東方創星神録 ~始まりと終わりの物語~〖凍結〗 作:星の屑鉄
順調です。順調にUA数を伸ばせていることに感動中です。
あと、安定した感想というのは、やはりモチベーションを維持、もしくは大変向上させますね。これからもバリバリ、皆さまの楽しめるものを(ニッチな需要かもしれませんが)ご提供させていただきたく思います。
それでは、少し短いですが、本編をどうぞ。
神社。鳥居の上で、人星は地平線を眺める。そして、そこより出でる太陽を見る。
「やはり、世界は美しい」
これで酒でもあれば、いい肴になるのだろうが、と人星はぼんやりと考える。しかし、一日の始まりから酒を飲むのもおかしいだろう。結論、酒が手に入ってから考えれば良い、となる。
「随分と、臭いセリフですね」
ふと、声が下から聞こえてきた。見てみると、そこには博麗がいつもの巫女姿――少々髪に寝癖が残っている状態――で居た。
「臭くとも、飾るよりはマシであろう?」
「時と場合によっては、飾らなければ受け入れられないこともありますよ」
「違いない。しかし、飾る時は今ではない」
「……確かに、そうですね」
朝日は昇る。村を見ると、人が何人も家から出ていることがわかる。桶を持っていることから、大方、水を汲みに行くのだろう。
「さて、我はそろそろ村に赴こう。博麗、貴様はどうする?」
「もちろん、ついていきますよ」
「ならば行こう」
鳥居から飛び降り、たんっ、と軽やかに着地する人星。彼は博麗と並び、石段を下り、人里へと向かうのだった――。
村の中は、早朝より賑わいに満ちていた。特に、村の中央には人だかりが出来て、わいわいと騒がしい。
「おぉ、博麗のお嬢ちゃん。そっちの美形は、これかの?」
既に70を突破しているのであろう白髪の爺さん。好々爺のような表情と声音で、小指を立てて博麗に人星のことを聞く。
「そ、そんな、恐れ多いです。この御方こそ、この土地で語り継がれてきた土地神の、人星様です!」
「なんと、この御方が?」
博麗の答えに、その爺さんは一瞬、懐疑的に人星を見る。それに対して、人星はただ堂々と、相手の目の奥を見る。まるで、何かの真意を探るような双眸。爺さんはすぐに目線を博麗へと戻した。
「いやはや、まさか儂が生きている間に、彼の人星様に出会えるとは。これは、神に感謝しなくては」
「何を言っているんですか。神様は目の前に居るじゃないですか」
「おっと、これは……そうでしたな」
――はっはっは! と快活に笑う好々爺。
一方、人星はその一連の流れを見て興味を失ったのか、好々爺を視界から外し、人々の瞳の奥を見る。しかし、それも数秒としないうちに終え、最後には土地を見る。
「ふむ……土地が少々、不安定だ。我は土地の整備をする。村人たちよ、また会おう」
村人の誰かが人星に声をかける前に、彼はその場から脱した。他の村人と話していた博麗はその話を中断して、「あ、待ってくださいよ~!」と人星を追いかける。
そんな様子を、村人たちは静かに見ていた。そして、ようやく二人を目視できなくなったところで、誰かが呟いた。
「これから、どうなることやら……」
その言葉はまさに、村人全員の気持ちを代弁しているものだった――。
「人星様。いきなり、どうされたのですか?」
村から離れた森の中。ようやく追いついた博麗は、人星に問う。どうして、いきなり人里を離れてしまったのか、と。
「何、ただの村人であったことを、見極めただけだ。気にするな」
「は、はい?」
つまらなさそうに言う人星に対して、博麗は何を言っているのかわからない、と顔に出す。
「つまり、熱心な信徒はそれほど多いわけではない、ということを言っているのだ」
「あぁ、そういうことですか。それは仕方ないですよ。この村は、そもそも人口が少ないですから」
人星が補足すると、博麗はようやく納得したのかそう言ってひとり頷く。それに対して、人星は心の中で小さく溜息を吐き、木々の葉の隙間から見える空を睨む。
「そうだ。我らはあまりにも、少ない。」
――だからこそ、行動はすぐに起こさねばならない。
人星は正面を向いて歩き始める。そして、大地の要所に『豊穣の恩恵』を与えながら、博麗と他愛の無い話をする。それは普段の村の様子であったり、生活習慣であったり、森の生態系であったりと様々。ほとんど何も知らない人星相手に、話のタネが尽きることは無い。
「この大地は、やはり活発だ。もうすぐ、新しい生命が自然に生まれるだろう」
「え、そんなことまでわかるのですか?」
自然の話の中、唐突に言い出した人星に、博麗は驚いたように声を上げる。人星は大仰に頷き、湖の方を指さした。
「あの湖には、もうすぐ氷の妖精が誕生するだろう。同時に、湖や自然を司る妖精も生まれる筈だ。……しかし、あまりに脆弱過ぎる。このままでは、生まれてすぐに死んでしまう。流石に、それは我としても面白いものではない」
言いながら、人星は大地に手を当て、集中する。博麗はその様子をただ黙して見守る。一体何をするのか、人星の次の行動に対して、期待に胸を膨らませる。
「輪廻せよ、大自然よ」
ぞくり、と博麗の全身に悪寒が走る。その力は感じ取っただけでも、あまりに強大。自身の修めているすべての術が児戯に思えるほど、その凄さを理解することが不可能なほどの力の奔流。
彼女の体感では、少なくとも『神聖結界』の内部全域に、力が奔った。その力は循環しており、まるで無限を思わせるほどに膨大。
これが、人星の力。博麗の鼓動が早鐘を打つ。真の神の力を目前で魅せられた。それはあまりに衝撃的な出来事だ。自身の価値観に、何かとてつもない亀裂を生むほどに、衝撃は強い。
「……なるほど。一分(いちぶ)の力でも、これだけのことは出来るか」
化け物じみている。人星は心の中で吐き捨てる。
博麗は心の奥底を震わした。これほどの力の奔流が、一分の力だというのか、と。
「湖には、『穢れを受け付けない恩恵』でも与えれば良いだろう」
そうしてもう一度、能力を発動する人星。そしてその力も、博麗が感じ取るには破格の強さ。おそらく、何十世代、何百世代という時が経ったとしても、残り続けるほどのそれは、神という存在からも逸脱しているように思わせる。
博麗は確信する。人星は常識の埒外の存在なのだと。
そして同時に、こうも考えた。
――これほどの御方に信仰しないなんて、有り得ない――
カチリ、と歯車の噛み合う音がする。その正体は、博麗の価値観が急変した証であることに、本人を含めて誰もが気づかない。
「これで良いだろう。……帰るぞ」
「――はい!」
博麗は元気よく返事をして、満面の笑顔で人星の手をとる。
「……どうして手を取る必要がある?」
「何となく、です。……ダメですか?」
可愛らしくねだる様な瞳。加えて、上目遣い。そして、瞳の奥に見え隠れするもの。
人星は溜息を吐く。また、厄介ごとが増えてしまった、と。
「好きにせよ」
それだけ言って、人星は歩き始める。博麗はぎゅっ、と彼の手を握り、その隣に立つ。半裸の美男子と、美しい巫女。その周囲には大自然。絵になるのかならないのか、よくわからないそんな光景を、周囲は密かに――そよ風を吹かせ、木の葉を舞わせ、自然の静かなコーラスを響かせて――祝福する。
「……我が秘奥、使わせてくれるなよ」
静かな日常。しかし、繰り広げられるは鮮烈なかくれんぼ。
天上は雲間に真実を隠して霧隠れ。
神は天を見つめて自然を見つめ、己の見直し、避ける灯台下暗し。
足元を確認したならば、次は振り返ろう。そこに必ず答えがある。
先を見るなんて愚かしい。まだ通り過ぎてもいないのに、その全貌を見通せる筈もない。
過ぎ去るのは静かな日常。
そんな日常で隠れ見つけを繰り返すからこそ、人はこれをかくれんぼと呼ぶ。
運命なんてものは、神のみぞ知るものではない。
――運命は神でさえ、知る由は無いのだ――
伏線なんてばら撒いて、すぐに回収して何ぼですよね。
などと言いながら、第四話終了です。これでようやく、折り返し地点といったところでしょうか。
この章もそうですが、この二次創作を通して共通している点を1つ申し上げます。
この二次創作において、必要の無い、または必要性の薄い部分の描写は、容赦なくカットします。そのため、キングクリムゾンなんてことは余裕で起こり得ます。ただし、それで物語の内容が分からなくなるような不手際は起こしません。説明しなければならないところは、きっちりと物語の中、取りこぼしたところは感想枠にて少しだけ補足をさせていただきます。
何せ、二次創作です。わざわざ、読者の皆様に料理でいう部分の「不味い箇所(脂身)」をみせる必要もないでしょう。常に「霜降り肉」の部分を、ご愛読者の皆様には味わっていただきたく思います。
くどいと思わせない、退屈させない二次創作。それもこの作品の目標の1つです。無駄に引き延ばしたりもしませんし、完結するところではきっぱり完結させ、後には続かせません。
ただ、所々に混じっている二次創作者の遊び心には、寛容な精神を以てご対応を願いたく思います。下手な和歌とか、詩だとか、「あぁ、この二次創作者は黒歴史増産しているなぁ」程度に思っていただければと思います。もしもそれを上手い、心に染みたなどと思ってくださるのであれば、個人的に現段階で、これ以上の喜びはなかなかないでしょう。
などと、あとがきを長くなりましたが、これにて。
次回は11月4日の21:00になります。次の話は文字数が多くなりますので、表面的な読み応えも出てくるでしょう。
感想、批判、評価、コメント、ご指摘、お気に入り登録などなど、常時募集していますので、もしよろしければお願いいたします。
さて、次のメインはあのお方です。そろそろ、タグをまた整理しておきたいと思います。それでは、最後までこの長ったらしいあとがきをお読みくださり、ありがとうございました。