ローレライの支配者   作:フクブチョー

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第十五公演 黒の騎士王、突撃!隣のギルドマスター!

 

 

 

 

 

 

 

「ええ!!依頼料はいらない!?」

 

クエストを無事達成し、報酬を渡そうとした村長にカイルとエルザはいらないと断った。

 

「今回は一部のバカが勝手に動いて勝手に解決しただけだ。ギルドが正式に受理したクエストではない。依頼料を受け取る資格はない。」

「し、しかしですな!!」

「こ、これだけ苦労して何もなしかよーー!!」

「馬鹿野郎、正しく資格を持たない者が勝手に暴れたんだ。ギルド連盟に訴えられたら俺たち確実に負けるぞ。報酬なんて貰えるわけないだろう」

 

医師免許を持たないものが無断で治療行為を行ったようなものだ。報酬どころか、こちらから詫びをいれなければならないくらいだ。

 

「で、ですがこれで我々が救われたのは事実。これは報酬ではなく、友人へのお礼という事で受け取ってくれませんか?」

 

懸命に頼み込む村長。いい人…いや、悪魔だ。七百万がタダになるというのに。だが、彼の言い分もわかる。

どうする?と視線を向けてくる緋色の髪の相棒に向けて一度頷く。するとエルザは仕方ないといったふうに首を振った。

 

「そう言われると拒みづらいな」

「まあ、こんだけやっといて何も受け取らないじゃ、こいつらがいたたまれんだろう。追加報酬の鍵くらいは貰ってもいいんじゃないか?」

「……そうだな。ギルドの理念に反するが、気持ちとして鍵だけは受け取っておこう」

「「いらねーーーー!!!」」

「いるいる!いるわよ!!」

 

ナツ達には意味のないものだから、不満だだ漏れだったが、ルーシィは慌てて「いる!」と叫んだ。それも無理ないことだろう。黄道十二門の鍵といえば、星霊魔導士にとっては喉から手が出るほど欲しい強力な魔導具。貰えるなら貰っておきたい筈。ルーシィにとって、今回の報酬はかなりのものだ。

 

S級魔導士として、正しく資格を持つカイルが人馬宮のサジタリウスを受け取る。そしてそのままルーシィに渡した。コレならばギルドとしても違反を犯したことにはならない。

 

「ありがとうカイル!」

「いいよ、俺には意味のないものだし。じゃあ帰るか」

「おい、船はどうすんだ?」

「私達が強奪した海賊船がある。アレに乗っていくぞ」

「エルザ……事実だけどもうちょいオブラートに包めよ……」

「ええええ!!海賊船!!いや!乗りたくない!!」

「泳ぐなら付き合うぞ?」

 

船に乗りたくないナツは泳ぐ気満々だった。腕をぐるぐる回している。

 

「それも嫌!!」

「贅沢言うなルーシィ。ほらいくぞ。あ、泳いでもいいけど」

「カイルの鬼ーーー!!」

 

結局皆で船に乗り込む。動き出して数分でナツはグロッキー。

 

「バイバーーイ!!フェアリーテイル!!また来いよ!!」

「本当にありがとう!!フェアリーテイル最高ーーー!!」

 

見送りをしてくれる悪魔達。その様子を皆嬉しそうに見ている。

 

「ばいばーーい!!みんな!元気でねーーー!!!」

 

島の影が見えなくなるまで彼らの見送りは続いた。

 

 

 

 

 

 

「帰ってきたぞーーー!!!」

「来たぞーーー!!!」

「しっかしあれだけ苦労して報酬は鍵一個か…」

「まだ言ってるのか、訴えられなかっただけ感謝しろ」

「まあ、正式に受理したクエストじゃないんだ。これぐらいでちょうどいい」

 

今回の結果に不満を言うグレイを嗜めるカイル。それでも苦労の割に対価が合わないという感覚はカイルにもあった。

 

「そうそう!文句言わない!!」

「得したのルーシィだけじゃないか〜〜」

「自分さえよければそれでいいタイプだよな〜ルーシィは。どこのお嬢だっての」

 

「「売ろうよ、それ」」

 

見事にハモるカイルとハッピー。

 

「なんて事言うドラ猫かしら!!言っとくけどこの黄道十二門の鍵はめちゃめちゃレア何だからね!!」

「「……………へぇ」」

「あんたら信じてないわね」

 

本当はカイルだけは価値を知っているが、S心を刺激されたカイルはしばらく知らないフリをする事にしていた。

 

「あのカニやメイドが〜〜」

 

全員嘘だ〜といった顔をしている。それにルーシィが激昂する。

 

「あたしがも〜〜っと修行すれば絶対あんた達より強いんだから!!」

「ほう、なら是非俺と戦って欲しいモンだな。手加減なしで……」

「ご、ごめんなさい……」

 

カイルの戦おう宣言に一気にビビったルーシィ。

 

「ま、それは半分冗談として」「半分!?」

「なんて言う鍵なんだ?それ」

「人馬宮のサジタリウス」

「人馬!?」

 

グレイの頭にケンタウロスの逆バージョンが浮かび上がる。

 

「いや、それ逆じゃない?」

「………ワクワク」

 

ナツの頭には何かもうわけわからん生物が浮かび上がる。

 

「なにそれ!!もう生物じゃないわよ!!」

「…………おお!」

 

カイルの頭には全身を漆黒とところどころに金をあしらった鎧と兜に身を包み、銀の盾と槍をもち、見事な青毛の馬に乗った騎士を思い浮かべた。

 

「そ、それはカッコよ過ぎかな〜」

 

ルーシィがそれぞれの想像にしっかり突っ込んだことを確認するとも、エルザがおもむろに口を開いた。

 

「さて…早速だがギルドに戻ったら貴様らの処分がある」

「うぉ!!忘れかけてた!!」

「忘れんな、なんのために報酬がチャラになったと思ったんだ」

「私もカイルも概ね海容していいとは思ってるが、決めるのはマスターだ。私達は弁護する気はない。覚悟しておけ」

「ままままさかアレをやらされるんじゃ!!」

「ちょっと待て!!アレだけはもうやりたくねえ!!」

「え?あれって何?」

 

ルーシィだけは着いていけない様子。フェアリーテイルに入って日が浅い彼女はアレについてを知らなかった。

 

「大丈夫だって。ジッちゃんならよくやったって言ってくれるさ」

「……いやアレはほぼ確実だろう。ふふ、腕がなるな」

「あ、そっか。今回は俺とエルザがやることになんのか。アレってやる方も結構大変なんだけどな〜〜。まあ面白いからいっか←(ドS)」

 

「…………イヤだぁあああああ!!アレだけはイヤだぁああああ〜!!」

 

逃げようとするナツの首根っこをエルザがひっつかみ、引きずって行く…

 

「………ふふふ、さあ、逝くぞ」

「おい、バカ二人、キリキリ歩け」

 

後ろでこの世の終わりのような顔をしているグレイとハッピーの肩に腕を回し、歩くカイル。

 

「だ、だからアレって何〜〜〜〜!!!」

 

 

 

 

しばらく歩いていると何やらヒソヒソと話し声が聞こえる。どうやら俺たちを見て話しているようだ。

 

「カイル、街の様子がおかしい」

「奇異の目で見られるのはいつもの事だが……なんかあったか?」

 

ギルドに到着する直前に曲がる角がある。そこを曲がるとそこには驚愕の光景があった。

 

「な!!何!!」

「こ、これは!!」

「お、おいら達の……」

「俺たちのギルドが!!」

 

巨大な鉄に串刺しにされているギルドの姿があった。

 

「この鉄は……ただの鉄じゃない。バハムート、これは」

【ああ、滅竜魔法の鉄だ、奏者】

 

無惨なギルドの姿を見て、呆然とするカイル達。そこへ声がかかった。

 

「ファントム」

 

後ろにはミラがいた。明らかに沈んだ表情。カイルは思わず拳を握りしめる。

 

「悔しいけどやられちゃったの」

 

上がボロボロになっているので皆地下で飲んでいた。場の空気は悲しみや怒りに包まれている。

 

「おっ!カイル達が帰ってきたぞ」

「おうただいま。じーさんは?」

「奥にいるよ」

 

喧騒の中をまっすぐ歩くカイル達。仲間達はやり返すか、我慢するかの賛否両論に別れているようだ。

 

「よっ、カイル。おかえり」

「ああ、ただいま。」

「ただいま戻りました」

 

いつも通り酒樽の上に乗るマカロフ。カイルとエルザもいつも通り振舞っているが、エルザの声は震えていた。

 

「じっちゃん!!酒なんか飲んでる場合じゃねえだろ!!」

「あ〜、そうじゃった!!貴様ら!!勝手にS級クエストなんぞにいきおって!!」

 

『………は?………』

 

全く見当違いの事を言われたカイル達は愕然とする。

 

「おいじーさん。そうじゃなくてよ」

「めっ!めっめっ!」

 

腕を伸ばしてナツ達を一発ずつ殴る。

 

「……めっ」

 

ルーシィだけはケツ……

 

「マスター、ダメでしょ?」

 

ついに限界がきたのか、エルザがつっかかる。

 

「マスター!!これがどういう事態かわかっておられるのですか!?」

「まぁまぁ、落ち着きなさいよ。騒ぐ事でもなかろうに」

「おいおい、じーさん。気持ちはわからんではないが、呑気過ぎやしないか?」

 

カイルは呆れる半分、納得半分の顔をしてマカロフに問う。ルーシィは何もわかってない様子でキョロキョロしていた。

 

「ファントムだぁ?あんなばかたれどもにはこれが限界じゃ。誰もいねえギルド狙って何がたのしいのやら」

「誰もいない?」

「襲撃されたのは夜らしいのよ」

「怪我人はいなかったのか……不幸中の幸いだな」

 

とりあえずよかったと安堵するが、頭の隅に違和感が残る。

 

───……引っかかるな………ギルドの規定を破ってまで、しかもファントムクラスのギルドがやったことがこの程度?

 

「不意打ちしかできんような奴らに目くじら立てる必要はねえ。放っておけ」

 

納得の行かないナツはまだ文句を言ってる。ナツを怒る際、またルーシィのケツを叩く。

なんでケツ?

 

「この話はここまでじゃ、上が治るまでしばらく受注はここでやる。カイル、あとは任せた。漏れそうじゃ」

 

トイレへとトコトコ走っていくマカロフ。ナツはまだ憤懣やる方ないといった感じだが、仕方ないだろう。

 

「何で平気なんだよ……ジッちゃん」

「平気なわけねーだろ、ナツ。だがギルド間の抗争は禁止されてる」

「先にやってきたのはあいつらじゃねえか!!」

「後先の問題じゃねーの。せっかく我慢してるじーさんの気持ちを裏切るな。今日はもう寝ちまおう。各々気をつけろ。いいな」

「………マスターがそうお考えなのなら仕方ないな」

 

まだ納得はいってない様子だが一応頷くエルザ。そこで俺たちは解散になった。

 

といってもある家でまた集合になったのだが……

 

「カイル?何を書いている」

「ん〜、念のためのおまじない。エルザは気にしなくていいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これってさ、普通に不法侵入だよな。エルザに散々やるなって言ってたこと俺がやるってのは罪悪感ぱねえんだけど」

「大丈夫だろ?」

「あい!」

「これで一回は不法侵入しても文句は言われないな」

 

おい、最後の何だ。と思ってると部屋の主が帰ってくる。

 

「フェアリーテイルは………」

 

「おかえりーー」

「いい部屋だな」

「すまんな」

 

「さいこーーーー!!??」

 

まあ当然の如く怒るルーシィ。事情を説明し、一応納得してくれた。

 

「お前も年頃の娘だしな、だいたいカイルとふたりきりでお泊まりなんて私がゆるさゴホン!!!気が引けるのでな、同席する事にしたんだ」

「おい、途中本音が出てたぞ」

「気にするなグレイ、気にしたら負けだぞ」

 

諸々の事情込みでお泊り会が開かれた。各々部屋を物色している。

 

「ガリガリ」

「つめとぐな!!ネコ科動物!!」

「何だニコラ!その食い物!俺にもくれ!!」

「エルザーー。見てーーエロい下着ーーー」

「す、凄いな……こんなのをつけるのか…か、カイルはどういうのが好み何だ?」

「別に下着にこだわりないけど…強いて言うなら黒系?ガーターとか」

「………清々しいほどひとんちエンジョイしてるわね」

 

完全に友達の家に複数で泊まりに来た状態になっている。各々、いつもと違う空間をそれぞれで楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…良い湯だった」

 

タオルを巻いただけの格好でエルザがベッドに座る。先ほど女性陣に汗臭いと言われた男達はそれぞれで入浴を済ませていた。今は思い思いに寛いでいる。

カイルに至っては上半身裸で寝転がっていた。

 

「エルザ…皆ホント寛ぎすぎ…」

「おっとこれは失礼」

 

そう言ってエルザは換装でパジャマに着替える。

ハートの十字架が描かれている。

 

「あとカイル!!グレイになってるよ!!ちゃんと服きて!!」

「えー、俺って寝るとき何も着ない人なんだけど」

「お黙り!!家主のいう事聞きなさい!!」

 

しょうがねえな、と一言言うと、浴衣に換装する。東洋の着物で動きやすくて気に入っている。

 

「…で、例のファントムって何で急に襲ってきたのかな?」

「さぁな…今まで小競り合いはよくあったが、こんな直接的な攻撃は初めてだ」

「…じっちゃんもビビってないでガツンッとやっちまえばいーんだ」

「ナツ起きてたのか…」

 

いきなり会話に混ざってきたナツにビックリした。こいつは特定のワードで急に覚醒するから心臓に悪い。

 

「じーさんはビビってるわけじゃねぇだろ。あれでも一応、聖十大魔導の1人だぞ」

「って何自然に読んでるわけー!?」

 

どうやらグレイが読んでいたのはルーシィが書いている小説だったようだ。

ルーシィは顔を真っ赤にしてグレイの手から原稿を奪い取る。

 

「コラー続きが気になるだろうがよー」

 

ん、と手を出して返すよう促すグレイ。

 

「だぁめ!読者第一号はレビィちゃんに決まってるんだから!」

「……ん、」

「その手はなにぃぃ!?」

 

ルーシィが必死に説明するが聞いていなかったのか、よこせ、とエルザが手を出す。

 

「ダメだって言ってるでしょー!!」

 

 

 

 

 

 

「───ところで、聖十大魔導って?」

 

原稿を抱えたまま、思い出したようにルーシィが質問する。その内容にカイルは呆れると同時に納得する。大陸の魔導士なら聖十は知っていて当たり前の存在なのだが、この辺の世間知らずさはハートフィリアのお嬢様らしい。

 

「魔法評議会議長が定めた大陸で最も優れた魔導士十人につけられた称号だ」

「へぇー凄ーい」

「ファントムのマスター・ジョゼもその一人なんだよー」

「そして、あの男もな…」

 

エルザが憎々しそうに言うあの男とは……ジークレイン。

カイルが一番戦いたくない人物だ。

 

「あ、あと俺もね」

 

普段は隠してる聖十の首飾りをルーシィに見せる。

 

「えぇええええ!!か、カイルってそんなに凄い魔導士だったの!?」

「今更何を言っているルーシィ。カイルより強いやつなんてそれこそギルダーツぐらいだろう」

「?誰それ?」

「ああ、いずれ教えてやるよ。それより今はファントムだ」

「ビビってんだよ!ファントムの奴等、数だけは多いからよぉ!」

「だから違ぇーだろ。マスターもミラちゃんも二つのギルドが争えばどうなるかわかってっから、闘いを避けてんだ」

「魔法界全体の秩序のために、な」

「そんなに凄いんだ…ファントムって…」

 

ルーシィの言葉にあんな奴等大したことねぇよ、とナツが返す。

 

「いや…、実際争えば潰し合いは必至。戦力は均衡している」

 

ファントムにはマスター・マカロフと互角の実力を持つと言われている聖十大魔導のマスター・ジョゼと、フェアリーテイルで言うS級魔導士であるエレメント4。

 

一番厄介なのは今回のギルド急襲の犯人と思われる、鉄の滅竜魔導士、鉄竜のガジル。

 

「滅竜魔導士!?ナツの他にもいたんだー!」

「…チッ」

 

ナツは機嫌悪そうに舌打ちをする。

 

「ま、俺がいるから戦力的には6:4ってトコだな。それよりナツ、そんなふくれっ面すんな」

「んぉ」

 

カイルはナツの頭に手を乗せ、ぐしゃぐしゃに掻き回す。

 

「やめろよカイルーー!!」

「断る」

 

そう断れば、こんのぉー!とナツがやり返してきた。ヒラリと躱す。

 

「甘い」

「避けんなぁぁ!」

「…本当に兄弟みたいだな」

「そうね…」

 

エルザとルーシィが微笑ましそうに二人を見つめる。必死に抵抗するナツに余裕を持って対処するカイル。その様子は騒がしくも、微笑ましい。

 

「エルザも混ざるか?」

「…!……そうだな。手加減はしないぞ!」

「ギャーやめろってエルザー!」

 

エルザの参戦でナツが悲鳴を上げる。

 

「ルーシィもグレイも、ハッピーもプルーも混ざれ!」

「えぇ!?」

「カイル、ナツ押さえてろ」

「オッケー」

「わぁぁやめろ!」

「おいグレイ、早くしろ」

「おいらもー!」

「プー」

 

 

 

この闘いは全員が

疲れて眠るまで続いた───…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、フェアリーヒルズ近郊。闇に紛れ、忍び込む影が一つ。ボロマントに身を包み、鋼鉄が擦れ合うような重厚な音が夜の静けさに響く。

 

「く、クソッ」

「この……」

 

打ちのめされたジェットとドロイが呻く。突如現れた襲撃者と戦った2人は瞬く間に制圧されていた。

 

「この程度の雑魚がギルドを代表するチーム、シャドウギアだってのか。所詮妖精のケツなんかこんなもんかよ」

 

唯一無傷のレビィは部屋の奥で震えている。襲撃を警戒し、全員が揃って過ごしていたチーム、シャドウギア。3対1という状況だったにも関わらず、結果は圧倒的だった。

 

「残るはテメエだけか。お前みたいなチビ女、殺したところでなんの自慢にもなりゃしねえが……開戦の花火は派手な方がいいからな」

 

べろりと舌を舐め、敵意をレビィに向ける。その威圧感は凄まじく、戦闘向きと言える魔導士とは言い難い彼女に抗えるものではなかった。

 

「や、やめろテメエ…」

「雑魚は黙ってろ」

 

止めようと動いた2人を襲撃者が蹴り飛ばす。鉄で殴られたような鈍い音とともに2人は意識を失った。

 

「死ね」

 

襲撃者が腕を鉄に変える。いや、正確には刃に変えた。文字魔法で自身を守ろうとしたが、遅い。振り下ろしの一撃には間に合わない。レビィは恐怖に目を閉じた。

 

金属音が部屋の中に鳴り響く。同時に突き飛ばされたような衝撃が彼女を襲った。自身を打ち付ける鈍い音と激痛を予想していたレビィは予想外の痛みに目を開く。

 

「やはりな、警戒(おまじない)をしておいてよかった」

 

部屋の中に魔法陣が浮かび上がる。その中心にいたのは銀の大剣で鉄刃の一撃を受け止めている白銀の髪の騎士。いつもの着物より軽く、ゆったりとした衣服に身を包んでいる。浴衣という寝巻きだと以前言っていた。

 

「テメエ……」

「お初にお目にかかる。鉄竜のガジルくん。妖精の尻尾S級魔導士、カイルディア・ハーデスだ。以後、お見知り置きを」

「カイル!」

 

唐突に現れた救世主の名前をレビィが叫ぶ。ガジルの腕を弾き飛ばすと同時に振り返り、柔らかな笑みを返した。

 

「やあレビィ。息災そうで何より。間に合った……とは言い難い状況だが、取り返しがつかなくなる前でよかった」

「テメエ……どうやって現れた?」

「なに、ファントムクラスの大ギルドが規定違反を犯してまでやらかした事があの程度とはとても思えなかったんでな。ちょっと警戒してただけだよ。転移魔法の構築が難しくてちょっと手間取ったが」

 

酒場にいた時、ギルドメンバー全員に風精霊を付かせておき、異常があれば伝えるようにしておいたのだ。しかし精霊は基本気まぐれで、夜は眠っている。そのため、精霊が風の精霊王シルフに襲撃の報告をしたのは少し遅かった。

 

「さて……」

 

光の精霊王セレナードがジェットとドロイの傷を癒す。応急処置が終わり、意識を取り戻した事を確認すると、カイルは大剣を襲撃者に突きつけた。戦意を感じ取ったのか、ガジルも戦闘態勢に入る。

だが……

 

───なんだこのバケモンは……

 

鉄竜のガジルは恐らく、生まれて初めて恐怖していた。隙のない佇まい、溢れる気魂、圧倒的な魔力。全てが自身を上回っている。まるで噴火寸前の火山を相手にしているかのようだ。

 

『ガジルさん。誰を相手にどう暴れても構いませんがねぇ。マカロフとカイルディア。この2人にだけは手を出してはいけませんよ』

 

動く前にギルドマスターであるジョゼから散々言って聞かされた。 

絶対に一対一で戦うな。一個大隊を相手取るよりも無謀なことだと。

 

───聞いてはいたが、ここまでとは

 

一個大隊どころか、ギルメン全員で掛かっても倒せるかどうか。聖十大魔導は天変地異を引き起こす魔導士だという触れはハッタリではないのかもしれない。

だがそこは流石名の通った魔導士である鉄竜のガジル。実力差を感じつつも心までは折れず、美しい怪物を睨んでいた。

ほう、と白銀の髪の青年が感心したように息を吐く。割と本気で殺気を叩きつけたというのに、折れていない事に少し驚嘆した。苦笑すると少し鋒を下ろす。

 

「心配するなよ、ガジルくん。君が仕掛けてこない限り、俺もこれ以上何かする気は無い」

「なに?」

 

ギルドメンバーが襲われたというのに、穏やかに対する彼に帰って恐怖を感じる。怒りとは表に見えないものの方が恐ろしい事をガジルは知っていた。

 

「信じられないか?だが事実だ。こいつらも君達の襲撃があった後で警戒していたはず。それも3対1の状況、君がやられていた可能性も大いにあったんだ。にも関わらず返り討ちにされたこいつらの弱さも悪い。これ以上事を荒立てるつもりは俺にはない」

 

カイルの言っていることは概ね正しい。強者の論理かもしれないが、正論だ。酒場が壊され、こちらはこれ以上被害が出ないように集団で行動する事を厳命していた。当然、闇討ちの可能性も考慮した上での指示。その事をギルメン全員が理解していたはずだ。それなのに3対1で惨敗。カイルからすれば情けない以外の何者でもない。

基本彼は仲間には優しいが、戦闘面に関しては仲間だからこそ厳しく当たる。魔導士たるもの、己の安全は己で守る程度の実力を身につけることは最低条件。おんぶに抱っこは仲間と言わない。

 

「だが俺も仲間を襲われた事に関する怒りはある。故にこの場で君と戦っても構わないんだが……それは出来るだけしたくない。いくら仕掛けてきたのがそちらとはいえ、同じ土俵に上がって仕舞えば同罪だからな」

 

開戦してしまえばフェアリーテイルも規定違反をする事になる。勝っても負けても罰則は免れない。ただでさえペナルティが重なっているウチはこれ以上評議会の心証を下げるわけにはいかない。

 

「つまり……どうしろと?」

「幽鬼の支配者、マスター・ジョゼと話がしたい。一団の長を務める男だ。まんざら、わからず屋でもあるまい。取り次いで貰えるだろうか?鉄竜のガジルくん」

 

 

 

 

 

 

 




後書きです。随分と空いてしまい、申し訳ありません。リメイクって難しい。さあオリジナル展開にしてしまったぞ。どうするカイル!着地点ほとんど見えてないぞ作者は!……頑張ります。それでは励みになりますので、感想、評価よろしくお願いします。面白かったの一言でも頂ければ幸いです。
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