偽書魔法少女じゅりあ×くりす☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI JURIA×KURISU MGICA   作:ジャックノルテ

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第9話 あなたは沙我の様な人ね 後編

 あれから様々な街を渡り歩いたあたしゃだったが、特に何の目的も無くその日暮らしでただ彷徨い続けていた。

 けれどある時、あたしゃは、気付いた。

 なりたいと思う、行きたいと思う。明日に期待している自分の心に。

 だから自然と引き寄せられたのかも知れない。

 明日を、その名に関したあすなろ市へと・・・。

 そこでもあたしゃは、好き勝手な行動を取って過ごしていた。

 適当に《魔女》を狩り、適当にいきがった奴から恐喝したりして過ごしていた。

 だからこそ直ぐに、あたしゃは、彼女達と出会った。

 

 

 

 その日もグリーフシードを得る為にあたしゃは《魔女》の結界に乗り込んで最深部を目指していた。途中で結界に囚われた人々がいたけれどあたしゃは無視して先を急いだ。

 このあすなろ市へ来て数日になるが、何度か《魔女》を倒すのを、先が越された事が合った。ソウルジェムが感じ取った筈の結界が消滅したのを感じ取る事で、あたしゃはあすなろ市にも魔法少女がいる事を感じ取っていた。

 特に出会う事も無いだろうと考えてあたしゃから接触をする事も無かったが、《魔女》と戦い続けていれば出会う事は、当然の帰結だった。

 その日も出現した結界に入り込んだあたしゃは、直ぐに最深部を目指していた。

途中の階層で《魔女》に囚われた人々が存在していたが、あたしゃには関係が無いと無視して最深部を目指そうとしていた。

「待って。あなたは何処へ行くつもりなの?」

 突然、背後から声を掛けられてあたしゃが振り返るとそこには7人の少女達がいた。

 どうやら別の入り口から入り込んだらしくあたしゃが通ったのとは別の場所から現れるまであたしゃも存在には気が付かなかった。

 それもただの少女達では無くその身に纏った魔力や個性的な服装と武器から少女達《魔法少女》と言う事だけは、明白だった。

「なんだい?アンタ等は?」

 7人と言う魔法少女の数にあたしゃは、たじろいでいた。

普通に考えれば1人と7人では、勝負にすらならない。

 以前にも見滝原市において30数人もの人数を揃えた魔法少女隊、グロリオーサと遭遇して勝ち目が無い事を悟って悔しさを感じながらも逃げ出した事があり、今回も同じ様に勝ち目が無い事は、明白だった。

「わたし達は、あすなろ市を守る魔法少女、プレイアデス聖団」

 黒い帽子を被ったリーダーと思しき魔法少女があたしゃに声を掛けて来た。

「あなたは、どうして人々を助けようとしないの?この人達だって望んで結界に囚われた訳じゃ無い筈」

 問い掛けられた内容を聞いてあたしゃは少し戸惑った。

 こんな風に問い掛けて来る魔法少女は、初めてだったからだ。

「何、言ってるんだ?魔女に囚われたってんなら、そいつ等の心は、弱いって事だろ。だったら別に死んだって良いじゃねえか?」

 あたしゃの言葉にプレイアデス星団と言われるチームの全員は不快とも言える表情を見せていた。

「他人なんか助けたってしょうが無いだろ」

「そんな事はない!」

 吐き捨てるように告げたあたしゃの言葉に、黒い帽子を被った少女は、直ぐに反論を加えてきた。

「わたしは、人を助ける事を決して後悔しない。もしも助けらなかったら、助けなかった事への後悔の方が大きいと思うから」

 黒い帽子を被った少女の言葉には、あたしゃでも感じられる強い気持ちが込められている様に思えた。でもこの時のあたしゃには、その言葉を理解する事は出来なかった。

 あたしゃが生きる為に叔父夫婦を殺したも、同然なあたしゃに理解出来なかった。

 見滝原で少女を1人、助けた事はあったが強要された様なモノであり助けたくて助けた訳でも無かった。

 あたしゃらしくない言葉を少女に掛けた気もするが、それは今はどうでも良かった。

 目の前にいる黒い帽子を被った少女を正直な所、変わった奴だと思った。

 以前にあたしゃが出会った魔法少女の中にもそんな奴はいなかった。

「随分と変わった事を言うんだな。あたしゃには全く理解が出来ないけどな。だったらこの結界は譲ってやるよ!」

 そう言い捨ててあたしゃは、迷う事無く元来た道を引き返した。

「待って!」

 そんな声が聞こえたかも知れないが、あたしゃは振り返る事無くこの結界を飛び出していた。

 それから、あすなろ市で度々、彼女達プレイアデス聖団と対峙する様になっていった。

 あすなろ市に留まっているから当たり前だったが。

 特に黒い帽子を被った少女は、あたしゃに何度も言葉を掛けて来たが、あたしゃは、その度に逃げ出していた。

 聞く気になれなかったのと待ち伏せと言った罠の様にも思えたからだ。

 この時点でのあたしゃは、人を信じるって事をしなかったからな。

 そしてそれから一週間位が経過した頃、あたしゃは命の危機に陥っていた。

 あすなろ市に来てから、あたしゃはプレイアデス聖団との対峙して以降、殆ど《魔女》を倒す事が出来なかったあたしゃは、多少の焦りを感じながらも《魔女》を倒す為に手近な結界へと入り込んだ。

今にして思えばもう少し慎重に行動するべきだったのかも知れない。あたしゃは、初めて感じる波長の魔力に違和感を覚えたが、最深部において直ぐに《蝶の魔女》と遭遇し倒す事が出来た。

 けれど《蝶の魔女》は1匹だけでは、無かった。

 無数の蝶が。否。《蝶の魔女》が群を作って結界に蔓延っていた。予想外に遭遇した無数の魔女にあたしゃは、嬲られ無数の傷を負い魔力を消耗していた。

 正直、死ぬと思った。

 契約をする直前と同じであたしゃは死が間近に迫っている事を感じ取っていた。

(あーあ。自業自得か)

 そう思いながらもあたしゃは、両手に構えた短刀を離す事は無かった。

 勝ち目が無くても戦う事を放棄する気は無かったからだ。

 そんなあたしゃに無数の《使い魔》が身体に噛み付いて来て痛みが、体中に広がり堪え切れない程、強くなって行く。

 最早、悲鳴を上げる事も出来ないあたしゃだったが、死が近くなっていく感覚だけは途切れなかった。

 突然、痛みが消失した。気が付くとあたしゃの足元には、魔法陣が組まれあたしゃの視線の先には黒い帽子を被ったあの少女と6人の仲間達が、あたしゃに背を向けて《蝶の魔女の群》と対峙していた。

「なんで・・・」

 思わずあたしゃは、そう呟いていた。

「わたし達は、仲間だよ。同じ《魔法少女》なんだから」

 振り向き答えた黒い帽子の少女の言葉には、重みがあった。

 他人の言葉に始めてあたしゃは・・・。重みを感じた。

 あたしゃの目の前で黒い帽子を被った少女率いる《プレイアデス聖団》は、《蝶の魔女の群》に戦いを挑んだ。

 群と群の戦い。でもただ本能のままに暴れるだけの《魔女》や《使い魔》では、《プレイアデス聖団》に勝つ事は難しかった。

 完璧な魔法の連携、そして合体魔法。他者と真の意味で力を合わせて戦う《プレイアデス聖団》を見て、あたしゃが思ったのは羨ましさだった。

 あれが友情なのかも知れないと思った。あたしゃが今まで知らず得る事も出来ず、物語の中にしか無いと思っていた物だった。

「友情の力か・・・」

 あたしゃは、無意識の内に苦笑し《プレイアデス聖団》が《蝶の魔女の群》を殲滅したのを見届けると同時にその場に倒れ込んでしまった。

 

 

 

 

『さあ目覚めなさい』

 鳴海がそう宣言すると同時に繭は破られた。繭の中から人の手足が覗き始める。

 人は子宮から産まれ繭から生まれるのは昆虫と言うのが常識だ。

 綾羽鳴海が、蝶の羽を自らの身体に生やした事から魔人は、人と同じ産まれ方を出来なかったのかも知れなかった。

 そもそも産まれると言う表現があっていないのかも知れなかった。

 実際には、捕らえた《魔法少女》を、繭の中で身体を作り返る昆虫の蛹の様にしてしまったに過ぎないのだから。

 でも精神を0から構築されたのだとすれば生まれると言うのもまた当て嵌まるかも知れなかった。

 鳴海の目の前で3人の少女が繭を破って生まれ変わっていた。

 繭から這い出て来た3人の少女の瞳は、虚ろとしており未だ意識が、ハッキリとしている様に見えなかったが、鳴海は3人に語り掛けた。

『あなたは、ネリ―よ。ネリーと言うのがあなたの名前よ』

 修道服を着た少女、ネリーへと鳴海は、そう語り掛けた。

『そしてあなたは、シーラ』

 和服を着た少女にも続いて語りかける。

『最後にあなたは、リセムよ』

 シンプルなドレスと長手袋をした一番小柄な少女に鳴海は語りかける。

 程なくして虚ろだった3人の少女の瞳に知性の光が灯り始める。

 現状を認識し存在を確認する。1つの個体としての精神が目覚めた証とも言えた。

『さあ。まずは、お勉強の時間よ。3人には必要な仕事があるんだから』

 笑みを浮かべ語りかける鳴海の瞳には、余裕が見え隠れするが今の3人には、分からない事でもあった。

 

 

 

 

 無意識の内に開いた視界に写る景色を、ぼんやりと見ている内にあたしゃの意識はハッキリとし、ここが知らない部屋だと言う事に気が付いた。

 起き上がると知らない部屋のベッドに寝かされていた事に気が付き戦闘で追った筈の傷が感知している事も直ぐに分かった。

「助けられたのか?」

 あの黒い帽子を被った少女達、プレイアデス聖団があたしゃを助けてくれた事は、頭の悪いあたしゃにも直ぐに連想が出来た。

「気が付いたのね」

 声のした方を向くと開かれたドアの前に青い髪と冷静な目をした少女があたしゃの様子を見ていた。

「ケガの治療は終わっているからもう動けるでしょう?食欲があるのなら食事でもどうかしら?」

 直ぐに返事をしないあたしゃだったが空腹に負けて結局、承諾した。

 食卓に向かうとオレンジ色の髪をした快活な印象を与える少女と、あの黒い帽子を被った少女が私服を着てテーブルの周囲に並ぶ椅子に座っていた。促されてあたしゃも座った。

「気が付いたんだ。良かったあ。丁度良いからみんなで一緒にお昼を食べよう!」

 黒い帽子を被っていた少女はそう言ってあたしゃを席に促した。

「そうだ。まだ名乗ってなかったね。わたしはミチル。和紗ミチル。みんなはカズミって言うんだ。よろしくね」

 あたしゃの前の席に座るミチルは満面の笑みであたしゃに手を差し出して来た。

 どうすべきか悩んだが、食事を出された手前、握り返さないのも失礼かと思いぎこちなく握り返した。

「私は御崎海香。あなたは沙我の様な人ね」

 言われた言葉を理解出来ずに困惑したあたしゃを見てテーブルを挟んで斜め前に座る海香は呆れた様子を見せながらも言葉を続けた。

「沙我の花言葉は反抗よ」

「何だと!?」

 思わずあたしゃは身を乗り出し目の前に

「くふふ」

 思わず反抗してしまったあたしゃを見て快活な印象を与える少女は、短めにしたオレンジ色の髪を揺らしながら笑っていた。

「そんなに反抗する事、ないんじゃ無いか?あたしは牧カオルだ。よろしくな」

 あたしゃの隣に座っていたカオルがあたしゃの手を引っ張って椅子に座らせた。

「まずは、冷めない内にお料理を召し上がれ。全部、わたしが作ったんだから」

「遠慮なくいただく事にするよ」

 答えてあたしゃは食事を始めた。食べていてこんなに旨い食事を食ったのは何時の事だろうと思い返していた。脳裏に死んでしまった両親の顔が浮かんだ。

(あの頃のあたしゃは幸せだったのかも知れないな)

 苦笑しながらあたしゃは食事を完食していた。

「旨かったよ。助けて貰った上にこんなに旨い食事を食わせて貰って感謝しているよ。でも・・・。どうしてあたしゃを助けたんだ?」

「決まってるよ」

 ミチルの言葉に(やはり何か魂胆でもあるのか?)とあたしゃは、つい勘繰ってしまった。

「困っている仲間を助けるのは当然の事だよ!」

 混じりけの無い一直線な回答にあたしゃは、少し驚いていた。

「どうしてだい?他の土地じゃあ魔法少女同士の縄張り争いが激しいのにどうしてそんな事が言えるんだ?」

「他がそうかも知れないからと言って全てが同じとは限らないわ。あなたが見ているのだって魔法少女の一面に過ぎないのよ」

 窘める様に海香は、あたしゃにそう語り掛けて来た。

「そうさ。カズミが助けたいと思うならあたし達は協力するさ。友達を助けるのなんて当たり前だろ」

 カオルの答えを聞いてあたしゃは、彼女達は他の魔法少女と違うモノを持っていると感じていた。大抵の魔法少女が無くした何かを彼女達は持ち続けているとあたしゃは思えて仕方なかった。

(変わった奴等だ)

 それがあたしゃの抱いた素直な感情でもあった。

 食事を終えるとカズミは、暫く泊まって行ったら言いと提案し傷の癒えていないあたしゃもそれを受け入れる事にした。

 海香に案内それて客間にあたしゃは、通された。

「この部屋は客間だから自由に使ってくれて言いそうよ」

「なあ。さっきのシャガ見たいな人って何だ?」

 出ようとする海香にあたしゃは先程の言葉の意味を尋ねた。

「そうね。関心を抱く事が無ければ、花言葉なんて知る筈が無い物ね。沙我(シャガ)は、アヤメ科の花よ。そして花には昔から花言葉と言う言葉と意味が付けられているわ。沙我と言う花が持つ花言葉は反抗」

「それであたしゃが、沙我見たいな人だと。確かにその通りだな」

 苦笑したあたしゃは、そのまま海香に背を向けてベッドに向かおうとした。

「でも、花言葉は1つの花に1つでは無いわ。反抗の他にも複数の意味が存在するわ。他の意味になれるかどうかは、あなた次第よ」

 その言葉を残して海香は、扉を閉めて出て行った。

「他の意味か・・・。あたしゃは、なれるんか?」

 ベッドに座り自問自答するあたしゃだったが、答えは出なかった。

 この時のあたしゃは、まだ答えを出す事が出来なかった。

 

 

 

 

 彩月を抱えた栗栖は跳躍を繰り返すと直ぐにリンドウ市にある山林地帯へと到着するとそのまま綾羽鳴海の構成する結界の中へと入り込んだ。

 キュウべえから事前に誘導されていた為に栗栖は、効率的に着地と同時に結界へと入り込んでいた。

 着地と同時に栗栖は彩月を放り上げた。

 突然の行動に驚く彩月だったが、既に人間では経験し得ない高速移動によって頭がぼんやりとしていた彩月は何も反応する事が出来なかった。

 同時に栗栖は左腕に箒を実体化させると足を軸にする事で身体を回転しながら全方位へと穂先を撃った。

 命中率よりも多くの穂先を撃つ事に特化した鋭い穂先は、既に栗栖と彩月を取り囲んでいた《使い魔》を次々と引き裂いて行く。それでも数体の《使い魔》が残ったが、それを見届けた栗栖は、タイミング良く落花して来た彩月を背中の方から片手で受け止め地面に立たせると同時に彩月の肩に手を置いたと同時に上空へと跳躍すると同時に上空から箒の鋭い穂先を残った《使い魔》へと撃った。今度は命中率を重視して一発ずつ確実に撃った。

 撃たれた鋭い穂先は確実に《使い魔》を引き裂き絶命させた。

 栗栖が跳躍から降りて来ると彩月はその場に座り込んでしまった。

「どうかしましたか?先へ進みましょう」

「あのなぁ・・・。ウチは普通の人間やで。あんな高速移動やいきなり上に投げ飛ばされて直ぐに落ち着けると思うんかい!?」

 彩月からのツッコミを受けて栗栖は考えてみた。

 確かに栗栖は、朱奈を助ける為に彩月の同行を許可したが囮として使うかも知れないと告げていた。ただ上へ投げたり、高速移動をするとは告げていなかったと思い至る事は出来た。

「確かに説明を不足していました。申し訳ありません」

 彩月の言う事を栗栖は分かった様に思え安堵し掛けた。

「ですが、こうして体験したのですから先程と同じ状況なら同じ行動をとっても直ぐに受け入れられるでしょう」

 栗栖は真顔で結論を彩月に告げていた。本気と言う事を彩月が悟るまでも無かった。

「行きましょう」

 彩月を促して栗栖は、歩を進めて行く。彩月は少し後悔の様な物を心に感じながらも栗栖の魔法が必要だと言う事を認めて付いて行った。

 

 

 

 

 あれから数日間。あたしゃは和紗ミチルの家に留まり続けていた。

 同時にプレイアデス聖団の残りのメンバーとも引き合わされた。

 浅海サキ、若葉みらい、神那ニコ、宇佐美里美。

 恩人でもあるミチルの紹介でもあってあたしゃはぎこちなく彼女達と接していた。

 プレイアデス聖団のメンバーは、ミチルの事をカズミと読んでいたが、あたしゃは、合わせる気にならずミチルと呼び続けていた。

 学業があるプレイアデス聖団のメンバーに代わってあたしゃは昼間に《魔女》の探索を行うと言う提案をしてミチルの家で厄介になっていた様なモノだった。

 最も《使い魔》なんかは放置しようとしていたが、そんな事は出来なかった。

 ある日、パトロールと称して買い物をしていると《使い魔》の気配を感じ取った。

 別段、倒す必要性を感じずに無視しようとしたら

 

 

(カズミが知ったら悲しむぞと)

 

 

 突然送られて来たテレパシーの方角に目を向けるとそこには神那ニコが離れた場所からあたしゃの様子を窺っていた。

「なんで・・・!?」

 あたしゃはプレイアデス聖団のメンバーは全員、学校に通っていると聞いていた。

 神那ニコは、あたしゃの腕を引っ張って《使い魔》の居場所へ近い人通りの少ない路地裏へと連れて来た。

「信用してない訳じゃあ無いけど見張らせて貰ったぞと。みんなにも話してないけど実は私は色々あって学校には行っていない。他の地域の魔法少女が、どうだかは知らないけど私たちは、使い魔を放置したりはしない方針だぞ」

 ニコは魔法少女としての姿に変身すると結界へと足を向ける。

「この事をみんなに伝える気は無いから次からは《使い魔》も倒す事だぞ」

「分かったよ。じゃあ、あたしゃも一緒に戦うよ」

 そう言われてあたしゃは何故か反感を覚えず素直に従っていた。

 次の日からは《魔女》、《使い魔》を問わずにとにかく戦いを挑みなるべく倒していた。

 どうしてニコの言葉に従ったのかその時は良く分からないままだった。

 がむしゃらに《魔女》や《使い魔》と戦い続けたあたしゃは、傷だらけになって帰る事が多かった。それでもミチルはあたしゃの事を助けてくれたが・・・。流石にこれ以上、世話になるのは、プレイアデス聖団に悪いと思いあたしゃは夜中に黙ってミチルの家を抜け出した。あすなろ市を去る為に。

 あすなろ市を駆け抜ける途中で結界を見つけて足を止めたあたしゃは習慣的に結界へと入り込んだ。

(ここでの最後の狩りか・・・。まあ悪くは無いか・・・)

 そう思い結界の最深部へいつも通りに向かっていた。妙に魔力の波長が感じづらいと思うと同時にこれがプレイアデス聖団に助けられた切っ掛けとなった《蝶の魔女の群》と同じだと気が付いた時には既に遅かった。

 無数に現れた《蝶の魔女の群》を前にあたしゃは、再び逃げる事も出来ずに倒された。

 意識はあったが反撃する事も出来ない位、身体を痛め付けられあたしゃはどうする事も出来ずにいた。

(同じ相手にやられるなんて情けないねぇ・・・)

 黙って出て行ったからミチル達が助けに来る事はあり得なかった。

 今度こそあたしゃは死ぬと思っていた。

 明日なろうとする自分になる事も出来ないままに。

 その時、あたしゃの身体を魔力による防御壁が包み込みあたしゃを守った。

(あたしゃが使った魔法では無い。じゃあ誰があたしゃを?)

 閉ざされていない視界で周囲を見渡そうとした時、

「世話が焼けるわね。出て行きたいならちゃんと伝えれば良いでしょう。無理に引き止めたりはしないわ」

 そう言って現れたのは魔法少女姿の海香だった。

「海香!?どうして・・・」

「私だけじゃ無いわよ」

 海香の声に合わせる様に次々とカオル、サキ、みらい、ニコ、里美、それにミチルが結界の中に姿を現した。

「心配したよ。どうして勝手に出てったりしたの?」

 ミチルにそう言われてあたしゃは、直ぐに返答出来なかった。その間にも蝶の魔女の群は攻撃を仕掛けて来る。

 あたしゃを守る海香の防護壁を中心にプレイアデス聖団は迎撃を開始する。

「なんでなんだ・・・。どうして勝手に出てったあたしゃを助けてくれるんだ!?あたしゃを助けたって何の利益はねえぞ!」

「そんな事無い!」

 真っ先にあたしゃの言葉をミチルは否定した。

「友達を助けようとするのに利益とか、そんな事は、関係無いよ!」

 言い切るミチルの声を聞いて大剣を振るうみらいも笑みを浮かべる。

「ボクは、今の友達に会って救われた。だからみんなが、キミを助けたいと思うのなら助ける」

 サキに最も懐いていたみらいまでもが、そんな事を言い出した。

「たとえ何度、拒絶されようと私は、あなたを助けるわ」

 ニコと共に魔法を放つ里美までそう言ってくれた。

「わたしたちは、もう友達なんだから!」

 何故だか視界がぼやけた。どうやら涙を流していたらしい。悲しくも無いのに涙を流すなんてまるで漫画かアニメのキャラクターだと思えた。けどあたしゃはその時、それでも悪くない気分だった。

 再びあたしゃは、プレイアデス聖団に命を救われた。

 あたしゃの怪我自体は、大した事は無く次の日には直ぐに身体を動かす事が出来る様になっていた。その日の夜にあたしゃは、ミチルに頼んでプレイアデス聖団全員をミチルの家に集めて貰った。

「プレイアデス聖団のみんなに何度も助けて貰ってあたしゃは、感謝してるよ。だから・・・。あたしゃの過去を話したい。あたしゃは、みんなが思っている程、綺麗な人間じゃ無い」

 そこであたしゃは、過去を全て話した。

 金持ちの両親の元に生まれ、両親の死後は、叔父夫婦に引き取られたが自分勝手に日常を過ごしキュウべえとの契約で叔父夫婦を餓死させた事。

 生まれ育った街を《他の魔法少女》によって追放された事。

 全てを話した。

 もしかしたら軽蔑されるかも知れないが、それでもあたしゃは、話したかった。

 あたしゃの事を知って欲しかった。

「これが今まであたしゃが生きて来た全てだ。どうだい?最低な人間だろう?」

 プレイアデス聖団の面々は、顔を伏せていた。無理も無いかとあたしゃは思っていた。

 こんな話を聞かされりゃあ大抵の人間は軽蔑するだろ。

「辛い過去を背負うのは、1人だけじゃない。私たちだって辛い過去を背負っている」

 暫くしてサキが、あたしゃにそう言って来た。

 それからプレイアデス聖団の面々は自らの過去を話し始めた。

 正直、あたしゃと比べ物にならない位、辛い目に合っている様に思えた。

「でもあたしゃは罪人だぞ。人が死ぬ様に仕向けた」

「そんな事は無いわ。あなたの願いはあなたが生きる為に必要だったのよ。それに私、いいえ。どんな人間だって大小問わず罪を背負っているわ。この世に本当の意味で清廉潔白な人間なんていないわ」

 海香の言葉に全員が思いを張り巡らせた。

「もし何も罪を犯した事が無い人がいるとしたら、それは決して現実では存在しない空想の存在だと思うわ」

 作家でもある海香の言葉には独特の重みがあった。

「罪を背負う事をやめちゃ行けないぞと」

暫くしてニコが口を開いた。

「自分の罪を自覚する事は、大切なんだから」

 あたしゃを見てニコは、そう言っていたが、視線は何処か遠くを見ている様にあたしゃは感じていた。

「そうだよ。私たちは、同じ魔法少女。いっしょに背負うから」

 そう言ってミチルは、あたしゃに抱きついて来た。

 戸惑うあたしゃだったが何時の間にか、みんなで抱き合っていた。

 あたしゃは生まれて初めて本当の意味での友達が出来ていた。

 それから三日後・・・。あたしゃは、あすなろ市を出て行く事を決めていた。

 プレイアデス聖団のメンバーには、理由を話して了承を得ていた。

 このまま、彼女達の好意に甘え続けるのは、良くないとあたしゃは、自らの意思で導き出していた。だからこそ、あすなろ市を去る事にした。

 あすなろ市と隣町の境までプレイアデス聖団はあたしゃを送ってくれた。

「本当に行っちゃうの?」

 ミチルが寂しげに語って来る。それを聞くと少しだけ迷ったが強い気持ちでねじ伏せた。

「ああ。このまま好意に甘えるのは、良くないだろ。それにあたしゃは、この街で、明日、なりたい自分になる事が出来たからな。だから・・・」

 一度、言葉を切りあたしゃが抱く思いを再確認する。

「今度は、あたしゃがこの街に友達を連れて来る。プレイアデスのみんなに自慢出来る様な友達をな」

 そう言ってあたしゃは笑って見せた。

「そうなんだ。寂しいけどお別れなんだね。決意は変わらないんだね・・・」

 寂しげな表情を見せるミチルだったが、あたしゃの決意を受け入れようと努力をしている様だった。

「やっぱりあなたは、沙我の様な人ね」

 唐突に海香が喋り出した。

「沙我のもう1つの花言葉は、強い決意よ」

「ああ。この強い決意は、変わらない」

「じゃあ、あなたの決意が成就する事を期待してるわ」

 海香はあたしゃの決意を認めてくれた様だった。

 だからもう1つ宣言する事にする。

「それから・・・。あたしゃの事は、これからは、沙我樹理亜(しゃがじゅりあ)と呼んでくれ。今のあたしゃは、前とは違うからな」

「決意の改名か。良いんじゃないか?自分の好きな名前を名乗って」

 苦笑した表情を見せてニコは、そう語っていた。

「みんな。ありがとな。必ず友達を連れて会いに来るからな」

 皆に手を振ってあたしゃは、走り出した。自分の足で大地を踏み締め走る。プレイアデス聖団の姿が見えなくなるまで手を振った。

 これが、あたしゃの初めての友達との出会いだった。

 そして始めての別れでもあった。

 

 

 

 

 過去を思い出していた事に気が付いたあたしゃは、思わず周囲を見渡していた。

 当たり前だが誰もいないマンションの屋上だった。

「あたしゃは、どうしたら良いんだ?」

 もう答えは出ているのに迷っているあたしゃは自問自答を再び繰り返していた。

 その時、何故かプレイアデス聖団のみんなが語った言葉が再び脳裏に蘇った。まるで彼女達が傍にいる様に声が聞こえた気がした。

 

 

「あなたは沙我の様な人ね。沙我の花言葉は反抗よ」

 海香。

「そんなに反抗する事、ないんじゃ無いか?」

 カオル。

「辛い過去を背負うのは、1人だけじゃない。私たちだって辛い過去を背負っている」

 サキ。

「ボクは、今の友達に会って救われた。だからみんなが、キミを助けたいと思うのなら助ける」

 みらい。

「たとえ何度、拒絶されようと私は、あなたを助けるわ」

 里美。

「罪を背負う事をやめちゃ行けないぞと」

ニコ。

「私たちは、同じ魔法少女。いっしょに背負うから」

 ミチル。

 

 

 いない筈なのに何故かあたしゃは、あたしゃの後ろにプレイアデス聖団がいる様に感じていた。これからあたしゃが行う行動を予見し、応援する為に。

 そしてもう1人、あたしゃが始めて自分から作った友達の声が聞こえた気がした。

 

 

「もうお判りなのでしょう?既に回答心下(かいとうしんか)は得ているのですから」

 

 

 スミレ・・・。あたしゃはアンタの代わりには、なる事は出来なかった。

 アンタが余りに凄い人過ぎてアンタが消えたらみんなが悲しむんじゃ無いかと思った。

 あたしゃがこんなに悲しいんだから。だからあたしゃは、スミレになろうとした。

 でも・・・。間違いだったんだな。

 だって、それは、あたしゃが悲しみから逃れようとした逃げだったんだから。

 あたしゃは、自分の心を壊す事でそこから逃れようとしていたんだな。

 でも・・・。もうあたしゃは逃げない事にする。

 スミレ。アンタが死んだ事はやっぱり伝える人には伝えなきゃいけないんだな。

 そうだ。あたしゃは前にも友達が死んで悲しい思いをした筈だったんだ。

 まだミチルとの約束は果たせていない。

「間違えて、それを自覚したら、正しい方向へ行く」

 そう独り言を呟いた時、何故かプレイアデス聖団とスミレがあたしゃの背中を押してくれた気がした。

(キュウべえ!聞こえるか?)

(なんだい?樹理亜。君から呼び出すなんて珍しいね)

 テレパシーに答えながら樹理亜の傍にキュウべえは姿を現した。

(あの2人・・・。朱奈を助けに行った2人は、どうしたんだ?)

 キュウべえを掴み上げながら樹理亜は、問い掛けていた。

(栗栖と彩月なら既に綾羽鳴海の構築した結界に入り込んだよ)

 返答を聞いた樹理亜は、ここで初めて朱奈と一緒にいた少女の名前が彩月だと知った。

(あたしゃも綾羽鳴海の結界に行きたい。案内してくれるか?)

(それは・・・。良いのかい?正直、君が行ってくれるとは、思わなかったよ。でも正直な所、勝ち目があるとは思えないよ。それでも良いのかい?)

(それでも良いさ。負けっ放しは、あたしゃの性に合わないからな)

(極めて感情的な反応だね。僕にはとても理解出来ない)

(構わないさ。お互い利用しあう。それが最も理想的だろ)

 そう言って樹理亜は肩に乗せたキュウべえが示した方角に向かって跳躍した。街の中を駆け巡り一気に結界の中へ入り込みながら魔法少女としての姿を取った。結界の中を落花しながら落花地点において《使い魔》と戦っている栗栖と彩月の姿が樹理亜の目に写った。

 2人を囲む《使い魔》の姿を見て右の掌に力を込めると樹理亜の右手には2本の短刀が柄の部分で合体し歪曲した片方の刃を上に、片方の刃を下に向ける事で弓の様な形状を取った。

「一気に倒すぞ!」

 叫ぶと同時に弓となった短刀から次々と光の矢が打たれて栗栖と彩月を囲んだ《使い魔》を一掃した。栗栖と彩月の傍に降り立った樹理亜を見て彩月は驚き、栗栖は無表情のままだった。

「何をしに来たのですか?」

 栗栖は無感情な質問をぶつけて来たが、正直な所、樹理亜も予想していたので怒る気にもなれなかった。

「綾羽鳴海の所に行くんだろ?あたしゃも一緒に行ってやるよ。負けっ放しは性に合わないからな」

「その言葉、信じて良えんか?」

 疑念をぶつける彩月に樹理亜は直ぐに頷いた。

「ああ。もう朱奈に聞きたい事は無いしな。それに・・・」

 一度、言葉を切り言葉を繋ぐ。

「悪い事をしたから償いに来たんだよ。それで良いだろ」

 目を合わせずにそっぽを向いて答えた樹理亜を見て彩月は、不器用なんだなと印象付けられた。

「そうですか。では行きましょう」

 話を聞いているのか、聞いていないのか栗栖は先を進み目を合わせた彩月と樹理亜も後に続いた。樹理亜の肩に乗っかっていたキュウべえも同じくである。

(まったく人間って言うのは分からないな。さっきまで殺し合っていた筈なのに共通の敵が現れると簡単に団結する。本当に人間と言うのは分からない存在だ)

 それでも観察する事への興味は尽きずキュウべえの瞳は興味深げに3人を見つめていた。

 

 

 

 

 朱奈が瞼を開くと、知らない天井が写り好奇心の示すままに起き上がり周囲を見つめて見ると見覚えも来た覚えの無い部屋に自分が寝かされていた事に気が付いた。

「何処・・・。ここは、何処なの?」

 良く見ると見覚えが無い訳でも無く朱奈が綾女と旅をしていた時に利用していたホテルに酷似しているのが分かった。

 隣のベッドには誰もいなかったが、猫ぐらいの大きさのぬいぐるみが置かれている事が暗い室内からでも窺う事が出来た。

 ルームライトらしきスイッチを押すとライトが付いたので習慣的に腕時計を見ると19時を回っていた。

「ここは、何処?それに・・・。さっちゃんは・・・。そう言えば・・・」

 口にする前に記憶を反芻し改めて朱奈は記憶を言葉にして見た。

「スミレさんに会った様な気がする・・・」

 それは、あり得ないと理性が否定するも混乱する朱奈は、何を事実としたら良いのか分からなかった。

 何故、彩月と分かれてここにいるのか朱奈は、まるで分かっていなかった。

「ようやく目え冴えたかい?お譲ちゃん」

 突然、頭の中に自分の物では無い声が響いて朱奈は思わず身を固めた。

 男性の様な喋り方だが、どうにも性別を感じさせない声に朱奈は戸惑いを覚えた。

 テレパシーを使う《魔法少女》は、曲がりなりにも女性しか居ない為に、何故か同姓だと分かる事が出来た。

 ところが今し方送られたテレパシーにはそう言った女性らしさと言ったモノが存在しなかった。

「ワイは、ここに居るぜ」

 そのテレパシーと同時に隣のベッドにいたぬいぐるみが朱奈の方へと動き出した。

「えっ!?ぬいぐるみが動いて喋った!?」

「おいおい。ワイはぬいぐるみじゃ無いぜ」

 オレンジ色で兎の様な長い耳をした緑色の瞳をした生き物は、朱奈にもハッキリと分かる笑みを浮かべていた。

「ワイは、マーシュって言うんだぜ。よろしくな。お譲ちゃん」

「マーシュ?あなたは・・・。誰なの?もしかしてキュウべえの仲間なの?」

 朱奈は姿を見た事が無いが、魔法少女に関する知識としてはキュウべえの存在を知ってはいた。

「おいおい。まあ確かにアイツとは、親戚見たいなもんだ。そこは否定しねえよ」

 朱奈の足元へと近付きながらマーシュは告げて来た。

「さて、起きたんなら行くぞ。付いて来な」

「何処へ行くの?」

「ご主人様の所だよ。ワイは、朱奈が起きたら連れて行く様に頼まれてんだ。さあ行くぜ」

 そう言ってマーシュは二足歩行の姿勢を取ると朱奈の手を取って先導し始めた。

 長い廊下を2人で歩いている間に朱奈はマーシュに質問をして見たがマーシュは、

「ワイが答えなくても良いだろ。どーせご主人が全部説明するんだからそれまで楽しみにしてろよ」

 と言って答えようとしなかった為、質問を諦めていた。

 やがて蝶の羽が彫られた扉の前に来るとマーシュは足を止めて扉をノックした。

「ご主人。朱奈が起きたらから連れて来たぜ。ほら。開けてくれよ!」

 ノックを何度も続けるマーシュを見て朱奈はご主人と言う人に失礼では?と思ったが口には出さなかった。

 直ぐに扉は開かれマーシュに先導されて朱奈は扉の向こうに敷かれた赤いカーペットの上を歩いて行った。

 その部屋の奥には階段状となって他よりも高い床がありそこには玉座の様な椅子が置かれ誰かが座っているのが朱奈にも見えていた。けれど玉座の周辺は薄暗くて座っている誰かの顔は分からなかった。

「ほら。朱奈。あれがご主人だ」

「でも・・・。あれじゃ誰だか分からないよ」

 正直な感想を漏らした朱奈にやれやれと言った様子を見せたマーシュはご主人の方に向き直り

「それもそうだ。もったいぶってねえで姿見せろよ」

 と言うと玉座に座る影は朱奈の方へと向かって来た。

 朱奈とマーシュのいる所は幸い灯りで灯されその顔は直ぐに朱奈の瞳に映し出された。

『久しぶりね。朱奈』

 




今回の話で初めて樹理亜の詳細な過去が判明しました。
プレイアデス聖団との絡みは、当初は無かった為に、ここまで執筆が遅れました。
申し訳ございません。

次回は、3人の新キャラが登場する話になります。

ネリー、シーラ、リセム。

3人の新キャラにご期待下さい。
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