偽書魔法少女じゅりあ×くりす☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI JURIA×KURISU MGICA   作:ジャックノルテ

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エピローグ

エピローグ

 

「さてこれにて偶然と言う奇跡によって誕生した《魔女》の起こり得ない進化系とも言える大きな脅威となるべき存在だった《魔人》は、自らの不始末によって絶滅してしまったわ」

 声の主がそう語った時、周囲から疑問の反応が聞こえて来た。

「ああ。二人だけ残った《魔人》の事?あの後、見滝原で起こった出来事で全てに決着が付けられたから、あの二人は何も成す事無く終わったわ」

 一息つくと声の主は言葉を続ける。

「今の人類、ホモ・サピエンスよりも、ネアンデルタール人の方が頑強な肉体を持っていたけど絶滅したわ。強いからって生き残られるとは、限らないのよ」

 声の主の言葉に頷く者も周囲に数人いた。

「けどまだ終わりじゃ無いわね。あの綾羽鳴海に入っていた、運命に変化を与え世界の流れに介入する因果の鎖。あの《虹色の鎖》は、これから作り主であるアイリス・アザレアへ戻り彼女を狂気へ駆り立てるのよ」

 周囲の疑問形の反応は声の主にとって計算内だった。

「ええ。あの《虹色の鎖》を作ったアイリス・アザレアが、《虹色の鎖》を取り込み、《魔法少女》として契約し、死の間際に《虹色の鎖》を作り出して、《虹色の鎖》は、綾羽鳴海を経てアイリス・アザレアへ取り込まれ、《魔法少女》としての契約を行う。つまり、堂々巡りだったと言う事ね」

 理解した者もいれば理解していない面々もいた。理解をする事が正しいとも、理解をしない事が間違っているとも声の主は思っていなかった。

「さて、それじゃあ次はここにいない彼女達の話をしましょうか」

 

 全ての《魔女》が消滅して新たな敵、《魔獣》のいる世界。

 筒地綾女は朱奈の右目に存在していた《右目の呪い》を、自らの眼球と交換する事で呪いと共に《円環の理》に導かれ、朱奈の眼前で消滅した。

「綾女ちゃん・・・。わたし・・・。生きるよ。これからの人生を生き抜いて見せるよ・・・」

 一人、戦いの終わった公園に残された朱奈は、筒地綾女がもういない事を心に刻み込みこれからの人生を生きる為の決意を固めていた。

 これからどうすべきなのか、右も左も分からない状況で投げ出されどうすべきか朱奈には分からかった。けれど、このまま《魔獣》との激闘で荒れ果てた公園に留まるのは良くないと分かっていた。

 だからとりあえず公園から出る事にした。幸い、綾女から幾らかのお金を受け取っていた。でも、ここから出たとしてこれからどうしたら良いのか、朱奈は見当が付かなかった。

「わたし・・・。どうしたら良いんだろう・・・」

 いきなりの躓きに朱奈の心は重く暗い思いが過った。

 けどもう綾女はいない。一人で、やれる範囲の事をやらなければいけないのだ。

 突然、寒気を感じた朱奈が寒気が漂う方向を見るとそこには《数匹の魔獣》がいた。

「魔獣!?」

 朱奈の右目は綾女の右目。右目に残る僅かな魔力が朱奈に《魔獣》の姿を見せていた。

 綾女が倒しきれなかった《魔獣》か、新たに現れた《魔獣》か、分からないが朱奈に出来る事はたった一つだった。

 逃げる。足が動く限り逃げるしか無かった。

《魔獣》のいる方とは逆の方へ逃げようとしたが、《魔獣》は素早い動きで直ぐに朱奈を包囲した。朱奈には直ぐに分かった。この《魔獣》が狙っているのは、朱奈の抱く感情だと。

「わたしを狙ってる・・・。でもわたしの・・・。わたしの感情は絶対にあなた達なんかに渡さない」

 精一杯の強がりを見せた朱奈の声にも《魔獣》は動じない。朱奈の心にある感情を食べ尽くそうとしわだらけの手を朱奈に伸ばして来た。

「来ないで!?」

 諦める事無く逃走しようとした朱奈の脳裏に

 

 

 

(今、あたしゃが、あたしゃ達が行く!!)

 

 

 

 聞いた事の無い声が、テレパシーとして響いて来た。

「えっ!?」

 驚く朱奈の眼前に上空からセーラー服を着た少女が箒を構えて降り立った。

 白と黒の入り混じった髪を生やし綾女と同じ箒を握り締めリュックを背負ったセーラー服の少女。綾女と同じ握り締める箒の形状だけで朱奈にはこの少女が綾女と関わりのある少女だと直ぐに分かった。

「諦めないで・・・下さい。自分は綾女さんから依頼を受けました。あなたを守り渡すべき物を渡せと。だから待ってて下さい」

 少女は箒を構え《魔獣》へと向き直る。

「自分は阿瀬比栗栖。朱奈さん。あなたの感情は《魔獣》に渡す様なモノではありません」

 栗栖は駆け出し箒の穂先を一気に《魔獣の群れ》に向け一斉に魔力で発射する。

 鋭い針となった穂先は次々と《魔獣》に突き刺さり《魔獣》の身体を消滅させる。

 穂先を放ちながら接近して一匹の《魔獣》に箒の柄を突き刺し確実な止めを刺す。

 その時、一匹の《魔獣》が栗栖の死角から攻撃を仕掛けようとして来た。

(やらせるかよ!)

 また響いたテレパシーと同時に栗栖の右手に輝いていたソウルジェムから人型の光が出ると両手に構えた短刀で《魔獣》に攻撃をした。朱奈の右目にはそれが勝気な少女の姿に見えていたが、まるで空中に投影された立体映像の様にも見えていた。

「樹理亜。余り出て来ない方がよろしいのでは?」

(そう言うなよ。たまにはあたしゃにも暴れさせろ)

「仕方ないですね」

 栗栖と幻影の様な樹理亜の猛攻の前に《魔獣》は直ぐに全滅していた。

《魔獣》を全滅させた栗栖は直ぐに朱奈を連れて公園から出ると別の公園に向かった。

 先程の公園と違い人が通る道に外灯が施され夜でも一定の人が出入りしている交番の近くに作られた明るい公園だった。人の数はまばらで話を聞かれる心配は無かった。

「あの・・・。栗栖さん。助けてくれてありがとう・・・。でもどうしてわたしを助けてくれたの?」

「自分は綾女さんから依頼を受けていました。それだけです」

(もっと他にも言う事があるだろ)

 素っ気無いとも取れる栗栖の反応を見かねたのか樹理亜のテレパシーが割り込んで来た。

(まあ、あたしゃも栗栖も綾女さんには貸しがあるからな)

 そう言って樹理亜は、貸しの内容をテレパシーで話し始めた。要所に栗栖の説明もあり朱奈にも分かりやすく話そうとしていた。

 沙我樹理亜は朱奈も知っている雨津木スミレと共に《魔獣》と戦っていた。

 しかし綾女と共闘した戦いの中でスミレは円環の理に導かれ樹理亜は肉体を失いソウルジェムだけになってしまった。スミレは円環の理に導かれる直前に綾女に樹理亜のソウルジェムを託した。

 やがて綾女は旅の中で《魔獣》と戦う力を求める阿瀬比栗栖と出会い綾女は樹理亜のソウルジェムを加工して栗栖と魔力の回線で繋ぐ事で栗栖に戦う力を与えると同時に樹理亜には栗栖の身体を間借りし、ピンチの時には魔力で作った身体で戦う事が出来る様にしていた。こうして栗栖はいわゆる《半魔法少女》となり樹理亜は《ソウルジェム》だけになったのだった。

(まあそんなこんなで、デカい貸しがあるからそれを返す為に綾女さんからの依頼で動いたのさ)

 一通り、自分達の説明を終えた樹理亜と栗栖の話を聞いて朱奈は二人が助けてくれた理由と経緯を理解出来た。

 これも綾女の作った、人と人との繋がりが朱奈を助ける為に動いた事と言えた。

「これを渡しに来ました」

 栗栖はそう言いながら背負ったリュックから厚い封筒取り出した。

「これは何?」

「綾女さんが作った朱奈さんの戸籍、本籍、銀行口座、記憶喪失の診断書、その他諸々、これから先において生きて行く為に必要な物です」

「えっ・・・。こんなに色々・・・。綾女ちゃんはわたしの為に・・・」

 封筒の中身をざっと見た朱奈は、綾女が如何に朱奈の事を大切に想い様々な行動して来たのかを知った。

「自分は、この封筒の中身をどうやって綾女さんが手に入れたのかは知りません。ですが、これだけ色々用意していたのだから、朱奈さんは綾女さんにとって大切なのでしょう」

(それは大切な人って言うんじゃねーか?)

「大切な人です」

(言い直すのが遅せーよ)

 栗栖の無味乾燥とした言い方に樹理亜は突っ込むが栗栖は特に態度を改めない。

「ですから朱奈さん。あなたはこれからこの公園を出て直ぐの所にある交番に行って下さい。自分がどうしてここにいるのか分からないと言って」

「どうして?」

(その方が警察とか、あれだ。何か手助けしてくれる国の機関にも言い訳も出来るし助けて貰い易いだろ。それに・・・。その方が良いだろ)

 栗栖の提案に疑問を抱いた朱奈に樹理亜は、不器用な答えを示した。

「もう各地を放浪する事はありません。綾女さんはあなたに勉強をするチャンスを与えたのだと思います」

「綾女ちゃん・・・」

(まあ分かっただろ。それが綾女さんの望みでもあるのさ)

「うん・・・。でもわたし、それで良いのかな・・・」

「もし旅に出たいのなら、一先ず学校に行って勉強をして独り立ちしてからでも遅くないのではないでしょうか?」

(ああ。あたしゃもそう思うぜ。今はまだ、子供だろ?独り立ち出来る様になるまで、勉強したり友達と出会ったりするのも良いんじゃねえか?《魔法少女》と関わらない普通の生き方って奴を経験するのも悪く無いと思うぜ)

 迷う朱奈の心を樹理亜と栗栖の言葉が迷いを解して行く。

「自分は朱奈さんが目の届く範囲にいるなら必ず助けます」

(まあ、あたしゃ達もいつまでいられるか、分からないけどな)

 不器用に優しく背中を押す言葉を受けて朱奈の心は決まった。

「ありがとう・・・。綾女ちゃんありがとう・・・。それに栗栖さんも樹理亜さんもありがとう・・・」

「自分は依頼を果たしただけです」

(まあこれで少しは貸しを返せたかな?)

 朱奈には二人の回答が照れ隠しの回答にも聞こえた。

「わたし・・・。警察へ行くね。栗栖さん。樹理亜さん。また会えるのかな?」

「ええ。会うのは構いません。朱奈さんの居場所はキュウべえに調べさせますので」

(まあアイツにだってそれ位、出来るだろ)

「じゃあさよなら」

 栗栖と樹理亜に手を振り朱奈は一人で警察へ駈け込んで行った。その足に迷いは無い。

 それを見届けると栗栖も帰路に付く事にした。

(なあ栗栖。今度、あすなろ市へ行ってくれよ)

「何故ですか?」

(あの街には、あたしゃの友達がいるからな。会えるのなら、また会いてえな。こんな姿だけどな)

 樹理亜の寂し気な様子は栗栖に伝わったかは分からない。だが・・・。

「そうですか。近い内に機会を作ります。綾女さんの様に自分達は、いつ円環の理に導かれてもおかしくありませんから」

 意外な栗栖の回答に樹理亜は少し驚いていた。驚きを隠すために話題を変えた。

(そうだな。その時まで、せめて人助けに《魔獣》でも倒すか)

「はい。それが《魔法少女》と言う事ですね」

(まあ半分だけだけどな)

「ええ。半分だけでも、自分は最後まで戦います」

(ああ。あたしゃもそれに付き合うぜ)

 栗栖と樹理亜は二人で同じ道を歩いて行く。

 かつての綾女と朱奈の様に・・・。

 

 

 

 

「記憶喪失で保護された朱奈はこの後、風見野市の児童保護施設に保護されてそこから学校に通う様になったわ。そこで朱奈は親友となる菖蒲彩月と出会う。菖蒲彩月も私が施した実験体の一人。世間は広い様で狭いわね。まさか朱奈と彩月さんが出会い友人になるなんて私も思わなかったわ」

 円環の理の中で声の主こと筒地綾女はそう語っていた。

「ここまで話を聞けば貴女達にも、そう思えるでしょ?」

 綾女が目を向けた方向には綾女と関わりのある《魔法少女達》が並んでいる。

 

 

 

「この世界は天空海闊(てんくうかいかつ)の様に見えて意外と狭いのですね。私めには意外でした」

「アタクシは興味が無いわぁ。でもぉ、人との繋がりが良い事も悪い事も呼び込むのはぁ、確かよぉ。アタクシは、それを良く知ってるからぁ・・・」

「璃阿は・・・。朱奈さんが生きてて良いのではと思います。家族に先立たれるのは、悲しいので・・・」

 雨津木スミレ、伊良草優里、瑞光璃阿。それぞれ筒地綾女と大きな関わりのある《魔法少女》だった円環の理に導かれた少女達。

 

 

 

『朱奈・・・。やっぱりワタシは筒地綾女じゃない。でもここから見る貴女は愛しいわ・・・。貴女に止めを刺されても貴女を憎めないから・・・』

『ハァ。どうせあたくし達はここから出られねえんだぁ。まあ良い映画を見たと思うさぁ』

『リセムはー。ここにいるとみんなやさしいからここがいいー』

『ええ。璃阿、では無くてネリーの様な《魔人》でもここでは、人生を終えた一人の少女に過ぎませんから』

円環の理に導かれたかつての《魔人達》綾羽鳴海、シーラ・Y・ルイン、リセム・エベント、ネリー・ハーガ。

「はあ。まあワイはご主人に作られたからついでに導かれた様なモノか」

《魔人》の手でインキュベーターを解体して作られたマーシュも《使い魔認定》されたのか円環の理に導かれていた。

「じゃあ私達はここから見守っていましょうか。これから世界がどうなるのかを・・・」

 筒地綾女の言葉に全員が頷いた。

 この魔獣の世界にはまだ、朱奈も、彩月も、栗栖も、樹理亜もいる。

 だからこそ見守って行きたいと綾女達は本心から思っていた。

 そして今日も朱奈は、彩月は、栗栖は、樹理亜は、大切な今を一歩ずつ生きていた。

 

 




これにて本編は一区切り。
次回は外伝を一本だけ執筆したいと思います。
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