右から左、上から下。
文字通り縦横無尽に繰り出される戦斧型トリガー『双月』を士郎は双剣タイプのトリガー『干将・莫耶』でいなし、隙あらば反撃を繰り出す。
陣と共に玉狛支部の主力である玉狛第一の訓練を見ていたのだがその実力を肌で体験してみたいと考え、模擬戦を行うことになったのだ。
士郎と現在、相対しているのは小南桐絵と名乗った少女である。
無論、『アルハザド』 にも桐絵と同じの年頃の女性の使いはいたのだが士郎の知る限り彼女程の実力を持った人間はいない。
陣が言うには桐絵の双月を含む玉狛支部のトリガーはボーダーで使用されるノーマルトリガーとは違い隊員によってカスタマイズされたものであり、高い威力を持つ反面、扱いが難しいとの事である。
この双月も同様で威力が高い変わりにトリオンの消費量が多いというものであった。
だが、模擬戦を行う訓練室ではトリオン切れが無いたとのことで、どちらかに致命傷を負わせねば勝敗はつかない。
今の状態を続けていても何も解決しない。
「先ずはこの拮抗状態を崩さないとな…」
一人呟くと士郎は頭の中で戦略を組み立て始めたー。
『成る程…。
迅の言っていた通り、なかなか手強いわね…』
双月を繰り出しながら桐絵は心の中でごちる。
模擬戦を開始してから既に三十分が経とうとしていたが未だに二人とも相手にこれといったダメージを与えることができずにいた。
士郎の持つ干将と莫耶は短い青竜刀を思わせる形状の白と黒の双剣だ。
桐絵が繰り出す双月を士郎は干将で受け流し、莫耶による刺突を繰り出している。
桐絵は双月の柄で刺突を受け流す。
そんなやり取りを幾度と無く繰り広げていのである。
『ん…?』
攻防が百回目に昇ろうとしていた時である。
小南は士郎の癖のようなものに気づいたのだ。
攻撃をいなした後、ほんの少しだけ剣の柄を握り直すような動きをしたのである。
もう一度確認のために双月を繰り出すがやはり士郎は双月をいなした後、僅かであるが、双剣の柄を握り直している。
ほんの僅かな、相手を注視していないと見落としてしまうような小さなことであるが桐絵にとっては大きなチャンスである。
三度、双月を振るう小南。
士郎が双月をいなし、柄を握り直そうとした瞬間。
小南は双月の柄使って双剣の片割れを弾き飛ばす。
クルクルと宙を回りながら弾き飛ばされる片手剣。
小南はそれに目も暮れず追撃に出る。
対する士郎はバックステップで距離を開けようとする。
無論、これを逃がす小南ではない。
直ぐ様距離を積めようとしてそれに気づく。
士郎の顔がうっすらと笑みを作っていたのだ。
『何を笑っているの…?』
士道の不可解な行動に疑問府を浮かべる小南だが、その疑問は直ぐに晴れることとなる。
先ほど弾き飛ばされた筈の双剣の片割れがブーメランのように戻ってきて小南の肩口を深く切り裂いたのである。
鮮血の如く吹き出すトリオン。
士郎が戻ってきた双剣の片割れをキャッチすると同時に何かを呟く。
瞬間ー両手に構えた双剣が膨張したように見えた。
否ー実際に士郎の持つ双振りの剣は刀身を巨大な鳥の羽のような形状へと変化させていた。
「くっ!」
小南絵はこれを防ぐべく双月を構える。
しかし、士郎の降り下ろした一撃は小南のトリオン体ごとこれを切り裂いたー。
『干将・莫耶』ー士郎の作り出す双剣であり夫婦剣である。
夫婦剣の名が表すように互いに引き合う性質を持つ。
また、『多重投影‐オーバー・エッジ』形態へと変化させることで刀身は長く延び、鳥の羽のような形状へと変化し、威力も数段跳ね上がるというものである。
「なんなのよ!そのトリガーは!!
チートも良いところじゃない!」
模擬戦が終わった訓練室に小南の声が響き渡る。
「そんなこと言ってもなぁ…。
そもそも全力でかかって来いって行ったのはそっちじゃ…」
頬をかきながら苦笑を浮かべる士郎。
士郎が模擬戦を申し出た際に小南から全力で来るように言われたためそのようにしたまでである。
「こうなったら!もう一度勝負よ!!」
小南は弁明を全く聞くつもりもない様子で士郎を指差してそう叫んだー。
小南 「あり得ない…、なんなのよ…なんなのよ…。
なんなのよ…なんであいつはあれだけの数のトリガーを使いこなせるのよ…。
いくらブラックトリガーだからってチートにも程があるでしょう!」
士郎と小南の模擬戦結果。
10‐0で士郎の圧勝。
多種多様なトリガーを使いこなしてくる士郎に小南は手も足も出なかったのだ。
愕然とした表情で膝をつく小南に陣がケロッとした表情で言う。
迅 「あれっ?言ってなかったっけ?
士郎の無限剣製の本領はあらゆるトリガーを複製することじゃなくて、あらゆるトリガーの構造を理解して瞬時に使いこなすことなんだ」
小南「聞いてないわよっ!」
迅の言葉にキレる小南だった…。
どうも灰音です、時折こんな感じの後書きにショートショートを入れてみようと思います。