第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP44

「行くよ~!」

「来るぞ!」

 

 草原エリアで激突したユナ率いる光の戦士チームと、あかり率いるパンツァーチームが激戦を繰り広げていた。

 

「ポイズン・ニードル!」「子守唄!」

「させるか!」「させません!」

 

お花のマリとヴァイオリンのアレフチーナが放つニードルと音波攻撃を、のずるの突風とサイコの音波障壁が迎え撃つ。

 

「また弾かれたわよ!」

「まさか、こういう手で来るとはね………」

 

 六本木の舞が思わず怒鳴り、ポリリーナが目前にある物にある種感心していた。

 パンツァーチームのベースの目前、試合開始と同時に各自のアームで突貫で構築された防壁や塹壕を盾に、防衛戦に専念するパンツァーチームに。

 

「必要以上に前に出ないで! 相手が勝手に来てくれるわ!」

 

 ランキングからパンツァーチームのリーダーに就任したあかりの指示に従い、パンツァー達は防衛陣から積極的に出ようとはせず、光の戦士達も攻めあぐねていた。

 

「考えたわね。チームワークの不備を防衛戦に徹する事で補うとは」

 

 こちらが突出すれば即座にそこに攻撃を集中させる、消極的ながらも効果的な戦術にポリリーナも関心していた。

 

「そして…」

 

 ポリリーナの視線が横へと向けられる。

 防衛陣に入らず、遊軍としてこちらの戦列をかき回している二人に。

 

「てりゃああぁぁ!」

「また来たアル!」

「正面に立っちゃダメ! とんでもない突破力してる!」

 

 カイザードリルを旋回させながら、ホバー全開で突っ込んでくるどりすに、光の戦士達は慌てて左右に散る。

 

「そこだ!」

 

 陣形が乱れた所にねじるが突っ込んでいき、そこへパンツァー達の援護攻撃が放たれる。

 

「ネックはあのドリル使いコンビ、特にプリンセスね」

「なんかドリルって痛そうだよね~」

 

 ポリリーナが陣形を撹乱しまくるドリルコンビに留意するが、ユナは率直な感想を口にする。

 

「私がプリンセスの相手をするわ。マリ、麗美! 牙王さんを牽制! 他のみんなは防衛陣を狙って!」

 

 ポリリーナが指示を出しながら、バッキンビューを繰り出す。

 繰り出されたビームリボンをどりすはカイザードリルの一閃で弾き飛ばした。

 

(やはりあのドリル、とんでもない威力………)

「今度はこっちから行くよ!」

 

 一気に間合いを詰めながら、どりすはカイザードリルの連撃を繰り出し、ポリリーナはパッキンボーでそれをなんとか防ぐ。

 

(一発一発が重く、そして速い! 見た目とえらい違いね)

(変な格好してるけど、反応が速い! 全部防がれてる!)

 

 互いに相手を強敵と認識した双方は、一度互いに背後に跳んで距離を取る。

 

「よ~し、それじゃあ!」

 

 どりすは懐からブリッド(※NORN技術班試作型)を取り出し、カイザードリルにセットする。

 

(まずい!)

 

 ブリッド使用時の威力を試合で見ていたポリリーナは一気に警戒度を高めるが、それを見た他のパンツァー達も次々と自分のツールにブリッド(※こちらも試作型)をセットしていく。

 

「やばいわよ!」

「総員防御!」

 

 舞が慌てふためく中、ポリリーナの指示が飛ぶが、そこへブリッド使用のパンツァー達の必殺技が炸裂する。

 

「よおし!」

「いや待て!」

 

 ガッツポーズするどりすだったが、ねじるが即座にそれを静止。

 直後、必殺技の炸裂で巻き上がった土埃から複数の遠距離攻撃が飛んでくる。

 

「うわぁ!」

「ちっ!」

 

 それらをかわしたどりすとねじるは、晴れていく土煙の向こうでフォーメーションを組んで防御している光の戦士達の姿に気付く。

 

「そう来んのは知ってたからね」

「受け止められるかはちょっと疑問でしたけど」

「何とかなったわね」

 

 前衛に舞が立ち、爆光球の電撃を中心としてかえで、葉子の電撃とエネルギーシールで構成された電撃複合シールドでブリッド使用必殺技をなんとか光の戦士達はしのぎ切る。

 

 

「そうくるの!?」

「やっぱチーム戦に慣れてる連中は違うか!」

「今度はこっちの番! 行っちゃえユーリィ!」

「行くですぅ!」

 

 防衛フォーメーションの影から、ユーリィが両手を旋回させながらパンツァーの防衛陣へと突っ込んでいく。

 

「気をつけろ! そいつアンドロイドだ!」

「ええっ!?」

「させないわよ!」

 

 ねじるが警告する中、ユーリィの突撃を止めようとはさみが防壁から飛び出し、大型シザーをユーリィへと振るうが、双方がぶつかった瞬間、圧倒的過ぎる腕力差にはさみはいとも簡単に吹っ飛ばされる。

 砕けた重甲の破片を撒き散らし、軽々と飛ばされていくはさみに ダメージから撃墜判定がなされ、審判フラッグを付けているミサキがコール音を確認する。

 

「きゃあぁあ!」

「はさみ!」

「なんて怪力なの!?一発であんだけのダメージなんて!」

「防壁が耐えられないぞ!」

「私が止めるわ」

「急いで、あかり!うわ、きたぁ!」

 

 重甲をまとったパンツァーをまるでボールのように弾き飛ばしたユーリィにパンツァー達が戦慄する中、ユーリィが防壁へと振り回した腕を叩きつけようとした瞬間、その動きが止まる。

 

「………え?」

 

 ツールを構えていたパンツァー達が予想外の事に思わずこちらの手も止まるが、次にはもっと予想外の事が起きた。

 

「ユーリィお腹空いたですぅ~………」

 

 アンドロイドのはずなのに腹から乾いた音を立てたユーリィが、その場にへたり込む。

 

「ちょっとユーリィ! 試合の前に用意してたみんなの分のおにぎり全部一人で食べてたでしょ!」

「ユナさ~ん、でもお腹空いたですぅ!」

「え~と………」

 

 パンツァー達が絶句し、光の戦士達はある者は赤面し、ある者は呆れてうつむく。

 

「何あれ?」

「そういや、すげえ燃費悪ぃって聞いたな………」

 

 どりすとねじるも呆気に取られ、皆がリアクションに困る。

 

「ユーリィ、真面目にやりなさい。警告よ」

「お腹すいてるのはどうにもならないですぅ!」

 

 ミサキが警告するが、逆にユーリィが抗議(?)してくる。

 

「その、食べる?」

「ありがとうですぅ!」

 

 判断に困ったあかりが、懐から入れておいたチョコバーを差し出すと、ユーリィは嬉々として受け取ると即座に開封していかにも美味しそうにかじり始める。

 

「………とりあえず、ほっといて続けるか」

「………そうね」

 

 ねじるとポリリーナの意見が一致した所で、双方は再度試合を再開した。

 

 

 

「後方から新手」

「どうやら、大混戦になりそうだな」

「もうなってるわよ!」

 

 イオナが迫ってくる一団に反応し、幻夢がほくそ笑むがそこへヒュウガが怒鳴ってくる。

 

「行くわよ、エリカ7!」

『はい、エリカ様!』

 

 光の戦士から分隊した香坂 エリカ率いるエリカ7が、蒼き鋼・妖機三姉妹合同チームへと襲いかかる。

 

『大変な事になってきました! 砂漠エリアの戦いは三つ巴から四つ巴に! 凄まじい混戦になっています!』

 

 実況のたくみの声をかき消すように、砲声や斬撃、特殊能力が飛び交いまくる。

 

「シャーロット! 魔導榴弾(※模擬戦用)、メンタルモデル中央に!」

「了解、撃ちます!」

 

 試作重戦車ストライカーユニット6号「ティーガー」に乗ったシャーロットが、同乗しているフレデリカの指示で88mm砲弾を発射。

 

「フィールド密集」

「来るぞ!」

 

 イオナの指示でメンタルモデル達がフィールドを重ね、幻夢の声とほぼ同時に着弾、凄まじい爆煙が上がる。

 

「ダメージを処理しきれない!」

「やはり、物理的フィールドは生体エネルギーと相性が悪いようですね。模擬弾でこれとは」

 

 ハルナが砲撃を防ぎきれず、ダメージが少し来ている事に苦悶するが、狂花は冷静に状況を判断していた。

 

「となると………」

「行くぜ!」

 

 そこへエリカ7のハイスピード・セリカがバトルスーツを変形させ、カート状態で突っ込んでくる。

 

「こっちも来た」

「じゃあこれで!」

 

 イオナが対処する前に亜弥乎がそちらに出ると地面に手を付き、地下に有るパイプラインを制御、誘導して臨時のバリケードにする。

 

「おわっ!」

 

 セリカが慌ててハンドルを切った所に、ケーブルが次々と襲いかかる。

 

「何のっ!」

「これくらい!」

 

 そこへ闘魂のマミとストライカー・ルイがケーブルを蹴ってバリケードを突破して強襲しようとするが、バリケードの向こうではコンゴウがフィールドの大剣を用意して待ち構えていた。

 

「前が防がれれば、上から来るか」

「そうだ」

「え…」「あ…」

 

 コンゴウと幻夢が頷きつつ、フィールドの大剣の横薙ぎで二人はあっさり弾き飛ばされる。

 

「うわっ!」「だあっ!」

「エリカ様、どうやらかなり出来るようです」

「妖機三姉妹がついてるのは痛いわね………」

 

 攻めあぐねている事に氷のミドリが進言するのを香坂 エリカは指を噛む中、いきなり頭上に手をかざし、そこにサイコキネシスで周辺の砂を収束。

 直後に飛来したペイント弾が砂の防壁に阻まれる。

 

「ふん、意外と勘がいいようだ」

「そのようです」

 

 両者の隙を狙って上空から迫ったマルセイユだったが、気づかれていた事に舌打ちしつうライーサと一時離れる。

 

「混戦のようで、どこも警戒だけはきっちりしてるな」

「こちらの陸戦隊、押され始めてます」

「ならば押し返すまでだ。狙うべきは…」

 

マルセイユは上空から見ても完全な混戦状態となっている中で一際目立つ、双刀を振るう白い霊子甲冑へと狙いをつける。

 

「一番の大物だ! 行くぞライーサ!」

「はい!」

 

 狙いを大神機へと定めたマルセイユは上空から一気に急降下を開始した。

 

「む!」

「狙われてるで大神はん!」

 

 上空から響くエンジン音に大神はそちらを見る中、後方で援護にあたっていた紅蘭が警告しながら、己の機体の両肩から蒸気ランチャーを発射する。

 放たれた誘導弾が急降下する二人のウィッチを狙うが、ウィッチならではの機敏な空中回避を追尾しきれず、明後日の方向へと飛んでいってしまう。

 

「もらった!」

 

 必殺と思われる距離まで近付いたマルセイユはトリガーを引くが、放たれたペイント弾が命中する瞬間、大神機が僅かに動き、ペイント弾は狙いをそれて地面に命中する。

 

「そんな、大尉がこの距離で!?」

「上昇だ!」

 

 背後のライーサが驚く中、マルセイユは体を引き起こし、ライーサもそれに続こうとする。

 だがそこで、マルセイユの視界の片隅に何かが見えた。

 それが飛来する何かだと気付いた時、飛来したそれはライーサのストライカーユニットを直撃する。

 

「きゃああぁ!」

「ライーサ!」

 

 思わず後ろを振り返ったマルセイユだったが、片足のストライカーユニットを弾き飛ばされ、ライーサは完全にバランスを失って錐揉み状態になる。

 

「今だ!」

「はい!」

 

 そこに大神の声が響き、非常時のために待機していたソニックダイバーレスキュー隊が飛び出し、ネットを広げてライーサを受け止める。

 

「回収しました! 無事です!」

「面倒かけたね! そのまま退避させてくれ!」

 

 大神の指示に従い、ソニックダイバーレスキュー隊はネットごと撃墜判定となったライーサを退避させていく。

 無事を確認したマルセイユは胸をなでおろすが、そこで先程ライーサを襲った物、大神機の鞘が地面へと突き刺さった事で全てを悟る。

 

(急降下後の引き起こしの瞬間を狙った、いや狙っていた! きっちり回収準備までさせておいて!)

 

 全て大神の狙い通りだった事に、マルセイユは相手の危険度を引き上げる。

 

『マルセイユ!』

「ケイか、ライーサがやられた」

『見てたわ! 注意して! さっきの銃撃、歩法で間合いを狂わされてる! 大神司令は剣士としても超一級よ!』

「どうやらそのようだ」

 

 後方で見ていた圭子からの警告に、マルセイユは上空をロールしながら隙を伺う。

 

(こんな戦い方する奴とは初めてだ。ネウロイは戦術は使うようになったが、純粋な技は使わないからな)

 

 かなりの難敵と判断したマルセイユはロールから上昇、先程より高度を取ってから、急降下を開始する。

 

「来る!」

 

 マルセイユが再度こちらを狙っている事に大神も双刀を構え、待ち受ける。

 その様子を遠目で観察していた圭子だったが、ある違和感に気付いていた。

 

(双刀を大上段に構えた? 上空から来る敵に?)

 

 双刀を機体の頭上で交差させて構える大神に、幾人もの剣術使いのウィッチを見てきた圭子は首を傾げる。

 

「あれで、上空からどうやって………あれじゃまるで………!?」

 

 実戦でもそう出さないほどの速度で大神機に迫るマルセイユに、大上段に構えたままの大神が何を狙っているか悟った圭子は次の瞬間叫んでいた。

 

「危ないティナ!」

「!?」

 

 文字通り必殺の距離と速度で迫り、トリガーを引こうとしていたマルセイユは、滅多に呼ばれないファーストネームで圭子が呼んだ事にとっさに攻撃を中断して体をひねる。

 

「狼虎滅却・天地神明!!」

 

 そこへ大神の霊力がこもった双刀の斬撃が、機体の正面の地面へと叩き込まれる。

 斬撃は霊力と共に大量の砂を一気に上空へと巻き上げ、急降下していたマルセイユを襲った。

 

「な…!」

 

 予想外の攻撃に、マルセイユは体をさらに捻りながらシールドを発生、真正面から砂へと突っ込むのをなんとか回避する。

 

「あ、危なかった………」

 

 実戦でもほとんどかいた事のない冷や汗が湧いてくるのを感じながら、マルセイユは体勢を立て直す。

 

(ケイが警告してくれなかったら、まともに突っ込んでいた! 模擬戦だから加減はしていたかもしれないが、それでもただではすまなかったはず………)

 

 予想外の対空攻撃に、マルセイユは大神機から距離を取る。

 

「認めざるをえないか………今ここで空で最強は私だろうが、地面で最強はあいつだ」

 

 大神の実力を改めて認識したマルセイユは一度体制を立て直すべく、圭子達と合流しに向かった。

 

 

 

同時刻 永遠のプリンセス号内の一室

 

「大分明確になってきたな」

 

 門脇の言葉通り、各所で行われている模擬戦闘は終盤へと差し掛かり、かなりの数の者達が撃墜判定で離脱していた。

 

「やはり、実戦経験の差は大きいか」

「こちらも何とかがんばってはいますけど」

 

 千冬が専用機持ち達の散々たる有様に嘆息し、どりあは防戦一方でなんとか凌いでいるパンツァー達を見る。

 

「純粋に戦闘だけでなく、補給や後退も考慮出来るかどうかが問題だな」

「その辺も経験だね。次の作戦で考慮しとく必要がある」

 

 群像が防戦になりつつあるメンタルモデル達を見て呟き、サニーサイドも一度撤退して体勢を立て直している紐育華撃団を見て頷く。

 

「今までは守りの戦いばかりでしたが、JAM相手にどう攻めるか、そこが一番の問題です」

「情報が少なすぎる。もう少し集められないだろうか?」

「だが下手に動けば勘付かれる可能性が高い」

「しかし相手の戦力も不明では」

 

 エルナーが中心となって対抗戦の様子を参考に作戦が練られるが、やはり決定的な情報が不足していた。

 

「段階を踏まえて、複数の作戦を立案しておくしかありませんね。香坂財団で製造中の艦載型の空間転移装置さえ完成すれば、戦力の逐次投入は可能です」

「そうなると、母艦の用意が必要になるか」

「現状使える母艦のペイロードは?」

「短期作戦とすれば、物資を減らせば…」

「問題は母艦その物の性能差をどう埋めるか」

 

 画面の向こうに劣らない白熱した議論が続く中、残り時間は30分を切ろうとしていた。

 

 

 

『とうとう残り時間は30分を切りました! どの組織も奮戦していますが、明暗は別れてきています! 果たして最後に残るのはどのチームか!?』

 

 つばさの実況に、会場ではどこも焦りを覚えていた。

 

「もうそんな時間か!」

「また来られたらまずいです!」

 

 背中合わせの状態になった箒と簪は、その状態でもがく。

 ソニックダイバー隊がナノスキン限界のための撤退間際に放った新兵器から逃れようと。

 

「まさか奥の手がトリモチとは………」

「おそらく特殊硬化樹脂です! 何が混ぜられているかまでは不明ですが、ISも解除できませんし………」

(対IS用の無効化兵器、こんな物が作れるとしたら一人しかいない!)

 

 紅椿と打鉄弐式、双方が背中合わせのまま奇妙な樹脂でくっついているという絵的にかなりアレの状態のまま、ソニックダイバー隊の二度目の攻撃はなんとか防ぎきったが、次には耐えられないだろう事、そしてそれを作ったであろう人物に箒は心当たりが有る中、二人は焦っていた。

 

(絢爛舞踏の出力ならば脱出出来るかもしれないが、今の私にはまだ…)

「大変です! シャルロットさんにも撃墜判定が出ました!」

「何!? ラウラ、そちらはどうなっている!」

『すまない、ウィッチの特殊能力は予想以上だ! 包囲から脱出しようとしたら、電撃にやられた!』

「電撃?」

『ISと比較しても遜色の無い戦闘力の持ち主ばかりだ! 私もあとどれくらい持たせられるか分からない!』

「まずいぞ、このままじゃ全滅する!」

「さ、さすがにそれは!」

 

 リーダーである一夏がいの一番にやられ、残った者も半数になってしまった事に二人はひどく焦り始める。

 

「仕方ない、あまりやりたくはなかったが………」

「何か手が?」

「生体防護を最大に設定しろ! 外したら危ない!」

「え?」

 

 言うやいなや、箒は紅椿の残っていたエネルギーの半数近くを手にした大刀・空割を上空へと投げる。

 

「まさか…」

「そのまさかだ!」

 

 上空に投げられた空割が回転しながら落ちてくるのに合わせ、両機は位置を調整、大量のエネルギーが込められた刃が、刃の回転軌道上に有った樹脂を斬り裂きながら落下、地面へと突き刺さって止まる。

 

「ちょっと怖かったです………」

「すまない、他に思いつかなかった………」

 

 少しでも外したら機体、もしくは搭乗者を斬りかねない脱出方法に、簪は冷や汗をかく。

 

「細かい所は後だ! ラウラの救援に向かうぞ!」

「ソニックダイバー隊接近中! 急ぎましょう!」

 

 最後まで頑張るべく、二人はラウラの元へと向かっていった。

 

 

 

「また来るよ!」

「やはりツヴァイのオリジナル…」

 

 高空を編隊を組んで飛ぶ二人の戦闘妖精、茶髪のウェーブが入ったショートヘアの量産試作機・〈ファーン1〉と黄緑色のロングヘアにインカムを装備した同じく量産試作機・〈ファーン2〉は自分達が追い詰められているのを感じ、焦り始める。

 

「右!」

「分かってる」

 

 二人の戦闘妖精は同時に機銃を反応のあった方向に向けて弾幕を張るが、目標は驚異的な機動で弾幕を難なくかわす。

 

「かわされた!」

「ミサイルを」

 

 なんとか接近を阻もうと二人はミサイルを放つが、それはレーザーの一閃で撃墜される。

 

「それで終わり?」

 

 二人を追っていた者、フェインティアは笑みを浮かべると一気に加速する。

 

「まだ加速する!?」

「ブレイク」

 

 とっさにファーン1とファーン2は左右に分かれるが、直後にファーン1は回避した方向にある反応に気付く。

 

「え?」

 

 回避した方向にあった物、フェインティアが遠隔操作した随伴艦の姿にファーン1が声を漏らした時、放たれたアンカーがファーン1を捉える。

 

「きゃあ!」

「ファーン1!」

 

 思わずそちらを見たファーン2だったが、直後にフェインティアの放ったレーザー(模擬戦出力)を食らい、二人共撃墜判定される。

 

「くそ~………」

「残念」

「あんたら、性能差有り過ぎよ。メイヴって子は結構できるようだけど」

 

 悔しがる戦闘妖精を前に、ホバリング状態のフェインティアは啖呵を切りつつ、まだ交戦しているメイヴとエグゼリカの方を見る。

 

「あんな奴と一緒にしないで」

「あの子は特別」

「前も聞いたわねそれ」

 

 二人揃って断言する事に、フェインティアは首を傾げる。

 

「聞いてない? 私達戦闘妖精は戦闘知性体・雪風のデータを一部移植されている」

「けどあの子は違う」

「ツヴァイや他からもたらされた技術を投入して作られた最新型の彼女にも同様の処置が行われるはずだった」

「けど、違った」

「メイヴにデータ移植中、それまでずっとスリープ状態だった戦闘知性体・雪風がフル起動、全データを彼女へと移動させ始めた」

「似たような事は前にもあったらしい」

「あらゆる制御を受け付けず、雪風は自分の持っている全てのデータをメイヴに移動させた後、完全にダウンした」

「そしてあの子は目覚めた」

「あの子は雪風の全てを受け継いだ、唯一の戦闘妖精」

「つまり、三代目の雪風」

「彼女のパーソナルは私達のようにプログラミングされた物じゃない」

「彼女のパーソナルは雪風その物」

「だから私達とは似て非なる存在よ」

「………なるほどね。どんな経験積んだらあんなずれたパーソナルになるんだか」

 

 二人の戦闘妖精から聞いたメイヴの正体に、フェインティアはある意味納得しつつ呆れる。

 

「さて、まだ時間残ってるし、どっちかの増援に行こうかしらね………それともスコアでも稼ごうかしら」

 

フェインティアが呟きつつ、他のトリガーハートの方を確認する。

 そこでふと、フェインティアは壮絶なドッグファイトをしているエグゼリカとメイヴを見て首を傾げる。

 

「何か、狙ってる?」

 

 

 

『さあ、残り時間15分を切りました! 果たしてMVPは誰の手に輝くのでしょうか!』

「ま、まずい………」

 

 興奮している由里の実況を聞いたどりすは、焦り始める。

 

『ケーキバイキングね~、行ってみたいわね~、ねえどりすちゃん?』

 

 試合前に姉から遠回しにMVPを要求されていたどりすが、思うようにスコアを上げられない事に必死になって周囲を見回す。

 

「この人達、結構強い………時間もない………だったら! フォームア…」

 

 どりすが奥の手のフォームアップを使おうとした瞬間、即座に周囲の光の戦士達がこちらに一斉攻撃を行う。

 

「うひゃあ!」

「バカ!」

 

 必死に回避するどりすに、ねじるがシールドをかざしてそれを助ける。

 

「お前の手は全部バレてるだろうが! さっきからずっとそれ警戒されてる事に気付け!」

「え? そうなの?」

「あ、そうなんだ」

 

 ねじるに怒鳴られ、どりすが間抜けな声を出すが、それを聞いたユナも今更それに気付く。

 

「なんでアレがお前らのリーダーなんだ?」

「その内分かるわ」

 

 先程から見ていても戦闘力や指揮力が突出しているとは思えないユナに、ねじるが首を傾げるがポリリーナは意味ありげに笑うだけだった。

 

「だったら、これで!」

 

 最早やけくそで、どりすは残っているブリッドを全部カイザードリルへと叩き込む。

 

「おい、何やって!」

 

それに気付いたねじるが慌てる中、ブリッドが立て続けにチャージ、空薬莢をばらまきながらカイザードリルが凄まじい猛回転を始める。

 回転が更に高まり、カイザードリルからスパークが飛び散りながら、どんどん巨大化まで始まっていく。

 

「うわ、なんかすごい事なってきちゃった!」

「あんな機能まで有るの!?」

「こっちも初めて見る! どりすそれ大丈夫なのか!?」

 

 どりすの身長よりも巨大化したカイザードリルにユナとポリリーナは驚き、ねじるも思わずたじろぐ。

 

「い~~く~~~よ~~~!」

 

 重量も増したのか、掲げるだけでふらつくどりすが、それを光の戦士達の方へと向けると、重甲のバーニアを一気に吹かす。

 

「来るわ!」

「ちょ、マジ!?」

 

 スパークを撒き散らしながら猛回転する巨大ドリルに、光の戦士達もさすがに大慌てで回避しようとする。

 だが巨大ドリルの巻き起こす旋風と撒き散らされるスパークに、逃げそびれた光の戦士数名がダメージ、もしくは撃墜判定を食らっていく。

 だが猛突進してくるどりすに回避は難しいかと思われた瞬間、突然ドリルの回転が止まる。

 

「あれ?」

「あれれ?」

 

 当のどりすと、一番ドリルに近かったユナが間抜けな声を漏らすが、そこでカイザードリルから煙が吹き出し、元のサイズへと戻っていく。

 

「え? え? どうして?」

「壊れちゃった?」

「………いや、多分ジャムったんだ。どうやらこの試作ブリッド、一遍に使うと不完全燃焼起こすみてえだ」

「そんな~」

 

 ねじるが突然のカイザードリルの不調の原因に気付き、どりすが情けない声を出すが、ふとそこで敵陣のど真ん中に突っ込んだままだった事を思い出す。

 

「あ」

「おどかされたお礼よ!」

 

 そこへ舞を中心として光の戦士達が一斉にどりすへと襲いかかる。

 一斉に襲いかかられ、結局ブリッドを使い果たしたどりすは時間切れまで逃げまどう事となった。

 

 

 

「試合終了時間、残五分。現在の状態、残弾少、燃料少。目標の機動力、戦闘力共に低下認められず」

 

 エグゼリカとの壮絶な激戦の状態を淡々と解析するメイヴは、現状から打開手段をシミュレートしていく。

 

「すごい戦闘機動………データの蓄積がひょっとしたらトリガーハート以上………」

 

 対するエグゼリカも随伴艦のエネルギー残量をチェックしつつ、こちらと互角に戦っているメイヴに驚愕していた。

 

「残り時間は僅か、だったら!」

 

 エグゼリカは残ったエネルギーを全て機動に回し、今までの最高速度でメイヴへと迫っていく。

 

「目標、加速度最高値。現状装備での対処困難、広範囲攻撃兵装を選択。使用解除のために模擬戦用プロテクトを解除。FAE転送」

 

 メイヴが模擬戦仕様になっていたプログラムを勝手に解除、更にはその手に巨大な投下爆弾が出現する。

 

「それは!?」

 

 その爆弾に見覚えが有ったエグゼリカが強引に軌道を変更、メイヴから距離を取ろうとする。

 

「まさか使ったりなんて事………」

「投下」

 

 そのメイヴの投下した爆弾、帝都での戦いでも使用したFAE、通称サーモバリックのサイドが開き、そこから可燃ガスを噴出し始めた事にエグゼリカは表情が凍りつきつつ、慌てて最大出力で通信を入れる。

 

「退避! 空中にいる皆さんは全員退避してください!」

『何考えてんのあいつ!』

『地上の皆さんも伏せて!』

 

 情報共有で事態を察したフェインティアとクルエルティアも一気に離れつつ警告を発した直後、サーモバリックが着火。

 凄まじい爆炎が試合場を赤く染め上げる。

 

「な、なんだぁ!?」

「何が起きた!」

「あれって、帝都で使ったのと同じの!?」

「模擬戦のはずだぞ!」

 

 爆風が吹き抜け、各所から驚愕の声が上がる中、試合終了のブザーが響き渡る。

 

『え~と、試合終了です………それとメイヴ選手、レギュレーション違反で失格判定です………』

 

 さすがに予想外の幕切れに歯切れの悪いつばさの実況が響く中、誰もがようやく事情を理解し始める。

 

『物騒な嬢ちゃんだな、オイ』

『あはは、勝手に試合用プロテクト解いたんだ、やるね~』

『それでは全選手、ブースに帰投してください。回収もしくは治療が必要な方はすぐに申し出るようにしてください。現在、スコアを計算中、しばらくお待ち下さい』

 

 米田が呆れ、束が褒める中、つばさのアナウンスに従い、各チームが撤収を始める。

 

『ま、大体互いに長所短所は分かったろう』

『そうだね、改良点も色々見つかったようだし。早速始めないと』

『それとあの最後に爆弾使った子は危ねえだろ。保護者誰だい?』

『病院でずっと昏睡状態だって。確かにアレはなんとかした方いいかもね』

 

米田と束の二人に言われつつ、戦闘妖精達はこそこそと自分のベースに戻っていく

 

「どうするのよ? ツヴァイがいなかったら、メイヴ止められる奴いないわよ?」

「最近ますますお転婆になってきたわね~」

「模擬戦プロテクト外してFAE勝手に使うのはお転婆なんて範囲じゃないと………」

「回避が間に合って被害者は出てない。多分」

 

 シルフィードとスーパーシルフが話し合うが、ファーン1・2が突っ込む。

 当のメイヴは無言で表情一つ変えず、ブースに着地すると、セルフチェック用のポッドに入っていく。

 

「とりあえず、試合の結果を上に報告ね」

「私達ではメイヴ抑えられません、どうにかしてくださいって?」

「事実じゃん」「うん」

 

 続いてブースに着地したスーパーシルフに、シルフィードが一番の問題を指摘するが、ファーン1・2共にそれを肯定する。

 

「………今後もあるし、誰かに来てもらうしかないかもね」

「准将あたりはすでに非公式で来る準備とかしてんじゃない? 隊長に押し付けるかもしれないけど」

「准将でも隊長でも、メイヴは止められないでしょ。脱走されたし」

「だったら………」

 

 

 

『集計結果が出ました! それではMVPの発表です!』

 

 つばさの実況と共に、ドラムロールが鳴り響き、各ブースの画面にMVPがファンファーレと共に表示される。

 

『MVPは10機撃墜判定、帝国華撃団・大神 一郎司令です! そしてチーム平均撃墜数最多は、帝国・巴里華撃団合同チームとなります!』

『いや~、さすが大神司令、お見事です!』

『華撃団の皆さんの実力もさる事ながら、大神司令の隙の無い臨機応変の戦術が大きいでしょう』

 

 由里、たくみの解説も入る中、帝国・巴里合同チームの戦闘シーンも幾つか表示される。

 

『機体性能が高いチームは、むしろ近いレベルのチームとの戦闘により、拮抗してスコアが稼げなかった点も多いですね』

『特にトリガーハートvs戦闘妖精は他のチームではとても手が出せない超高速戦闘でした! 最後がアレでしたが………』

『逆に、実戦経験の少ないチームは苦戦が目立っていました。特にISチームは半数が撃墜判定、平均撃墜数も最低というまさかの結果となってますね』

 

 

 

『だそうだ』

 

 ISチームのブース内、そこの通信用ディスプレイで一夏、鈴音、セシリアの三人がISスーツ姿でディスプレイに映る千冬の前で正座させられていた。

 

『まさかここまでひどいとはな………』

「いや、その…」

『特に一夏! なんだあの様は!』

 

 何か言おうとする一夏を遮り、千冬は生徒達の前では滅多に呼ばない名前呼びで一夏を怒鳴りつける。

 

「その、流石に昔の機体だから少し手加減をと………」

『そうか、手加減か』

「一夏、お前が向かっていった相手は真宮寺 さくらさんと言って、帝国華撃団のエースで北辰一刀流の免許皆伝だぞ」

 

 弁明する一夏に千冬が憤怒を溜め込みながら睨む中、箒が説明してやる。

 

「め、免許皆伝? そんな人ホントにいるの?」

「それだけじゃない。鈴が向かっていった桐島 カンナさんは琉球空手の達人で本物の牛相手に組み手をやってのけるそうだ」

「牛ぃ?! 本当にそんな事やる人いたの?!」

「そしてセシリアがいい気になって追い回していたのは宮藤 芳佳少尉、坂本少佐の愛弟子でブリタニア、ロマーニャ開放で活躍したベテランウィッチだ」

「あ、あの子がサムライ少佐の!?」

 

 鈴音とセシリアが驚く中、ディスプレイの中の千冬は爆発寸前だった。

 

『分かったか? 確かにISは優れた機体だ。華撃団の霊子甲冑やウィッチのストライカーユニットとは世紀単位で性能差が開いているだろう。だが、中身の性能差はそれ以上だったようだな?』

 

 思いっきりドスの聞いた千冬の声に、正座している三人は更にすくみ上がる。

 

『この大馬鹿者共! 手加減されたのはお前達の方だ!』

 

 スピーカーが破れんがばかりの千冬の怒声に、三人のみならず他の専用機持ち達も震え上がる。

 

『どうやら全員鍛え直す必要が有るようだな。覚悟しておけ!』

 

 それだけ言って、通信画面が切れる。

 後には、不気味な沈黙が残った。

 

「やばい、やばいわ………」

「織斑先生、本気で怒ってましたわね………」

 

 今だ正座したまま、鈴音とセシリアが冷や汗をとめどなく流し始める。

 

「まあ、ボクも人の事言えないけど………」

「流石に電撃は予想外だろう。手加減されてなかったらどうなっていたか………」

 

 ペリーヌの電撃を食らって少し焦げた匂いがするシャルロットがうつむき、何とか最後までウィッチの攻撃に持ちこたえたラウラが慰める。

 

「確かに、戦い方を一から想定しなおす必要がありますね」

「ああ、大いに学ばされた」

 

 こちらも何とか最後まで耐えた箒と簪が考え込む中、手を叩く音が響く。

 

「悩むのまずシャワーの後にしましょう。特にオルコットさんは」

 

 遅れてブースに来た楯無に促され、全員が自分の状況を見る。

 特にペイント弾の集中砲火を浴びたセシリアは全身がペイントまみれという有様だった。

 

「そっちに簡易シャワー有ったわね」

「鈴、お腹大丈夫?」

「カタツムリみたいな人に治療してもらったから大丈夫」

「人数分あるか?」

「一夏君は後で♪ それとも一緒に…」

 

 楯無が冗談めかして一夏へと話しかけるが、一夏は何か真剣な顔で考え込んでいた。

 

「すいません、オレちょっと用が出来たんで」

「用?」

「失礼します!」

 

 止める間もなく、一夏は白式を展開させてどこかへと飛んでいく。

 

「一夏さん、どうしたんでしょう?」

「何か思う所が有ったのだろう」

「でも、どこへ?」

 

 

 

「おうし、こっちやこっち。損傷順で頼むで」

「うわ、カンナのボロボロだ………」

「いやあ、なかなか歯ごたえのある相手でよ~」

「模擬戦というの分かってます?」

 

 紅蘭の指示で霊子甲冑の格納が進む中、幾つかの機体、特にカンナ機は洒落にならないダメージになっていた。

 

「一体どんな相手と戦ったらこうなるのだ? そちらでも有数の格闘機だろうに」

「つうかこれ、殴った跡に見えんだが………」

 

 グリシーヌとロベリアも実戦から帰ってきたとしか思えないカンナ機に首を傾げる。

 

「まさか、他の部隊にもカンナさん並のおバカがいるとは思ってませんでしたわ。時間切れまで双方殴り合い、しかも最後はほぼ相打ちという………」

「カンナさんと殴り合える人いるんですか!?」

「その人、大丈夫か? 最低でも病院送りじゃ………」

 

 すみれの説明にさくらが驚き、大神は恐る恐る確認をする。

 

「その点は大丈夫、相手もさる者でしたわ。自分本体へのダメージは確実に避けてましたし。ストライカーユニットとやらはおしゃかになってましたが」

「機会が有ったらちゃんと決着をつけようって事にしといたぜ」

「………本当にカンナさん並の人のようデ~ス」

「レポートをまとめる必要が有る。今後のためにも」

 

 嬉々としているカンナに織姫は呆れ、レニはそれも含めて各所の試合データをまとめようとするが、そこにこちらに向かってくる飛行音に気付く。

 

「あれ、誰か来たよ?」

「あの白い機体、確かISの隊長機じゃ…」

「ああ、あの一番最初にさくらさんにやられたおマヌケさんですネ」

「そういうのはあまり口になさらない方が………」

 

 向かってくるのが白式だと気付いた花組隊員達が見上げる中、目の前に着地した一夏は白式を解除、華撃団のブースへと入ってくる。

 

「お、お礼参りか?」

「いいねえ、今度は生身でやる気かい?」

「違います」

 

 カンナが余計な事を言い、ロベリアが茶化すが一夏はそれをきっぱりと否定。

 そのまま一夏は奥まで進み、大神の前へと立つと姿勢を正す。

 

「君は確か、織斑 一夏君だったか」

「はい」

「何か用かい?」

「大神司令、オレにリーダーとしての戦い方を教えて下さい!」

 

 一夏は懇願しながら、大神に深く頭を下げる。

 突然の事にその場にいた花組隊員達は絶句するが、大神は少し考えた後に笑みを浮かべる。

 

「いいだろう。オレに教えられる事は教えよう」

「ありがとうございます!」

「まずはそちらの指揮官、お姉さんだったかに許可もらう所からだけどね」

「あ」

 

 大神に指摘され、大事な事を忘れていた一夏が顔を上げて間抜けな声を漏らす。

 

「こちらから話は通しておくよ。そちらにとっても悪い話じゃないだろうし」

「す、すいません。千冬姉がすぐ認めてくれるといいんですけど………」

「多分大丈夫だろう。優秀な人物と聞いている、なら気付いただろうし」

「え?」

 

 大神の言わんとする事を一夏が知るのは、しばし後の事だった。

 

 

 

「あ~、こうなったカ~」

「501も502も頑張ったんだけどね」

「こっちも」

 

 JAM前線基地を感知した後、大帝国劇場に戻ってきたエイラ、サーニャ、ティタの三人は作戦室の大型モニターで模擬戦の様子を見学していたが、その結果に思わずため息を漏らす。

 

「やっぱどこも慣れてる連中は違うナ」

「華撃団の人達、全く無駄が無い戦い方だった」

「リーダーの腕」

 

 三人とも大神の指揮手腕を認める中、モニターに映されるダイジェストを見る。

 

「コンゴウの奴、また無茶苦茶してるゾ」

「でも幻夢さんとかのサポートで前よりはいいと思う」

「こちらも頑張ったけど、ウィッチのガードが予想以上にカチカチ」

「ラル少佐も用心してたカ」

「ポクルイーシキン大尉かも」

 

 顔見知りの戦いを勝手に批評していた三人だったが、そこでふとエイラは先程の占いを思い出す。

 

「なあ、さっきの占いなんだケド、な~んかアイーシャ以外にも誰かいなかったか?」

「遠すぎてよく分からなかったけど、なんとなく他にも何人かいたような………」

「多分いる。アイーシャっぽいのが」

 

 エイラが確信を持てない問いに、サーニャとティタが頷く。

 

「一応確認しとくカ」

 

 エイラはポケットから愛用のタロットカードを取り出し、占いを始める。

 

「これで分かる?」

「さあ………でも何も知らないよりはいいと思うよ」

 

 首を傾げるティタに、サーニャは一応の参考にとエイラの占いを見守る。

 

「さて、なんと出るカナ?」

 

 エイラは配置したタロットをめくっていき、出たアルカナに眉根を寄せる。

 

「全部正位置、隠者、吊し人、そして女教皇………」

 

 現れた三枚のカードの意味する所を三人は考えるが、答えは出てくる事は無かった………


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