「う、ぐっ…ぎぃ!!……ゲームなんか関係ない、人間は皆殺しだぁ…!!」
キメラは血を吐きながら立ち上がり、呪詛の言葉を残し消えた。
「逃がさねぇよ、キメラ!」
それを追いかけイアンも飛ぶ。ま、約束だし、後はあいつの取り分だ。
「……因果は巡るってことなのかねぇ」
「出て来いトマト野郎。6年前のケリつけようぜ」
アランは葉巻を噛み潰し、力強くフィールドへ踏み込んだ。対するは、かつてウォーゲームで死闘の末痛みわけとなった因縁の相手、ハロウィン。奴が苦し紛れの放ったARMの力によって、アランは次元の狭間へと飛ばされることになった。
「ヒュッヒュッヒュ……バカめ。次元の狭間で永遠に漂っていればよかったものを……!」
最終決戦・第四戦
◆チェスの兵隊【ナイト】▼ハロウィン▼
◇クロスガード【ダンナの右腕】・龍の紡ぐ絆【教官】▽アラン▽
「し、試合開始!!」
「『フレイムハンド』!!!」
「『エアハンマー』!!!」
動いたのはほぼ同時だった。ハロウィンの放った炎の腕をアランの空気を圧縮した拳が砕く。ポズンはあまりの衝撃に腰を抜かし、這う這うの体で逃げ出す。
「……てめえ、6年前と同じ技使いやがって…ナメてんのか!?」
「じゃこんなのはどうだい?『アンタレス』!!!」
天体の名を模した高熱の火球が放たれる。身構えるアランだったが、アンタレスは彼の横を素通りし、その後ろにいる民衆へと襲い掛かった。
「ッツ?!!させっかよ!!」
『Absorption!!!』
異変を察知したイッセーは『赤龍帝の太陽手』を展開し、民衆へ迫るアンタレスを籠手に吸収する。それを見て安堵したアランはハロウィンに吼える。
「てめえ…最初から民衆を狙ってやがったな!!」
「ヒュヒュヒュ…お前はカンタンに死んでくれないからなぁ……そこらへんの奴は幾等でも殺せる。」
ハロウィンはさらに大量の火球を生み出し、辺りに漂わす。
「てめえ!!」
「ヒューーヒュッヒュッヒュ!!!そーら、アンタレスアンタレスアンタレス!!!」
ハロウィンは不気味な笑い声を揚げアンタレスをフィールドの外へと無差別に放った。無数の火球が民衆に襲い掛かる。
「思い通りにさせっかよ!みんな!!」
『『『応!!!』』』
しかし、外ではイッセー達が既に動いていた。フィールドの四方に散り火球の群れを次々と破壊していく。
「アラン、こっちは任せておいて!」
「その腐ったトマト野郎を叩き潰してやれ!」
「ふっ……助かったぜ、お前ら…」
「余所見をしてていいのかな?『ナパームデス』!!!」
ハロウィンの体を軸に植物の蕾を模した大砲が現れる。アンタレスの数段上の魔力が込められた砲弾が発たれ、アランはそれをその身一つで受け止めた。
「アラン!!?」
「オッサン!!?」
「グホッ…てめえ、いい加減にしやがれよ!!」
「その身を盾にカス共を守るか、偽善者。だが、ナパームデスを喰らってその程度のダメージとは……また強くなったようだな、アラン。『爆発植物 トリックオアトリート』!!!」
細長い手足の生えたカボチャの群れが現れノタノタとアランに迫る。この植物はその名の通り頭に刺激を受けると爆発を起こす性質を持つが、アランはお構いなしに全て拳一つで粉砕して見せた。
「俺が偽善者ならお前は卑怯者だぜハロウィン!!」
「ヒュヒュヒュ、変わらねぇなあお前は……ガキの頃から何も変わっちゃいねぇ。俺が動物を殺した時もお前は俺を咎めたよなぁ……」
「あぁ?……ッツ!!ま、まさか…まさかお前!!?」
「6年前は気づかなかっただろ?俺だよ、ガキのころお前とつるんでた……」
「………パンプ、か?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
その昔、二人がまだ子供だった頃、アランとパンプは同じ町に住んでいた。宿無しだったパンプは何時も他の子供達に苛められ、そんな彼を、当時から腕っ節の強かったアランが助けていた。
『大丈夫かパンプ?』
アランが彼を助けていたのは、完全な善意からだった。しかし、パンプはそうは思わなかった。彼が笑顔で手を差し伸べる度に、自分が弱者だという劣等感が胸に満ちた。
そしてある日、パンプはナイフを盗み出し、野犬を切り刻んで殺した。
『なんてことをするんだパンプ!!』
『何怒ってんだアラン。弱い奴を殺しただけだぜ?』
弱者は強者の犠牲になるのが必然ーーパンプはそう結論付けた。
後日、町で5人の子供が虐殺される事件が発生。犯人はパンプと断定された。だが、その時既にパンプの姿は町にはなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「6年前、そして今回またお前と再会したときは、正直うれしかったぜぇアラン?」
「……それでもよぉ、センチなのは俺のガラじゃねぇ。なおのこと、お前は俺が倒すしかねえなぁ!!」
「できるかな、お前に?『グレイヴ・ヘイル』!!!」
ハロウィンは新たなARMを発動させる。目や口の浮き出た不気味な墓標の群れがアランに襲い掛かるが、アランはそれもまた拳で粉砕する。
「へっ、全部壊してやったぜ、パンプよぉ!」
「その名で呼ぶんじゃねえ!!俺はゾディアックのハロウィンだぁ!!!」
ハロウィンは背負った十字架を炎に変えアランにぶつける。アランはそれを両腕で振り払いネイチャーARM『フレイムドラゴン』から炎の龍を放ち、ハロウィンはまた炎をぶつけ総裁する。互いに一歩も譲らない、一身一体の攻防が続くその中、二人は着々と魔力を練り上げていた。すべては必殺の一撃を叩き込むために。
「てめぇはあの時、俺を見下してやがったんだ!!俺は強い、お前は弱いってなぁ!!さぞ優越感に浸っていただろうよ!!お前は心の中で、俺を馬鹿にしてやがったんだ!!!」
技がぶつかる度にハロウィンの中の憎悪の炎が燃え上がる。傍から見れば見当違いも甚だしいが、物心付いた時から劣等感に支配されていた彼には、アランの想いを理解することも、感じることもできなかった。
アランは懐から取り出した葉巻に火を着け、煙を吐き出す。
「……パンプよう。俺はただ、お前と友達になりたかっただけなんだぜ?」
「ッッツ!!?……んな、そんなデマカセ信じられるられるかあ!!!どの道。俺達は最初から違うセカイにいるんだよおおお!!!」
アランは咥えた葉巻を吐き棄て踏み消し、犬歯を剥く。その瞳は闘志に燃えていた。
「……そうだな、”久しぶり“そんで”さよなら“だ。」
「こいつで死に腐れ!!!ガーディアン、『ワカンタンカ』!!!」
現れたのは、人間の髑髏を持つ巨大な蛇の骸骨とでも言うような怪物であった。ワカンタンカは長い体をくねらせ、巨大な顋でアランに噛み付く。アランは咄嗟に片腕でガードするが、ワカンタンカの牙が食い込んだと共に、アランの全身が燃え上がった。
「ヒューーヒュヒュヒュヒュ!!!今度こそお前をこの棺桶の中に入れてやる!!くたばりやがれアラン!!!」
火達磨になり動かないアランを見て、ハロウィンは勝利を確信する。しかし、アランは全身が焼け焦げる中、ひたすらに魔力を練り上げていた。
(しっかし、色々あったもんだなぁ……)
6年前の最終決戦、お互い満身創痍の状態の中、ハロウィンが苦し紛れに放ったARMによって次元の狭間に飛ばされ、宛もなくさ迷っていたところを神を名乗る老人に拾われた。
『お主にはこの後、ここにやって来る子供達を鍛えてやって欲しいのじゃ』
行く宛も帰れる保証もないので受ける事にし、そして出会ったのが竜也達だった。それから6年の間、彼らの成長を見守って来た。
そして、何の因果か自分はまたウォーゲームの最終ステージに立ち、因縁の相手と向き合っている。
「……やっぱセンチなのはガラじゃねぇや」
アランはふっと鼻で笑うと、ずっと練り続けていた魔力を一気に爆発させた。
「いくぞおらあああああああああ!!!!」
ガーディアンARM
セイント・アンガー!!!
現れたのは、ワカンタンカをも越える巨大な一対の腕のガーディアン。聖なる腕はワカンタンカをアランから引き剥がす。ワカンタンカは抵抗するが、呆気なく頭を握り潰された。
「さあ、お別れだ。パンプ」
セイント・アンガーの片腕がハロウィンを掴み投げ飛ばす。その先には、もう片腕が拳を振り上げていた。
(ああ、アランよぉ……)
一人でも強くあれる心が妬ましかった。 その優しさが疎ましかった。自分にない強さが悔しくて、羨ましくて、煩わしくてーーーー
(やっぱてめぇは、強えなぁ……)
あまりにも、眩しかった。
ドガァァァァァン!!!
勢いのままに殴り飛ばされたハロウィンは、天高く吹き飛ばされ、そして見えなくなった。
「しょっ、勝者!アラン!!!」