「捕獲用ネットあげろー!奴は突っ込んでくるから気をつけろよー!!」
オービル整備士長の怒鳴り声がモビルスーツ・ハンガーに響いた。被弾した味方機のザクが着艦するからだ。ハッチが開放される、整備士たちはモビルスーツの捕獲用ネットを張る。制御のきかない機体はこのネットで受け止めるのだ。
「ずいぶん派手にやられてますね」
整備士副長のタカギがオービルに呟く。オービルは苦い顔をし、近付いてくるザクを観察する。
タカギの言う通りだ。右腕と左足が無くなり、胴体部分も被弾したらしい。ブスブスと煙が出ているのがわかる。ボロボロのザクが捕獲ネットに突っ込んだ。と、同時に力を失ったように動かなくなった。
「まぁ、よく戻ったもんだな」
半ば呆れながらオービルは呟いた。
ボロボロになりながらも帰艦したザクに、整備士たちが取り付く。
「どれ、パイロットは無事かな?」
若い整備士がコクピットハッチの開閉ボタンを操作する。すると、プシューッという音と共にハッチが開いた。パイロットはいた。両手は操縦幹を握ったまま、ヘルメットを被った頭はうなだれている。 恐らく着艦したと同時に安心して気絶したのだろう。
シートベルトが外され、パイロットは機体から運びだされた。
整備士2人に肩を担がれ、運ばれていくパイロットの後ろ姿を見送りながら、オービルは「よく生きて戻ったな・・」と小さな声で語りかけた。
「哨戒任務中に連邦の小隊に見つかったらしいですよ、相手はジムが3機。運がいいのか悪いのか・・」
タカギがオービルに言う。
「生きて帰れただけでも幸運さ。」
オービルは表情も変えずに答える。
実際、このパイロットは幸運だった。哨戒任務で自衛する程度の武装しか持ち合わせていなかった事と、ザクが機動力重視で軽装甲だった事だ。下手に武装していたら応戦しており、逃げる決断が出来なかっただろう。それに、敵のジムはビーム兵器を持っていなかったようだ。ザクに刻まれた被弾痕は総て実弾によるものだからだ。追撃もないので、敵も消耗していたのだろう。でなければ今頃、連邦の艦隊に囲まれている。
「このザクはもう駄目だ、バラして使えるパーツは残せ。残りはリサイクルだ」
オービルは部下の整備士に指示を出した。資源に乏しいジオンでは金属のリサイクルは義務化されていた。
オービルは自室に戻ると、PCをたちあげ業務日誌をつけ始めた。
現場主義のオービルにとって、こういう事務仕事は正直苦手である。30分程かかり、日誌をつけ終わると、それをLINEを通じて艦長に送った。
「さあて・・今日も無事に終わったな」
オービルは冷蔵庫から酒を取り出した。
戦場じゃ明日には消えてしまうかも知れない命・・・今日を生き延びた事に感謝しつつ酒を煽った。