「さて諸君!
諸君はこれからA級を目指す!
そのためには…」
ホワイトボードにピラミッド状の図を書き込みながら栞は続ける。
「もうB級になっている修くんを除く、千佳ちゃんと遊真くん、士郎くんの三人にB級に上がってもらわなければならない!
なぜかというとB級…正隊員にならないと防衛任務にもA級に上がるためのランク戦にも参加出来ないのだ!」
「ランク戦……?」
「そうランク戦」
不思議そうな表情で尋ねる遊真に栞が続ける。
「上の級に上がるには防衛任務の手柄だけじゃなく、ボーダー隊員同士の模擬戦でも勝ってかなきゃだめなの。
それが通称ランク戦。
同じ級の中で競いあって強い人間が上に行くってわけ」
「ふむ、つまりおれがB級になるにはC級のやつらを蹴散らしていけばいいわけだな。
それいつからやるの?
今から?」
「まあまあ、落ち着きたまえよ」
わくわくした表情の遊真を栞は宥める。
「ボーダー本部の正式入隊日ってのが年三回あって、新入隊員が一斉にC級デビューする日なんだけど。
その日までは遊真くんもまだランク戦できないんだよね」
「え~」
栞の言葉に遊真は不満そうに唇を尖らせる。
「慌てんなよ遊真、お前はボーダーのトリガーになれる時間がいるだろ。
ランク戦には黒トリガーは使えないんだ。」
「ふむ…なんで?
本部の人に狙われるから?」
「どちらかと言えば強すぎるからじゃないか?」
不思議そうな遊真に士郎が答える。
先日、小南を相手に模擬戦して改めて感じたが黒トリガーは自分の無限剣製を含めて強すぎるのだ。
「そういうこと、黒トリガーは強すぎるから自動的にS級扱いになってランク戦から外されるんだ。
メガねくんや、千佳ちゃんと組めないぞ」
「ふむ…そうなのか…じゃあ使わんとこ」
「千佳ちゃんはどうしようか?
オペレーターか戦闘員か……」
渋々といった様子で納得する遊真から栞は千佳へと話を振る。
「そりゃ、もちろん戦闘員でしょ。
あんだけトリオンすごいんだから」
「それにこの先近界民に狙われた時のためにも千佳は戦えるようになった方がいいだろ」
「千佳ちゃんってそんなにすごいの?」
「見たらビビるよ」
栞の疑問に何故か遊真が自慢げに答える。
「私も…自分で戦えるようになりたいです」
「なら戦闘員に決まりだね!
じゃあ次はポジションを決めよっか」
「ポジション…?」
首を傾げる千佳に栞が説明する。
「防衛隊員は戦う距離によってポジション分けされてるんだよね。
【攻撃手‐アタッカー】、【銃手/射手‐ガンナー/シューター】、【狙撃主‐スナイパー】の三つ。
……でどれが千佳ちゃんに合ってるかって話なんだけど。
千佳ちゃんは運動神経はいい方?
足早い?」
「いえあんまり…」
「数学は得意?」
「成績はふつう……です」
「将棋とかチェスとかしたことある?」
「ないです…」
「う~ん」
「すいません…取り柄がなくて……」
「ううん、大丈夫だよー。
参考にしてるだけだから」
栞からの質問に、申し訳なさそうに首を横に振る千佳。
そんな千佳に助け船を出したのは修だ。
「千佳は足は早くないですけど、マラソンとか長距離はけっこう早いです」
「おっ、持久力アリね」
「それに我慢強いし、真面目だし、コツコツした地道な作業が得意だし、集中力があります。
あと以外と体が柔らかいです」
「おおー…!」
修が挙げる自分のも長所に顔を赤くする千佳と感心したような表情を浮かべる遊真。
「なるほど…よしわかった!
わたくしめの分析の結果。
千佳ちゃんに一番合うポジションは…」
「「狙撃主だな…」」
挙げられる千佳の長所にもったいぶった様子の栞に迅と士郎が同時に答える。
「あー!!迅さん!!士郎くん!!!
アタシが言いたかったのになんで言っちゃうのー!!」
そんな二人に不服そうに宣う栞。
「私のどら焼きがない!!!
誰が食べたの!!!?」
栞の不満を笑って流す迅。
そこに突然部屋の入り口が勢いよく開き、目に涙を浮かべた小南が現れ、そのまま雷神丸の上でいびきをかく陽太郎に狙いを定めると両足をつかみ逆さまにする。
「さてはまたお前か!?
お前が食べたのか!?
おまえだなー!!?」
「ごめーん、小南。
お客さん用のお菓子に使っちゃった」
「はあ!?」
「また今度買ってくるから~」
「あたしは今、食べたいの!!」
謝る栞の頬を思いっ切り引っ張る小南。
どうやら、先日士郎達が食べたのどら焼きは小南のものだったらしい…。
「なんだ?騒がしいな小南」
「いつも通りじゃないですか?」
小南に対して少し申し訳ないと思っていると整った顔立ちの青年とガッシリとした体格の青年が部屋に入ってくる。
どうやら二人も玉狛の正隊員で、小南と同じ部隊員なのだろう。
「この四人が、迅さんの言ってた新人ですか?」
士郎達を見て、整った顔立ちの青年が尋ねる。
「新人……!?
あたし、そんな話聞いてないわよ!?
なんでウチに新人なんか来るわけ!?
迅!!」
どうやら、小南は修達が玉狛に入ることが気に食わないらしく、迅に詰め寄る。
そんな小南に迅は飄々とした態度で答える。
「まだ言ってなかったけど。
実は…この三人は俺の弟と妹なんだ」
『ああ…成る程な…』
迅の言葉に士郎は一人納得する。
恐らく、迅は小南をからかっているのだろう。
先日の模擬戦でもそうだが、小南は見え見えのフェイントによく引っ掛かっていたりしたので嘘を信じやすい性格をしているのだろう…。
事実ー。
「えっ、そうなの?
烏丸あんた知ってた!?」
「もちろんですよ、小南先輩知らなかったんですか?」
小南に烏丸と呼ばれた整った顔立ちの青年が答える。
どうやら、彼も迅の嘘に付き合うつもりらしい。
「言われてみれば迅に似てるような…。
レイジさんも知ってたの?」
遊真の顔を指差しながら小南はガッシリとした体格の青年-レイジに尋ねる。
「ああ、よく知ってるよ。
迅が一人っ子だってことを」
レイジの言葉に頭上にクエスチョンマークをいくつも浮かべる小南。
「このすぐ騙されちゃう子が小南桐絵 17歳」
そんな桐絵を遊真達を紹介する栞。
「迅!!?また騙したの!!?」
「いやー、まさか信じるとは流石は小南」
笑う迅に怒る小南を尻目に栞は残り二人の紹介を開始する。
「こっちなもさもさした男前が烏丸京介 16歳」
「もさもさした男前です。
よろしく」
「こっちの落ち着いた筋肉が木崎レイジ 21歳」
「落ち着いた筋肉………?
それ人間か?」
独特の表現による紹介に烏丸が真面目に、レイジが呆れた表情で答える。
「さて全員が揃ったところで本題だ。
こっちの四人は訳あってA級を目指している。
これから厳しい実力派の世界に身を投じるわけだが、C級ランク戦までにまだ少し時間がある。
次の正式入隊日は1月8日、約三週間後だ。
この三週間を使って新人4人を鍛えようと思う。
具体的には……。
俺を含めた4人はそれぞれメガネくんたち4人の師匠になってマンツーマンで指導してもらう」
「はあ!?
ちょっと勝手に決めないでよ!
わたしまだこの子たちの入隊なんて認めて………」
不満を挙げようとする小南。
だがそれを迅が制する。
「小南。
これは支部長の命令でもある」
「………!
支部長の……!?」
「林藤さんの命令じゃ仕方ないな」
「そうっすね。
仕方ないっすね」
迅の言葉に烏丸とレイジは腕を組んで納得する。
「……わかったわやればいいんでしょ。
でもそのかわりこいつはあたしが貰うから」
そんな二人の様子で渋々といった表情で遊真の肩を掴む小南。
「見た感じあんた、強いでしょ?
あたし、弱いやつは嫌いなの」
「ほほう、お目が高い」
そんな小南に対して、笑みを浮かべる遊真。
千佳はレイジに、修は烏丸とそして士郎は迅から指導を受けることに決まったのだー。
「士郎の戦闘スタイルから考えると、パーフェクトオールラウンダーのレイジさんと組んだ方が良いんだけど千佳ちゃんの方を見てもらわないと行けないからな…」
「別に構わんさ」
申し訳なさげな迅に首を竦める士郎。
玉狛支部のトレーニングルーム内。
士郎は迅からボーダーのトリガーについての説明を受けていた。
ボーダー用のトリガーは一つのトリガーホルダーに右手に4つ、左手用に4つの合計8つまでセットが可能である。
攻撃手用のトリガーは全部で三種類。
軽く、形状自在、伸縮自在のスコーピオン。
バランス型の弧月。
防御力重視のレイガスト。
銃手または射手用のトリガー。
一直線しか発射出来ないが高威力のアステロイド。
発射前にイメージすることで、弾道調節可能なバイパー。
追尾弾のバウンド。
広範囲にダメージを与える炸裂弾‐メテオラ。
の四種。
銃主は銃型のトリガー、射手はキューブ状のトリガーからそれぞれの弾丸トリガーを発射する。
また射手は弾丸組み合わせて放つ合成弾と言う複合トリガーを使用することが可能だ。
狙撃手用のトリガー。
射程距離重視のイーグレット。
弾束が速く、命中率の高いライトニング。
高威力のアイビス。
それぞれのポジションに対応した武装を切り替えつつ、レッドバレッドなどのオプショントリガーを組み合わせることで戦闘を有利に進めていくのである。
「三日ほどかけてボーダーのトリガーに慣れたら。
少し付き合ってもらえるか」
「成る程、遊真のブラックトリガーを取りに上位の連中が来るから援護してほしいと…」
「よくわかったな…ひょっとして『見た』のか?」
「ああ、見えた」
士郎のサイドエフェクトで見えたのはA級と見られるボーダー隊員が玉狛に向かってくる未来だったー。
ヤバイアニメめちゃくちゃ面白いじゃんよ!!
どうも、灰音です。
前回からさほど間を開けずに投稿させて頂きました。
今回はタイトルの通り士郎&迅とA級の戦闘&木戸司令説得までの話を三話で書かせてもらおうかと思います。