偽書魔法少女じゅりあ×くりす☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI JURIA×KURISU MGICA 作:ジャックノルテ
「まったくキュウたんったら。欲望の赴くままに行動するからそんな目に合うのよ。大きな未来を考えられても、ほんの数分先を予想しないなんてどうかしてるわ」
声の主は1人で喋り立てていた。
誰に語っている訳でも無い。
正直、聞かれているのかどうかも分からない。
けれど喋らずには居られなかった。
キュウたんことキュウべえに対する声色には若干、軽蔑の色が浮かんでいる。
声の主がいるそこは円環の理と言われた空間。
ただし今は一部分だけを抜き去られて機能はしているが、この先、何があっても不思議では無い状態だった。
一種の小康状態とも言える。
円環の理内部に存在する、かつて《魔法少女》だった少女達の意志は驚きに満ちていた。
余りにも予想に反する事が起こり円環の理の一部が、たった一人の《元魔法少女》に奪われて宇宙は再編されてしまったからだ。
その《元魔法少女》は今や、悪魔を名乗り何をしでかすのか予想も付かなかった。
全ての《魔獣》が滅んだら世界を滅ぼしても良いとさえ発言していた。
「と言っても・・・。私が騒いだ所でどうにもならないわね・・・」
円環の理の内部に存在する、《召された魔法少女の意思達》は、騒ぎ立てていたが外部に干渉する事が出来ない以上、どうする事も出来なかった。
例外的に悪魔と関わりを持った《2人の魔法少女》だけは、世界が再編するのに巻き込まれ、再び人間=《魔法少女》としての生を取り戻してしまっていたが・・・。
「あの悪魔と縁があれば私も生き返れたかも知れないか・・・」
声の主は悔しがるかのような口調を見せた。
生き返ると言う事は、ある種の神秘的な行為だ。
それに生き返れば会いたいと思う人に会えるかも知れなかった。
「私にだって会いたい人がいるんだから・・・」
と言った所で自分が生き返れる訳では無い。
愛しい人にはもう会えないが、ここから見守る事は出来る。
それにいずれ愛しい人も円環の理に来る筈だ。
最もそれまで円環の理が存在するかどうかは分からなかったが・・・。
そこまで考えて声の主は、ようやく冷静さを取り戻して来た。
「例え悪魔がどんなに都合良く世界を変えた所で、そう旨く行く筈が無いわ。再度、世界が書き換わる事だってあり得る。世界は予想外の事が起こる物。円環の理が予想出来なかった悪魔によって世界が書き換わった様に誰も予想出来ない様な事が起こる物なのよ」
負け惜しみにも聞こえる台詞だったが声の主は、そう思っていなかった。
実際の所、悪魔の出現は、円環の理にとって予想の範疇外だった。
円環の理の内部では召されて来た《魔法少女達》の見聞きした情報や知識を元にある程度の未来の方向性を予想する事が出来る。
けれどそれは《魔法少女》、ひいては少女が見聞きした情報によって偏った方向だけを見ているとも言えた。
実際の所、《魔法少女達》の年代は一定の範囲内に収まっている。
つまり未来を予想出来たとしても、ある種の方向に傾いている。
それが今回、悪魔の誕生と言う予想外の形となって現れただけの事だったと声の主は、一方的に解釈していた。
「まあキュウたんには少し痛い目にあって貰った方が良いわよね。感情があろうと無かろうと反省すると言う事は、生命にとって当然の事なんだから。そうすれば今度こそ人類と分かり合い、お互いに助け合えるのかも知れないんだから・・・」
声の主は、口調からもそれを望み願っているのが感じられた。
何故なら彼女は例外的にキュウべえことインキュベーターとは一方的かつ対等な友人関係を自称していたからだ。
そこまで語るとふと声の主はある記録の事を思い出した。
「そう言えば、こんな事もあったわね」
声の主は意思を集中すると空間にある物が現れた。
それは失われた世界の記録だった。
まだ《魔獣》ではなく《魔女》と言われる存在が跋扈していた世界の記録・・・。
「誰しもが未来を予想出来ない様に未来は常に翻される不安定なモノ。そうよ。この記録が既に証明しているじゃない。未来なんてどうなるんだか分からないって事を」
声の主は失われた世界の記録を再生する事にした。
これは記憶の旅。
ただしそれは失われた世界の記憶。
現在の世界とは関わりを持たない。
けれどそれは未来が決して予想通りには動かないと言う証の記録でもあった。
「あら?アナタ達もこの記憶に興味があるの?」
声の主が周囲を見ると何人かの《魔法少女達》が、これから再生されようとしている記録に興味を抱いている事を感じ取る事が出来た。
「そうね。どうせここがどうなるのかも分からないんだから・・・。今の内に観れるモノは見ておきましょうか」
そう言って記録を空間に映し出した。
「未来はあなたの思い通りに行くかしら?悪魔さん」
声の主は皮肉な笑みを浮かべながら失われた世界の記録に思いを馳せた。
それは自らと大きな関わりを持つ少女達が一同に介した唯一の記録。
これまで語られて来た少女達も居れば、初めて語られる少女達もいる。
記録は流れ声の主は暫し記録に心を委ねた。
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メモリー№m‐71966
偽書魔法少女しゅな☆マギカ 第1話
偽書魔法少女さつき☆マギカ 第5話
両作品における朱奈と謎の少女にある出来事が起こった直後・・・。
○
この時間軸に置いて見滝原市は瓦礫の山と化していた。
既にかつて見滝原市の市内中心と思われた場所に命は存在しなかった。
その場所に存在した命は突如として現れた《救済の魔女》によって全て吸い尽くされてしまったからだ。
《救済の魔女》の全身から伸びる黒い根は縦横無尽に伸び続け命のエネルギーを吸い続ける。
人々は成す術も無く死んだと言う意識すら持たずに命を吸い取られ死んで行く・・・。
そんな中、黒い根の間を走る2人の少女がいた。
2人の少女が普通でない事は明白だった。避けられる根は避け避けられない物は手に持った武器で次々と切り裂いて行く事が証明している。
2人の少女は《魔法少女》。
その証とも言える宝石を身体の一部分に装着していた。
ここまでは共通項がある。
オレンジの髪を生やす《先頭を走る少女》は、一見すると少女趣味とも取れるフリルやリボンを多用した《魔法少女》として自らの内面的な理想を体現しているのに対して、まだ少女と言う年齢であるにも関わらず黒い髪に多くの白髪を生やして眼鏡を掛けた《後方を走る少女》は、中学校の制服、殆どの人間がセーラー服と呼称する服装のままだった。
(ただしスカートの中にスパッツを履いて動くと言う事を最初から考えている様だった)
けれどソウルジェムをグローブに取り付け武器である箒を握り締めている。
《魔法少女》である事は間違い無い。
ここで《後方を走る少女》が前方を走る少女に握り締める箒を向けると穂先が次々と《先頭を走る少女》に発射されて行く。
《先頭を走る少女》は煩わしい様子で両手に握り締めていた刃がくの字に曲がった短刀で穂先を撃ち落した。
それを見ると《後方を走る少女》はタイミングを見計らって何度か穂先を発射した。
何度もそれを防いだ《前方を走る少女》だったが流石に煩わしくなってきたのか、その場に踏み止まった。
それは《後方を走る少女》をこの場で倒すと言う意思表示でもあった。
《後方を走る少女》を何とかしなければこれ以上、先へ進めないと判断したからだった。
「しつっこいてんだよぉ!あたしゃ、あんたに興味なんかねえってんだよぉ!」
清楚な外見に似合わずにとても口汚い言葉を叫ぶ《前方を走る少女》。
今の名前は沙我樹理亜(しゃがじゅりあ)と言う。
樹理亜はある目的を果たす為に見滝原市にやって来ていた。
けれど目的を果たす為だけとは言え樹理亜は暴れ過ぎた。
暴れると言うのは語弊があるかも知れないが、様は力任せに物事を解決しようとし過ぎたのだった。
それが原因で《後方を走る少女》に追われる事になったのだが・・・。
樹理亜が足を止めたのを見ると《後方を走る少女》、阿瀬比栗栖(あせびくりす)も足を止めた。
「あなたの目的は自分が認められない行動です。秩序を乱す行動を中止しないのなら止めるまでです」
言いながら栗栖は再度、箒の穂先を撃とうとした。
だが樹理亜もバカでは無い。話の途中であろうと何だろうと武器を向けられたと同時に栗栖に対して距離を詰めた。
意外な樹理亜の行動に栗栖は箒を構え直し接近戦の構えを取った。
と同時に右足で地面を思いっきり蹴った樹理亜は栗栖から見て右へ飛びながら両手に握っていた短刀に魔力を込めると同時に短刀を何も無い空間に向かって振る!
同時に魔力を帯びた斬撃が2発、栗栖に向かって飛んで来た。
慌てる事無く栗栖は飛んで来た斬撃を魔力の帯びた箒で叩き対消滅させる。
そこへチャンスと見た樹理亜が突っ込んで行く。
お互いに戦闘の意図を感じ取った樹理亜と栗栖は超至近距離においてお互いの武器をぶつけ合い、移動をしながら戦っていた。
既にお互いに相手を逃がすと言う意図は頭の中に無かった。
出来るならここで後顧の憂いを断ち切りたかった。
けれどここで両者は見滝原市に出現していた《救済の魔女》に対して意識を向ける事が出来なくなっていた。
それがとても致命的な事だと直ぐに知る事になるが・・・。
「邪魔をするなぁ!」
激情の赴くままに樹理亜は叫ぶ。
「そうは行きません」
対照的に感情を感じさせない淡々とした声で栗栖は答えた。
お互いに一歩も引かず更に戦いが長引きそうに思えた時だった。
地面から無数の黒い根が出て2人の体に巻き付いて来たのだ。
「何だ!?」
「これは?」
驚く両者だったが既に手遅れだった。
抵抗する暇すら与えられず2人の全身に黒い蔦が纏わり付いて全身から命を構成する魔力を吸い尽くして行く。
数十分後に両者は死すら感じる暇も無く魔力を吸い尽くされ死体はその場に放置された。
既にこの見滝原市には命は存在しなかった。
《救済の魔女》から伸びる黒い根は獲物を求めて縦横無尽に駆け巡って行く。
インキュベーターはただ事態を静観する。
地球が滅ぶのは後、10日前後の事だろうと。
この時間軸の物語は、ここで終わる。
沙我樹理亜と阿瀬比栗栖。両者とも目的を果たす事無く散って行った。
最もそれは彼女達に限った話ではなくこの時間軸、この時に存在する全ての人間に対しても言えた事でもあった。
けれど他の時間軸では両者は違った物語を歩む事になる。
では・・・。
物語を語りましょう。
悪魔が世界を再編した様に、また誰かが、世界を再編しないとも限らない。
その幕間を退屈しない為にもこの物語を語る必要があるのだから・・・。
今回は導入部のみですが書きあがり次第、次をアップしたいと思います。