東方創星神録 ~始まりと終わりの物語~〖凍結〗   作:星の屑鉄

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 お気に入り件数5件到達、UA数400を突破、感想1件、ありがとうございます! 地道にコツコツ積み上げていくのは大好きなので、とても嬉しく思います。

 さてさて、今回は少し要素が薄いため、取り上げるところがあまりないかもしれません。しかし、そんな中にも少しの楽しみを見つけていただければと思います。

 それでは、本編をどうぞ。


二章 第三話 伝説の存在

 

 ――『災厄と恩恵を操る程度の能力』――

 

 それは非常に利便性に長け、尚且つ星に匹敵する力を放出する。あまりに定義が広いために、『○○の災厄』とか、『○○の恩恵』と名付けるだけで、能力が発動する。去り際に、『命を芽吹かせる恩恵』を死んだ山に与えた人星は、今後その経過を確認することで、自身がどれほどの存在なのか再確認しなければならない。

 

 人星は、里に入る前に、山にそうした恩恵を残すとともに、また八雲紫に『神聖なる力に適応する恩恵』と、『自然治癒力が向上する恩恵』を与えた。

 

 こうすることにより、与えた恩恵がどれほどの効力を発揮するのか、人星は確認をしたかったのだ。同時に、八雲紫を失わないための処置でもあったことに間違いはない。

 

 人星は考える。果たして、自身の村に物の怪を置くことを反対されないだろうか、と。いくら信仰対象といえども、まだ村人に一度も会っていない上に、直接、恩恵らしいものを与えたことが無い。果たして、そのような状態で八雲紫の滞在を認めてもらえるかといえば、微妙なところだ。

 

 故に、人星は彼女を隠すことにした。場所は『神聖結界』の内部であり、村から外れた森の中。人星は彼女を抱えたまま、そこまで歩く。そして到着すると、彼はただ言霊を放つ。

 

「大地よ、成長して我が宿となれ」

 

 ――ゴゴゴ。

 

 地響きが鳴り響く。大地が揺れる。まるで、地面の中を何かが縦横無尽に暴れまわっているかのような感覚だ。

 

 そうして数秒後、ようやく地鳴りは止む。しかし、代わりに人星の目の前にある大木(高さ30メートルほど)が、その幹を急激に太くしていき、枝を伸ばし、まるで天を突かんばかりの勢いで成長を始める。

 

 成長を続けた時間は、およそ5分。その間に、森の中でも一二を争う大木は、大老樹と呼ばれるほどにまで成長した。その高さ、推定250メートル。幹の太さは10メートルほど。根っこが大きすぎるせいか、地面と根っこの間に大きな空間が出来ている。

 

「大地よ、我が恵みを受け取れ」

 

 この森の大地そのものに『豊穣の恩恵』を与え、人星は大老樹の洞穴ともいえる空間に入る。空間へと入る直前、大地が喜びを示すように淡い緑色に発光したのは、きっと見間違いではないだろう。

 

 

 

「月の恩恵よ、優しく照らせ」

 

 中に入るなり、人星はまず光源を用意しようと能力を行使する。太陽の熱量では大老樹を燃やしかねないと思ったため、扱った力は月光である。淡く優しい色の光が、周囲をほのかに照らしていく。

 

 ――大老樹の洞穴の広さは、八畳半といったところか。天上の高さはおよそ3メートル。少々、土臭いところが難点だが、けして住み心地は悪くないだろう。

 

 内部状況を素早く把握し、人星は此処で生活するうえで何が必要かを考える。

 

「まずは、寝台か。……風よ、木の葉を集め、此処に運べ」

 

 ヒュウ、とそよ風が人星の耳元で小さくなる。

 

「大地よ、寝台の型と、机の型を頼む」

 

 お安い御用だ、といわんばかりに大地が隆起する。それは徐々に、机や寝台の形を模っていく。

 

「水よ、この内部を覆え。火よ、模られた家具を加熱せよ」

 

 大老樹の外から水の激流が押し寄せる。空中を流れる水はひどく不自然なのだが、それをよく見ると空間が少しだけ歪んでいる。大方、重力の力も借りたのだろう。水は洞穴の内部で薄い膜に形を変え、大老樹の防壁となる。

 

 それが終わったかと思うと、今度はバチッ、と紫電が走る。同時に火花が立つと、その火花は爆発したかのように、瞬時に火の塊となり、大地によって模られた家具に激突し高温で焼いていく。

 

 そして数分後、それらは焼き終わり、水の膜によって冷却も終え、見事に固形、ある一定以上の硬度を持った家具へと変貌する。余った水の膜は役目が終わったとばかりに、ふよふよとのんびりとした速度で大老樹の内部から出ていく。そして入れ替わりに、暴風が中へと侵入しそれは寝台へと叩きつけられる。ふさっ、と柔らかい音が立つと、次の瞬間、寝台の型は木の葉に覆われ、正しく寝台としての機能を備えるようになった。

 

 仕事は終わった、とばかりに水とは別の理由でゆっくりと去っていく風。対して人星は、「苦労を掛ける。ありがとう」と返して、出来立ての寝台に八雲紫を寝かせる。

 

「ふむ、これならば体を痛めることも無いだろう」

 

 大自然の恵みによって作られた家具に満足しながら、人星は微笑みを浮かべる。

 

「我が力は弱まれども、自然の力は衰えぬ。それが確認できただけでも、収穫は十分だろう」

 

 実際には、自然の力は人星の抑えられた力に比例して弱まっているのだが、彼がそれを知る由は無い。今回は命令が簡単すぎるもの故に、科学の力で解決できたに過ぎないと。

 

「……さて、我は森を活性化させるとしよう」

 

 人星は呟き、大老樹の洞穴から出ようとして、出口でふと止まる。そして、まるで思い出したかのように、口を開く。

 

「八雲紫よ。狸寝入りは良いが、下手に動き回るなよ? 我は今、信仰心をもとに体を構成している。村の者全員が貴様に反発した時、我が手を差し伸べることは出来ぬ。食事は我が用意しよう。努々、悟られるなよ」

 

 言葉を残して、人星は大老樹の洞穴から出て行った。

 

 

 

 ……それから数分後。

 

 むくり、と八雲紫は起き上がる。ふわふわの木の葉のベッド。随分原始的なものだが、寝心地は悪くない。むしろ、最高の部類に入る。

 

 八雲紫は考える。どうして、敵対した自分を助けるのか、と。

 彼女は実のところ、人星から『自然治癒力が向上する恩恵』を与えられた直後に、意識を取り戻した。死の災厄によって衰弱していた体は、恩恵を与えられた瞬間に全快したのだ。

 

 八雲紫は自分の体が衰弱していたことを知っている。同時に、自身が人星から何らかの能力によって回復させられたことを理解している。彼女の聡明さは天賦の才のさらに上を行く。状況判断のみで、意識の無かった数十分の事実をすぐに予想し、当てることぐらい、造作もない。事実、その予想は的中している。

 

「……それにしても、笑えないわね」

 

 誰もが魅了されるその美貌に真剣を宿し、八雲紫は自嘲する。

 

 八雲紫によって魂の出力を制限した。よって、人星はたとえどのような能力を以てしても、実力を1%も出せない筈なのだ。

 

 それにも関わらず、死の災厄を少なからず受けて衰弱した八雲紫を、すぐさま回復させるその治癒能力。加えて、あの自然を操作する能力。

 

 あまりに滑稽。八雲紫は所詮、おぞましい桁の数字に100という分母を与えたに過ぎなかったのだ。相当な力を抑制出来るだろうが、封じた力は、即ち過ぎた力。使わなくてもよい、どうでもいい力なのだ。

 

 つまり、死を覚悟して最後に残した呪いは、結局のところ彼にとって、あっても無くても変わらない代物なのである。

 

 故に、八雲紫は自嘲した。それほどの相手に、どうして戦いを挑んだ。どうして逃げなかった。

 

 ――矜持? 意地? それとも力の証明?

 

 それはすべて違う。八雲紫を動かしたもの。それは、好奇心である。そして好奇心猫を殺すとは、まさにこのことを言うのだろう。生きているのは、運が良かったからに過ぎない。

 

「面白いわね。人星……まるで、最古の創世記に出てくる、最高位の英雄みたいね。――まぁ、彼は人間でありながらも、天体すべての力を操ったのだけれど」

 

 そこでふと、八雲紫の頭に光が奔る。最古の創世記、それは月の民、月の兎によって地上にもたらされた書物であると云われており、事実それらは彼ら彼女らの手によってこの星に授けられた。

 

 八雲紫も、その書物は1冊、持っている。

 

 慌てたように、八雲紫は『境界を操る程度の能力』を使用してスキマを開き、そこから一冊の本を取り出した。タイトルは、『創世記 地球と月の繁栄の秘密』だ。

 

 彼女はその本を開き、記憶にあった頁を探していく。そして、ようやく見つけた頁には、こう書いてある。

 

『人星様は、体に文字を刻んでいる。首には〈Sol〉と。そこから少し下の鎖骨あたりには〈Mercurius〉と。その下の胸の中心部分には〈Venus〉と。更に下の鳩尾には〈Terra〉と。そのすぐ横には〈Luna〉という文字が。鳩尾とへその中間地点には〈Mars〉と。へその部分には〈Main Belt〉と危うく見失ってしまいそうなほど小さく刻まれている。そこから更に下、露出した右足の腿(モモ)には〈Jupiter〉と。左右対称になっているように、左足の腿には〈Saturnus〉と。右足の膝には〈Ouranos〉と。左足の膝には〈Neptunus〉という文字が見える。……更に注意深く見ると、まるで嫌われ者のように、額には〈Pluto〉と掠れた文字で刻まれていた。』

 

「――『Pluto』――」

 

 似ている。あの時、死の災厄をもたらす前に発した言葉と、似ている。

 

 頁を更に先へとめくる。

 

『人星様は月を、月の民を、月の兎を、地球を、様々な星を救うために、コラプサーと共に、消滅してしまわれた。私たちは泣いた。慟哭した。最後に残した辞世の句を聞いて、更に涙が溢れ出てくる。人星様は自身が死のうとも、それを顧みず私たちを救ってくださった。嗚呼、あの御方には何度、救われたことだろう。あの美しい詩は、後世に語り継がれるべきだ。故に此処に、それを記そうと思う。』

 

 頁を1つめくる。

 

『――〈我は逝く されど輪廻の 輪の下に 廻り逢おうぞ 愛しき宝〉――』

 

 何度見ても、美しい詩だと八雲紫は溜息を洩らす。言葉で表せないほどの、覚悟と親愛、その二つが籠められたこの詩は、まさに人ならではの美の音色だ。

 

 頁を前の方へと戻す。

 

『前々から思っていたのだが、どうして人星様は上半身を曝け出し、下半身をキトンで隠されていらっしゃるのだろうか? 何か意図あってのことだろうが、それは私たちでは到底、予想することが出来ない。そのため、指摘することは誰も出来ない。……まぁ、それでもあの肉体美が見られるのであれば――』

 

 真面目なだけでなく、このおどけた場面が嫌いになれない。苦笑を漏らして、八雲紫は頁をめくる。

 

『人星様は大胆不敵だ。月の民の同族を数十人も虐殺したのに、そのことに対して罪悪感というものを感じさせない。負い目にしていない。まるで、やることが当然であったかのように。害虫を駆除したかのように。いつも通り過ごしている。王として君臨している。そして、月の民からの反発の声は聞こえない。これが、王としてのカリスマというのだろうか……。私には、少し理解出来ない領域の話だ。』

 

「――嗚呼、なんてことかしら」

 

 八雲紫は歌声のような声を凛と響かせる。同時に、隠しきれない笑みをそこに浮かべる。

 

「ただの擬似神格かと思っていたけれど……本物なのね。人星」

 

 確信した。本に書かれている人星と、八雲紫が出逢った人星。それは同一人物であると。擬似神格なんてケチなものではない。本物。正真正銘、歴史上、類を見ない英雄。人星、その人だ。

 

「でも、見定めさせてもらうわ。貴方の、その存在を。この私の目で」

 

 誰もいないというのに、慣れた手つきで扇子を開いて口元を隠す八雲紫。

 

 彼女は雅な笑い声は、月明かりに照らされる大老樹の中に、木霊するのであった――。

 

 




 と、ここで明かされる衝撃の新事実! なんと本当に月の民、月の兎たちは地球に人星のことを伝えていました。八雲紫もその一冊を持つという面白現象が発生しております。

 今回も、それなりにツッコミどころが満載だったのではないか、などと思いつつ、今回はこれにて。

 次話につきましては、11月3日の17:00に投稿する予定です。何せ祝日ですから。余談ですが、11月4日に投稿しようと思っていた第五話ですが、これが文字数が多くて、第四話と連続で投稿するか、それとも今まで通りに投稿するか、少々悩んでおります。

 おそらく、そのあたりは二次創作者の裁量と気まぐれによって変化し、また連続投稿するとお休み的なものを1日もらうことが確定していることを、ここに記載しておきます。

 感想、評価、コメント、批判、ご質問、ご指摘、お気に入り登録などなど常時受け付け体制ですので、もしよろしければどうぞ! 非ログインユーザーの方でも、感想を受け付けられるようにしていることを、ここに初ですが記載しておきます。

 それでは、次話の11月3日、17:00にまたお会いしましょう!(一番早いと感想枠の方でお会いします)。

 
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