東方創星神録 ~始まりと終わりの物語~〖凍結〗 作:星の屑鉄
さてさて、今回はいよいよ、彼の略歴が纏められていきます。
……果たして、纏まっているのでしょうか? などと疑問に思うこともありますが、時系列順に葉並べたので大丈夫……な筈です。
それでは、本編をどうぞ!
彼は覚妖怪との邂逅後、およそ一ヶ月あまり、妖怪の山で鬼たちと生活を共にした。流石は妖怪の中でも最強種に数えられるともいうべきか、鬼共はその僅かな期間で、瞬く間に妖怪の山を手中に収めてしまった。
特にこれといった紆余曲折もなく、ただ強い、という理由だけで、天狗の長は天魔、並びにハクロウの二人が担うことになった。そして妖怪の山の統治者は、萃香かと思えば、鬼神だという。はて、誰のことかと彼が首を傾げると、どうやら鬼子母神とのこと。純粋な強さとはまた違ったベクトルを持つ彼女には、鬼の四天王と呼ばれた勇儀や萃香でも頭が上がらないらしい。
彼も一応は四天王。鬼の端くれと認められた存在だ。鬼子母神と面会し、挨拶代わりに杯を交わした。そして子ども持ちという共通点からか、酒の肴として話題には事欠かなかった。良くも悪くも、お互いに親馬鹿なところがあり、気づけば意気投合していた。
時折、彼のところには鴉天狗の射命丸とやらが訪れ、取材だと部屋に押し入ったことは特に思い出として新しい。何の取材かと思えば、新聞を作るからとのこと。別に拒む理由も無い彼は、二つ返事で了承し、他愛の無い質疑応答を繰り返した。
ただ、質問が大詰めに掛かってくると、大抵その場に萃香が現れて、射命丸は酒の席へと連行された。そうして酔い潰れた翌日の昼頃にはまた取材に来るのだから、その根性はたくましいと、彼は素直に心の内で賞賛する。
ただし、先日と同じく射命丸は取材に来れば必ず、酒の席へと連れていかれる。もはやそれは定例行事のように半月ばかり続いた。
終わりが来たのは……そう。
彼が博麗神社に赴いた、ある日のことだった。
太陽が頂点に達した頃、彼は懐かしきその場所へと赴いた。
時を同じくして、性懲りにもなく射命丸が彼の部屋に訪れて留守だと知るなり、その幻想郷一番の速さを以て探し回っていた。
「あら、ようやく来たのね」
彼が鳥居をくぐり終える直前に、後ろから声が掛かる。相変わらずの声音だ、と彼は思いながら、苦笑を浮かべて振り返る。
「久しいな。八雲紫。今日は少々、頼みがあって来たのだ」
「知っておりますわ。代わりに、私の頼みも聞いてくださらない?」
「是非も無い。しかし、事は早い方が良い。手短に頼むぞ」
「委細把握していますわ。さぁ、この中へ」
八雲紫は相変わらず目玉が不気味に覗くスキマを出現させ、横に待機して恭しく頭を下げる。
「……胡散臭いこと此処に極まる。悪意は無いようだが……」
はぁ、と彼は溜息を1つ吐いた。しかし、それに対して八雲紫は全く動じない。それを確認もせず、彼は八雲紫の横を横切ってスキマの中へと入り、歩き続ける。
そしてスキマを潜り抜けた先は……檜の匂いが香る、何処とも知れない家の中だった。
「お待ちしておりました。幻想郷の創設者様」
そして目の前には、まだ10歳ばかりの少年が、両膝を床について、まるで土下座をするように彼を崇め、最大限の敬意を表していた。
――これは一体、どういう状況だ?
事態を飲み込めず、彼は後ろのまだ存在しているスキマに向けて視線を送る。程なくして、その中からは八雲紫が現れ、地に足をつけたところでスキマはもとの空間に押し潰される様にして消える。
「その子が編纂する書物、『幻想郷縁起』の中に、貴方の情報を、事細かに、包み隠さず記す。未来への伝言、と思ってくだされば結構ですわ」
「なるほど。そういうことか」
情報媒体としては些か不安ではあるが、記録に残すことには彼も大いに賛成するところだ。穏やかな笑みを浮かべて、彼は頷いた。
「ならば、いくらでも質疑応答をしよう。まずは、質問を始めるといい。……と、貴様、名前は?」
「稗田阿人(ひえだの あひと)と申します。それでは、早速質疑に入らせていただきます」
稗田阿人が面を上げると、年齢不相応な、熟練の職人のような真剣な顔つきが見えた。
「お名前と、種族などをお教えください」
「名前は無い。種族も定められた覚えはない。そのような低俗な枠に、俺が収まるとでも思ったか?」
「っ……! ……失礼いたしました」
「気にしていない。それと、そう怯えるな。別に取って食おう、などとは思っていない。……八雲紫、お前は一体、俺のことを阿人にどう伝えたんだ?」
「気分次第で虐殺も厭わない、世界最強にして幻想郷の創設者、と伝えましたわ」
その返答に、彼は「はぁ」と溜息を吐いてこめかみを押さえた。
「気分次第では、というのは訂正させてもらう。状況次第では、虐殺も厭わない。気分でその者の運命を断ち切るなんて……俺は畜生に堕ちた覚えはない」
――余計な時間を取らせてくれる。
彼は少々、不快な気分を味わいながら、次の質問に移るためにも阿人に視線を送る。
「次の質問に移ります。人間と接するときは、どのような対応を取られますか?」
「それはまた、何とも要領を掴めない質問だな。……まぁ、良い。特に何をすることも無い。話し相手、あるいは友になることはあるが、特別贔屓するわけでもない。人間と恋をすることもあれば、必要に応じて殺すこともあるだろう。恩を受ければそれをしっかりと返す。俺の接し方は、人間が人間に接するものと、大して変わりはない」
稗田阿人は話を聞きながら、手を軽やかに動かして手元にある和紙に情報を記していく。そして、彼が話し終えたおおよそ10秒後、阿人はようやく顔を上げて次の質問に移る。
「住処は何処に?」
「これからは、博麗神社に居座ろうと思っている。だがまぁ、俺が特定の場所に居座ることなど、緊急時でもない限り有り得ないことだ。一年後、十年後、百年後も同じ、という保証はどこにもない」
ふむふむ、と阿人は筆に墨をつけなおし、余分を硯で落としてから、また軽やかな手つきで書き出していく。
「ふぅ……それでは、略歴を教えていただけませんか?」
「略歴、か……。少し長くなるが、構わないか?」
「少しどころの話ではないと思えるのだけれど……」
八雲紫のそんな呟きに、阿人は慌てた様子で「すぐ準備して参ります!」と部屋から駆け足で出て行った。
「慌しい子。そうは思いませんこと?」
「今回は少し特別過ぎたんだ。責めるものでもない」
「あら、それは私に対して?」
「客観的に述べただけだ」
「変わりましたわね」
「これが俺の素だ。今は、”名無し”だからな」
「貴方はいくつの役を担っているのかしら?」
「貴様は今まで食べてきた米粒の数がわかるか?」
「大袈裟ではなくて?」
「例え今が特異点であっても、可能性に大袈裟などという言葉は似合わない」
「怖いものね」
雑談に花を咲かせていると、区切りのいいところで、ドタドタと慌しく阿人は部屋に戻ってきた。目にかかりそうな前髪が額にはりついていることから、かなり急いだことがわかる。
「お、お待たせ、しまし、た……!」
「落ち着け。まずは息を整えろ」
「は、はい……」
阿人は肩で息をしている。これではまともに会話は難しいだろうと思い、彼は時間を与えた。阿人は目を閉じて数度、呼吸を整えるようにゆっくり、深く息を吸い、そして吐きを繰り返すと、だいぶ呼吸が整ったのか、目を開けて、作業台へと戻り姿勢正しく座った。
「それでは、略歴の方をお願いいたします」
「そうだな。まずは大雑把に、項目に分けるとしようか」
1つ、と言いながら彼は指を一本立ててみせる。
「始まりの時から、この星を救った英雄となり、育んだ後にこの星から離れる前までの話」
阿人は流麗に記載していく。その手際は見事なもので、彼が話し終わった直後に既に書き終えていた。
2つ、と彼は指を二本立ててみせる。
「月の招待を受け、そちらに赴いて王となり、そして英雄に昇華され、ある天体と共に死ぬまでの話」
「……死んで、そして生き返ったということでしょうが……後ほど、補足説明をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「当然だ。人間と俺の生死の概念が同じであるとは、思っていない」
阿人が書き終えていた様子だったので、彼は、3つ、と指を三本立てる。
「信仰のもとに輪廻し、この幻想郷のもととなった大地のもとに現れた時から、龍神と戦い、和解し、死ぬまでの話。信仰と輪廻の仕組み、龍神については、また後ほど補足する」
補足説明が必要だろうと思った部分は指摘し、遣り取りを滑らかに進めていく。阿人が書き終わったところを見て、4つ、と彼は指を四本立てて話を続ける。
「力の大半を失い、ある山に輪廻してから、ハクロウと出逢い、大和の神と戦い、最後には勝利をおさめ、その後に諏訪の神との間に子を儲け、旅立ち、果てに死にかけ、転生するまでの話」
「……詳しく、お話をお願いしますね」
今までと違い、あまりに登場人物が多い。他の話しと差別化するためなのか、それとも概要にその人物たちが必要だったのか、それは今の段階ではわからないが、非常に興味深い話だ。
阿人が念押しすれば、彼は快く頷いて見せる。
五つ、と彼は指を五本立てる。
「月より落とされた民と同じ竹から生まれ、育ち、その者達を逃がし、裁定者となり、鬼と邂逅して殴り合い、打ち勝ち、この幻想郷に招いて、今に至るまでの話だ」
「……随分と、壮絶な旅をしてきましたわね」
「何を言っている? これが壮絶などと言えば、これからは煉獄という言葉も生温い」
ふぅ、と彼は一つ溜息を吐く。そして話し終わったために、少しだけ手持無沙汰になったのか、少々この部屋の中を見渡し、ふと、その視線が本棚の一点に止まる。
「……何だ、あの奇怪な本は?」
ちょうど書き終えた阿人と、同じく手持無沙汰だった八雲紫が彼の指した方を見ると、そこには革製の分厚い、表紙に幾何学文様の描かれた不思議な本があった。
「あぁ、あれは西洋の方で発祥した『魔法』と呼ばれる……簡潔に説明すれば、西洋の方の陰陽術のようなもの、それの入門書ですね。ただ、説明が西洋の方の言語なのと、独自の魔法言語、と呼ばれるもので書かれているために、私には3割ほどしか読めないのですが……」
「ふむ、『魔法』……」
――実に興味深い。
今まで彼は剣術や呪術、陰陽術、神術、槍術体術、などといった東洋、あるいは日の本の国の技術を見たことはあっても、西洋の方の技術を見たことが無い。一度、どのようなものか見てみたい、という欲望に、ジワリと神経が焦がれる。
「よろしければ、ご協力していただいた報奨として、差し上げましょうか? 私では、宝の持ち腐れの状態なので……」
「……いいのか? 貴重な物だと思うが」
「死蔵するよりも、それを体現してくださる方に託した方が、得ることは多いと思います。それなら、無理に保管する必要もありませんから」
つまり、阿人は彼に魔法を習得してもらい、それから彼に話を聞くことで、本の内容を知ろうとしているということだ。見方によっては、丸投げも甚だしが、しかし貴重な本が手に入るというのであれば、彼に文句などある筈もない。
彼は快く頷いた。
「ならば、習得した時は改めて、本の内容、それと魔法というものについて、話をしようと思う」
「助かります。……どうぞ、お持ちください」
「感謝する」
阿人から魔法の入門書を受け取り、彼は隠しきれない笑みを浮かべる。これほど機嫌が良ければ、問題も無いだろうと、阿人は「こほん」と小さく咳をして、その場の空気を和やかなものから、真剣なものに変える。
「それでは、お話をお聞かせください。貴方が今まで、どのような道を歩んできたのか」
「……良いだろう。ならば、まずは遠い、遠い昔……まだ、生命という概念が無かった時代の話だ」
彼の口から紡ぎ出される言葉、物語は、あまりに現実離れしながらも、しかし辻褄の合うものだった。話が進み、過去と結びつくにつれて、その内容は徐々に、徐々に重大な内容を秘めるようになっていく。
そしてある程度話が進んだところで、ふと彼が概念的な話を始めた。一言でまとめてしまえば、可能性の話……並行世界、パラレルワールドについてだ。
それを聞いて、阿人は冷や汗を滝の様に流した。果たして、これは自分のような編纂する者が理解して良い話なのだろうか、と。
彼の隣で聞いていた八雲紫は思う。
やはり、そうなのね……と。
彼の話によって、この世界の仕組みが次々と紐解きにされていった。時にはあまりに残酷なそれに、聞かなければよかった、と思うことまであった。しかし、書物を編纂するものとして、耳を塞ぐわけにはいかなかった。
淡々と話され、気が付けば丸一日が経過したところで、彼の話はようやく終わる。
彼は八雲紫と共に、何処か別の場所へと向かっていった。それは阿人の知るところではない。少々の仮眠を取ったあと、再び筆を取り、阿人は彼のことについて記載を始める。
『 起源より実在した”名無しの始祖”
能力 不明。並行世界の概念との関係性があると推測される
危険度 極高
人間友好度 普通
主な活動場所 博麗神社(ただし、100年後も同じであるとは限らない)
❖
遥か昔、星が誕生するよりも早く意識が覚醒した者。種族という概念を持たない。
事実上、世界の起源である。
その強さは大妖怪の八雲紫を以て「規格外」と言わせしめるほど。
この幻想郷の創造主であり、天界に君臨する龍神とは親子の間柄。
他にも、龍神以外に子どもが居り、代表的な者はチルノなどの妖精達だ。
壮絶な過去を持っており、2回の死と3回の転生を経験している。
気に入った者には己の力の一端を渡しているようだ。
外の世界への滞在期間が非常に長く、幻想郷に滞在することは珍しい。
今後、何か大きな事を起こすために八雲紫と協力している様だが、内容は不明。
自身の死生観は魂の消滅か存命かの二つによって分けられるらしい。
概略
1.星が生まれるよりも遥か昔
――誕生。
2.空間の概念が生まれた頃
――意識覚醒。
3.地球が誕生した頃
――星の内部で肉体が彷徨する。
4.地球に陸が出来た頃
――上陸。当初は這いずって移動したようだ。
5.地球に自然が誕生した頃
――視覚獲得。歩行を覚える。言語を習得。重力という法則を発見。
またこの少し前に月に興味を持ち始める。
6.要石が抜かれて天界になる時
――全力で防衛。要石の3分の2を削り取り、大地へと返還する。
残った3分の1は天へと昇り、現在の天界となる。
生物の一掃、星の危機は彼の功績により回避される。
その後、大地を元よりも良質な状態に育て上げる。
7.月へ旅立つ頃
――この時、人類……後に月の民と呼ばれる者が文明を築く。
月へ旅立つ去り際に、「人星」という名前を星より授かる(以下、人星と記す)。
このことが切っ掛けとなり、彼は「星の守護者」の役割を得る。
こうして、人星となった彼は月へと旅立った。
8.月に居座ってから相当な時間が経った頃
――ようやく、地上の人類が月へと移住する。
ただし、人星は暇を持て余していたために、仮眠をとる。
9.仮眠から目覚めた頃
――月の民、「八意××」と邂逅。玉砕されかけ、気絶する。
意識が戻ってから、八意××よりキトンを授かる。着用。
10.月の兎との邂逅した頃
――この時、月の民が玉兎に対して攻撃を仕掛けていた模様。
月の兎を星の財として、それを奪い取る外敵とその場の月の民を認定。
星の外敵を排除するべく、コラプサーの力を使用。
こうして、その場の月の民は一掃される。
その後、月の兎の集落に移り住む。
11.月の兎の集落に居座ってから少しした頃
――月の兎の存在定義の解釈を意図的に変更する。
この時の問答より、月の兎の生き様に惚れた人星は、自身の力を宿した器を与える。
月の民、月の兎、人星の話し合いの結果、人星は月の王に就任。
その際に月の民と月の兎の関係性を決める条文作成に苦心。
12.条文が完成してから5年後
――コラプサーが太陽系を滅ぼしかねない軌道で接近していることが判明。
八意××と共に、人星は対策を練っていくことになる。
13.コラプサーを発見してから4年後
――大勢の月の民、月の兎の前で演説。コラプサーの危険性などを説明。
必ず破壊する、そう約束して人星はコラプサーのもとへ向かう。
激闘の末、『創造する程度の能力』によって『自身と対象の相手を消滅させる程度の能力』を生み出し、それを行使して、コラプサー共々消滅を決意。
ただし、この際に自分自身に、そしてコラプサーにも『創造する程度の能力』によって『輪廻する程度の能力』を付与する。
最後に「チャンドラの宝珠」と辞世の句を残し、こうして人星はコラプサーと共に一度目の死を迎える。
14.コラプサー消滅から相当な年月が流れた後
――ある土地に人星の魂が留まる。
※ただし、これは龍神による作為的なものであるという諸説がある。
15.魂が一ヶ所に留まって年月が経った頃
――「神聖結界」というものが土地を囲い、そこに住まう人々に安寧がもたらされる。
その後、恩恵を十分に受け取った村人たち、その一部の者が信仰を開始する。
一部の者の名は「博麗」という。
初代博麗は「魂を司る程度の能力」によって人星の魂を感知する。
彼女は齢10にして神社を開き、人星を祀った。
この信仰がおよそ3~5年続いたところで、信仰心が形となり人星を神格化させる。
16.人星が神格化した頃
――博麗の信仰心の蓄積により、人星は神格を得て博麗神社の前に顕現する。
※この時、コラプサーが既に人星の右腕に転生しており、その反動により一時的に記憶喪失となる。
追記:コラプサーは様々なものを無差別に喰う。それは存在維持のための行為であり、今回は偶然にも、記憶を飲み込まれたに過ぎない。例え記憶を飲み込まれた、喰われたとしても、記憶の全てを刻み込んでいる魂が喰われない限りは、時間が経ることで思い出すことも可能。よって、この後に人星は喰われた記憶を思い出すことが出来ている。
この顕現した日の夜、人星は八雲紫と邂逅する。
八雲紫との邂逅より少しして、龍神が自然に細工をしていることが判明。龍神曰く、自己主張、とのこと。
補足:「災厄と恩恵を操る程度の能力」は、「創造する程度の能力」によって無意識に生み出されたものであるということが予測されている。
17.人星が顕現してからおおよそ1年後
――人星の子、自然に生まれ落ちた妖精、チルノが誕生する。
この時、八雲紫に星の力の宿った器を譲渡する。
18.チルノ誕生から一ヶ月後
――龍神により月の光が遮られる。
この日の夜、神と巫女は交わった(現在の博麗神社の巫女は、その子孫)。
19.龍神により月の光が遮られて、およそ一ヶ月後
――博麗神社の秘奥である「創造符」を博麗に託す。
創造符により、幻想郷が誕生。
龍神異変、決着。
※龍神異変では、村人の信仰が人星に向かないように彼ら彼女ら(博麗以外)を先導したこと、また自然に干渉することで妖精の誕生、自然そのものに害を与える、などの影響が表れていた模様。
この日、龍神異変決着と共に、人星は二度目の死を迎える(原因は龍神の一撃による物理的な肉体消滅)。
また、龍神異変解決の最中に星の力(餌)を行使し(みせられ)たことにより、コラプサーが覚醒する。
20.二度目の死を迎えた後
――ある山の中に輪廻し、ほぼすべての力を失った状態となる。
補足:力を失った原因はコラプサーにあり、コラプサーによって才能の容量、様々な能力の根本を喰われ、まともに力を行使することも出来なくなった(行使出来る力は残りカス程度のもの。この時の戦闘能力は低級妖怪以下)。
※本来ならば魂まで喰われるところでもあったが、八雲紫の出鱈目な境界によって、一命をとりとめる。
その日、原種と呼ばれる形で種族を持たないハクロウと邂逅。神格に匹敵する力を内包した桃(「創造する程度の能力」によって生み出されたもの)を与えることによって、白銀の狼へと姿を変え、ハクロウは力を得る。この時、二者間で協力関係が結ばれる。
この時、人星は改めて、アユムという名前をハクロウより授かる(以下、アユムと記す)。
21.輪廻して、一ヶ月半ばかりの月日が経った時
――住処として家を完成させる。
酒を製造。鬼の中でも有名な最高に不味い酒「煉獄改」の起源ともいえる「煉獄」がこの頃に生まれる。ハクロウも飲まされた模様。
22.家が完成してからおよそ二ヶ月後
――アユムとハクロウが共に鍛錬をして競い合う。一分(いちぶ)の力と才能しか発揮出来ないものの、それでもハクロウに天賦の才と言わせしめるほどの成長をみせる。
また、ある日に諏訪の神、洩矢諏訪子が訪れ、宣戦布告される。
その宣戦布告から翌日、大和の神、八坂神奈子と戦うことになるが、敗北。
この時、ハクロウの手助けがあり、また土地を離れるという条件付きのもと、アユムとハクロウは一命をとりとめる。
また、この戦闘の際にアユムは左目と左瞼を吹き飛ばされ、失明。
今にも死にそうなほどの大怪我を負っていたが、自身の治癒能力を限界まで高めることで延命。また、ハクロウに自身の血と肉を喰わせることにより、ハクロウを強化する。こうすることで回復の術を身に着けさせ、その回復の術によってアユムは存命する。
補足:アユムの血と肉は、もとの存在が何者よりも上に立つ規格外なところより、他の生物にとって莫大な力を得るものとなっている。ただし、あまりの美味さより強い中毒性がある。食べ過ぎには注意。
23.この戦いより数年後
――アユムとハクロウは「神狩り」として大和の国の中で話題になる。
ある日、守矢神社に訪れて宴会を開く(これは八坂神奈子を釣ることが目的)。
※八坂神奈子は釣られた模様。
その日の宴会にて、アユムは八坂神奈子に宣戦布告する。
翌日の正午、アユムと八坂神奈子が戦い、アユムが勝利する。
アユムの勝利の祝いとして宴会がその日の夜に開かれる。
宴会の終わり際、アユムと洩矢諏訪子が交わる。
24.それよりしばらくして
――アユムと洩矢諏訪子の間に子どもが産まれる。
25.子どもが産まれて十数年後
――子どもが結婚。アユムは諏訪の土地を離れ、ハクロウと共に幻想郷に戻る。
戻った際に、初代博麗の巫女を看取る。お互い、我儘を貫き通す。
その後、ハクロウと交わる。そのことから自己嫌悪に陥り、幻想郷を離れて旅に出る。
26.ある日の冬の小道
――アユムはある地蔵に神力と桃を与え、その小道にて力尽きる。
その後、何者かに助けられるが、危篤状態。
その者はアユムを竹の中に転生させる(輪廻しなかった故に死んだとはされないが、転生させられたことにより欠損部位が回復。容姿も全盛期のころに戻る)。
こうして、アユムは三度目の転生をすることとなる。
27.三度目の転生を迎えた頃
――竹取の翁という者に拾われ、同じ竹の中に居た妹、輝夜と共に育つ。
後、輝夜が月の民であることが判明。
アユムは三室戸斎部の秋田という名士より「きら竹のひとほしの彦」と名付けられる(以下、人星と記す)。
28.それからしばらくして
――藤原妹紅という女性と恋仲になる。
29.それから数年後
――輝夜を連れ戻そうと月の民が襲来。人星はそれを説き伏せ、退かせる。
その際、人星のことを知っていると思われる者、八意永琳とある玉兎に接触。
推測:曰く、「この部分の記憶をコラプサーによって魂諸共喰われたらしい」、とのこと。
よって、人星はその場をやり過ごし、輝夜を二人に任せて別の場所に逃がす。
30.それから時が過ぎ
――人星は育て親であるお爺さんとお婆さんが亡くなっていることを確認する。
その後、自らを裁定者と名乗り、生物全てを分け隔てなく裁く者として活動するため、人前から姿を消した。
31.約二百五十年後
――裁定者として鬼と邂逅。四天王の一人、星熊勇儀と喧嘩し、勝利。
後、同じく四天王にして統括者の伊吹萃香と戦闘。
左腕、左目を失う事態に発展するが、コラプサーの力を行使して勝利。
戦い終わった後、鬼たちを幻想郷に招待。現在は八ヶ岳に身を置く。
32.そして現在
――幻想郷の博麗神社に滞在。
二つ名:「名無し」、「幻想郷の創造主」、「星の守護者」、「神狩り」、「裁定者」等
❖
この幻想郷において、もっとも重要な人物。
博麗、ハクロウ、共にその血筋には彼の血が混じっており、先祖返りが期待される。
また、現在は能力の殆どを扱えない模様。
扱える能力は、最初に記したもの以外にはなく、力は大幅に抑制されている。』
阿人は筆を置き、その内容を読み直し、その顔に渋面を貼りつける。
――完成はしましたが、やはり多すぎるでしょうか。
阿人はその書き記した内容の密度を見て溜息を吐く。略歴を書いてしまった為に密度が濃くなったのは分かっているが、しかし幻想郷の創造主であり、世界の原点の鍵を握る人物だということを考慮すれば、むしろ少なすぎる記述だ。
しかし、肝心の伝えなければならない一般人に対して、この量は些か多すぎる。伝えたいことと、読者の需要、その二つの乖離が阿人を悩ませる。歴史学者がいれば話は別だが、生憎そういった者は、今の幻想郷内には存在しない。普段から畑を耕し、作物を育てるだけで精一杯なのが現状だ。
そもそも、庶民の識字率はタカが知れている。読み書きが出来るなど、商人や貴族、身分の高い者や学者の様な者だけである。
「……それなら、口伝えで広めていきましょう」
この幻想郷の創造主の名前が、歴史の闇に葬られてしまうことがないように、口伝えで少しずつ、伝えていくしかないだろう。幸い、幻想郷の中には未だ、宗教の類は入ってきていない。ならば、広める機会は……今だ。
「さて、これは書斎の一番重要な場所に……と」
自分から見て一番手頃な場所、書斎の本棚の真ん中に先ほど書き記した本を丁寧に収める。墨は既に乾いているので問題は無い。
「少し、出かけましょう」
阿人は出掛ける準備をするため、使用人を呼ぶ。寿命は短い。故に、ここからは時間との勝負になる。どれだけ根強く人々の頭の中に残すことが出来るか、これが重要だ。だからこそ、何度も、何度も人々に聞かせることになるだろう。
うんざりされてもいい。呆れられてもいい。今はただ、後世にこのことを伝えるためだけに。
阿人は一人静かに、動き始めるのだった。
ようやくここまでたどり着けました。しかし、短編の方がまだ完成していないという焦りががが……。
そのため、第六章にさえ手を付けていないという阿呆な事態になっております。どうしてこうなった……。
そしてこの話でようやく、彼の全貌が明らかになってきましたね。これだけ材料が揃えば、もう能力に対しても推測できると思います。確証も得られるでしょう。
それでは、本日はこれにて。
次話は12月29日の21:00に投稿します。