偽書魔法少女じゅりあ×くりす☆マギカ PSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI JURIA×KURISU MGICA   作:ジャックノルテ

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第1話 どうして離さねんだよ・・・

 

 メモリー№‐m888036

 偽書魔法少女あやめ☆マギカ

 朱奈の章

第7話、幕間10以降、第9話以前の時間

 

 

 

 

「朱奈。遅うなったしもう帰るで」

「うん。そうだね。帰ろう」

 夕暮れに包まれた図書室の中で菖蒲彩月は壁に掛かった時計に視線を向けながら筒地朱奈に告げた。

 時間は既に17時を過ぎている。

 もう直ぐ図書室は閉まる時間だし帰るのには良い時間とも言えた。

 2人は共に読んでいた本を元の棚に戻し鞄を手に図書室を出て行った。

 廊下へ出ると彩月は右目が見えない朱奈を庇う様に右前に歩く。

 2人にとってそれは当たり前の歩き方だったのでそのまま歩いた。

 彩月が先を歩き朱奈が付いて行く。

 出会って数日に満たない2人にとってもうそれが当たり前の事だった。

 昇降口を出ると既に空は赤く染まっている。

 それだけでは無く赤い夕日が彩月と朱奈を包み込むように照らしている。

「見事な色やな」

 彩月は思ったままの事を小さく呟いていた。

 隣で朱奈は少しだけ戸惑った様子を見せていたが、彩月はそのまま足を踏み出した。

 別に誰に言うまでも無く心のままに小さく呟いたまで。

 朱奈に聞こえていようといなかろうとどっちでも良かった。

 それに朱奈は他者との会話に余り慣れておらず戸惑った様子を見せるのも彩月には珍しくは無かった。

「ねえ。さっちゃん」

 歩いていると朱奈が少し前を歩く彩月に話し掛けて来た。

「なんや?朱奈」

 朱奈の方に顔を向け彩月は答える。

 少しだけ背の高い彩月が朱奈を見下ろす形となり逆に朱奈は彩月を少しだけ見上げる構図となっていた。

「さっちゃんは関西の人なの?」

 意外な問い掛けに彩月は思わず苦笑していた。

 何時か来ると思っていた質問が来た事に対する予想通りと行った種類の笑みだったが朱奈にはそれが分からない。

(分かる筈も無いか。だって朱奈は・・・。幼いんやからな)

 心の中でそう思いながら彩月は言葉を返した。

「どうしてや?」

「だって関西の人みたいな話し方をしてるから」

 朱奈にはどうやらこの喋り方が関西の方言に聞こえるらしい。

 けれどそれは間違いだった。

 これはインチキな関西弁だ。

 本物とは似ても似つかない。

「生憎、ウチは関西の人間や無いで。ウチはずっとこの風見野で育ったんや」

「そうなの?」

 キョトンとした表情を見せた朱奈に彩月は言葉の方程式を頭の中で組み上げ答えに向かってゆっくりと話し始めた。

 余り早口に喋っても朱奈が理解出来ないと思ったからだ。

「ウチの両親はな舞台俳優なんや。これは前にも話したやろ?」

 朱奈が頷くのを待って話を続けた。

「母さんはウチを産んだ時には舞台俳優を休業しとった。けどな、父さんと家でも台詞の朗読なんかをして過ごす事もあったんや。ウチはな、両親の台詞の朗読を子守唄として聞きながら育ったんや。ウチが言葉を覚える頃には両親はインチキな関西弁を使う夫婦の役を演じていたらしいからウチはこんな変な言葉使いになってしまったんや」

 方程式から答えまでを聞いて朱奈は複雑な表情を見せていたが、ふと何かを思い出したかの様な表情を見せると言葉を発した。

「でもさっちゃん。先生達と話す時は何時もと違う言葉使いをするよ?」

(ああ。なるほど)

 そう言えば今日、担任の先生と話してる時に朱奈が私の横に居たな。

「使い分けってヤツやな。以前、この言葉使いで下らない注意を教師から受けた事があるんや。だから・・・。こんな風に使い分けられるよ?」

 最後の方に告げた言葉は声のトーンも何時もより低く伝わり易くして標準語にしていた。

「ただ正直、この喋り方は気に入らない。強要された喋りやからな」

 彩月は直ぐに何時もの口調に戻して言葉を続けた。

 驚いていた朱奈は口を開いたままだった。

「さっちゃん・・・。凄い」

「別にそうでも無いで。人は何をするにしても適切な道具を使うやろ?それと同じ事や。適切な言葉使いを使えばそれで得えんや」

 そう言いながら彩月は制服のポケットから何かを取り出すと口に含んだ。

「朱奈もどうや?ウチのお勧めのチョコレートやで?」

「ありがとう。チョコレートは大好き!」

 朱奈は彩月から手渡されたチョコレートを疑う事無く口に含んだ。

 途端に朱奈の顔が少しだけ赤みが増して行く。

「さっちゃん・・・。これ・・・」

「ん?朱奈にはまだアルコール入りのチョコは速かったんか?」

 彩月が振り返ると朱奈は顔を真っ赤にして口を押さえて立ち尽くしていた。

「大丈夫なんか?」

「ちょっと立ってられない・・・」

「しょうがないな。近くに公園に行くで」

 直ぐに彩月は朱奈に肩を貸すと近場にある公園に足を進めた。

 ふら付きながらも朱奈は彩月に歩を合わせる。

 公園には誰もおらず彩月は直ぐに朱奈をベンチの上で横にした。

「大丈夫なんか?朱奈?」

「うん・・・。大丈夫・・・」

 頭を押さえて答える朱奈の声は弱々しく大丈夫には見えなかった。

(まさかここまで弱いとは思わんかったで・・・)

 そう思いながらも彩月は、ポケットからアルコール入りのチョコレートを取り出すと口に含んだ。

(この独特の苦味がええんやけどな・・・)

 朱奈に進めるなら別のチョコレートにしようと彩月は考えていた。

 もう暫くすれば、この辺りは真っ暗になってしまう。

 流石にそんな時間まで朱奈をベンチで寝かせる訳にも行かなかった。

 朱奈から公園に視線を移した時に彩月は違和感を覚えた。

 この公園は割と人通りの多い筈だった。

 でも今日は人が殆どいない。

「おかしいで・・・。まさなか・・・」

 呟きながらも彩月は早々にこの場を立ち去った方が良い気がしていた。

 確かな予感。

 それは不安と重なり不吉な予感として固まってしまっている。

「朱奈。そろそろ」

 行くで、と告げようとした彩月の言葉は途中で途切れた。

 突如として周囲の景色が歪んだからだ。

「まさか、結界!?」

 そう。彩月は知っていた。

 自身に埋め込まれた《魔法少女の記憶》からこの現象の正体を知っていた。

 咄嗟に彩月は朱奈の右手を掴んだ。

 結界の中では何が起こっても不思議ではない。

(けれど繋がっていれば離れる事は無い筈や)

 手の中に朱奈の温もりを感じながら周囲を見渡す。

 周囲は既にこの世の物とは思えない雰囲気へと変わり果てていた。

 けれど《魔法少女の記憶》の中に存在する結界と同じ違和感を醸し出していた。

 それは、この世、もしくは人の世界ではあり得ない光景と言う・・・。

 幸いにも朱奈は公園のベンチの代わりに出現した岩にそのまま眠る形となっていた。

 朱奈の様子をそっと窺うと朱奈は気を失っていた。

 どうやら結界内に充満している瘴気に当てられ気を失ったらしい。

 瘴気の存在は《魔法少女》では無いウチにも分かったが、まだ意識で押さえ込む事が出来る範囲だった。

 瘴気は《魔女》や《使い魔》の発する魔力から湧き出て来る有毒ガスの様な物。

《魔女》や《使い魔》は瘴気の発していないモノを獲物と認識して襲う傾向があると言う事を彩月は思い出していた。

(どうすればええんや!?朱奈は気絶しているんやしグズグズしとると《使い魔》か《魔女》に見つかってしまう!見つかれば2人とも死んでしまう・・・。生憎、ウチは《魔法少女》やない。襲われて戦う事なんて出来やしない・・・)

 彩月の頭の中にそうした考えが流れたのは一瞬の事だった。

 しかし事態を動かしてしまうのもまた一瞬で十分だった。

 

 

 ケタケタケタケタ

 

 

 不気味な笑い声が彩月と朱奈の周囲に響いたのは彩月の思考が流れたのと同じ一瞬の事だった。

「!」

 思わず彩月が再度、周囲を見渡した時、不気味な姿をした生き物が数匹、彩月と朱奈を包囲して様子を窺っていた。

 喜ぶその様子から彩月は《使い魔》だと推察する事が出来たが、最悪の状況となった事も彩月には飲み込めた。

「朱奈!」

 咄嗟に彩月は朱奈に声を掛けたが、反応は無かった。

 朱奈は未だ気を失っているらしかった。

 どうにか朱奈を連れようと彩月は朱奈を動かそうとした時、今までよりも甲高い声を上げた《使い魔達》が彩月と朱奈に近付いて来た!

(どうすればええんや!?いや・・・。どうにもならへんか・・・)

 頭の中にある《魔法少女》の記憶がどうにもならないと言う事を伝えて来る。

 そう。どうにもなる筈が無い。

 足が震えて動く事も出来ず《魔法少女》では無い朱奈にも彩月にもどうする事も出来ない。

 終わり・・・。

 その言葉だけが彩月の頭の中を駆け巡っている。

 気絶した朱奈の手を再度、強く握ると彩月は思わず閉じようとした瞼を閉じなかった。

「せめて・・・。自分の最後は目に焼き付けたいんや!」

 彩月自身は大声を出そうとしていた。

 けれど出たのは小さな声だった。

 それを自覚し彩月は思わず苦笑した。

(そっか。ウチはまだ・・・。記憶を埋め込まれる切っ掛けとなったあの時、《使い魔》に殺されかけたのがトラウマになってるんか・・・)

 包囲を狭めた《使い魔》が近付いて来るが、彩月には最早、どうしようも無かった。

 諦めが彩月の心を埋めようとしたその時、風を切る音がしたかと思うと次々と《使い魔》が切り刻まれた!

 彩月が驚きを整理する間もなく周囲を包囲した《使い魔》は消滅した。

「なっ何が起こったんや?」

 彩月には何が起こったのか驚きの余り見当が付かなかった。

 いいや。見当が付かなかった訳では無い。

 それは頭に答えが過ぎる前に現れたのだから。

 

 

 

「あー。余計なのがいるが旨く行ったか」

 

 

 

 突如として声が彩月の背後から放たれた。

 思わず後ろを振り返った彩月の視界にこちらに向かって来る何かが写った。

 いや。何かではない。

 声は少女の物だった。

 つまりここに現れたのは・・・。

「《魔法少女》・・・」

 彩月の眼前に現れたのは、飛んで来た何かを右手で握り締めるオレンジの髪を生やした一人の少女だった。

 短刀を握り締めポニーテールの髪形に清楚な外見をしていたが、何か違和感があった。

 言うなれば彼女自身が発している殺気とでも言うべき攻撃的な雰囲気と視線で全てを台無しにしている様な感じだと彩月は感じていた。

「うおい。テメーだ。テメー」

 いきなり《短刀の魔法少女》は煩わしそうに彩月へ手を向けると手首を振った。

「あたしゃあ、テメーに用は無いんだ。そこで寝てるガキに用があるんだ。とっととどいてくれ!」

 右手に持った短刀を彩月に向けながら《短刀の魔法少女》は、高圧的に命令した。

 普段の彩月なら従わなかったかも知れない。

 けれど今の彩月は先程まで命を奪われなけない状況に身を置いた事で萎縮していた。

 恐怖に身を任せてそのまま朱奈の傍から離れようとする。

 自らが握った朱奈の手を離そうとしたが離れなかった。

 彩月が視線を向けると朱奈の手が彩月の手を握り締めて離さなかった。

「朱奈・・・」

「おい。とっとと離れろお!テメーは邪魔なんだよ!」

《短刀の魔法少女》は再度、高圧的な命令を下して来る。

 朱奈の手が彩月の手を弱々しい力で握り帰して来るのを感じた彩月は視線を《魔法少女》に戻した。

「離さないで」

 ハッキリと拒絶の意思を示す。

「何だと?」

 苛立ちを持った《短刀の魔法少女》の視線に敵意が含まれて来るのが彩月にもハッキリと分かった。

「ウチはアンタの言う事なんか聞かへんと言うとるんや!」

 ハッキリとした拒絶の意思。

 彩月はそれを《短刀の魔法少女》にぶつけていた。

 恐怖が無い訳では無い。

 現に彩月の心には恐怖が渦巻いていた。

 けれど目の前にいる《短刀の魔法少女》に従うつもりが無かった。

「ハッ。勝手にしろ!」

 呆れた様に告げた《短刀の魔法少女》の姿が、彩月の視界から消えたと思った瞬間、

 

 

 

「離せないなら離してやるよ」

 

 

 

 そっと耳打ちする声が彩月の耳に聞こえた瞬間に彩月は思わず自分の右手を見ていた。

 右手に《短刀の魔法少女》の握る短刀が刺さっていた。

「ッアァアアアアア!」

 思わず彩月は悲鳴を上げ、朱奈との手を離してその場に倒れ込んだ。

 短刀は腕に深く刺さっていなかった。

 けれど痛みは彩月が、これまで人生の中で感じた最大限の痛みだった。

 彩月は、もうその場に蹲る事しか出来なかった。

 意識はある。

 ただ《短刀の魔法少女》が朱奈に近付くのを見ている事しか出来なかった。

「どうして離さねんだよ・・・」

 彩月を見下ろす《短刀の魔法少女》の瞳には、先程まであった怒りが消えていた。

 むしろ哀れみとも言える、やり切れない感情を見せていたが、彩月にはそれを感じ取る事が出来なかった。

 彩月と《短刀の魔法少女》の重なっていた視線が途切れた。

 右手の短刀を振り上げ《短刀の魔法少女》は、倒れた朱奈のいる方へ向かった。

 朱奈の顔を確認する様に一瞥すると手にした短刀を朱奈の胸元に突き付けた。

「わりいけど、あたしゃあこれしか方法が思い浮かばなかったからな」

《短刀の魔法少女》が短刀に力を込めようとした時、不意に薄く朱奈の瞳が開いた。

 

 

 

「□□□・・・」

 

 

 

 それは朱奈の口から小さく漏れた言葉だった。

 けれど倒れる彩月には、聞こえなかったが、《短刀の魔法少女》には、はっきりと聞こえていた。

 ハッとした表情を見せた《短刀の魔法少女》は慌てて短刀を朱奈の胸元から外したが、同時に朱奈はそのまま瞳を閉じてしまった。

 倒れる彩月にも《短刀の魔法少女》が狼狽している様子が見て取れた。

「何で・・・。何でその名前を知ってんだよ」

 朱奈から離れて体全体を震わせながら《短刀の魔法少女》は、左手で頭を押さえていた。

「どうすりゃ良いんだよ!?でもこうしねえと・・・」

 再び《短刀の魔法少女》が倒れた朱奈に近付こうとした時、《短刀の魔法少女》と朱奈の間に何かが割り込んで来た。

「お前は!」

《短刀の魔法少女》が、叫ぶと同時に後方へと飛んだ。

 その時、初めて彩月には、割り込んで来た何かが少女だと分かった。

 朦朧とする意識の中でもハッキリと見る事が出来た。

 自分と同じ年位で眼鏡を掛けた《セーラー服を着た少女》だ。

 特徴的なのは髪だった。

 自分と同じ位の年にも関わらず黒い髪には既に半分も白髪が混じっている。

「また邪魔をすんのか!阿瀬比栗栖!」

《短刀の魔法少女》の罵倒にも《セーラー服を着た少女》は動じない。

 と言うよりもまるで表情を動かさない様に彩月には見えた。

《セーラー服を着た少女》は左手を掲げた。

 するとそこから光に包まれて箒が現れ同時に箒は《セーラー服を着た少女》の手から飛んで行き虚を付く形となって《短刀の魔法少女》へとぶつかり結界の奥へと飛ばして行く。

「ちっくしょう!」

《短刀の魔法少女》は叫ぶが後の祭りだった。

 それを見て安心した彩月は瞼を閉じてそのまま意識を失いそうになった。

 けれど歯を食いしばって意識を保ち・・・。

瞼を開いた。

 すると彩月の目の前には《セーラー服を着た少女》が立っていた。

 倒れる彩月からは、見上げる形で《セーラー服を着た少女》を見る形となりスカートの下にスパッツを履いているのが見えた。

(スポーツでもやってるんか?)

 どうでも良い事なのだが彩月の頭にはそんな考えが過ぎった。

 すると《セーラー服を着た少女》は、怪我をした彩月の右手に両手を添えた。

 左手には白とオレンジに輝くソウルジェムと思しき宝石が嵌められたグローブの様な物を付けている。

 両手から光が溢れると彩月の右手に生じていた傷は見る間に回復して行った。

 同時に彩月の腕からは痛みが消えていた。

 けれど少し血が足りないのか頭がぼんやりとしていた。

「怪我は大丈夫です。ここから出ましょう」

《セーラー服を着た少女》は彩月の手を握って引っ張り朱奈の方へ行くと朱奈を片手で抱き抱えると迷う事無く1つの方角へ足を向ける。

 その間、彩月は質問をしようかと思ったが頭がぼんやりとして質問する事が出来なかった。

 4・5分程、歩くと、景色が歪み結界から抜け出て元の公園に戻ったのが彩月にも分かった。

 外はもう真っ暗だったが星が見える事と何と言えば良いのか、人間がいると言う事、特有の雰囲気を彩月は感じていた。

(ウチは帰って来れたんやな・・・)

《セーラー服を着た少女》は朱奈を片手で起用にベンチの上に寝かせると彩月から手を離すと一瞥する事無く公園の出口へと向かった。

「待ってくれへん!?」

 彩月の言葉に《セーラー服を着た少女》は足を止めた。

「自分に用があるのですか?」

 振り向く事無く答えた《セーラー服を着た少女》にとっつき難さを感じながらも彩月は一番気になっている質問をぶつけた。

「何が起こってるんや?さっきの《魔法少女》は誰や?それにアンタはどうしてウチと朱奈を助けてくれたんや?」

 彩月の質問に少しの間を置いて《セーラー服を着た少女》は答えた。

「相手の事は自分にも分かりません。けど自分は朱奈さんは守ります。それが秩序を守る事に繋がるんですから」

 言い終えると同時に《セーラー服を着た少女》は公園から歩いて出て行ってしまった。

 血を失ったばかりの彩月には追い掛けようという気力も無くただ見送る事しか出来なかった。

「う・・・ん・・」

 ベンチの上に眠る朱奈が目覚めたのを感じた彩月はまず朱奈に駆け寄って無事を確かめる事を優先した。

「朱奈。大丈夫か?朱奈!」

「う・・・ん。さっちゃん?どうしたの?わたし・・・。夢を見ていたのかな?」

「そうやな。良く眠ってたで。もうこんなに暗いんやから帰らんと」

「そうだよね。やっぱりわたし、眠って夢を見ていたんだ。だってもう・・・空は青黒いんだから・・・」

「どうして青黒いんや?」

「空は青いから暗くなると紺色になるからかな?」

「朱奈らしいで。さあ、帰るで」

「うん」

 彩月の出した右手を握って朱奈は立ち上がると2人は帰路に付いた。

 朱奈は先程の戦いを気が付かないままでいる。

 彩月には話すつもりが無かった。

 けれど戦いは終わる筈が無いと言う予感を彩月は感じていた。

 出来たら当たらないで欲しい予感だったが今回ばかりはそうも行かない様な気がしていた。

 これからの前途を象徴する様に彩月の目の前で灯る1つの街灯が点滅して周囲を一瞬だが暗闇に包まれた。

 直ぐに街灯は灯ったが彩月にはそれがこれから起こる出来事を予兆している様に感じられた。

 

 

 




次回は新キャラの過去を描いて行きたいと思います。
一人ずつ描いてから話を進めたいと思います。
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