深海棲艦との戦いは終わった。
そして提督は退役することを決断し、ある海辺の町で夕張と暮らすことにした。
そんな日々の、とある1日。

※作者は脆弱鎮守府の貧弱提督です。
また艦これのSSを書くのも初めてです。
でも夕張への溢れる愛を抑えきれなかった。
如月ショック?そんなの無かった。

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深海棲艦との戦いは終わった。
そして提督は退役することを決断し、ある海辺の町で夕張と暮らすことにした。
そんな日々の、とある1日。

※作者は脆弱鎮守府の貧弱提督です。
でも夕張への溢れる愛を抑えきれなかった。
如月ショック?そんなの無かった。


【艦これ】夕張と生きる

「おはよ」

 

目が覚めれば、そこに彼女がいる。

その幸せは他のどんな物にも代え難い。

 

「あぁ、お早う。夕張」

 

2人ともベッドに横たわり、顔を見つめ合いながら、微笑む。

彼女の、少し緑がかった銀の髪を撫でると、夕張は満足げに目を細めた。

 

「朝ごはん、何にする?」

「そうだな…白米と味噌汁、あとは漬物がいい」

「そんな質素なものばかりでいいの?」

「あぁ、満足だ」

 

優しげな瞳、慈しむような声。

自分の頰に触れる彼女の手には確かな温かみを感じる。

 

「それに、夕飯は『色々と試しちゃう』のだろう?」

「フフッ、『後で感想聞かせてね?』」

 

まだ私が提督と呼ばれ、彼女が艤装を着けて海上で戦っていた頃からの、やり取り。

彼女を生涯の伴侶に選んでから、それは特別な、けれどもお決まりのものになっている。

 

「じゃあ、パパッと作っちゃいますね」

 

夕張がゆっくりと体を起こす。

いつ見ても透き通るような肌だ。いつもは結い上げている髪は下ろされ、少し乱れている。

控えめだが、それでもきちんと存在を主張する胸。

背中からウエスト、そしてヒップへと続くなだらかな曲線。

自然に手が彼女の背筋を触り、そのまま窪みに沿って、つぅと撫でる。

 

「んっ…。もう、昨日はあんなにしたじゃない」

「好きなものは、どれだけ食べても飽きないタイプでな」

 

体を起こした夕張が、4つんばいに、私にのしかかってきた。

 

「飽きないだけじゃイヤ。夢中にはならないの?」

「さぁ、夕張次第かな?」

 

このっ、と夕張が肌を合わせてきた。

首筋を這う彼女の舌。私の両手は彼女の背中とお尻に吸いつく。

あぁ、今日の朝餉も遅くなるな、と舌を絡ませながら思った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ごちそうさま。美味しかった」

「はい、お粗末さま」

 

食後の煎茶を飲みながら時間を確認すると、時計の短針は9時を指していた。

ふむ、もう少しだけ店を開けるまで時間があるな。

夕張が台所で洗い物している音を聞きながら、ベランダに向かう。

 

目の前に広がる、青い海と砂浜。遠くには小島がちらほらと霞んで見える。

ポケットからタバコを取り出すと、火をつけ、煙を吸い込む。

ゆらゆらと天に登る紫煙。波の音。うみねこの声。セミの残響。

快晴の日差しと、初夏の潮風を感じながら、煙を吐き出した。

こんなに穏やかな日曜の朝を過ごせるようになるとは、少し前まで思いもよらなかった。

 

「はい、今日はもう残り4本ね」

 

洗い物を終えた夕張がエプロンで手を拭きながら、ベランダにやって来た。

 

「ふむ。もう少し制限を緩くしても良いのではないか」

「ダメです。ただでさえ提督時代はヘビーでチェーンな喫煙者だったんだから」

「それはそうだが、タバコの効用を確認せずに禁止するのはどうだろうか。タバコのニコチンは脳をリラックスさせる物質を…」

「もうキスしてあげないわよ」

 

うぐ。それはたまらない。

が、このまま負けるのも癪なので反撃を試みる。

 

「キスしないと困るのは夕張の方じゃないのか?」

「あら。じゃあどちらが先に音を上げるか、試してみます?」

 

ささっと脳内シミュレーションを展開する。

3秒かけて弾き出した結果は、俺の戦略的敗北だった。

 

「分かった分かった。残り5本な」

「なにさり気に本数増やしてるの」

 

夕張がほっぺをつねってくる。

いつも通りの穏やかな朝。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

11時、店のシャッターを開ける。

町の修理屋さん、そう呼ばれている店を俺たちは営んでいる。

対象は子供のおもちゃから工場の設備までなんでもやる。

ただ実を言えば、俺たち二人は修理が本分ではない。

俺も夕張も本業は開発だし、鎮守府にいた頃の修理作業は明石がメインの仕事だった。

 

 

深海棲艦との戦いが終わり、退役当初はダラダラとゆっくり暮らすのもいいかと思っていたが、

ある子供のラジコンヘリを修理し、しかも夕張が魔改造を施したところ、子供達からの人気が急上昇。

色々と子供達のおもちゃを修理したり、喜びそうなものを作っている間に、親御さんなんかの評価も上昇、電化製品の設置や修理、改良を施し始めた。

そうこうしている内に今では調理器具や家具の開発販売もしている。

 

「んんー今日もいい天気」

「そうだな」

 

つなぎや工具を入れたガチ袋を装着した夕張が伸びをしている。

早速、工具の動作確認やメンテナンスをしていたのだろう、

もう鼻筋に薄黒くオイルがついている。

気が早いな、と俺は笑うが拭ってやることはしない。

 

「夕張お姉ちゃん、こんにちはっ!!」

「どうも夕張さん」

「おっ!ショウタくんにお父さん!今日はどうしました?」

 

そう言って快活に笑い、今日は何を作れるんだろうと心躍らせている女性。

その女性は魅力的すぎて、独占欲が強めの俺は彼女を誰にも渡したくない。

彼女のキレイな素顔は俺だけが知っていたいのだ。

 

「実は子供のラジコンカーの調子が悪いようでして」

「なるほど」

「右に曲がらないの…でね!そしてね!」

 

…いや、妻帯者や子供にも対抗心を燃やすあたり、俺も心が狭いな。

そう思って、俺も話の輪へ加わっていく。

 

 

1時間後。

ショウタくんは復活したラジコンカーを掲げて嬉しそうに飛び跳ねた。

 

「お姉ちゃん、ありがとー!!」

「いえいえ、どういたしまして。後で感想教えてね?」

「本当にいつもありがとうございます。しかも旦那さんに手を加えて頂いたお陰で、前より速くなったとかなんとか」

「いえいえ。男の子にとって速さはロマンですからね。ええ速いことはいいことです。速さこそが全てです。いろいろ積みすぎて遅いとかあっちゃいけませんよ!」

 

夕張のこめかみにビキッと青筋が浮かぶ。

その顔も可愛いなぁと思うあたり、俺はもう手遅れなんだろう。

 

「そういえば夕張お姉ちゃんは駆けっこが遅いよねー!」

「ちょ、ショウタくん!?」

「こら!ショウタ!失礼なことを言うんじゃない。すみません、ほんと」

「い、いえいえ〜、気にしないでください」

「それでは、私たちはこれで。今日はまたお昼過ぎに来ますね。ほらショウタ挨拶して」

「お姉ちゃん、お兄ちゃん、またねー!」

「ばいば〜い」

「楽しみにしてなー」

 

2人で挨拶をして、親子を見送る。

夕張は、まだ根に持っているのかジト目で俺を見てくる。

ふっ、もう少しいじめてやるか。

 

「『軽装甲』なのに足が遅いとは、これ如何に」

「お昼抜きでいいわよね?」

「すんませんでした」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ずずーっと蕎麦を啜る音だけが部屋に響く。

夕張に軽く怒られた後、俺たちは揃って蕎麦を食っていた。

 

「怒られて、その後に蕎麦を振舞われる…か」

「ふふっ、あの時のことね」

「あぁ」

 

俺は昔から技術者として動き回っていて、飯を作って食べる時間なんて惜しいと思い毎食カップラーメンで済ませていた。

提督として鎮守府に着任する前後は忙しさに拍車がかかり、即席麺どころかゼリーやブロック型の栄養補助食品で済ませるようになった。

最初期に俺の鎮守府にやって来ていた夕張は、そんな俺の食生活を見て聞いて、ブチ切れた。

 

『て、提督はいつもそんな食事なんですか!?』

『む、そうだな。問題はない』

『問題だらけでしょう!!』

『む、むむぅ?しかし栄養補助食品だから必要な栄養素は』

『 はんかくさい!!』

 

 

思い出話をすると、夕張が赤くなって上目遣いになる。

 

「はんかくさいって、北海道で愚かとかバカだとかいう意味なんだっけ?」

「いや、そういう風な意味合いを持ってはいるけど、そこまで真剣に…」

「今思えば、海軍将校を罵倒する艦娘というのも面白いな」

「それを良しとしちゃうから、あなたに罵詈雑言かける娘も出てきちゃうし」

「あれは彼女達なりのコミニュケーションだった、と夕張も分かってるだろう?」

「全くもう!」

 

そして思い出話を続ける。

夕張は何やら口を尖らせながら、蕎麦をつゆに浸している。

 

 

『ちょっと待っててください!待っててくださいね!?何も食べちゃダメですよ!!』

『…えっ』

『……ふむ』

『………早いとこ食べてしま』

『お待たせしましたっ!!!』

『うむっ、大丈夫だ。問題ない』

『?とにかく、はい!お蕎麦です』

『蕎麦…か。久しぶりに見るな』

『蕎麦は江戸時代のファーストフードって呼ばれていて、調理も簡単、食べるのも速い、滋養強壮効果もバッチリ!提督にオススメですよ!』

『…いい香りがするな』

『はい!さぁ、パパっと食べてしまって午後の執務に取り組みましょう!』

『…ずずーっ』

『…ずずーっ』

『ずずずーっ』

『ずずずーっ』

『ふむ…』

『提督…?』

『夕張…その…』

『…もしかして、お口に、合いませんでした?』

『いや、その…』

 

 

夕張はニヤッと笑う。

 

「『おかわりしたいのだが、あるだろうか?』って言ったのよね」

「し、仕方ないだろう!食べてたら急にお腹が空いたのだから!それに食べる機会が無かったのだから、一枚二枚という数え方も知らなかったのだ!」

 

今度は俺が顔を真っ赤にしている。

あれ以来、俺の好物といえば蕎麦であり、後に開かれることになる間宮や鳳翔のところでも蕎麦にかなり力を入れてもらっていた。

 

「はいはい、そんな若かりしあなたは、私しか知らないから安心してね」

「別に、そういうことでは…ずずーっ」

(…ふふっ。そう、私だけが知っているあなたの昔の顔。あの時の恥ずかしそうな顔)

 

 

夕張は先とは違って今は上機嫌なようだ。

女心とは秋の空か…まぁ、彼女が幸せならどんな空でも良いのだが。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

昼食を終え、夕張は溶接面を着けてバーナーを片手に、寸胴鍋を作っていた。

町のラーメン屋さんが鍋が古くなってきて、中々火も通らなくなってきたから、新調したいとのことだった。

夫婦はそれを快諾したのだが…夕張はふと手を止めて、1人考え込む。

寸胴。胸から腰にかけて起伏に乏しい様子。

夕張はバッバッと周りに誰もいないことを確認すると、自分の腰をつなぎの上から触り始める。

 

(この腰とお腹には自信があるんだけどなぁ)

 

今では着ることも無くなったが、軍属だった頃の彼女の服装は短い黒のセーラーであり、お腹と腰が見えていた…どころか自分でガッツリと見せていた。

ウエストのくびれ、お腹の瑞々しさ、更に言えばタイツで覆った脚の形には密かに自信を持っていた。

しかし…

 

(引っ込むところは引っ込んでるけど、出るところは出てないのよねぇ)

 

夕張は先ほど「軽装甲」と言われたことを思い出した。

 

(少しはサイズアップしたのかな…)

 

左の胸をムニっと持ち上げる。

理由は諸説あるが、女性の胸は右より左の方が若干大きい。

その大きい方を以ってしてもこのサイズか…と彼女は落ち込んでいる。

 

一応、彼女も鎮守府にいた頃から胸を大きくしようと努力はしてみたのだ。

 

とにかく牛乳を飲んでみた

→全く効果なし。

 

わかめをモシャモシャ食べてみた

→胃腸の調子が良くなった。胸に変化なし。

 

バストアップを謳うストレッチをやってみた

→身体が固くて伸ばすどころじゃなかった。

 

とりあえず腕立て伏せをしてみた

→ゆうばり の きんりょく が あがった 。しかし むね には なにも おきなかった 。

 

女性誌にブラがあるからダメなんだという一文を見つけた

→思い切って1日付けなかった。が、それを忘れて彼の前でタンクトップになって、「色々」あった。青葉を買収するのに大変だった。

 

はぁ…と夕張は遠い目をしてため息をつく。

そしてほんのり憂鬱な気持ちで鍋の製作を再開した。

 

(いや、夕張よ。お前の名誉のためにも付け加えるが、決して君の胸が小さいことはない。むしろそのカタチとその大きさのバランスは素晴らしいのだと断言しようじゃないか)

 

彼女の旦那は物陰から、割烹着姿でじーっと嫁を見つめていた。

 

(そして更に言えば、君のバストは間違いなく大きくなっているっ!!)

 

クワッと見開かれる彼の目。

それはまぁ確かに、彼にあれだけ「色々」とされれば大きくもなるだろう。

 

(しかし言わない。絶対に言わない。何故なら…)

 

夕張はまたもや手を止め、自分の胸を見つめ始めた。

 

(あの人も、私の胸が大きくなったら嬉しいわよね)

 

 

(…って悩んでいるだろう夕張はかわいいなぁ)

 

この男、実に幸せそうだが、残念な夫だ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

15時になった。いわゆるおやつの時間だ。

身につけていた割烹着を脱ぎ、夕張に声をかける。

 

「夕張、出来たぞ」

「はーい。今日は何にしたの?」

「初夏だからな、冷たいあんみつにしてみた」

「さっすがー!」

 

寸胴鍋を作り終えた夕張は、つなぎの上半身を脱ぎ、腕の部分を腰に巻きつける。

彼女の愛用する白いタンクトップから汗ばんだ腋がチラと見える。

顔は朝からオイルで薄汚れてしまっているが、冷たいあんみつを前にしてキラキラと輝いていて、額からこめかみを滴って流れ落ちる汗が余計の彼女の顔を爽やかにする。

 

「ほら、とりあえず手を洗って、汗を拭いてこい」

「はーい」

 

本当ならもっと見ていたいが、そろそろ町の人がくるのだ。その準備もある。

実はこの店は甘味処としての顔もある。

始めは修理品を受け取りに来た人をただ帰らせるのも、と思い甘味を振る舞っていたのだが、好評だったらしく、徐々に甘味目当てで修理に来る人、特に子供達が出始めた。

それならばと思い、15時から甘味処を開いてみると、すっかり人々の間で定着してしまった。

まぁ、さほど大きくない町で修理屋だけでは心許ないので、ちょうど良くはある。

ちなみにメニューは全て俺が作っているとはいえ、間宮のレシピが下地にある。評判が良いのも頷ける話だ。

 

「こんにちはー!」

「ごめんください」

「おやつおやつー!」

「こら、ショウタ!静かになさい!」

 

そうこうしている内に続々とおいでなすった。

日曜ということもあり、老若男女問わず人が集まってきた。

適当に座ってもらうよう促すと、あちらこちらで会話の華が咲く。

軽く汚れを落とした夕張がエプロン姿で戻ってきた。

 

「今日もみんな元気ねー」

「良いことだ」

 

俺は冷やしていた容器に手早くあんみつを盛りつけていく。

夕張は片っ端からそれを給仕していく。

いく先々で夕張は色んな人に話しかけられ、談笑している。

特に子供達からは大人気で、至るところからお姉ちゃんお姉ちゃんと手を引っ張られている。

…むぅ、俺の嫁だぞー、と軽いジェラシーを思うが、自然と頰が緩む。

店は明るい笑顏に包まれていく。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はぁー、やっぱ日曜は多いな」

「ほんと。でも皆喜んでくれて嬉しいな」

「そうだな」

 

時刻も17時を過ぎ、町の人たちは、またね、ありがとう、ごちそうさま、と家路に着いた。

俺たちも、そろそろ今日は店を閉めるかと、今作業が終わったところだ。

ふぃーっと俺は畳に上に横になる。

すると夕張がやってきて同じように横になる。

 

「ねぇ、提督?」

「…元、な。どうした元兵装実験軽巡、夕張くん」

 

静かに語りかけてくる夕張。

提督、と呼ぶということは、何か昔を思い出したのだろうか。

 

「皆を笑顔にできて良かったなって、今、実感してるの」

「…俺も同じ気持ちだ」

「だよね。似た者同士だもんね」

「…俺たちゃ、兵装ばっかり作ってたからなぁ。大砲じゃ敵を傷つけることはすれど、人を癒しにも笑顔にも出来ない。訓練も演習もまた然り」

「それを作れ、慢心するな、やれ特訓だー!って言ってたのは閣下ではございませんか?元海軍准将殿?」

「よせやい。もう…戦争は懲り懲りさ。兵器を作るのも、それをお前達に着せるのも、そしてお前たちの帰りをじっと待つのも」

「…心配かけたわね。でも、この町を見てると思うの。あぁ、守れたんだって。辛いことや苦しいことはたくさんあったけど、貴方に着いて、貴方と一緒に戦い抜いて良かったんだって」

「んー、それは少し違うんじゃないか?」

「え?」

「俺と一緒に『生き抜いて』良かった、だろ」

 

ワザとらしいキメ顔を見せると、夕張はもぅ、台無し!とバシバシ肩を叩いてきた。

俺も負けじと夕張の脇腹を突く。

夕張はちょ、ちょっとそこは、ぁひゃひゃひゃと笑うが、お返しだと俺の脇腹にやり返してくる。

そうやって2人で転がりながらじゃれついてると、ふいに夕張が真面目な顔つきで言った。

 

「ねぇ」

「ん?」

「キスしたい」

「…俺もだ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「起きた?」

「…ん、すまん。寝てたか」

 

部屋の中はすっかり暗い。

俺は目を擦ると、目の前に夕張が小さく微笑んでいた。

あれから、まぁ、キスだけで終わるはずもなく、互いの脚と脚を絡ませ、手は相手の温もりを求めようとまさぐりあっていたのだが

同時に安心感が津波のようにやって来て、疲れていたのだろう、そのまま意識が無くなった覚えがある。

 

「せっかく良いムードだったのにー」

「すまんすまん、なんなら今から埋め合わせ」

 

ぐぅ、と夕張のお腹の虫が鳴った。

しまった、という顔を見せる夕張。

 

「せっかく良いムードだったのにぃー」

「ま、マネしないでよ!っていうか、良いムードでも何でもないわよ!」

 

バシっと肩を叩いてくる彼女にすまんすまん、と言いながら体を起こす。

 

「夕飯を先に作るか」

「そうね。今日は何を作ろうかしら」

「カレーは…今から下ごしらえすると時間がかかるからな」

「じゃあ、肉じゃがはどうかしら?」

「気分が高揚する」

「じゃあ決まりね」

「それでは俺がササッと材料を買ってこよう」

「私は準備してるわね」

 

少しだけ乱れた衣服を整え、財布を持つと、夕張が櫛で簡単に髪を梳いてくれる。

 

「うん、男前」

 

夕張が顔を寄せてきた。

行ってきますのチュー、ということだろう。

軽く唇を合わせて

 

「行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 

少し買い物に行くだけなのに、嫁は甲斐甲斐しいことだと思う。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「と、言うことで」

「色々、試しちゃっても」

「「いいかしらー!?」」

 

我が家の台所は一目で異形の様相を呈している。

まず俺と夕張はエプロンではなく、つなぎを着ている。一応オイルなんかで汚れていない綺麗なものだ。

そして包丁なんかの一般的な調理器具は無く、金槌、スパナ、バーナー、電動ノコギリなどなど、絶対に料理で使わないどころか、使ってはいけない器具が所狭しと置いてある。

もし間宮や鳳翔がコレを見たら目をひん剥いて倒れるか、深海棲艦も真っ青な殺気で俺たちに襲いかかるだろう。

 

「今日は肉じゃがだな!」

「はい、じゃあまずは下ごしらえー!」

「かなり面倒なジャガイモからやってしまおう」

「はい、まずジャガイモは4つ切りにしましょう」

 

俺は左腕に装着しているPDA端末でCADを起動した。

料理にとりかかる前に、1個ずつのじゃがいもの大きさや皮の厚さを精査し、ワイヤーフレームで再現していたのだ。

そこから「等分」するためにはどの線を切れば良いか、じゃがいもの身を削るのを最小限に皮を剥くにはどうすれば良いか、端末上であれこれ操作する。

 

「ではじゃがいもを切っている間に、玉ねぎを細切りにしまーす」

 

そう言って夕張が出したのは電動で動く裁断機。

この前2人でお遊びで作ったものだ。動作はシンプル。対象をロックし、後はどれくらいの厚みで切りたいか入力してスタートを押す。するとギロチンのように刃が素早く上下運動を行い裁断する。

中々のクオリティで仕上がった機器だと思っている。だってほら、玉ねぎ1個につき5秒で終わっている。

 

「じゃがいもの方はどう?」

「今、最適解を全て出した。これから取り掛かる」

 

俺は端末のプロジェクター機能を立ち上げ、映し出されるワイヤーフレームのじゃがいもと本物のじゃがいもを重ね合わせ、ナイフと糸ノコギリで「精確」に切っていく。

 

「相変わらず、細かい作業が凄いわねー」

「む、すまん今は集中している」

「じゃあ、汗でも拭いてあげましょうか」

 

まるで病院のオペ室の様相を呈し始めた我が家の台所。

 

20分後、全ての材料が切られ、アクのあるものは水にさらされ、下ごしらえは完了だ。

 

「ではお肉を炒めましょうか」

 

夕張は至って「普通」なコンロに火をつけ、鍋を置き、ビーカーで測られたサラダ油を適量ひく。

俺はサーモグラフィーを起動し、鍋の熱を調べている。

 

「うむ、今だな」

「はーい、置いていきま〜す」

 

肉たちがピンセットで掴まれ、寸分の狂いもなく秩序立てて、鍋底に並べられていく。

この鍋も2人で作ったものであり、メーカーの物と比べて高い熱伝導率と保温性を兼ね備えている。

熱にバラつきがあり、焼き具合がバラバラだということは起き得ない。それは俺たち技術者夫婦のプライドが許さない。

 

その後、下ごしらえした材料を次々に投入。後は煮込むだけとなった。

 

「ふむ、熱伝導にバラつきはみられないな」

「じゃあ、後はじっと見守って煮込むだけね」

 

そういって俺たちは器具の片付けを始める。

真面目に言ってしまえば、俺たちがやっていることは「料理をバカにしている」と言われてもおかしくないことだ。それはもちろん分かってる。

 

発端は俺の一言だ。

 

退役の日が間近に迫った頃。燃え尽き症候群なのか、何にもやる気が起きなかった。

最終的に勝利したとはいえ、俺は大層多くの者に有形無形の犠牲を強いた。中には轟沈寸前まで追い込まれた娘もいる。…夕張のことだ。

 

その一方で俺が大戦中にやっていた事は、座り心地が良いイスに収まり、書類に目を通し、指示を出し、港に立って艦娘たちを送り迎えするだけ。彼女たちはそれだけで充分だと言ってくれたが、俺は申し訳なかった。

 

たまに工具を持って艤装を開発するものの、俺は兵器しか作れない。俺が作った兵器はあの娘たちに戦場での安心感を与えられる。その自負心はあった。

しかし人としての幸せは与えてやれなかった。

 

最後の1週間だからと、秘書艦としてずっと付き添ってくれていた夕張に俺はその思いを打ち明けた。この手は、人を幸せにする物を作れるのかと。

夕張は、大丈夫ですよ提督と言ってくれた。

しかし言葉だけではなく、実証が欲しい、というのが技術者の厄介な性である。

夕張は少し考え込んで、

 

『提督、お蕎麦の事、覚えてます?』

『ん?あぁ、着任して早々に怒られたやつか。それがどうかしたか?』

『人って美味しいものを食べている時に、幸せを感じると思うんです』

『なるほど…料理か。しかしいつも皆に作ってもらっていた俺に出来るものか…』

『んー、提督は細かい作業が大得意なんですから…そうだ!工具で料理を作ってみるのは?』

『こ、工具で!?そ、それは料理的にも工具的にも許されることなのか!?』

『美味しいものが出来れば、それでいいんじゃないですか?』

『大雑把過ぎるだろ!!』

 

 

今日はよく昔のことを思い出す。

 

「だって、包丁とか鍋とかを手にして、立ち竦むあなたが目に見えたんだもの」

「工具なら自信を持てるって?」

「そういうこと」

「にしても、美味しくできたとしても工具を使った料理だからなぁ」

 

 

あの後、一作目にしては中々に上出来なカレーが仕上がった。

しかし所詮はノコギリで切ったり、金槌で砕いて作ったシロモノである。

他人に振舞おうとまでは思わなかった。

 

『じゃあ、私と提督で全部食べちゃいましょう』

『それが妥当だなぁ』

『えとー…あの、提督…』

『ん?』

『明日も…こうやって、2人で工具使ってお料理して、2人で食事…しませんか…?』

『…うぅむ…』

『あ、あの、嫌ならそんな無理してっ』

『む、嫌ではない。ただ…明日は何を作ろうかと先走っただけだ』

『…なぁんだ、もう!』

 

 

一緒に暮らし始めてから思ったが、私はアプローチをかけられていたのだろう。

大戦中、私は色香に惑う、惑わされる余裕なんてなかった。

その戦いも終わり、退役を決め、あと1週間程度で鎮守府を去ろうとする俺に、彼女なりの必死なアタックだったのだろう。

確かに工具で作った料理など、誰も食べたがらない。だから必然的に2人で作り、2人で食べることになる。材料選びから片付けまで2人っきり。そこに他人が入り込む余地はない。

 

…これも後から聞いたことだが、退役直前、夕張に提督を奪われたー!とやけ食いやけ飲みする艦娘が何人かいたとか。

 

惚れたのだから…

いや、惚れていたのだから、仕方ないだろう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「うむ、なかなかの出来だったな」

「そうね。みりんをあと1mg増やしても良いかもしれないわね」

「そうだなぁ、俺は醤油かなー」

「塩分高いからだーめっ」

 

食事を終え、片付けを済ませると、ゆっくりとした時間が流れる。

その間に互いに風呂も済ませ、一緒に入ろう!とからかってみたらピシャッとドアを閉められた、あとは思い思いの時間だ。

俺はベランダに出てタバコに火をつける。暗闇の向こうから寄せてはひく潮騒の音が聞こえる。

夕張もベランダにやって来た。その手にはビールが2つとチーズが握られている。

 

「珍しいな。お前も飲むのか?」

「たまにはね」

「『なんで提督はこんな不味いものを飲むんですか!?』って驚いてたくせに」

「だって本当に…えっ、待って、それあの時の飲み会のこと言ってる!?」

「思い出させてやろうか?」

「わーわーわー、きーこーえーまーせーん!!」

 

 

ある海域での戦勝会のことだ。

宴もたけなわになり、俺は重巡や空母、戦艦の娘たちと飲んでいたが、そこにひょっこり夕張が現れた。

んん?夕張って酒飲めないよな?と逡巡している間に、彼女はジョッキを握らされている。何故かその顔は意を決したような、出撃時の顔だ。

次の瞬間、グイッとジョッキを仰ぐ夕張。そしてまさしく苦虫を噛み潰したような顔つき。

 

『な、なんで提督はこんな不味いものを飲むんですか!?』

『ん、いや慣れればなぁ』

『慣れ…ですかっ』

『ん、いや、こら、やめとけっ!!?』

 

またグイッとジョッキを仰ぐ夕張。

周りの艦娘たちは彼女を囃し立てたり、空になったジョッキに注ぎ足したり、果てには「だるま」を入れようとする者がいるのだからタチが悪い。

比較的冷静で良識のある娘たちと、必死に夕張を止めるが、彼女は聞かない。

いつもは冷静なのに、どうしたというのだ。

 

 

「だって、…提督は最初に少し私と話しただけで、その後ずっと長門さんや大和さんと話してたじゃないですか」

「ふっ、嫉妬か」

「むぅ、嫉妬ですぅ。あの輪に何とかして入ろうとしただけですぅ」

「はいはい、拗ねるな拗ねるな。…ここからが面白いんだから」

「いやぁ、やめてーっ!」

 

 

周りに乗せられるままアルコールを流し込む夕張。

すっかり顔を赤くして、目をグルグルと回している。

俺はあぁあぁ、言わんこっちゃないと頭を抱える。

そんな夕張へ翔鶴が気遣いに行ったのだ。

大丈夫?と言う翔鶴を、ギロッと睨みつけた夕張。

俺は、酒の席とはいえど、先輩艦に対する罵詈雑言はダメだと身構えたが

夕張は翔鶴の胸をムニュッと掴んだ。

一瞬で、は?という雰囲気が生まれ、翔鶴の艶めかしい喘ぎ声が場の気まずさに拍車をかける。

 

『どうして…』

『ちょ、ちょっと夕張ちゃん…?』

『どうして、こんなにたわわに実るんですかぁぁぁぁ!!』

 

ビールを噴き出しそうになり、おしぼりで抑える。

途端に爆笑、引きつり、憐れみの声がそこかしかに生まれる。

夕張は突然、後ろを振り返り、

 

『特に天龍さん!』

『は!?俺!?』

『龍田さんならまだ分かります!でも天龍さんのキャラで胸が大きいとか納得いきません!』

『んだとテメェ!オモテでろ!!』

『あらあら〜夕張ちゃん。天龍ちゃんも昔は胸が小さかったのよ?』

『え、ちょ、おい龍田!?』

『でね、あまりに悩んでたみたいだから、私が大きくしてあげたの』

『どうやってですか!?』

『おい龍田やめろ!何を勝手なこと言ってんだ!』

『こうやってね』

 

手をグーパーグーパーと動かす龍田。

その瞬間、歓声とも悲鳴ともつかない叫びが上がる。

 

『おぉぉぉぉい!何変なこと言ってんだよ、龍田ぁ!!』

『あら、お願いしたのは天龍ちゃんよ?』

『もうやめてくれぇぇぇぇぇぇ!!』

 

天龍、お前は初対面の時に怖いか?と聞いたな。あぁ、別の意味で怖いよ。

と夕張がすくっと立ち上がり、私に向き直る。

嫌な予感がする。

 

『提督!揉んでください!!』

 

間。

そしてーーー

 

『ちょっと待つネーッッ!!』

『一航戦の誇りにかけて、抜け駆けは許しません』

『最初期からいるとは言え、さすがに頭にきました』

『うぅむ、貴様になら羽黒を任せても』

『姉さん!!?』

『う、飢えた狼もそれなりに大きかったりするのよー…」

『は、榛名は、榛名は、2番目でも大丈夫です…」

『私は何番目でもいいわよ?忘れられなくしちゃうから』

 

阿鼻叫喚、地獄絵図。

私に近寄ろうとするもの、それを邪魔するもの、姉妹で胸のサイズを争う者。

先ほどまで楽しく盛り上がっていたのが、ある一言でこうまで荒れるとは…

これがヒトの愚かさか…

 

『北上さんは私がやってあげますからねー!』

『大井っちもいいけど、提督もいいなぁ』

『き、北上さん!?』

『レ、レディの嗜みとしてそれぐらい』

『嗜みってレベルじゃないわよ!』

『はわわ、まだ早いのですーっ』

 

 

いかん、現実逃避の達観をしている場合じゃない。

幼い駆逐艦たちにも悪影響が出つつある。

ここは何とかして収めねば。

 

「む、変に盛り上がっているところすまないが、私は君たちの上官だ。例え身体的な悩みを抱えていても、そういった解決を施す気はない。諸君らの間でやりたまえ」

 

なんだか、少し冷めた雰囲気になったが、憲兵沙汰になるよりは遥かに良い。

夕張も平静を取り戻したか、うつむいている。

 

『大丈夫か、夕張』

『いえ、突然変なことを言ってしまってすみません』

『そうだぞ!まずはなぁ俺のキャラに胸が』

『なのでお詫びに夕張、一発芸しまーす!』

 

おおお〜!とよく考えずに歓声を上げる酔っ払い組。

待て!なんでそうなる!?と夕張の足元を見ると「だるま」の瓶が転がっている。

バッと那智を見ると、何やらフンスと鼻息荒く満足げに頷いている。

何やってんだこの飲兵衛は!?

 

『まず最初は〜』

 

夕張がどこからか取り出した…緑の球体。

おいやめろ、それはやってはいけない、みんな思ったこともあるだろうが、やってはいけない!

 

『夕張メロン!!』

 

丸々しく瑞々しいメロンと軽装甲、ありえない夢のコラボレーション。

3割がブッと噴き出し、3割が憐れみの笑いを、3割が良く分かっていない。俺を含む残る数人は、どうしていいか分からず涙を流す。

 

『か〜ら〜の〜』

 

やめろ!続かなくていい!もうゴールしておけ!!

夕張はバッとセーラーの下にメロンを入れて

 

『愛宕さん!!ぱんぱかぱ〜ん!』

『ちょっとやめてくれるかな!?』

『じゃあ高雄さん!』

『じゃあって何よ!!』

 

いかん、また地獄絵図が生まれようとしている。

どうにか、どうにかして、止めねば。

 

『じゃあ次は〜』

『ゆ、夕張!もう良いんじゃないか!?』

『えぇ〜まだまだこれから〜』

『で、では!次で渾身の一発をやって最後にしておけ!』

『むぅ、分かりましたぁ』

 

これぐらいにして置かないと、恐らく夕張は明日から恥ずかしくて人前に出られないだろう。

夕張はむむむっと考えて、これかなっと呟いた。

空になったビール瓶を持つ、髪をぎゅっと結い直す。

何をやるつもりだ?

その瞬間、クルッと夕張は回転する。スカートがフワッと浮かび上がる。髪がサラサラと流れていく。夕張って美人だな、と思った瞬間

 

『キュア・メロン、ただいま参上!!』

 

ビシっとキメたポーズで静止。

一瞬間の間

 

そして爆笑。

 

そこかしこで意味のわからない大笑いが発生している。

特に年少の駆逐艦たちは目を輝かせて、声援を送っている。

 

何なのだ。一体何が起こっているのだ。

混乱している最中、駆逐艦たちと仲が良い赤城が、最近放送している人気アニメの魔法少女ヒロインだということを教えてくれた。…夕張ってアニメが好きだったのか。

とそこへ長門が立った。

 

『夕張よ』

『長門さん…?』

 

さすがは栄光のビッグセブンである長門だ。先ほどまで酒を浴びるように飲んでいたが、威厳を以ってこの場を収めて

 

『長門ではない!今の私はーーーキュア・ナガトだ!!」

『キュア・ナガト!!』

 

違う。お前ナガモンや。

 

『カッコいいー!』

『…長門さん、凛々しいです』

『はーい!2番隼鷹、火を吹きまーす!』

『ちょ、ちょっと、火はやめてよ!』

『龍驤のスベらない話、始めるでー!!』

 

いつもは冷静で威厳のある長門がタガを外したからか、会場は取り止めのないカオスに向かっていく…。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

深夜まで続いた戦勝会…その傷は深く、何人かの艦娘は3日ほど自室にこもってしまった。

夕張は1週間くらい工廠に引きこもった。とりあえず青葉が撮った夕張の写真はデータも含めて俺が全て買い取った。

しかしあの時は頭を抱えたが、今となっては笑いすぎて腹が痛い。

 

「いやぁ、あの時に夕張をきちんと知れた気がする」

「あんな所を知られても嬉しくないわよー!」

 

真っ赤な顔と涙目で抗議する夕張。よほどトラウマなのだろう。

悪かった悪かったと頭をポンポン叩くと、夕張は鼻をすすって

 

「今度、魔砲少女ナガト・マギカのBDボックス買ってね」

「ちょっとそれは吹っかけすぎだろ」

「えぇ〜っ」

 

ジト目で見てくる夕張を横目に、俺はタバコを取り出す。

 

「あっ、今日はもうダメよ」

「ん?まだ4本目だぞ?」

「…お口が臭い人とは、…シたくないの」

「そいつは参った」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

夕食も摂った、風呂に入った、程よく酒も回った。

そして今俺は、月夜の光が差す部屋で、夕張に覆いかぶさっている。

俺の一挙手に艶めかしい声で反応する彼女は、決して俺を飽きさせてくれない。

絡みついて離してくれない脚、僅かな力を加えるだけで形を変える柔肌、控えめだが美しい形とハリのある乳房に舌を這わせると、彼女は少し高い声で啼いた。

夕張が両手で俺の頭を抱きしめる。

 

「ねぇ…」

「ん?」

「私たち、赤ちゃん出来るかな?」

 

月夜の光で幻想的に彩られた彼女の顔は、少し憂いの色が漂っている。

艦娘だった子と人間の間で、子が成せるか、それはまだ実証はされていない。

 

「出来るかもしれないし、出来ないかもしれない」

「そこは出来るさって言うところじゃないの?」

 

夕張がカプリと耳に噛みついてくる。

程よい痛さが快感に思える。

 

「技術者は事実だけを記述せよ。空想や妄想では動くな」

「…お父様の訓示よね?」

「あぁ、辞めたとはいえ、俺の性根は技術者のつもりだ。いい加減なことは言えない」

「そうよね…私もそうなのに、ごめ」

 

夕張の言葉を唇で塞ぐ、舌で栓をする。

いつもより長い、しっとりとした、食べ合うような、絡み合い。

ふと離すと、それでも彼女の目はまだ足りないとばかりに、湿っていた。

 

「出来たなら子供たちと暮らしていこう。出来なかったなら2人で暮らしていこう。なに、養子も取れる。俺は何があっても、夕張と生涯を遂げる」

「…ありがと」

 

少し潤みを含んだ声。

優しく人差し指で拭ってあげると、その手は彼女の口の中へ誘われた。

ゆっくりと優しく、食べられている。

 

窓から月と星が瞬いて見えた。

キレイだけど、この光も邪魔だな、と手早くカーテンを締める。

こっちに集中してとばかりに、透き通るような肌の両手が彼の首に組みつく。

暗闇の中で、絡みつき、食べ合い、2人はやがて1つになる。

悦びに浸る微かな嬌声が闇に溶けていく。

 

 

夕張と生きる 〈了〉




艦これ始める前は長門とか大和とか那智とか足柄とか加古とかに惚れてました。

艦これ始めて3分後の、初めての最低値の建造。

夕張さんが来てくれました。
それ以来、ずっと俺の嫁扱いです。

前編後編に分けようかと思いましたが、特に意味ないかなと思い一話につなげています。

夕張への溢れる愛に突き動かされて書いた作品です。
彼女に魅力に気付く人よ、増えろ。

…明石と大淀を間違えて書くというあるまじきミスを犯してしまった…

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