「誰か!!誰かいないのか!?」
覚えているのは頬に当たる熱風と燃え盛る街並み。
そして………生存者を探す聞き慣れた声。
少年‐衛宮士郎はその声に答えようと必死になって手を伸ばそうと試みるも身体に力が入らない。
助けを呼ぼうにも、声が出ない。
『ああ…俺は…死ぬのか…』
心臓の鼓動が次第に小さく、弱く、力を失っていく中。
士郎が感じたのは恐怖でも、寂寥感でもなければ悲しみでもない…。
自分の無力さと誰一人として守る事のできなかった事への悔しさだ。
『ちく…しょう…』
悔しさに打ちひしがれながら士道は目を瞑る。
「士郎!!!
目を開けろ!!!士郎!!!」
自分の名を呼ぶ声に霞む目を開けると、写るのは先ほど声を上げていた男…。
士郎の養父である衛宮切嗣の姿である。
「くそ…トリオン器官が抜き取られている!!」
既にその表情を窺い知ることはできないが滅多に涙を見せない義父が泣いているのが声の感じで理解できた。
そしてそれも間もなく感じることが出来なくなる事も士郎にはわかっていた。
何故ならば彼の心臓脇に大きな穴が空いており、折れた肋骨が肺や心臓へと突き刺さっているからだ。
意識があるだけでも奇跡といっても良い状態である。
士郎が住む惑星国家アルハザッドは【神の国】アフトクラトルの侵攻を受けたのである。
アフトクラトルの狙いは心臓脇にある見えざる臓器、トリオン器官。
そこから作り出されるトリオンは惑星国家における重要なエネルギーである。
中でもトリガーと呼ばれる武器や無人兵器であるトリオン兵を作り出すのにトリオンは必要不可欠だ。
それを巡りこのアルハザッドもアフトクラトルを始めとする惑星国家との戦闘を繰り広げてきた。
そして今回、彼の養父でありアルハザッドで一・二を争うトリガーの使い手である切嗣が部隊を率いてアフトクラトルへ向けて出兵。
切嗣達と入れ違うようにしてアフトクラトルの軍勢がアルハザッドへと攻め入り僅か数時間で壊滅状態に陥ったのだ。
無論、士郎を含めてアルハザッドも総力を上げてこれに相対した。
だが、新型のトリオン兵と強力なブラックトリガー有するアフトクラトルに為す術も無く蹂躙されたのだ。
ブラックトリガーは優れたトリオン能力を持った使い手が死後も己の力を世に残すため、自分の命と全トリオンを注ぎ込んで作った特別なトリガーである。
本来ならば使い手を選ぶブラックトリガーであるがアフトクラトルはトリオン受容体と呼ばれる角に似た器官を幼児の頭部に埋め込むことによりこれらの使用を可能としたのである。
トリガーを展開すると同時に肉体はトリオンで作られた戦闘用のボディへと-トリオン体‐へと交換される。
戦闘によりトリオン器官が致命的な損傷を受けた場合これは解除され、生身は無防備な状態に晒される。
そこを狙われたのである。
「くそ…何か!!何か方法は無いのか……いや……」
叫ぶ切嗣は何かを思い出したように言うと黒い宝石のようなものを取り出したー。
「……ん」
安アパートの部屋で士郎は目覚める。
体を起こすと共に胸に手を当て、目を瞑る。
すると、心臓の脈打つ音が聞こえてくる。
一度止まったはずの士郎の心臓が動いているのはアルハザッドが保有するブラックトリガー『無限剣製』によるものである。
この『無限剣製』は一度見た武具を瞬時に複製するというものであり、ブラックトリガーも一度だけ複製することが可能だ。
これを用いて切嗣はあらゆる傷を瞬時に癒やす能力を持つブラックトリガー『果て無き理想郷‐アヴァロン‐』を複製、傷を塞ぐと同時に奪われたトリオン器官の変わりに無限剣製を埋め込んだのである。
アルハザッドがアフトクラトルの侵攻を受け、壊滅的な打撃を受けてから既に三年の月日が経過、士郎は切嗣と共に各地を転々としながら修行の日々を送っていた。
そして現在、士郎はこの三門市に身を寄せていた。
三門市の総人口は28万人。
アルハザッドを遙かに超える人口であるがこれでも少ないほうと言われるので驚きである。
また、この『地球』と呼ばれる世界(士道達は玄界と呼んでいる)は貨幣経済が発展しており、切嗣は金銭を稼ぐために傭兵として世界中を飛び回っている。
『…さて』
士郎は体を起こすと黒い制服に身体を通す。
地球…とりわけ日本と呼ばれるこの国では士道くらいの年齢の人間は学校に通い、勉学に励むらしい。
『何とも平和ぼけしているな…』
そう思いながら、冷蔵庫から取り出した牛乳で喉を潤し、先日コンビニで買ったオニギリを持つとアパートを出る。
同時に耳をつんざくような警報音が周囲に鳴り響いたー。
灰音です、ワールドトリガーの二次創作を上げてみました。
タイトルからだいたいの想像がつくかと思いますが主人公が某弓兵さんの能力を使って無双するお話です。
原作では黒トリガー争奪戦~第二次侵攻かアニメオリジナルストーリーぐらいまでの話を書こうかと考えております。
短い間になるかと思いますがご愛読頂ければ幸いです。