偽書魔法少女じゅりあ×くりす☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI JURIA×KURISU MGICA   作:ジャックノルテ

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外伝 まったくあたしゃらしくない

《魔女》の作り出した結界の中に一人の少女が囚われていた。

 何か心に悩みの様な物を抱いていたのか?何か心に抱いた思いがあるからこそ少女は結界に囚われていたのかも知れなかった。

《使い魔》が少女に近づこうとした時、両手に《短刀を構えた少女》が《使い魔》を一閃すると《使い魔》は消滅して行った。

「たくっ。ようやく《使い魔》を倒せたか。手間どらせやがって」

《短刀を構えた少女》=後に樹理亜と呼ばれる事になる少女は、倒れている少女に目もくれずに結界の最下層を目指そうとしていた。

 その時、突然《無数の魔法少女》の気配が樹理亜と少女を包囲しているのを感じ取り周囲を改めて見渡すと、周囲に次々と《無数の魔法少女》が表れていた。

 よく見れば彼女達は共通の紋章の様な物を付けていた。その紋章は、ある程度、《魔法少女》として活動していれば知っている紋章だった。

「《魔法少女隊グロリオーサ》。何でこんな所に・・・」

 警戒して武器の構えを解かない樹理亜の眼前に《魔法少女達》の列を割ってリーダーと思しき《魔法少女》が姿を現した。

「璃阿は《グロリオーサ》の指揮官瑞光璃阿。この《魔女》は我々が倒します」

 指揮官である瑞光璃阿の言葉に苛立ちを感じる樹理亜は感じたままの言葉で反論する。

「はあ!?先に見つけたのはあたしゃだぞ。何で譲んなきゃ行けないんだよ!」

「既に《グロリオーサの魔法少女》が、この結界の《魔女》と戦っています」

 視線を結界の壁に移すと結界の壁が揺れて景色が歪んでいるのが分かった。

 瑞光璃阿の言う事が正しいと言うのは、直ぐに樹理亜にも分かった。

「成程な・・・。分かったよ。あたしゃは手を引く。それで良いんだろ」

 そう言って樹理亜は元来た方向へ帰ろうとした。

「出て行くのならそこの少女もお願いします。それで少しは善行を積めるでしょう?」

「注文が多いな。これで良いんだろ?じゃあな」

 仕方なく樹理亜は倒れていた少女を連れて結界を出る事にした。

 瑞光璃阿はその様子を見て自身が冷静に物事を限り無く無感情に対処出来ている事を再確認していた。瑞光璃阿は数日前に公園で出会った《極めて感情の薄い少女》の精神に興味を持ち自身の解析魔法でデータを取っていた。解析したデータを元に自身の精神をアップデートしていたのだ。

「璃阿は《グロリオーサ》に相応しくなった。だからこそ理不尽の極みである《魔女》は全て《グロリオーサ》が倒す」

 璃阿は確かに無感情だったが、その精神は理不尽への憤りと言う妄念に囚われている事に本人は気が付いていなかった。

 結界を出て《魔法少女》としての変身を解いた樹理亜が周囲を見渡すと、そこは公園でありとりあえず少女をベンチに寝かせた。少女はどうやら気を失っているだけの様だった。

「まったく、これが骨折り損のくたびれ儲けか・・・」

 喉が渇いたので樹理亜は近くの自販機で缶のサイダーを買った。最初は自分の分だけ買おうと思ったが、思い直して気絶している少女の為にペットボトルのお茶を一本買う事にした。

「まったくあたしゃらしくない。今日は厄日か」

 ベンチに戻ると少女は気が付いて起き上がっていた。

 気が付いたのかと樹理亜が思ったその時、近くでボールを蹴っていた少年達のボールが弾みで少女に向かって飛んでしまった!

「きゃあ」

「チッ!!」

 思わず飛び出した樹理亜は《魔法少女》に無意識に内に変身して跳躍して一気に距離を詰めると飛んで来るボールと少女の間に割って入ってボールを片手で弾いた。

「ボール遊びなら向こうでやれよ!休んでる人がいるだろ!」

「ごめんなさーい」

 樹理亜の怒声を聞いて少年達は素直に謝ると離れた位置に向かった。

「大丈夫かよ?」

「うん。ありがとう・・・」

 驚いている少女が樹理亜を見つめる視線が少し怪訝な物に思えたが、初対面の相手に警戒してるんだろうと思った樹理亜は、とりあえず持っていたペットボトルのお茶を差し出した。

「あんたそこで倒れてたんだぜ。これでも飲んで落ち着けよ」

 出来るだけ愛想よく樹理亜は言ったつもりだったが少女の表情は強張ったままだった。

「ありがとう・・・。その・・・。凄いドレスだね・・・」

「え?あー!?」

 そこで初めて樹理亜は自分が《魔法少女》に変身したままだと気が付いた。

 変身を解く訳にも行かず、とりあえずこのままでいる事にした。

 とは言え、こんな場所にドレスでいる自分を勘違いさせるのは嫌だからとりあえずの言い訳位はしておこうと思った。

「そうだな・・・。このドレスはな・・・。アレだよ。あたしゃはカボチャの馬車に乗り遅れたシンデレラって所さ。だからあたしゃを置いてったカボチャの馬車をこれから捕まえに行くんだよ」

 樹理亜の言葉に最初は驚いていた少女だったが、すぐに笑い出した。

「えー。そっ・・そうなの?」

「そうだよ。じゃなきゃこんなドレスをこんな真昼間から着る理由が無いだろ」

 おどけて言って見せた樹理亜の言葉に少女は笑い樹理亜もつられて笑っていた。

「ところで何で倒れてたんだよ?悩みでもあって悩み過ぎたのかよ?」

 何気なく言った樹理亜の言葉に少女の表情が暗くなった。

「言いたくなきゃ言わなくても良いぞ」

 ベンチに座る樹理亜の言葉を聞いて少女はゆっくりと話し始めた。

「わたしね・・・。最近弟が生まれたんだけど・・・。パパもママも弟に構い切りで少し寂しいんだ・・・。それに最近、友達が飼っていた犬が死んじゃって凄く落ち込んじゃって・・・。それでわたし・・・。何も出来てないなって悩んじゃって・・・」

 少女の悩みを聞いた樹理亜だったが適切な助言が出来る自信は正直無かった。

「そうだな・・・。あたしゃにも両親がいた。けど死んじまった。両親がいなくて寂しいってのは分かるぜ。友達は・・・。あたしゃにはいねーなあ。ペットも飼った事がねー。でもよ、昔良く行った動物園でお気に入りの猿が死んじまったのは悲しかったな・・・。あたしゃが言えるのはこれ位か」

 樹理亜の言葉は少女に響いているのか分からなかった。

「正直、両親が死んでから良い事が起こっているとは思わない。でも、昔見たアニメで言ってたぜ。悲しい事も良い事も人生では続いて行く。今日は、悲しくても、明日は、良い事があるのかもしれないって言ってた気がする。だからあたしゃは明日へ行きたいんだ」

 真摯な思いの籠った樹理亜の言葉に少女の表情が変わった気がした。

「明日・・・。明日は良い事あるのかな?」

「さあな。でも、明日を目指した方が面白そうだろ?」

 少女は樹理亜の答えに少し笑みを浮かべていた。

「少しは悩み解決したか?」

「うん。少し楽になった気がする・・・」

「そうかい。それならもう大丈夫だな。それじゃあたしゃはカボチャの馬車を探さなきゃ行けないからな!」

 そう言って樹理亜は少女の隣に座っていた腰を浮かせ立ち上がった。

「ありがとう。わたし、鹿目まどか!」

 少女が名前を告げたので、樹理亜も少し思案したが名前を名乗る事にした。

 この時、まだ樹理亜は沙我樹理亜では無い。

 

 

 

「衣笠瑞樹(きぬがさみずき)だ。じゃあな!」

 

 

 

 余り好きでは無い名前だったが、この時だけは誇らしく名乗る事が出来た。

 そのまま走った瑞樹=樹理亜は目の前に大きな木が生えているのを見てイタズラを閃き木の上に一気に跳躍し更にそこから近くの建物の上に跳躍した。

 まどかからは樹理亜が急に消えて見える筈だった。

 樹理亜の思った通り、まどかは樹理亜が跳躍した木の下に来て周囲を見渡していたが、見つからず樹理亜が消えた事に驚いている様子だった。

「あはは。純粋だな・・・。さて、あたしゃはどうするか・・・」

 ふと道路を見ると何処へ道路が続くのか書かれた道路標識が見えた。

 見滝原市市役所を抜けて、風見野市を経てあすなろ市へ続く道路だ。

「そうだな・・・。風見鶏みたいに右往左往するのはごめんだ。あたしゃは、明日、なりたい自分を定めたいから、明日へ行くか」

 誰に言う事無く樹理亜はあすなろ市へ続く道に足を向けていた。

あすなろ市で樹理亜は初めての友達と出会い、分かれ、サザンカ市で新たな友達と出会う事になった。

樹理亜はあすなろ市へ二度と帰る事が出来なかったが、樹理亜の友達は樹理亜の事を心配していた。

 

 

 

 

 その日も《ワルプルギスの夜》が出現する影響であすなろ市でも《魔女》や《使い魔》の活動が活発になっていた。

《3人の魔法少女》は、見事なコンビネーションで次々と《魔女》や《使い魔》を倒して行く。《魔女退治》を終えた3人は夜の公園から夜空を見ていた。

「ねえ、あの子は今、どうしているのかな?この街に友達を連れて来るって言った」

「あの子って・・・。そっか。かずみにも記憶があるんだもんな」

 かずみと言われた少女に《襟から翼の様なマフラーを生やした少女》も答える。

「きっと友達作りに苦戦してるか、何処か居心地のいい場所を見つけて帰るタイミングを計っているかどっちかでしょ。きっと何時か帰って来るわ」

《ベレー帽を被り眼鏡をかけた少女》が苦笑交じりに告げた一言にかずみと言われた少女は頷いた。

「戻って来たら、あすなろ市で起こった戦いの事を話さないと・・・。もういない友達もいるんだから・・・」

「そうね。私たちが引き起こした出来事を全て話さなきゃいけないわね」

「もう隠し事はごめんだからな」

 かずみの言葉に二人は頷いた。

「樹理亜。わたしはあなたの知っているわたしじゃ無いけど、わたしはあなたが帰って来るのをずっと待っているよ」

 それがかずみの偽りの無い本心だった。

 

 

 

 

まどかと樹理亜は、あれから二度と出会う事は無かった。

 どの世界においても・・・。

 しかし鹿目まどかが、《円環の理》となり世界を書き換えた時、樹理亜とまどかは、一瞬にして永遠の再会を果たしていた。

「まさかこんな所で再会するとはねえ・・・」

「うん。わたしも、瑞樹、じゃなくて樹理亜さんとこんな形で再会すると思わなかったよ」

「まあでも、あたしゃは特にアンタを励ました訳でも無いだろ?ここでは全てが見えるから、あたしゃが嫌々助けたのだって分かるんだろ?」

「うん。それも知ってる。でもね・・・。あの日、樹理亜さんはわたしを助けて他の人を助ける勇気を示してくれたよ。それにあんなに可愛らしいドレスで外を歩いていると思ったから凄い勇気がある人だと思ってたし・・・」

「最後のは皮肉か?」

「えっ?違うよ!だってわたしだってあんなドレスを着てみたいなあなんて憧れてたし・・・。だからね樹理亜さんのドレスのシルエットとわたしの《魔法少女》としての姿のシルエットは同じなんだよ」

「そうなのか?じゃあ少しは影響与えてるんだな」

「うん。もう直ぐ世界が書き換わるから樹理亜さんとこうやって話すのも終わっちゃうね」

「そうだな。んであたしゃはこれからどうなるんだ?」

「それは・・・。例え消えちゃう記憶だとしても知らない方が良いと思うの」

「まあそうだな。先の事なんて分からないから楽しいんだしな。あの日、あすなろ市へ向かったあたしゃみたいにな」

「うん。それじゃあわたしはみんなを迎えに行かなきゃ行けないから、またね。樹理亜さん」

「ああ。またいつか、ここに来れたら世話になるぜ」

「《魔法少女》だった子の魂は必ずここに来るから、それまでさよならだね」

「そうだな。あたしゃは、新しい世界でも友達に出会えるのかな・・・」

「きっと会えよ。会えるってわたしは思うから」

「ならあたしゃもそう思うよ」

そして世界は再編された。 

 




割と書きたい描写全てを強引に詰め込んだ外伝が完成しました。
これでじゅりあXくりすは一段落付きました。
この後は素案集をアップしたいと思います。

なお璃阿が語る感情の無い少女は栗栖の事を指しています。
あすなろ市のかずみは、昴かずみ、御崎海香と牧カオルを指してます。
樹理亜とまどかの魔法少女姿が似ている設定は、かずみ☆マギカ1巻でまどかと同じシルエットの魔法少女が書かれているが、この時点でまどかが契約していない事は明白な為、別人であると仮定して考えた設定ですが、ビジュアルのある漫画の方が適切だった描写だと思います。
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