天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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長らくお待たせしました。

異世界転生もの、同ざまあもの、辺境追放もの、た~~~っくさん楽しませてもらいましたし、まだ楽しんでます。

職場もいろいろ異動して、実は2025年3月で、まだ早いけど退職までしました。

そして、ようやくすっと書けるような気分になることができました。

興味と根性が続く限り、おっさんは水穂さんたちと銀河を越えて旅したいと思ってます。


樹雷から宇宙へ44

 「え?、コピーが、いえ影分身が見聞きしてきたものも共有できるんですか?」

 「・・・そうだね。ナルトの莫大なチャクラがあってはじめてできることだけどね。」

カカシ様によく聞けば、影分身体の保持にはかなりのチャクラを消費するため、上忍クラスでも運用は本来難しいものだそうである。

 「オレってば、人柱力だしな。」

そう言った、火影の表情は複雑に見えた。視線にはあの抜けるような明るいものが無くなり、重い物が含まれている。

 「ナルト、その話は今度にした方が良いねぇ~。」

片目を見せているカカシ先生と呼ばれた男が、書類束を持って目を伏せがちにそう言う。

 「そう、だな・・・。カカシ先生。」

静かに、火影は首肯して着席する。ノートパソコンらしきものを開いて執務を執り始めた。こちらもデリケートな話題に触れるには、まだ時間が不足している。そのまま書類の整理に没頭しているうちに、2時間ほど過ぎてしまった。火影室の外からの光が赤くなってきていることで気がついた。夕焼けか・・・、なんとも懐かしい。宇宙船暮らしだと時間どおりには生活しているが、空があかね色に染まるなんてことは、梅皇のブリッジなどに詰めていたりするとまずない。皇家の船の居住区ならそう言う設定にしているが、それもお客様用だったりもする。赤い光に気がつき、立ち上がって夕日を見ていると神木祥瑞が声をかけてきた。火影達に迷惑ならないように小声だったりする。

 「一樹様、夕日でございますなぁ。」

作業の手を止め、神木祥瑞がこちらを見上げていた。

 「・・・そうだねぇ。ここしばらく見てなかった。船だと人工の光だからなぁ・・・。そうか、神木祥瑞殿は、樹雷の皇家の墓、管理棟にいらっしゃったのだったのですね。」

 「そうです。この時期ですと、樹雷は一樹様の故郷で言う晩秋にあたり、特に空気が澄むのであかね色が隅々を染めます。ここは空気の汚れも少なくて樹雷とよく似ている・・・。」

そうだった、地球の僕が住んでいた場所は田舎だが、なかなかこういった透明感のある夕日にはお目にかかれない。雨が降った直後とかその次の日とかでないと薄ぼんやりと曇ってしまっていて山々が薄青くなって見通せない。

 「もう夕方か・・・。相変わらず時間が経つのは速いな・・・。」

シカマルがつぶやいたとき、火影室の扉がたたかれた。

 「とーちゃ、・・・いや七代目、ちょっといいか?」

そのとき火影は、シカマルよぉ、この陳情はねえよなとか言って書類をシカマルに見せていた。こりゃあ、差し戻しだなとシカマルが答えていた。

 「・・・おう、ボルトか?。」

ボルトが気を遣って七代目と言ったのに火影は、息子を呼ぶように言った。わずかにボルトは顔をしかめている。僕もこういう年頃の男の子を育てた経験が無いので傍観者の立場だが、結構難しいのだろうなとそのしかめた顔を見て思った。ボルトに続いて入ってきたのは、さっきの雷車で一緒だった2人と、もうひとり高齢の男性が部屋に入ってきた。なんだか視線がさまよっている。うつむき加減なのは、ちょうど背中の肩甲骨のあたりで背中が曲がっているためだろう。

 「七代目、このおじいさんが、うちはの家に帰ると言って聞かないんです。」

一緒についてきていた、メガネの女の子、サラダと言った女の子だと思う。その子が訴えた。

 「サラダ、うちはと言ったって・・・。あの場所は荒れ放題になっているはずだし、ほとんど家も残ってねえ。」

 「・・・知っています。でも、そう言っても聞いてくれないんです。」

 「あまり僕たちの話を聞いてくれないんです。」

ミツキといったっけ。静かな雰囲気の和装の少年が続けてそう言った。この子も所作動作に隙が無い。するっと僕に視線を送るあたり、なぜかどことなく親近感がわく。不思議な子だった。

 なんだか、火影の様子を見ていると、気の毒になり、差し出がましいようだが、と断って口を挟んでみた。

 「火影様、ボルト君たちもさっき会ってますし、僕がお話を聞いてみましょうか?」

懐かしの元の職場、西美那魅町役場福祉課の田本さん登場である。

火影殿は、包帯で巻かれた右手と左手で不思議な印のような物を結ぼうとしていた。

 「おお、申し訳ない頼めますか。カカシ先生も一緒にお願いします。」

 火影の執務室の隣室は、簡単な応接セットが置いてあり、3人掛け程度のソファーが2つ。ローテーブルを挟むように置かれていた。サラダとミツキとボルトには前に座ってもらい、高齢の男性とは並んで座った。僕の左隣に座ってもらう。高齢男性の隣に六代目ことカカシ先生である。

 対面で座るよりも経験的にこの方が話しやすい面がある。とにかく僕が思うとおりなら、男性に落ち着いてもらうのが先決である。まずは、こちらから自己紹介して話し始めた。

 「僕は、火影様のところに今日からお世話になる火の国から派遣された、柾木一樹です。こちらは、六代目火影の・・・。」

ハタケ・カカシです。どうぞよろしくお願いします、と僕の後を続けてくれた。

 「そうだ、ボルト君とサラダさん、ちょっといいかな?」

そう言って、二人を呼んだ。小さな声で一つお願いする。

 「・・・わかったってばさ。」

ボルト君がいまひとつ不可解な顔だがふたりしてうなづき、すぐに部屋を出て行く。

 「さて、申し訳ないのだけれども、現火影が、いま非常に多忙なので僕と、先代火影のカカシ様とで対応しようと思います。」

ゆっくりと右手を差し出す。高齢の男性は、一瞬躊躇するが、握り返してくれる。そうして、しばらく、さきほどの「うちは」に用がある旨のお話を繰り返して確認した。

 「うちはのことで團蔵様にご用がおありなんですね。それで火影様への目通りをしたかったと。」

そういう風にまとめて言うと、高齢の男性の目が泳いでいる。

 「うちはのことをすぐに、團蔵様に申し上げねば・・・。」

またそう言って目を伏せる男性だった。

 「とにかく、悠長に座っているわけにはいかない。團蔵様はどこにいらっしゃるのか?」

 すぐに顔を上げて、また繰り返して怒ったように言う。

 「まあ、お待ちください。いま若い者を呼びにやっております。先ほど対応しました二人がすぐに帰ってくると思いますよ。」

 先ほど聞いた、「うちは」という名前の人々が住んでいた場所も、火影の言葉のとおりなら誰も居ず、放置された地区らしい。もちろん木の葉の里の人々なら誰もが知っている情報だろう。サラダやボルトたちも何度も説明していると言っていたが理解してくれないとも言っていた。カカシ様に、目配せしてみた。

 「團蔵様は、第4次忍界対戦の前に亡くなられております。亡くなられてすでに10年以上経っておられますよ。私が6代目火影就任直前の話なのでよく覚えております。」

しずかにゆっくりとカカシ様の言葉が部屋に染み通っていく。

 「そんなはずは無い!。昨日直接密命を賜ったのだ!」

怒り出す高齢の男性。話は見事に食い違っている。1年前の役場職員としての田本さんのカンがささやいてくる。そうこうしているうちに、今はいっている会議室の扉がノックされた。

 「サラダ、ボルト帰りました。お客様と一緒です。」

どうぞ、と入ってもらうと、ふたりは40代くらいの女性と警務部の男性と一緒だった。

 「お父さん、また皆さんに迷惑かけて!・・・6代目様、どうもすみません。」

入ってくるなり、その女性は頭を下げている。

 「さあさ、お父様、帰りますよ。」

女性は、座っている高齢の男性の手を取ろうとする。高齢の男性は、その女性のことがよくわからないようなそぶりを見せていた。

 「ボルト君、サラダさん、どうだった?」

サラダさんは少し複雑な気持ちが表情に出ていたが、ボルト君が状況を説明してくれた。

 「柾木さんの言うとおり、警務部に捜索願が出てたってばさ、というかその人がちょうど捜索願を出そうとしていたところだったんだ。警務部に何度か相談もしているようだし、どうも居なくなるのは今回だけじゃ無かったってばさ。」

女性と一緒に入ってきた、警務部の制服の男性が一礼し、話し始めた。

 「木の葉の里の住人であること、そしてこの女性と血縁関係にあることは私が証明します。最近、ときどき居なくなっては、居住地区の自警団で探していたりします。これで3度目です。」

警務部の男性がそう言ってくれた。すまなさそうに一礼してくれる。

 「お父さん、昔は團蔵様の暗部に居たことがあったらしくて、そのことばっかり繰り返して言うんです・・・。」

ああ、やっぱり・・・。診断には、脳のCTスキャンデータなどがあれば一目瞭然だろうが、僕の脳裏には認知症と言う言葉がちらつく。本来なら専門医の受診が必要だろう。とりあえず、この場はどうにもならないので、

 「團蔵様には、火影様や僕からお話しを通しておきます。今日のところは團蔵様もお忙しいようでお目にかかれないようです。娘様とご一緒におうちで待機していてください。」

高齢男性の目を見て、ゆっくりとかんで含めるように言ってみた。男性は頷いて、立ち上がる。もしかして、團蔵様云々の話の下りもすでに忘れているのかもしれない。部屋から出て行く男性を見送り、その後から出ようとしていた娘さんを呼び止め、部屋に残ってもらった。

 「娘様、ですか、少しお話があります。」

高齢の男性と、警務部の男性を外に出ていてもらっている。念のためと思って、娘さんにこれからのことをお伝えしておこうと思う。

 「すみません、今日からこの木の葉隠れの里にお世話になっている柾木と申します。僕は以前にこういう症状の方を対応した経験があるので、今回お話しさせていただいていました。」

 一礼して、娘様の顔を見る。困ったような表情のままだった。

 「お父様の症状は、たぶん、これからも進んでいくと思われます。ご近所にお話しして、外に出られた際は、連絡をもらうようにするか、協力いただけるのであれば連れ帰ってもらうようにお話しした方が良いでしょう。」

 「それと、物忘れの症状も進んでいくと思います。ご本人様にとっては、忘れているのでは無くて、全く初めての経験と、とらえてください。難しい対応ですがなるべく怒らないように。そして、なるべくお父様を一人にしないように、昼間はなるべくご近所様といっしょに、お茶を飲むようなお話しする場をお作りください。」

 ここまで一度に言ってしまった。こういう対処されるのも初めてだろう。もちろん怪訝な顔をされている。僕で良ければ、またご相談に乗りますよ、と一応念押ししておいた。娘は、深々と一礼されて、すぐに外に出て行った。

 「妙に手慣れた対応ですねぇ~。」

もっと怪訝な顔をカカシ様にされていた。寄ってきて、顔をのぞき込まれる。ほとんど顔を隠している人だが、肌は白く目もきれいだったりする。

 「あ~は~は。・・・実は、僕はこんな立場で宇宙を駆け回る前は、ごく普通の行政の職員だったので。思わず昔の仕事のように対応してしまいました。」

一瞬視線を外して、またカカシ様の目を見ながら話し始める。

 「僕のいた星では、木の葉隠れの里よりも機械や電子機器が身の回りにあふれていて、皆様のような忍術やチャクラの有効利用などは出来ません。そして、少子高齢化は、ここよりもっと進んでいます。医学もそれにともなって進んでいて平均寿命は男性でも80歳を越えている事実があります。」

 「忍術の代わりに科学技術ですか・・・。」

カカシ様は、すっとあごに親指と人差し指をあて、考え込んだ。

 「平和、ということですか?。」

 「そうとも言えます。僕のいた星では、先の世界大戦からすでに70年あまりが経っています。しかし、それからも国の小競り合いは続いています。大量破壊兵器も大国は所持していますね。宇宙の・・・、先ほど言った樹雷は、そんなものなど問題ないほどの星をわたる武装国家ですけどね。そうそう、僕のいた星は、樹雷からみれば、いろいろあって皇族の保養地扱いになっています。」

そう、いろいろあったようなのだ。数えればDVD十数巻分のすったもんだが・・・。そこまで言ったところで、地球人の田本さんモードから、樹雷皇族の柾木一樹に気持ちが戻ってきた。我ながらややこしい。

 「70年ですか、我々はようやく10年あまり、か。」

あごに手を当てて考え込んでいたカカシ様が、すっと外を見た。僕もその視線の先に目をやった。背の低い建物が建ち並ぶ中心街から、新しく開発されたという崖の上のような一段高い場所に高層建築や未来的な外観の建物が建ち並んでいた。そして、地球と違って、クルマが全く走っていない。人々は徒歩で移動していた。自転車もほとんど見かけない。人が引いたり、牛馬らしき動物が引く荷車はちらほら見かけるが、人は歩くか走っている。もしかして、こういう環境なので成人病などもまだ縁遠い町なのだろうか。

 「・・・我々は、大きな力を持つが故に、その大きな力を行使して、争い続けてきてしまった。初代の火影様の発案からこの里システムを取り入れ、どうにかやってきましたが、今度は里同士、国同士の争いが激しく、いがみ合うばかりでした。」

火影室隣の部屋の窓枠に手をかけ、カカシ様は外を見ながらそう言った。一呼吸置いて続けて話してくれる。

 「しかし、現火影のナルトは、人々との繋がり合いや絆を大事にして、第四次忍界対戦を戦い抜き、近隣諸国からの、・・・代えがたい信頼を勝ち取りました。」

ふう、と大きなため息をつき、またソファーに座り込むカカシ様。こちらも長い長い物語があるのだろう・・・。僕も続いてソファーに対面して座った。

 「柾木一樹殿が言った、衛星軌道上から観測されたエネルギー弾とか言う物は、ナルトか、ボルトが放った物でしょう。ひょっとするとボルトの螺旋丸にナルトの力、チャクラを合わせた物かもしれない・・・。」

やはりそうだろうな。あんなエネルギー弾ひょいひょい衛星軌道上まで上げられたら、それだけで戦略決戦兵器である。首肯の意味で大きく頷いた後、言葉を続けた。

 「どこも変わりませんよ。争いと言うのは、人の性かもしれませんねぇ。それを言うなら我々の方も大量殺戮の話題には事欠きません。一瞬にして数十万人が消し飛ぶ核兵器、しかも何世代にもわたって体への影響が残ります。もっとも、先の大戦で2度使った後は、力の大きさを恐れ大量破壊兵器を持つ大国間の政治カードに成り下がっていますが・・・。」

今度はカカシ様の目を見て、そう話してみた。続けてこうも言ってみる。

 「なんとかその争いの内で、折り合いを付けて、短い平和を得て、出来ればそれを長続きさせていく・・・。それを繰り返していけば、恒久的な平和になるのかもしれません。あ、ちなみに、樹雷の考え方ではありません。僕個人の、地球人としての考え方です。」

銀河系で指折り数える軍事国家の樹雷の考え方も勉強はしたが、まあ、立場的に似ている地球の考えが良いだろう。もちろん、樹雷の力で介入も出来ないし。

 「特効薬、はないんでしょうね。血塗られた歴史はお互い様ですか・・・。」

カカシ様は、そう言って右手を差し出してくれた。こちらも右手を差し出し、グッと力を入れ握り返した。

 「そうですね、今手に入れている平和をどぶ川に捨ててしまうことは無いでしょう。」

そう言って、目を細めるカカシ様。たぶん笑ったのだろう。口が隠れているのでよくわからない。そして何かを思い出したのか、こう言った。

 「そういや、ナルトが、いや七代目が今夜柾木殿の歓迎パーティをするとか、しないとか・・・。」

あら、これはうれしい。

 「なんか正直うれしいですね。・・・査察官という上から目線の職業を偽ってまで入り込んだ者なのに。」

ちょっと一言トゲを含ませていってみた。しかしカカシ様は、そんなことは意に介すことも無く瞬時に返してきた。

 「いい町ですね、と目を輝かせていう人に、無碍(むげ)な扱いは出来ないでしょ。ナルトが連れて行ったラーメン屋で、無心に旨そうに食べていたし。」

ぽんぽんと背中を軽くたたかれて、火影室の隣の小部屋を出た。すでに木の葉隠れの里には夕闇が迫っていた。里のあちこちに夕餉の灯りがともり始めている。里のほぼ真ん中にある火影火影室に入ると、火影殿の傍らにシカマルが立ち、火影から相談を受けていた。室内は、電球のような灯りが明るく照らしている。白っぽい灯りである。地球でいう、蛍光灯のような光だった。その電球らしき物の根元に小さく雷と印字されていた。雷車と言われた電車のような物と同じ理屈なのだろうか。

 「柾木殿、仕事を押しつけて悪かったってばよ。」

ドアを開けて入ってきた僕らを見た火影は、明るくそう言う。

 「いえ、故郷の町でやっていたことなので・・・。これから少子高齢化、そして医療技術、いや医療忍術でしたっけ?の進歩によって、平均寿命が伸び、結果的に高齢者が多くなってくるとあのような病気が増えてくるかもしれません。・・・しかし、そんなことも含めてですが、なにもかも火影様にっていうのでは仕事が回らないでしょうに。」

 なんだかすまなさそうな半分、勘弁してくれという雰囲気を目で訴えてくる火影だった。

 「・・・俺たちも限界を感じているんだ。今のところこの人数で回していくしかねえんだよ。」

大きなため息と共にシカマルがそう言った。やっぱり細々とした仕事を割り振った行政府とか必要だろう、この規模の町になると・・・。

 「そうだ、もういい時間だな。今日はもう終わりにしようぜ、シカマル。」

大きなあくびをして、片手で肘をつかみ背伸びをする火影だった。

 「ああ、五影会議の案内は出したし、取り急ぎの用件は終わったな・・・。大名殿に嫌われた、柾木殿の歓迎会だな。テマリとシカダイ連れて食材持って行くぜ。」

ニッとカッコイイと素直に言える笑顔でシカマルはそう言い、そそくさと帰り支度を始めた。忘れていたけど、神木祥瑞はずっと手伝っていたようだった。するすると動いて必要なことを見つけ、過不足無く仕事をする様はなかなか誰もが出来ることでは無い。

 「神木祥瑞殿も一緒にうちに来てくれ。庭で焼き肉でもしようぜ。」

どこかのお店で、というのではなくて、フランクに庭で、ですか。わいわいとやるのも良いかもしれない。振り向いた神木祥瑞がこちらを見て、アイコンタクト。もちろん頷いて首肯した。それを見て、自然と顔がほころんだのだろうか、ニッと笑う火影である。若返ってることもあって、見事に高校生くらいにしか見えない。樹雷の人々も自らの望む年齢で外見は固定していることもあって、僕は違和感はそうないのだが、たぶん家に帰ると一騒動だろう。

 「・・・まあ、その、ヒマワリが最近みんなでご飯食べてないって言うもんだからよ。」

疲れた顔の火影だが、家族のことを言うときは、とても優しい笑顔になっていた。

火影邸から、外に出るとすぐにシカマルは何かが擦れるような音を立てて、視界から消える。さすが忍である。地球でよく見るジャケット姿にスリムなスラックスで、すっと視界から消えられると違和感が大きくて驚いてしまう。

 「さて、柾木殿、こっちだ。」

たたっと足取り軽く走り出す火影だった。いくつか通りを曲がり、しばらく付いて走っていると町の中心部から少し外れたところに「うずまきナルト、ヒナタ、ボルト、ヒマワリ」と手書きで書かれた表札がある家に着いた。墨で書かれたようだが、決してうまい字では無いけれど、見る人を微笑ませる良い字だなと思った。火影殿か、子どもたちが書いたのだろうか。地球の天地君の家よりも二回り程度こぢんまりとした家だった。2階建てで庭が広く、鉢植えや立ち木を含めて、色とりどりの花が咲いている。それも比較的ざっくりとした植生にしているようだった。火影こと、うずまきナルト氏の好みなのだろう。南向きで日当たり良さそうなところにリビング兼キッチンがある。大きめのガラス戸になっていて大きく左右に開けられていた。おかっぱ頭の女の子と、ラノちゃんが並んで座って足をぶらぶらさせながら手に持った小さな画面を見ていた。リビングのテーブルにはさっきまでいっしょにいたボルト君が座って、こちらは携帯ゲーム機のようなものを両手で持って見ている。

 「ただいまぁ・・・。」

あれ?と思った。火影の声からちょっとなにか不安なような、照れているようなニュアンスが感じ取れた。あ、僕がやらかしたからかな。

 「あなた、お帰りなさい・・・。え、・・・ナルト君・・・?」

ヒナタ様だろうか。奥様がキッチンから手を拭きながら出てきて火影や僕達を出迎る。火影殿を見た瞬間、真っ赤な顔になった。数歩遅れて、水穂さんも出て来てくれた。

 「あのぉ、申し訳ありません。火影様にうちのが・・・。」

水穂さんがこちらを一瞥して謝ってくれる。水穂さんの目がキツイ。視線をそらして、横を見ると火影殿もヒナタさんの顔を見て顔が赤く染まっていく。ちょっとうつむき加減で振り返るように玄関の上がりに座り、だまって履き物を脱ぎはじめる。なんだかすごくふたりとも初々しい。とても地球で言う小学校高学年?位の子どもがいる夫婦には見えない。

 「おう、やっぱりややこしいことになってるな。」

開けっ放しの玄関の向こうから、渋いシカマルの声がした。やっぱりたたまれない。

 「あら、第四次忍界大戦の時を思い出すねぇ。・・・火影のマントがチャクラを分けていた、あんたのチャクラに見えるよ。懐かしいね。」

明るい女性の声がした。すぐに、「こんばんは、お世話になります。」と男の子の声もした。男の子は、シカマルとよく似ていた。縮小コピーとか失礼な言葉が頭に浮かぶ。

 「うちに集まるのも久しぶりだな。ゆっくりしてけよ。」

 少し、視線をさまよわせながら若々しい声でそう言う火影だった。その姿をじっと目で追うヒナタ様。逆にあえて目を合わせようとしない火影殿。ああ、なんだか仲の良い夫婦なんだなぁと、ほっこりしていた。

 「おや、あんたかい?ひとりで馬鹿でっかいチャクラを3つも持っているって言う、今日着いたお偉いさんだっていうのは。」

もう一度後ろから、さっきの少しはすっぱな声の女性である。シカマルのような鋭い視線を感じる。髪の量が多いのか、後頭部で上に二箇所、下に二箇所と四箇所も結わえてある。さらに背には大きな・・・、僕が見たことあるものでは扇子である、を背負っている。

ちょっと挑発的な物言いと、精悍で整った顔と容姿が特徴の女性である。

 「初めまして、柾木・一樹と申します。本日からこの里でお世話になります。」

僕は、あいまいな微笑と深々とした一礼で返した。無表情で悪感情も良い感情もあまり感じさせないはずである。

 「ふん、まあいいさ。シカマルやナルト、サスケから何もないからね~。」

上から下までたっぷりなめるように見た後、かなり、意味深げな一言を返してくれた。

 「言い忘れてたけどよ、テマリ、そいつぁ、里に来る途中で雷車を守ってんだ。」

シカマルがぼそっと付け加えた。ふわっと柔らかい雰囲気がテマリから感じられた。ほぉ、そうかい。と小声で言って、火影のように履き物を玄関で脱いでいた。地球や樹雷のような靴やサンダルのようにさっと脱げるものではなく、足首から向こうずねまでをかなり頑健に締め上げるタイプの履き物だった。しかもなぜか足先は素足である。

僕らが玄関を上がって、リビングに入るころには、シカマル一家も履き物を脱ぎ終わってリビングに入ってきた。

 「みんなそろったな。肉食おうぜ、肉!」

そこにいる者みんなに伝染するような、笑顔でそう言って庭に出て行く火影だった。若い姿にちょっと不思議な不安感が漂う。庭には金網を敷き、下から熱して肉を焼く地球で言うバーベキューセットが2つおいてあった。小型の机が2つあり、食材とおにぎりなどが並べられている。火影は、もうヒナタ様の横に行ってる。

 「火遁カートリッジで間に合うか?」

そんな声が聞こえてくる。その方を見ると20cm位の四角柱に「火」と書かれた物が金網の下に置かれていた。

 「解」

ヒナタ様が人差し指と中指を立てて、唇に近づけてそっと言うと、金網の下に並べられた火と書かれた四角柱は、赤々と熱を発し始めた。適温になったのだろう、ヒナタ様が大きめの箸で肉を並べ始める。肉の脂が発する良い音と甘い香りがしてきた。食材など見る限り地球とそっくりだった。遠く6万光年を隔てた場所で、よもや牛肉に見える肉、鶏肉らしき肉だの、キャベツやピーマン、にんじんを見るとは思わなかった。本当に地球によく似ている惑星だった。

 地球のプラスティックとは少し違う触感のお皿と紙コップのような容器を渡され、わいわいと焼き肉が始まった。素材はとても鮮度高くて美味しいが、地球のものほど調味料に選択時がないのか、塩や胡椒を中心に、タレもさっぱりした塩分の強いものだった。地球の醤油や味噌のような時間のかかる発酵食品はあまりないのかもしれない。

 「すまねぇな、簡単なものでよ。・・・お偉いさんには口に合わねぇかもしれねぇけどよ。」

ニッと笑った火影の頬に三本のヒゲ?傷?が笑顔の形になる。

 「いえいえ、美味いっすよ。食べてると力が沸いてきます。」

口にめいっぱい頬張ってモゴつきながら僕はそう言った。ぱりぱりとしたキャベツのようなものやタマネギのようなもの甘みの強いニンジンのようなもの、ピーマンも甘みと苦みが強く美味い。水穂さんも

 「ボルト、ピーマンよけるなっての。」

 「そういうシカダイもなんでニンジン食べねぇんだよ。」

肘で小突き合いながらボルト君とシカダイ君がモショモショとやってる。野菜の名前も地球と同じなんだとびっくりする。そんな横でヒマワリちゃんは満面の笑みで食べていた。見てると幸せになれる笑顔だと素直に思える。

 「水穂さん、美味しいねぇ。」

 「・・・なんでしょうね、地球や樹雷ともまた違った・・・。」

僕の筆頭お嫁さん(まだちょっと恥ずかしい)が、こくりと首をかしげて考え込んでいる。

 「どうかしたかい?」

長い髪なんだろうけども、髪量が多いのだろうか、頭で四つのわっかを作って編んでいる、シカマルの奥様が声をかけてくれた。

 「いやぁ、お肉もそうですけど、野菜がことのほか美味しくって。」

うちの神木祥瑞も、一歩下がったところで無心に頬張っている。

 「そうかい。・・・シカマル、この野菜・・・。」

テマリさん、かな?が頭の後ろちょっと上で髪を束ねた、シカマルに声をかけた。シカマルもさすがにタバコは吸ってない。

 「ああ、第四次忍海対戦で十尾が倒れた土地の辺に村ができてな、そこの産物だ。」

ああ、あの、といった目配せがテマリさんとシカマルの間で取り交わされた。

 「大きな戦いだったようですね。」

火影様との会話に出てきた、大戦の名前だ。広範囲で大きな戦いがあったらしい。

 「ああ。・・・あのときの初代様の木遁で良い具合に土が肥えたらしい。」

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