東方創星神録 ~始まりと終わりの物語~〖凍結〗   作:星の屑鉄

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 まずは、UA数1000近く、皆さまのご愛読、まことにありがとうございます!

 皆さま、お久しぶりです。星の屑鉄です。

 宣言通り、今日より第三章を投稿していきます。

 活動報告にご報告させていただきましたが、第三章のテーマは「凡夫」と「親友」です。

 あと、三章の最終話だけですが、手直しを加えなければならないところが見つかったので、そちらを手直しするために、最終話だけ投稿が遅れる可能性があることを、こちらに告知しておきます。

 それでは、本編をどうぞ!


Chapter3 A mediocre person creeps up with a friend
三章 第一話 気づけばその場所に


 

 ――それは何時しか、その場に存在した。

 

 黒髪、空色の瞳、美形でもなく、また不細工でもない平凡な顔つき。肉体も、男としてそれなりに鍛えているな、程度のもの。とても立派とは言えない、十五、六の青年。

 

「……『輪廻する程度の能力』、発動したか」

 

 彼はひとり呟き、立ち上がる。見まわしてみると、そこは森の中。木々が乱雑に立ち並び、無秩序に伸びる植物たち。とても整地された土地とは言えない。あまりに雑多な土地。あまりに酷い有様に、彼は思わず自身の力を発動する。

 

「この『豊穣の恩恵』、受け取れ」

 

 力を行使する。それは自信に宿る『災厄と恩恵を操る程度の能力』だ。星にすら直接干渉可能な強大な力は、しかしこのちっぽけな大地に干渉したかと思うと、たちまち泥水の中に混じる一滴の純水のように、染め上げられた。

 

「――何?」

 

 自身の能力には絶対の信頼を寄せている彼は、その事態に面食らう。

 

(――どうして、これほど脆弱な土地に、力が弾かれる? 此処は、地球ではない、未知の星だとでもいうのか?)

 

 あまりに不可解。たとえ八雲紫から弱体化させられたとしても、その力の衰えを感じさせることなく発動した能力は今、まるで塵芥のように吹き飛ばされる。

 

「……何が、どうなっている?」

 

 前回と違い、記憶の継承はしっかりと行われた。体に、能力に欠損が見られるわけでもない。本質的に、すべての種を纏めるルーツの一である彼は、ふとその聡明な頭脳を以てある可能性に思い至る。

 

「まさか、我が本質的に他種族になったとでもいうのか?」

 

 ――まさか、有り得ない。

 可能性を否定したくなるが、しかし、そうでなければ説明がつかないほど、彼の能力は弱体化している。

 

「……ふぅ」

 

 どん、と地面が鳴る。まるで重い石を地面に落としたような、そんな脆弱な音に、彼は目を見開く。

 

「本気で、踏み込んだつもりなのだがな……」

 

 彼は今、この大地を本気で破砕する威力で踏み込んだつもりだった。しかし、結果は波紋すらも起こらない。自然現象、万有引力によって、それなりに重い(人間と同じくらいの)物体が落ちるのと、同じ威力。

 

「星よ、答えてくれ。俺は今、どうなっている?」

 

 もはや答えに到達しているに等しい彼は、空を見上げて問い掛ける。しかし、彼の耳には一向に、返事らしきものが届かない。

 

「――嗚呼、嗚呼、嗚呼!」

 

 彼は叫ぶ。今の気持ち、その激情に任せて感情の限り叫び散らす。

 

「なんと、なんと! この俺が、星すら赤子同然に扱ったこの俺が、大地に赤子扱いされるというのか! 嗚呼! 星からの返事もない。月からの交信も途絶えた! 俺は孤独! これほどの敗北、真の敗北、今まで味わったことがあるだろうか!」

 

 しかし、そこに怒りは無い。あるのは、喜色の笑み。歓喜の咆哮。沸き立つ血潮。今までにないほど頭が活性化し、世界に今までなかった色が次々と彩られていく、認識の激変。

 

 今の彼に、世界は劇薬だ。彼は未知という存在を、ほとんど感じ取ったことが無い。何故なら、全て星が教えてくれた。しかし、今はその手助けが無く、また今世、どのような世界なのかさえ分からない。あまりにも未知の多い世界に、彼は心のうちから湧き出でる高揚感に包まれる。

 

「愉快! 実に愉快! さぁ、行こう。この未知の世界を、俺の足で踏破するために!」

 

 ただ未知への憧れを、彼は無邪気な子どものように追いかける。雑な森を歩き、時に目印をつけ、獣道を悠々と闊歩する。裸足の足がどれだけ植物の枝によって傷つけられようとも、止まる気配はない。

 

「む……? おぉ、下級の物の怪か」

 

 そして目の前に現れる、手毬のような大きさの黒い毛玉のような存在。それは間違いなく、下級妖怪だ。今までの人星であれば、眼光で貫くだけで殺せただろう。いや、もはや意識を向けることもなく殺せたのは確実だ。

 

 しかし、今は違う。全力で以て迎撃したとしても、勝てるかどうかわからない。

 

「たとえどれだけ脆弱になろうとも、俺は決して負けはしない」

 

 だっ、と彼は駆けだした。下級妖怪とは全く逆の方向に。背を向けて、逃げ出した。

 

「――ッ!」

 

 声にならない叫びをあげて、下級妖怪は逃げる彼を追う。人星はとにかく距離を取ろうと、獣道を引き返す。そして、最初の目印に到達したところで、今度はまた別ルートを進む。腕も、足も、顔も、枝やらに引っかかったせいで傷だらけだ。所々から、血が滲み出ている。

 

 ――ケラケラケラ。

 耳障りな音が彼の耳に届く。同時に、彼は急にその場で停止し、左へと転がり込んだ。

 

「オシイ」

「……中級の物の怪……妖怪、その成り損ないか」

 

 そして目の前に居るのは、体中が腐敗したようにドロドロとした、辛うじて犬のような形を保っている黒い妖怪。その存在からは怨念が感じられることから、まともに生誕した者ではないのだろう。才気は感じられるが、しかし、如何せん進化の方向性を間違えた。これでは、大妖怪と呼ばれる部類にはどうやっても入ることは出来ないだろう。

 

 チラ、と彼は後方を見る。先ほどの下級妖怪が追ってきていないか、確かめた。

 

「ケラケラケラ。アンシン、シロ。ニゲタ」

「見た目の割に、頭が良いようだな」

 

 人語を介する上に、こちらの意図を瞬時に読み取る洞察力。成り損なってしまったことが惜しい。本来ならば、大妖怪に匹敵する成長を……上手くいけば、あの八雲紫とも張り合える才気はあっただろう。

 

「世界は、やはり残酷にも美しい。そうは思わないか?」

「クク。オカシナ、モノダ。マコト、ソノトオリ」

 

 風流も理解するか、と彼は驚いた。

 

「貴様、名はあるのか?」

「ナイ」

「この森は酷い状態だと思わないか?」

「オモウ。マッタク、ドウシテ、コレホド、アレタノカ」

 

 本来、中級妖怪の成り損ない如きが、そのようなことを思うなど有り得ない。その場を守護する限定的な者であれば話は別だが、それにしても、この成り損ないは情緒豊かが過ぎる。

 

「貴様、何故この俺を狙った?」

「ショクリョウカクホ。ソレト、ホンシツテキニ、キケンダ」

 

 この答えも異常。彼は今、何ら特殊な能力も、強さも持っていない脆弱な存在に過ぎない。それにも関わらず、本質的と云って核心をついてくるその鋭さは、もはや勘や知略の域を超えている。本能かとも考えたが、それも違う。何か、確かな確信を持っているように見える。

 

「あっぱれ。確かに、全盛期の俺であれば、貴様など眼光だけで殺せただろう。しかし、今は生憎、原因不明の事態に陥り強くない。加えて、俺を殺したとしても、『輪廻する程度の能力』が作用することにより、またこの世に誕生するだろう。危険駆除という意味では、今の方が安全だとは思わぬか?」

「シカシ、クウフクハ、カイケツデキナイ」

 

 なるほど、それもそうだ。彼は考える。何か良い手立てはないものか、と。

 

「……ふむ、しばし待て」

 

 彼は自身の持つ最大の力、『創造する程度の能力』を使用し、星の力の宿る器を生み出そうとする。そして彼の手の上に現れたのは……桃だ。

 

「これは……」

 

 別に形状を指定した覚えはないが、しかしだからと言って食べ物の形を選択するのは如何なものだろうか。それとも、この成り損ないに与えるから、わざわざ食べ物の形状を取ったのだろうか。

 

「……食うか?」

「モラウ」

 

 即答。どこからともなく出現した桃を、躊躇なく彼の手から受け取り、それを一口に頬張って咀嚼する。

 

「げふぅ。これは美味い」

「……これは、樹形図というものを考え直さねばならぬか」

 

 急に流暢に喋り出す成り損ない……いや、中級妖怪。その姿は黒くドロドロとした成り損ないのものではない。輝かんばかりの銀色の体毛、整った鼻、凛々しくも愛嬌のある双眸、そして鋭い牙と爪。その姿はまさに、見事な白銀の狼だ。

 

 桃を食べ、飲み込んだ瞬間、体中の黒いドロドロしたものを振り払い、成り損ないから中級妖怪へと変化……いや、進化したことに、彼は頭を悩ませる。一体、先ほどの桃にどういった力があったのか。少なくとも、星の力が宿ったものではなかった。彼自身の力が弱体化しているせいもあり、それほど強力な力は籠められなかった。しかし、だからと言って力が宿っていなかったわけではない。表わすならば、神の端くれ程度の力、といったところか。質的には、そのようなものだ。

 

「……貴様、妖怪か?」

「ん? 何を勘違いしている。そもそも、そうした種族という概念を持った覚えはない」

 

 ――嗚呼、これはとんでもない。

 彼は戦慄する。先ほど出来損ないと思っていた者。あれはつまり、進化する前の姿。神か、妖怪か、それとも人間か。様々な種族の中から、どの系統に進化するか、決めかねていた故に、体の形状を維持出来ていなかっただけに過ぎないのだ。

 

 才気の衰えは感じない。むしろ、今目の前の存在は、才気の上限を更に上げたようにさえ思わせる。これほどの逸材、早々拾えるわけもない。残念なのは、星の力を与えられなかったところだが、それはもはや言っても仕方のない事。

 

「理解した。故に提案しよう。俺と手を組め、原種よ」

「原種? なるほど、言い得て妙というやつか。話くらいは聞こう」

「この森、俺と貴様の力で再生させようではないか。より美しく、輝かしく、そして雅に」

 

 彼からの提案、原種と呼ばれた者は静かに考える。目を瞑り、思考の海へと潜る。その時間、およそ2秒。

 

「――良い提案だ。乗った」

「くくっ、そう来なくては」

 

 では手始めに――と、彼は指示をしようとして、ふと止まる。

 

「……貴様の名は、ハクロウだ」

「なるほど。授かろう。――なら、お前の名前は?」

 

 動揺することなく、しっかりと言葉の意味を理解し、それらを刹那のうちに考慮した上での肯定の言葉。その決断力に、彼は「ほぅ」と感心の声を上げる。そしてまた、自らも答える。

 

「人星、と言いたいが、残念ながらこの名前を使用することは、今の俺には憚られる。星が授けた名を、脆弱な俺如きが使うべきではない。名づけをしてはくれぬか?」

 

 こうなると、流石の白銀の狼――白狼――も考える間が出来るだろうと彼は考えていた。

 

「なら、お前の名前はアユムだ」

 

 しかし、答えは意外にも早い。考える時間は三秒も無かっただろう。しかし、ここで負けるのは癪に障ると思い、彼は……アユムは一つ頷く。

 

「授かった。ならばハクロウ、まずはあの木々を切り倒すぞ」

「いきなりか。まぁ、ゆっくりやろう」

 

 どうしようもなく奇天烈なコンビ。人間並みに退化したアユムと、進化したハクロウ。これから待ち受ける未来も知らず、二者はただ前向きに真っ直ぐ、手始めに森の整理を始めるのだった。

 

 




 まずは出逢いですね。もはやテンプレテンプレ、と言いたくなるような話の内容です。え、弱体化? 能力にデメリットや制約なんてあって然るべきとだけ言っておきます。

 今回、人星は名前を変え、アユムとなりました。容姿にも美形→凡人というランクダウンが見られます。つまり、もはや奈落に這いつくばっていることと同じくらい、酷い状況です。

 さて、そんなアユムの明日はどっちだ!?

 そんなことを言いながら、今日はこれにて。

 次話の投稿は11月14日の13:00にさせていただきます。
 それでは、感想、コメント、評価、お気に入り登録、批判、ご指摘等々、常時募集しておりますので、もしよろしければ、そちらの方もよろしくお願いいたします!

 あ、それとオリキャラ出てきた、とか思っている方がいらっしゃると思いますが、これは名前のまんまです。はい。これをオリキャラと言ったら、第二章の博麗もそれに当たりますから。

 それでは、これにて。 
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