「古鷹ー……」
「加古? ど、どうしたの?」
布団にくるまった加古が、部屋へ戻ってきた古鷹の足元まで転がって来たのだ。普段なら寝る時も外さないヘアピンを、今日は付けていない。よほど寝相が悪かったのだろうかと苦笑を浮かべながらも、古鷹は妹を愛らしく思う。
「もぅ、まだ寝惚けてるの? ヘアピン取れちゃってるよ」
「んー……。ヘアピンは卯月にあげちゃったからないよー……?」
「そ、そうなんだ……」
その言葉に、古鷹は体を硬直させる。彼女は無意識の内に、脳内で加古の情報を片っ端からかき集めていた。何か理由がなければ、妹がプレゼントなんてしないだろうと。
「古鷹ー? ぼうっとして、どしたの?」
「あ、ううん。加古が誰かにプレゼントするなんて珍しいなーって」
「プレゼントとかじゃなくて、ただのお礼だけどね。乗組員を救助してくれたのは卯月だって聞いたからさ……。って、さり気なく酷い! プレゼントくらいするし! 古鷹とか青葉とか、衣笠とか提督とか?」
「……え?」
加古の弁明に予想外の人物が上がり、耳を疑ってしまった。古鷹は加古を押し倒し、顔を近づける。身動きが取れない加古は、ゆっくりと首を傾げた。
「今日の古鷹、変だよ? どこかぶつけた?」
「ななな、なんで提督の名前が出てきたの……?」
「寝てても怒らないし、食べ物くれるし。必要とあれば出撃命令もくれる。悪くはない環境だし、たまにはあたしからプレゼントするのもありかなーって」
「……そ、そう」
いいように振り回されている気がしてならない古鷹は、妹から離れて座り込む。そんな姉に、加古はテーブルを見るように指差した。そこには見覚えのない、手の平サイズの小袋が一つ置かれている。
「これ、提督からもらったんだー。古鷹と一緒に食べなってさ」
そう言った加古はずるずると這って、テーブルまで辿り着く。小袋を開けると、古鷹にとって見覚えのある物があった。
数日前、提督の外出に古鷹が護衛した時の事だ。偶然見かけた和菓子屋の中で、皆へのお土産に買おうとした金平糖が入っている。
あの時は時間もなく、そのまま買わず終いだったはずだと、古鷹は記憶している。
「古鷹が欲しそうだったからとか、提督がよくわからないこと言ってたけど。そんなに金平糖好きだっけ?」
「っ……。加古! それ食べてもいいけど、皆の分も残しといて! 執務室行ってくるね!」
返事を待たない古鷹は、まるで突風のように部屋から飛び出していった。何度か瞬きを繰り返す加古は、へらっと笑う。
「ヘタレかと思ってたけど、ヘタレなりに提督もやるじゃん。……ねよ」
金平糖を一粒口に含んだ加古は、姉の幸せを祈りつつ眠った。