東方創星神録 ~始まりと終わりの物語~〖凍結〗 作:星の屑鉄
今回の話、奥深く見えてその分ひどく短いです。
文字数にして1570文字。酷いですね。
それでは、そんなことをいいながら本編をどうぞ!
暗い、暗い、光のけして届かない、部屋の中。
それは博麗神社の中に存在し、しかし博麗神社の巫女ですら知らない、秘密の部屋。
入り口などという便利なものは存在しない。その場所に行く手段は、八雲紫のスキマを使うか……あるいは、運良くその部屋……地下まで貫通させるような何かが起こるか、その二つしかない。
そんな部屋の中には、名無しの始祖と八雲紫が今まさに訪れていた。
「……最後に言っておきますわ」
そのような場所では酸素が確保出来ないだろう、などと思われるかもしれないが、八雲紫の『境界を操る程度の能力』に掛かれば、そのような問題はすぐに解決できる。
何も見通すことの出来ない、絶対の闇の中。彼女の声は不気味に響く。
「この計画、実行してしまえば最後、貴方は動けない。ここでずっと、長い間……もしかすると、永久に、待ち続けることになる。それを、覚悟しているのかしら?」
「俺はこの世界の未来を見ることは出来ないが、予測することは出来る。これだから、”機械仕掛けの神”という魔法の言葉は面白い」
名無しの始祖はそれを易々と受け流す。まるで、結果が分かっているかのような物言いに、自然と張り詰めた空気が和らいでいく。
「そう。ご都合主義、素敵な響きですわ。そんな貴方だからこそ、幻想郷(ここ)は誰しもの故郷(いばしょ)になるのね」
「生憎、殺伐とした雰囲気は苦手だ。巧妙に誰もが感動する悲劇へと導くくらいなら、我儘に幸福な結末にする。それが俺だ」
「天上天下唯我独尊。貴方にピッタリな言葉ですわ」
「別れ際に送る言葉とは思えないな」
「子曰く、お父様が目覚める時にはビックリするくらい成長しているんだから!」
「ご本人ではないようだ」
「しっかりと、本人からの言葉ですわ」
「言いたいことはそれだけか?」
「頼まれたもの、しっかりと渡したわ」
「他には?」
「親友とお孫さんの言葉には耳を傾けることね」
「さて、始めるとしようか」
部屋の一番奥、名無しの始祖はそこまで移動すると、どっしりと腰を下ろした。彼女はそれを感覚的に確認すると、彼の右腕に向けて能力を行使する。
「言い残すことはあるかしら?」
「世界は貴様よりも胡散臭い」
「永眠にでもつきなさい」
さっさと黙らせるため、八雲紫はその能力を即座に全力で使用して、完膚なきまでに彼を拘束する。境界を弄り、この世界から、彼と彼の周りの空間を完全に疎外する。暗いところでも目の利く彼女からは、彼が半透明の鎖に拘束され、抵抗できずに意識を失っているように見える。
最後、仕上げをする段階で何やら妙な手応えがあったような気がしたが、きっと気のせいだろう。八雲紫は基本、楽観論で片付ける。
実際、彼は既に意識を失っている。世界そのものから疎外され、隔絶されたことにより……いや、深淵にあたる魂と表面にあたる肉体が、表面にあたる肉体と外側にあたる世界が隔絶されたことにより、肉体は物理法則から外れ、更に魂との交信を得られないためにフリーズしてしまったのだ。
しかし、死んだわけではない。魂は健在しているし、肉体も存在する。別に、魂は劣化するものではない。また、肉体も物理法則、この世の理から外れたことにより、時間の経過によってエネルギーを消費することも、腐敗することも、衰えることもない。
「そう。あくまで、肉体は」
おそらく、その内部では想像を絶する闘争が繰り広げられているだろう。
「詰みね」
暗闇の中、彼女はほくそ笑む。
「詰みなのよ」
光届かぬ地中の空間。その中で、きらりと何かが光る。
「詰んでいたの」
残響は鳴らない。
「それでも」
その身を翻す。
「幻想郷は全てを受け入れるのよ」
俯いて、暗闇も相まって、顔色など分かる筈もない。
「それは、それは……」
スキマを潜り、元の地上へと戻る。
「――残酷な話ですわ――」
その時、彼女は深みのある表情と声で、丁寧に、ゆっくりと呟いた。
最後はシリアスで終わる。中盤あたりの話の区切り方の鉄則ではないでしょうか?
などと書きながら、これにて、第五章となる『Chapter5 Checkmate』を終了します! この第五章の題名は何にするか迷って、結局この八雲紫の言葉につなげることになりました。はい。
次は時系列通り、あの方が登場します。更にその先ではあの方が登場してきます。
少しずつ、物語が終盤に近づいてきます。紅霧異変に入ったら、もう終盤と思ってくれればと思います。
今回は補足は無しにします。強いて言えば、龍神と八雲紫二人が揃えば、大抵のことはやってのけます。親心知った子どもは、一体どのような行動を取るのか、楽しみですね。
さて、それでは本日のあとがきはこれにて。
次話は……申し訳ありませんが、短編をこの小説の中にて1月3日、正月最後の日の21:00に投稿します。また、第六章の投稿は、未だに一つも手をつけられていないため、大幅に遅れるとお考え下さい。
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