ローレライの支配者   作:フクブチョー

14 / 17
第十三公演 勝手にしやがれ!

 

 

 

 

 

 

 

「たとえ我が命尽きるとも…零帝様への愛に偽りなし……」

「死にゃしないわよ!大げさなんだから」

 

シェリーとの戦いを制したルーシィは疲労困憊で倒れこむ。全くいちいち大げさな女だった。ラリアット程度で死ぬわけはないというのに。

だがギリギリの戦いだった。勝てた事に心から安堵する。

 

「アンジェリカ……私の仇を討って……ッ」

 

そう言って気絶すると馬鹿でかいネズミが襲いかかる。満身創痍のルーシィによける術はなかった。

 

ーーーあぁ、どうしよう、あたしここで死んじゃうのかな?

 

やだなぁ、やりたい事まだまだあったのに……

もっとカイルとお話したかったのに……

もっとカイルにお母さんの事とか聞きたかったのに……

 

そんな事を考えながらあたしは来る衝撃に備えて思いっきり目を瞑った。

 

「…………あれっ?!」

 

大きな破壊音だけを残し、何も起こらない事を不思議に思って目を開けた。

 

「よ、無事っぽいな、ルーシィ」

「カ、カイル!!」

 

ルーシィの前には、剣を肩に担ぎにやっと笑っているカイルがいた。あのネズミは遥かとおくに吹き飛ばされてる。斬られてない所を見ると峰打ちだったようだ。

 

ーーーーカイル……王子様みたい!!

 

「なんか感動してるっぽいとこ悪いが、何で俺がここにいるか、わかってるよな?(黒笑)」

「あ!!」

 

ーーーーそ、そうだ。勝手にS級クエストに来ちゃったんだった!!

 

笑顔で問いかけてるカイルだったが、黒いオーラを全身に纏わせている。

 

「え、えーと、その〜。つ、連れ戻しに……デスよね?」

 

恐怖のあまり敬語になるルーシィ。それもそのはず。目の前にいるのは最強の騎士王なのだ。普段怒らない人が怒るとめちゃくちゃ恐い事をルーシィは知っていた。

 

「よかったーーー!!ルーシィ無事だったんだ……ね……」

 

飛んでくるハッピー。しかし途中でカイルに気づく。

 

「…………………」

「…………………(滝汗)」

 

にっこり

 

「!!!」ビューーーン

 

ハッピーはものっそいスピードで逃げ出した!

 

「しかし回り込まれてしまった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?ナツ達は?」

 

縛られたハッピーは無言を貫いている。下手に何かを言ってしまえば、それが言質となり、罰則が追加されかねない。しかし、自分の保身の事などを後回しにできるルーシィは必死に弁明する。

 

「カ、カイル聞いて!!勝手に来ちゃったのは謝るけどここの人たち大変なの!!氷漬けの悪魔を復活させようとしてたり、他にも色々!あ、あたしここの人たちを助けてあげたいの!!」

 

必死で弁明するルーシィ。そこに自分の保身はなかった。ただ純粋に島の人達を思っての言葉だった。

 

「ふーむ。ルーシィのいう事が確かなら放ってはおけねえな」

「!だったら「だがその役目はお前らの物じゃないはずだ。それぐらいわかるだろ」うっ…」

 

顔を青ざめさせ、冷や汗を流す。新入りとはいえ、ルール違反を犯した事の自覚はある。とゆーか、新入りだからこそ、ルールを犯す事はしてはならないのだ。一度問題児の第一印象を与えてしまえば、それを払拭する事は難しい。良好な関係を組織で築く為にはまず好意的な印象を与えなければならない。

罪の意識を自覚させられたからか、後ろめたさが一気に襲いかかってきた。

 

ーーーーやれやれ、いじめるのはこの辺にしといてやるか。

 

自分がしなくてもあとはエルザががっつりやるだろう。

 

「まあ今回の件は俺一人で裁量を決めていいもんじゃない。エルザと村で合流する手はずになってる。そこで決めよう」

「え、エルザも来てるの!!」

「そ、だからエルザにも今の話もうちょい具体的にしてくれ。俺にはなんか色々伝わって来たからいいけどあいつフワフワした説明とか許さんからな」

「………ハイ」

「んじゃいくぞ。立てるか?」

 

手を差し出すカイル。もう黒いオーラは消えていた。

 

「………うん」

 

起き上がるのを確認すると、カイルは手を離した。

 

「あ……」

「ホラいくぞ。キリキリ歩けぃ。問題児」

「も、もう!ちょっと待ってよ〜〜〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

「興味がないな」

 

合流してすぐルーシィ達を縛り、話を聞いたエルザの第一声はそれだった。

 

「じゃあせめて最後まで仕事を……」

 

ーーーあ、バカ…

 

仕事という単語をルーシィの口から出た事にカイルは若干焦る。責任感の塊であるエルザはギルドのクエストに対して行き過ぎな程責任感を持って取り組んでいる。

そんな物持たなくてもいいとカイルは思っている。果さなければならない事が責任で、背負う必要のないものまで背負ってしまう心情が責任感だ。

しかし真面目の権化であるこの緋色の女騎士は責任感どころか、使命感まで背負ってギルドのクエストに取り組んでいる。資格のないものが仕事をすると言った事は彼女にとって看過できるものではなかった。

シャランと硬質な金属音がなる。鞘から抜かれた剣をルーシィの喉元に突きつけ、言葉を遮る。

 

「仕事?違うぞルーシィ。貴様らはマスターを裏切ったんだ。ただで済むと思うなよ?」

 

ーーーーこ、恐い…

 

カイルとは比べ物にならないエルザの怒りに怯えている。ギルドの者ならある程度耐性はあるのだが新入りのルーシィはエルザのマジ怒りを個人で受けた事がない。怯えるのも無理ない事だろう。

傍観していると目を覚ましたグレイがテントに入ってきた。

 

「!!!カイル!エルザ!」

「よ。ぼろ負けしたんだって?」

「だいたい聞いた。お前は止める側だろう?あきれてものも言えんぞ」

「きぃつけろ。グレイ。物が言えなくなったら手が出るのがエルザだごばば!!」

 

ボディーブローを一発くらうカイル。相当効いたらしく、しばらく立て膝で動けなくなる。

 

「だ、大丈夫か?カイル」

「軽いジョークなのに……それで?ナツは?」

「わからねえよ。多分どっかうろついてんだと思う。ここ村の資材置き場だそうだから。てかよくわかったな、お前ら」

「シルフに探らせたのと」「おいらが飛んで探したんだよ。縛られたまま…」

 

すっと立ち上がるとエルザはカイルに話しかける。

 

「ナツを探しにいくぞ、カイル。見つけ次第ギルドに帰る。引き続きシルフで捜索してくれ」

「アイアイさー」

 

それにつづくカイル。その様子をみたグレイは信じられないという表情で二人を見た。

 

「おい、なにいってんだ?エルザ。ここの現状は見たんだろ?カイルも何でエルザに従ってんだよ…」

「それがどうした?カイルは何を考えてるのかは知らない。こいつは優しいから助けてやろうぐらいのこと思ってるだろうけどな。私は掟を破ったものを連れ戻しにきただけだ。それ以外興味はない」

「ほっとけっていうのかよ!!」

「正式にS級魔導士が受理したクエストなら止めはせん。だがお前らの行動は明らかに違反行為だ」

 

ーーーコレだ……

 

彼女の悪い所だ。いくら言っても治らない。正しさこそが至上という信条が捨てられないのだ。

もちろんエルザの言っている事は完璧な正論だ。徹頭徹尾、非の打ち所がない。しかし人間とは正論だけで納得できるほど単純な生き物ではないのだ。自分が間違っていると自覚している者には特に。正論とは劇薬に似ている。問答無用に相手を黙らせる効果がある代わりに、その強力さ故に副作用も相応にあるのだ。正しさという鎖による締め付けが強くなればなるほど、縛られた人間の反抗は強くなる。

 

「見損なったぞ!エルザ!」

「何……」

 

案の定、正論に逆らうようにグレイが激昂する。今まで聞く耳もたなかったエルザも流石に反応する。正しい自分が責められる事に怒りを覚えたのだ。

 

「グレイ!!エルザ様になんてことを!!」

 

ーーーいや様て……

 

心中で笑うカイルとハッピーを無視してエルザはグレイに剣を突きつける。

 

「お前まで掟を破るか…ただではすまんぞ」

 

突きつけられた剣をグレイは素手でつかむ。手から血が流れるが頓着しないで続けた。

 

「勝手にしやがれ!!これは俺が決めた道だ!!俺がやらなきゃいけねえんだ!!」

 

規則違反は承知しているはずなのに、元はナツたちを連れ戻す事こそが彼の仕事であったはずなのに、そこまで言い切った事に白銀の剣士は驚いた。先程まではナツへの対抗心と、昔の知り合いに会ってボロ負けした事で引っ込みがつかなくなってしまったのかと思っていたのだがそうではないらしい。恐らく彼の根幹をなす何かに関する事がこの島であったのだろう。

 

「…………最後までやらせてもらう。斬りたきゃ斬れよ」

 

背を向けて歩き出すグレイ。

そのあまりの勢いに誰もが黙ってグレイの背中を見つめる中、一つ大きなため息がテントに響く。

音源である白銀の髪の青年が軽く腕を振る。生じた風が刃となり、グレイの背中を浅く斬った。

「…………えっ?」

「ホントに切る奴があるかぁぁぁぁああ!!」

 

紙で指を切った程度の浅い傷だが、それでも故意に、傷つけるという意思を込めて放たれた刃となれば話が違う。信じられないと言わんばかりにグレイはカイルの襟首を掴み掛かる。

 

「あはん、やめてグレイ。残念だけど俺はノーマル「んな事言ってんじゃねえ!!」

「今の一撃で見逃してやるって言ってんだよ、バーカ」

 

押し黙るグレイ。彼の立場上、黙って規則違反を見逃すわけにはいかない。本来であれば力尽くで首根っこ引っつかまれても文句は言えない状況だ。しかし、こうして落とし前をつける事でグレイが動ける名分を作ってやったのだ。

 

「ん、どうした?なんか文句あんのか?あ?この手を離さんか」

 

グレイは唖然とした表情で手を離す。カカカと高笑いするとカイルはエルザに皮肉な苦笑を向けた。

 

「お前の負けだ。ここまで言われちゃ引くしかねえ。諦めろ。行くぞグレイ」

「……やっぱカイルは最高だぜ」

 

テントから出て行く二人。取り残された二人と1匹の空間には静寂が支配した。エルザは諦観で、ルーシィとハッピーはどうしていいかわからなくて、声が出せなかった。

しばらく無言だったがエルザは手に取った剣でルーシィ達のロープを斬った。

 

「このままでは話にならん。何よりカイルが敵にまわっては勝ち目がない。さっさと終わらせるぞ。だが忘れるな。罰は受けてもらう」

 

そして四人と一匹は遺跡を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





「は?てことはなに?リオンはそいつを倒したいわけ?そのために復活させる?わけわかんねえな」

 


遺跡へと向かう最中、カイルたちはグレイからリオンの目的を詳しく聞いていた。



 

「師が倒せなかった物を倒す。死んだ者を超えるにはその方法も一つの手段ではあるか……」


「んなもん手段になるかよ。ケンカってのはてめえとてめえの拳でやって初めて白黒つくもんだろ。個人で相性とかもあんだし、俺に言わせりゃ意味ねえの一言に尽きる」


「違う。リオンは……あいつは知らないんだ!ウルはまだ生きている!」



 

グレイの一言に全員が疑問符を浮かべる。だが自身も氷の魔法を操るカイルだけはいち早く理解した。

 



「まさか………アイスドシェルか?」


「カイル、何だそれは?」


「己の命を代償に絶対溶けない氷の檻に閉じ込める魔法だ。氷結系魔法の絶技で俺すらその存在は名前しか知らない。使うとマジで死んじまうからな。まさか使い手がいたとは」


「その通りだ。あの氷は……ウルなんだ!!」






 

 

 

 

 

〜10年前〜



家族をデリオラに殺されたグレイは魔導士になるべくウルに弟子入りした。彼女は優秀な氷の造形魔導士で、グレイとその兄弟子のリオンに造形魔法をどんどん教えていった。



 

「もっと強い魔法を教えてくれよ!」


「もう教えてるだろう?造形魔法はその者のイメージに呼応してどんどん強くなる」

 



そんなある日、デリオラが再び現れた事を聞いたグレイはウルの静止を無視してデリオラに挑みに行こうとした。

 



「行くな!グレイ!行ったら破門にする!!」


「したきゃしろよ!!俺は行く。もし俺が死んだら強い魔法を教えてくれなかったあんたを恨む」



 

戦いに行ったグレイはあっけなく倒され、気絶した。目を覚ましたらデリオラと闘っているウルの姿があった。



 

「何で……俺は破門になったんじゃ……」


「可愛い弟子を見殺しには出来ん」



 

グレイが視線を下に向けるとそこには驚愕の光景があった。
その様子をみたウルは弟子を安心させるために心底朗らかに笑った。



 

「素晴らしいだろ?造形魔法は。脚一本吹き飛んだが気にする事はない」

 



脚がなくなっていたのだ……代わりに造形魔法で作った氷の義足をつけていた。

 



「ウル……何あんな化け物に手こずってるんだよ…早く倒せよ……ウルは最強の魔導士なんだろう?」

 



ボロボロのリオンがウルにすがる。己の師匠を最強と信じ、超えるために修行していたリオン。そのウルが敗れることは彼にとって裏切りに近かった。



 

「私は最強などではない。西には私など比べ物にならない使い手がいる。私を超えたら今度はまた上を目指せばいいだろう?」


「何を弱気なこと言ってんだよ……もういい、あんたがやんないなら俺がやってやる」



 

腕を交差し、魔力を集中する。白い光にリオンは包まれ凄まじい魔力が渦巻いた。

 



「そ、その魔法は!!リオン!あの本を見たのか!!」


「あんたがいつまでも強い魔法を教えてくれないからな。ずるいよ、こんな強い魔法を隠していたなんて」


「リオン!その本最後まで読んでないだろう!!ええい!!」

 



リオンに無理やり近づき、気絶させた。この魔法は発動してしまえば如何なウルといえど、止める事はできない。リオンを止めるにはこうするしかなかった。

 



「私がやろうとしていた事を……だが奴を封じるにはこれしかないのも事実だ」



 

リオンと同じように腕を交差するウル。グレイが叫んだ。



 

「おい!何する気だよ!!」


「絶対氷結、アイスドシェル。己の命を代償に絶対溶けない氷となる魔法だ」


「そんな事したらウルが!」


「私は死なないぞ、グレイ。デリオラを封じる氷となるだけだ。だがリオンには死んだという事にしておいてくれ。あいつに真実を話せば氷を溶かすのに一生を使ってしまうかもしれん。お前達には広い世界を見て欲しい………」



 

 

 

『ウル、なに子供連れてんの?旦那もいないのに……あんた充分若いんだからまだいけるでしょ?』


 

 

 

 

脳裏に友人の言葉がよぎる。夫を亡くし、子も失った彼女はずっと一人で生きていた。それでもまだ充分に若く、美しい女性だ。また新たな女の幸せを求める事もきっと出来ただろう。しかし彼女はそうしなかった。なぜなら……

 



「そんな不幸そうなツラしてるつもりはないんだけどね」

 

今の自分が不幸せだとは決して思わないからだ。

 

「だって日に日に成長するお前達と一緒にいるんだから……安心しろ、グレイ。お前の闇は私が封じよう」



 

そして氷となったウルはデリオラを完全に凍らせた。彼女の意思を汲み取ったグレイは約束通り、リオンにウルは死んだと伝えた。

二人とも涙がとまることはなかった……




 

 

 

 

〜現在〜




 

 

 

 

「そんな事が……」


「だがリオンは本当に知らないのか?グレイもその本読んだんだろう?あいつが読んでねえ保証はねえだろ」


「だとしたらこんな真似はしないはず」



 

凄まじい破壊音がグレイの言葉を遮る。その場にいる全員が音源に視線を向ける。すると目の前の遺跡が傾いていた。

 



「え、えーーと、どういう事?」


「ナツだ。恐らくムーンドリップの光がデリオラに届かないようにする為にぶっ壊したんだろう」


「あいつがそんな事考えたのか!?」


「ああ見えてナツは頭の回転は悪くねえんだぞ。発想も柔軟だしな」

 



遺跡に向かって走ろうとしたその時、茂みから突然刀剣が飛んできた。瞬息の換装を可能とするカイルとエルザが全て叩き落す。

 



「見つけたぞ!フェアリーテイル!零帝様の邪魔はさせん!!」


「ここは任せろ、お前はリオンと決着をつけにいけ!!」

 



それを聞いたグレイは遺跡の中へとかけて行く。それにカイルもついて行く。



 

「カイル?来てくれんのはありがてえがエルザ達の援護しなくていいのか?」


「まああの程度の雑魚なら問題ねえだろ。それより気に入らん魔力を中から感じてな」



 

首を傾げるグレイだが、カイルには確信があった。



 

ーーー噂をすればなんとやら……いるな、ウルティア























 

 





 




あとがきです。お久しぶりです。いかがだったでしょうか?ウルさんかっこよすぎですね。それではまた次回。励みになりますので感想、評価宜しくお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。