至っては絶叫する。

 なお、白式の最緊急時用解除システムを束から聞いてきたツガルと、香坂財団製特殊超合金ワイヤーの取扱を聞いてきたマオチャオのお陰で、二人ともギリギリ間に合った。

 

 

 

 学園間近に係留されているコンゴウ、その巨体故に艀に付けられず、臨時でナノマテリアル製のラダーが伸びているのを伝い、一人+一体の来客が訪れていた。

 

「Oh、中々素敵なラウンジね」

「注文がうるさくてな。半分見様見真似だが」

「………プレクラースヌィ(素晴らしい)。そんな事はありません」

 

 先程は戦闘中で注意していなかった甲板に広がるバーベキューコンロやテーブルセットを見ながら金剛とエスパディアが感心するが、コンゴウはそれを横目で見つつ、兵装を幾つか潰して損傷箇所の修復作業を行っていた。

 

「ミストコンゴウは結構便利な艤装もってるネ」

「こいつ、物事知らなすぎるから教えるの苦労したゾ」

「何でも作れるそうだけど………」

「ナノマテリアルが補充出来なければ、他の何かを潰していく一方だがな。それらは残したおいた方がいいのか?」

 

 船内を片付けていたエイラとゴミになってしまった物をまとめていたサーニャが、甲板に顔を出しながら、ここまで揃えさせるまでの苦労を思い出す。

 

「使える物は使わないとダメね。ティーセットが無いのが残念」

「ダー、今後も必要になるかもしれません………」

「送られてきたのは、コーヒーばかりだったな」

 

 ニューヨークから送られてきていた物資を漁りながらの金剛とエスパディアの呟きに、コンゴウも同意する。

 

「やっぱリベリオン、こっちダとアメリカか。そこに物資頼むのは間違いだッテ」

「送られてきた食料、やけにお肉が多かったし」

「あと豆缶ナ」

「どこの世界もメリケンは一緒デ~ス」

「そうなのか。それと先程、ティーセットなら貸すと言っていた奴がいたが」

「レンタルしてもらうしかないネ。あとはいいお茶があればパーフェクトね」

「助けてもらったお礼に、王室御用達を用意するとも言っていた。そろそろ持ってくるかと思うが」

「楽しみね」

「ダー、オーナー………」

 

 画して皆が事後処理をしながらお茶の準備をしていた頃………

 

 

「これは、どういう事ですの………」

 

 ブルー・ティアーズの修理を整備科に任せ、功労賞の人達にせめてものお礼にお茶でも出そうと自室に戻ったセシリアは、そこにある光景に呆然としていた。

 そもそも二人部屋の明らかに半分以上を占拠しているセシリアのスペース、その見るからに豪華なチェストが強引に開けられ、中身が乱暴に取り出されている。

 幾つものカップやソーサーがひび割れ、しかもそこには、《臨時徴収 黒うさぎ隊》と書かれた紙切れが一枚貼り付けられていた。

 しばらく茫然自失としてセシリアが、ようやく復活して携帯電話を取り出し、大急ぎで連絡を入れる。

 

『こちらボー…』

「ラウラさん! 私のティーセット、何に使いましたの!?」

 

 相手が名乗るよりも早く、セシリアの怒声が通話口に響く。

 

『ティーセット? 何の事だ?』

「しらばっくれないでください! 私のチェストに、黒うさぎ隊と書かれた札がしっかり貼られてますわ!」

『ああ、ちょっと待ってくれ。お~いクラリッサ、ちょっと話が』

 

 電話口の向こうで何かを話し合ってるらしいラウラに苛立ちをつのらせつつ、セシリアは震える手で携帯を握り締める。

 

『セシリア、件のティーセットだが』

「どこにありますの!?」

『深海棲艦に撃ち込んだので無いそうだ』

「………は?」

 

 予想外の返答に、セシリアが思わず間の抜けた声を漏らす。

 数秒の間の後、幾つかの情報を突き合わせ、セシリアはある可能性に辿り着く。

 紛失している自分の銀のティーセット一式と、対深海棲艦用に作られたという銀皮膜の弾丸の関連に。

 

「あれ、私のティーセットでしたの!?」

『ああ、他に心当たりが無かったようでな』

「何て事しますの!? アーサープライズの特注品ですのよ!」

『ご、ゴメン! 教えたのボク………』

「シャルロットさんが元凶ですのね!?」

 

 電話口に増えた声に、セシリアの怒りが更に高まる。

 

『さすが高級品だな、効果は確かに有った。また徴収させてもらうかもしれん』

「根こそぎ持っていってまだ言いますの!? 後できっちり弁償してもらいますわ!」

『無論だ、部下の責任は隊長である私が取ろう』

「もう少し部下の教育を徹底してくださいまし!」

 

 憤怒のまま電話を切ったセシリアだったが、なんとか荒い鼻息を抑え、残ったティーセットを集め始める。

 

「まったく、これだから軍人は………けど、あの特製弾丸が無かったら………」

 

 つい先程までの深海棲艦の戦闘を思いだしたセシリアだったが、そこで手にしたティーカップが小刻みな音を立てているのに気付く。

 そしてそれは、自分の手が震えているという事にも。

 思わずもう片方の手で震える手を抑えようとして、ソーサーから滑り落ちたティーカップが床にぶつかり、砕け散る。

 

「い、いけません。私とした事が………」

 

 慌てて破片を片付け始めるセシリアだったが、その震えの意味を知るのに時間は掛からなかった。

 

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