偽書魔法少女じゅりあ×くりす☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI JURIA×KURISU MGICA 作:ジャックノルテ
樹理亜と栗栖が武器を構えて繭に対して警戒していた時に唐突にそれは起こった。
繭は一気に内部から破裂したのだ。
魔力を前面に集中させる事で防御する樹理亜と栗栖だったが、2人とも、虚を付かれたと表情に出てしまっていた。
2人は奇遇にも繭から声が響いた瞬間には、あの繭を破壊しようと行動を起こそうとする寸前だった。
それが、虚を疲れる形となって繭は爆発してしまったのだ。
「何が起きてんだ!?」
「・・・」
驚く樹理亜に対し栗栖は、表情こそ驚いていたが無言のままだった。
『何を驚くのかしら?もう無意識には分かっているんでしょう?ワタシが誰なのか』
繭が起こした爆煙の中から誰かが、樹理亜と栗栖に、語り掛けて来る。
人間には決して出せない声質だが、2人は確かに同じ人物を思い浮かべていた。
やがて爆煙を払い現れたその姿は2人の予想を裏切らなかった。
左右非対称な特徴的な髪型に、魔力で輝かせた赤と青の髪。
間違いようの無い背の高さにラフな服装等、ほぼ全てが2人の予想通りだった。
ある一点を覗いて・・・。それは、左胸に存在するグリーフシード・・・。
本来の人物であれば右胸にソウルジェムをバッジの様に付けていた。
でも今、現れた人物はグリーフシードを左胸にバッジの様に付けていた。
現れた誰かは、それ程までに筒地綾女その者だった。
ありえないと脳は、記憶は否定する。筒地綾女は死んだ。
朱奈が1人で行動している事。樹理亜に施された魔法が解けた事でも証明されている。
先程まで存在していた《綾女モドキ》が持っていた違和感が消えて、彼女は、筒地綾女その人へと変貌していた。
「何者ですか?」
短い言葉で栗栖は問うのを、驚愕する樹理亜は聞き入る。
『ツツジアヤメよ。そうね。はぐらかさずに言うなら違う存在である事は確かよ』
「《綾女モドキ》と言う事ですか?」
『違うわね。確かにさっきまでワタシは、あなた達の言う所の《綾女モドキ》だったのは確かね。でもね・・・。ワタシは、もう《綾女モドキ》じゃない。分かるでしょう?ワタシが既に《綾女モドキ》でも《魔女》でも無いと言う事を』
栗栖の質問にツツジアヤメは素直に答えていた。
話を聞きながら静かに栗栖は武器を構えた。それを横目で気付いた樹理亜も習って武器を構えた。
どうにも発する雰囲気からも友好的な相手とは樹理亜にも思えなかった。
『ワタシの存在の答えを聞きたいのなら、残りの観客を呼び出してからにしない』
そう言ってツツジアヤメが手を上げると不意に結界の天井が黒く歪んだと思うとそこから彩月と背負っていた朱奈が落ちて来るのが見えた。
落花して来た彩月と朱奈だったが、地面に近付けば近付くほどに落下速度は落ちて行きふわりと降りる事が出来た。
「なんや!?一体!?まさか・・・。あんたは!?」
驚き周囲を見渡した彩月がツツジアヤメの存在に気が付いた。
ここで初めて樹理亜は、自分の体内の魔力状態を調べていた。
幻覚魔法の類に掛かっていない事に確信を得ると余計に嫌な気分を感じていた。
《魔法少女》では無い彩月が、筒地綾女と認識したのならば、目の前にいる、ツツジアヤメは、筒地綾女と同じ姿をしている事に確信を抱いたからだった。
樹理亜が、そう考えを纏めた時、ツツジアヤメは、彩月に近付いて来た。
『朱奈の事を守ってくれてありがとう。菖蒲彩月さん。それと・・・』
そう言ってツツジアヤメが彩月に自然と手を翳した。まるでそうするのが当たり前の様に感じて樹理亜は、何も思わなかった。
『転写した記憶の欠片を貰うわ』
告げたと同時に彩月の周囲に黒い蔦の様なモノが纏わり付くと同時に「うっ」と彩月が声を上げたと同時に鈍い輝きが一瞬、起こった。
瞬く程の一瞬で輝きが収まると息の荒い彩月がその場に崩れ落ちた。
同時にツツジアヤメは、より存在感を増した様に樹理亜も栗栖も感じていた。
存在感と言うよりも、より筒地綾女と化した様にも感じていた。
意識を失った朱奈を両腕で大切そうに抱き抱えるとツツジアヤメは背後に視線を向けると口を開いた。
『隠れてないで、出て来たらどうなの?キュウたん』
「やっぱり分かっていたんだね。綾女」
答えながらキュウべえが結界の端から姿を現した。
倒れた彩月と朱奈から近い位置から姿を見せた事から落花する彩月と朱奈に便乗して来たのだろうと樹理亜は推測していた。
「おっと。そう言えば君は綾女じゃあないね。単刀直入に聞きたいんだけど君は、なんだい?僕達がこれまで得て来たデータにも存在しない存在だ。《魔女》でも《合成魔法少女》でも無い君は一体、何者なんだい?」
意外なキュウべえの台詞に樹理亜は驚きを隠せなかった。
無感情な栗栖、キュウべえの声が聞こえない彩月、意識を失ったままの朱奈。
この3人を除けば、この場で一番感情を表しているのが樹理亜だとも言えた。
『ワタシが何者かですって・・・。フフッ。アハハハハハハハハハ!』
突如として高笑いを上げたツツジアヤメに樹理亜は、場を飲まれた様に感じていた。
栗栖はポーカーフェイスに徹して彩月は訝しげな瞳を向けている。
『良いわ。キュウたん。あなたとは、《前の私》が、それなりに長い付き合いだったから答えて上げるわ。ワタシはね、言うなれば《進化した魔女》よ』
「なんだっ・・・て!?」
感情を持たない筈のキュウべえが驚いた様な錯覚を樹理亜は感じていた。
「あり得ない。《魔女》が進化するなんて事は、これまでのデータからしてもあり得ない筈だ。もし進化出来るのならば、既に進化と言う現象が起こっている筈だ」
無感情なキュウべえは、これまで起こった事実を語るも既に力を失った言葉でしか無かった。目の前に居るツツジアヤメは進化を証明しうる存在なのだから。
『そうね。今までは、あなたの言うとおりに無かったのかも知れないわね。キュウたん。でもワタシが証明している。あなた達が回収している《希望と絶望が相転移する際に生じる莫大なエネルギー》と表裏一体となるエネルギーをあなた達は忘れている』
「まさか!?」
まるで感情を持つかの様にビクッとした動きをキュウべえは見せた。
『ようやく分かったのね。いいえ。むしろ分かってはいたけど認めたくは無かったんでしょう?まさかワタシが希少性の高すぎて回収する価値も無いと考えていた《絶望から希望へと相転移する瞬間に発生する感情エネルギー》で進化してしまったと言う事に・・・。最もワタシだってどうしてワタシが進化したのかは分からないわ。こんな事で進化を出来るのなら《魔女》は次々と進化していく筈なのだから』
(違う・・・)
ツツジアヤメの発言を聞きながら彩月は思っていた。
(どう見てもあり得ない事が起こってツツジアヤメは存在し取るとしか思えない・・・。どうしてなんや?ウチの頭からは何故か《あり得ない事が起こっている》と言う考えが抜けない・・・)
「君は・・・。何者なんだ?」
搾り出した様にも聞こえるキュウべえの台詞に樹理亜は焦りと驚愕がある様に感じてしまっていた。
その言葉を聞いた瞬間にツツジアヤメは、狂気を孕んだ笑みを浮かべた。
『ワタシが何者かですって?そうね・・・。確かにワタシはツツジアヤメでは無いわね。じゃあワタシは何者かしら?そうね・・・。ワタシもまだ決めかねているわ。繭の中でずっと考えていたのよ。《魔女》の様な魔力を持って人間と同じ情緒豊かな感情を得て進化した存在・・・。《魔人まじん》とでも言うのが相応しいんじゃ無いかしら?魔女の様な魔力を持ち人間の様な知恵を持ったワタシから始まる種族には相応しい名ね』
全てを見下す様な視線をキュウべえに向けてツツジアヤメは宣言していた。
その時、ツツジアヤメに抱き抱えられた朱奈の瞳が僅かに開いた。
「綾女・・ちゃん・・・?」
その瞬間にツツジアヤメは何とも言えない表情を見せながら朱奈の額に魔力が篭る右手を当てた。
同時に朱奈は再び意識を失ってしまった。
眼帯で隠された朱奈の右まぶたに手を当てただけでツツジアヤメは、朱奈に何が起こったのかを把握した様でもあった。
『朱奈・・・。こんなにも傷付いて・・・。大丈夫。ワタシがもう、あなたを1人にしないわ・・・』
ツツジアヤメの動きに繊細さが無くなり誰の目にも分かる様に油断しているのが見えた。
それを見て樹理亜は、どうしたら良いのか分からずに武器を構えるのを解いてしまった、と言うよりも無意識の内に解いていた。
油断無く武器を構えていた栗栖はいち早くそれに気が付くと迎撃を行った。
箒の鋭く尖った発射可能な穂先をこの階層へ殺到して来た《使い魔》への迎撃を行った。
「みんな気を付けて!《使い魔の群れ》だ!」
キュウべえの警告で我に返った樹理亜は武器を向けたが一体の《使い魔》に体当たりを受けて壁に跳ね飛ばされてしまった。
倒れている彩月は、思わず身を上げようとするのを必死に押さえていた。
栗栖が躊躇する事無く現れた《使い魔の群》に対して的確な攻撃をしていたからだ。
下手に動けば自分に当たるかも知れないと思い動かない様に必死に身体を押さえていた。
《使い魔》の一体がツツジアヤメの傍に近付いて来たが、ツツジアヤメが睨むと爆散した。
と、その背後から新たな《使い魔》が現れると擦れ違い様に朱奈の腕に軽い切り傷を負わせた。
幸いにも軽い傷であり朱奈は目覚めなかった。
『よくも・・・。よくも朱奈を傷付けたわね!』
最愛の人が傷付いた事でツツジアヤメの持つ雰囲気が変わった。
それまで放出させていた魔力には、無かった異様な、禍々しさが、周囲に拡散していた。
禍々しさを伴った魔力は、周囲にいた全ての人物と《使い魔》を制止させていた。
瞬間、ツツジアヤメの姿が変わった。
かつて筒地綾女が変身した《魔法少女》として姿の様に、だが違う印象を周囲に与えていた。
資格が無くとも筒地綾女は、紛れも無い《魔法少女》だった。
《魔女》や《使い魔》と戦う事を、たった一度の奇跡と引き換えに選んだ《魔法少女》である事は疑い様の無い。
だがツツジアヤメが変身した姿は、禍々しさが強調された服装と表情から《魔法少女》と言うよりも《魔女》に近い雰囲気と魔力を周囲に見せ付けていた。
『消えなさい!』
ツツジアヤメが右の掌を上向きに向けたと同時に《使い魔》の体が突如として崩壊した。
さらに結界までも崩壊して行く。
一匹残らず《使い魔》が消滅したのと同時に、結界も崩壊してこの場所は、民家の間に存在する裏道へと戻った。
「なっ何が起こったんだ!?」
「瘴気を感じませんね」
樹理亜と栗栖は対極的な反応を見せキュウべえは、それを聞くと呟く様に告げた。
「まさか・・・。《使い魔》の体と結界を分解して魔力にする事で取り込むなんて・・・。しかも・・・。魔力が増している・・・」
『そうよ。あの《使い魔》や結界は全て分解してワタシが取り込んであげたわ。お陰でワタシの魔力は更に高まった!これなら・・・。ワタシの望みが叶うわね』
「何を望むんや?」
起き上がりながら彩月は問い掛けた。
『朱奈と永遠に生きる事。今のワタシならそれが可能よ。傷付いた朱奈の失った右目を再生させる事も出来るし・・・。朱奈を《魔人》へと作り返る事も出来る』
告げると同時にツツジアヤメは歪んだ笑みを浮かべていた。
それは普通の人間が決して浮かべられない狂気を象徴する笑みだった。
「そんな・・・。人間で無くなる事を朱奈が望むとは限らんで!?」
『関係無いわ』
彩月の制止を一蹴したツツジアヤメは言葉を続ける。
『ワタシは朱奈を愛しているわ。だからこそ朱奈は、ワタシと同じ存在となってワタシと生きなきゃ行けないのよ。ワタシの思いこそが全てに優先されるべきだし誰もワタシを止める事は出来ないわ。それに今の戦いでハッキリと確信したわ。《魔女》や《使い魔》じゃワタシを倒す事は出来ない。ただワタシの餌になるだけよ。あなた達だってワタシに勝てるのかしら?《魔法少女》なんてソウルジェムに穢れを溜めればワタシの餌となるだけなのよ』
魔力の消耗と同時にソウルジェムから生じる穢れをエネルギーに変えられるのであれば確かにツツジアヤメにとって《魔法少女》は、自身の魔力を底上げする餌としかなり得ないだろう。
威圧的な魔力を見せるツツジアヤメに樹理亜は、後ずさり栗栖は武器を構えていた。
その雰囲気に彩月とキュウべえの脳裏に勝てないと感じさせるに至っていた。
『でもまあ、あなた達は見逃してあげるわ。だってワタシを進化させてくれた恩人だもの。ワタシはこれから朱奈を連れて行くから静観しなさい』
ツツジアヤメが告げた瞬間に栗栖が武器を取り落とした。
同時に樹理亜と栗栖、彩月は体が押さえ付けられた感覚に襲われていた。
実際に3人は身体を動かす事が出来なかった。
「ツツジアヤメ!君は」
『違うわ』
キュウべえが何かを言おうとしたが、ツツジアヤメはそれを遮った。
『ワタシはツツジアヤメであって筒地綾女では無いわ。でもそうね・・・。《魔人》であるワタシには別な名前が必要かも知れないわね。繭の中でずっと自問していたわ。だから・・・』
一瞬、考え込む表情を見せてツツジアヤメは笑みを向けて答えた。
『これからは《綾羽鳴海(あやばねなるみ)》と名乗る事にするわ』
「綾羽鳴海?」
『ツツジとアヤメ。2つ共、花の名前であり、花には品種が存在するわ。品種が異なるのなら名前も異なるでしょう?だから綾羽鳴海よ』
オウム返しに聞き返したキュウべえにツツジアヤメ、否。綾羽鳴海は、そう告げると同時に朱奈を連れて飛び去ってしまった。
膨大な魔力を用いての飛行に追い着く術は無い。
彩月も栗栖も樹理亜もキュウべえも呆然と綾羽鳴海が飛び去った方向を見ているしか無かった。
物語は遂に最終章に突中しました。
ここからが私の真に書きたかった物語の始まりなんです!