ローレライの支配者   作:フクブチョー

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第八公演 形式だけは済ませておいたほうが何かと便利

 

 

 

 

 

 

 

 

ララバイの一件が解決して数日後、ギルド前は相も変わらず騒がしいが、その喧騒の種類はいつもと少し異なる。その中心にいるのは三人の人影。

ナツ・ドラグニルとエルザ・スカーレット。そして二人の中間の位置にカイルディア・ハーデスが立っている。

 

そう、今日はかねてからの約束通りナツとエルザが戦う事となったのだ。その盛り上がりは尋常ではなく、仲間内ではトトカルチョさえ行われている。

 

「お前とこうして戦うのは何年振りだろうな」

「あの時はガキだった!だが今は違うぞ!!」

 

対峙する二人。その丁度真ん中にカイルが立っている。

今回の独断専行を許す代わりに彼が審判を務める事となっていた。

 

「私も本気でいかせてもらうぞ。久しぶりに自分の力を試したい」

 

エルザの鎧が形を変えて行く。彼女は戦う相手によって属性を変化する事ができる万能タイプ。万能という点においてカイルのに右に出る者はまずいないが、それでもフェアリーテイルにおいては黒の騎士王に次ぐオールラウンダーと言って差し支えない。

 

「全てをぶつけて来い!!」

 

炎帝の鎧。炎に対して絶大な耐性と力をもつ。ナツにうってつけの鎧だ。

 

ーーーーまったく大人げねえやつだ。6:4でエルザかな?

 

エルザの様子と鎧を見てカイルが分析する。この二人ならばどちらが強いとは一概には言えない。たとえこの一戦で負けたところで明確な序列をつける事はできない。絶対的でない差など状況や精神一つで容易に覆る。

しかし、現時点においてどちらが有利かと問われればエルザと答えざるをえない。キャリア、戦闘技術、魔力、そして精神。心技体においてどれもエルザがまだ少し勝っている。6:4。エルザが6だ。

 

「やっぱりエルザにかけていい?」

「なんて愛のない猫なの!!」

 

ナツに相性の悪い鎧をエルザが纏った所を見たハッピーはエルザに鞍替えした。さすがに優秀な魔導士を近くで多く見てきただけあって、目はなかなか肥えている。そしてしっかり突っ込むルーシィ。まだまだ情が先行するらしく、どちらが負けるところも見たくないといった感じだ。

 

「おいてめえら。用意はいいか?」

「「おう!(ああ!)」」

「ではお互い、尋常に」

 

右手を高く掲げ、

 

「始め!!」

 

振り下ろす。同時に二人共飛び出した。

 

「だりゃ!!」

 

最初に仕掛けたのはナツ。猛然と殴りかかる。しかし、エルザは無言でかわし、剣をなぎ払う。

 

「ちっ!!」

 

体を捻ってかわすが読んでいたエルザは足払いをしかけた。

バランスを崩したナツに斬りかかるが炎をナツが吐き出す。

エルザもバク宙でかわすが、それでお互い距離が空く。

仕切り直しだ。

 

「ふっ」「へっ」

 

息をつかせぬ攻防。フェイント含め、今のやり取りを理解できている人間が観客の中でどれほどいるか…………

中々の好勝負。二人共笑みがこぼれている。楽しんでる様子だ。

 

「な?いい勝負してるだろ?」

「へっ!どこが?!」

「グレイ、認めるもんは認めねえと強くなれんぞ」

「す、凄い…流石最強の二人…」

 

圧倒されたように呟かれたルーシィの言葉にメンバーが反応する。強さに自信がある者なら誰もが聞き捨てならない発言だった。

 

「ナツの男気は認めるが、最強は違うぞ。エルザを含め、フェアリーテイルには最強候補が五人いる」

「その中にナツは入ってない。俺は入ってるけど」

「えぇええ!!そ、そうだったの!!」

「カイル!!よそ見してないでちゃんと審判してくれよ!!」

「ああ、スマンスマン。続けろ」

 

戦いに再び集中したカイルを確認すると再度飛び出す二人。再び戦いの火蓋が切って落とされると誰もが思ったその時だった。

 

甲高い破裂音が街に響き渡る。誰かが手を叩いた音だ。水を差され、集中が途切れた二人は動きが止まる。

 

「そこまで!全員その場を動くな。私は評議会の使者である。先日の鉄の森テロ事件について…器物損壊罪諸々の罪で……エルザ・スカーレットとカイルディア・ハーデスを逮捕する」

 

「え!?」

「あ、やっぱり?」

 

 

………

 

 

 

「何だとぉ!!!!」

 

ナツの叫び声がマグノリアに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、大人しく拘束されたカイルとエルザは現在、手枷をつけられ、法廷まで連れられている。そこで予想外の人物が二人を待ち構えていた。

壁に寄りかかっていたのは蒼髪の男。整った顔には刺青を施している青年。名前はジークレイン。聖十大魔導士の一人にして評議員メンバー。大陸でも有数の実力者。

 

「よう、久しいなエルザ。カイルはそうでもないが」

「貴様!!」

 

襲いかかろうとするエルザをカイルが止めた。

 

「なぜ止める!!カイル!」

「落ち着け、こいつは思念体だ。襲っても無駄だよ」

「その通り、本体はERAにある。扉のむこうのジジイ共も思念体さ。こんな小せえ案件に本物が出向くわけねえだろ」

そこまで聞いて今回の逮捕の意味を二人とも理解する。

なるほど、体面を何より気にする彼ららしい。

 

「そうか…今回の事は貴様の仕業か…くだらん茶番だ」

「心外だな。俺はフェアリーテイルを擁護してやったんだぞ?だがジジイ共は責任問題になるのを恐れ、押し付ける対象が必要だった。」

「早い話がスケープゴートか…ま、意外でもなんでもないが」

「理解が早いな。同じ聖十としてお前とはいつかゆっくり話がしたいよ。まあお前らに会いに来たのは別件だが」

 

ジーグレインはゆっくりと近づくと、誰にも聞こえない程度の音量で呟いた。

 

「あの事は言うな。お互いのためにな…」

 

その問いかけに対してカイルもエルザも無言だった。それを承諾ととったのだろう。満足げな顔つきでジークレインは身を翻す。

 

「ではな、法廷で会おう。評議員の一人として…な」

 

ジークレインの姿が見えなくなったところで近くに控えていた下っ端の一人が大きく息をついた。

 

「お、お前ら…凄い人と知り合いなんだな」

 

フィオーレ王国でもっとも位の高い魔導士といって過言でない人物と対等な態度を取っていた。この感想は間違っていない。

 

「悪だ…」「とびっきりのな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「被告人、エルザ・スカーレット。カイルディア・ハーデス。前へ」

 

ジークレインとの再会を果たした後、カイルとエルザは証言台に立たされる。その堂々とした姿は罪人とはとても思えない態度だ。

 

「おいおっさん。これ一人ずつじゃだめなの?狭いんだけど」

「私語はつつしめ……エルザ・スカーレットよ。魔導四輪による街の破壊十一件。橋の破壊の容疑がかけられている。間違いないか?」

「はい」

 

橋はナツだったが、特に弁明はしなかった。

 

「カイルディア・ハーデスよ。定例会場破壊および評議会襲撃の容疑がかけられている。間違いないか?」

「んー、ちょっと違うぞ。壊したんじゃなく凍らせたんだ」

「どっちでも良い。認めるな?」

 

はいと答えようとしたカイルの口はハの形で止められる。地面を揺るがす轟音と破壊音が白銀の髪の青年の言葉を掻き消した。

急に二人の後ろの扉が吹き飛ぶ。よほどの威力で壊されたのか、もわもわと白煙が上がっており、誰が下手人かはすぐにはわからなかった。

 

「何事だ!!」

 

驚愕に包まれる法廷。その白煙の中から現れたのは……

 

「俺がエルザだくらぁ!!!」

 

エルザと同じ髪の色のヅラをかぶり、鎧をきたナツだった。

 

「何の罪だか言ってみやがれ!!」

「「「「「「……………」」」」」」

 

空いた口が塞がらない一同。

 

「はぁぁぁ〜」

 

ため息をつくエルザ。だが一人だけまったく異なるリアクションを取っていた。

 

「ぶわははははは!!ナツそれエルザのつもりか!だが特徴は捉えてるな。ハハハハハ、や、ヤバイ腹痛え、死ぬ、笑い死ぬ。はははは!」

「そいつはギルドマスターの命より重い罪なんだろうなぁ!!」

 

しばらくカイルの笑い声だけが法廷を支配する。現状がどういう状態なのか、時間をかけて理解した評議会がようやく指示を出した。

 

「さ、三人を牢へ」

「申し訳ありません…………カイルもいつまで笑ってる!!」

「いやだってよ、くくくくく。何か似てるような気になってきた」

「エルザ!!こんな奴らに謝る必要ねえ!!あ、俺がエルザだ!」

「もう無理だってナツ!ハハハハハ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閉廷後、牢に入れられたナツをエルザがボコボコにし、カイルも笑い過ぎと一発殴られた。

 

「ほべんらはい(ごめんなさい)」

「なんで俺まで…………」

 

人相が変わった顔で正座して謝るナツとギャクマンガのようなコブを作りながら胡座で座るカイル。無残に腫れ上がったナツの頬は上手く言葉を発する事を出来なくしている。

 

「まったくお前には呆れて言葉も出ん」

「なるほどだから手が出たと……冗談、冗談だから拳を振りかぶるな」

 

握りこぶしを振り上げられて睨まれたカイルは即座に謝罪する。フンと一つ鼻息を吐くと握った拳を下ろした。

 

「これはただの儀式だったのだ」

「儀式?」

「評議会は取り締まりやってますよーってアピールするための形だけの逮捕だったんだよ」

「だから今日にも帰れたんだ!お前が何もしなければな!!」

「そ、そうだったのか。すまねえ」

「まあまあいいじゃねえか。何だかんだで嬉しかったろ?エルザ」

 

それを聞くとエルザは少し照れながら

 

「ふふ、まあな」

 

と応えた。

 

「そっか…へへ!良かった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、カイル」

「ん?」

 

牢屋の壁にもたれ掛かって目を閉じていたカイルの隣にエルザが座り込む。

 

「お前はまだジェラールの事を…弟だと思っているか?」

 

問いかけられた内容は予想通りジークレイン絡みの話だった。ジェラールと瓜二つの彼の姿を久々に見たのだ。かつての仲間を思い出しても無理はない。皮肉げに口角を歪めながら、正直なところを応えた。

 

「……多分な」

 

戦場で敵としてあったなら戦える自信はある。けれど殺せるか、と問われれば答えは出なかった。その最大の理由は間違いなく幼い頃、二人で交わしたあの誓いに他ならない。

どれだけ裏切られても、どれほど手ひどい目に遭わされても、カイルはジェラールを心底から憎む事は出来なかった。

 

「そうか…………そうか」

 

一度目には喜びを、二つ目には安堵を込めて二回呟く。人によっては甘いと言われて何らおかしくないカイルの答えがエルザは嬉しかった。安心した。

 

「強いな、お前は…」

「甘いだけさ」

「違うぞ、お前は優しいんだ」

 

緋色の髪の女騎士が白銀の髪の青年の肩に頭を預ける。まるで仕える王に騎士が寄り添うかのように。

 

「今日はこのまま寝ていいか?」

「……好きにしろ」

「ん」

 

お互いを温め合うかのようにそれぞれの体温を感じながら、英雄と騎士は眠りについた。

幼い頃共に生きた仲間といつか戦わなければならない。それは遠くない未来の事だと思いながら……

 

 

 

 

 

 

 

明くる日、カイルたちは釈放となったが、彼だけは残るように評議会に命じられた。自分も残るとエルザ達は言ってくれたがカイルは先に帰れと指示した。どうせ仲間には聞かせたくない事を言われるとわかっていたから。

 

「聖十大魔導士カイルディア・ハーデス。貴君に依頼を頼む」

「今回の件の代償か?まあいい、何だよ?」

「霊峰アストラルで事件が発生した。その解決に当たって欲しい」

「アストラル……………か」

 

その土地の名前を奏でる者は知っていた。修験者達すら寄り付かない魔の秘境。辺りは常に暗く、多くの強力な魔獣が潜む危険地帯。長きにわたって手がつけられなかったその霊峰が近年穏やかではないらしい。

 

「龍の形をした魔力が暴れ出した。アストラルに存在するヌシが目覚め始めたとされている。討伐隊は幾度となく派遣したがその全てが全滅という結果となった」

「なるほど、そりゃ大変だ」

 

聞きながらカイルはヌシの正体について大体の当たりをつけていた。霊験あらたかな場所に住む強力な魔力の持ち主。今まで経験してきたケースに当てはまる箇所が多い。

 

ーーーー俺の推理が当たっているのなら、確かに俺がいかなきゃならん事態だ。そこまでこいつらが理解した上での依頼とは到底思わないがな。

 

「わかった。ちなみにクエストの種類は?」

「10年クエストだ」

 

それが聞こえたのか、扉がいきなり開け放たれる。

 

「受ける必要はない!カイル!」

「エルザちゃん……帰ってろっていったのに」

「お前は二年前それを受けてどうなったか忘れたというのか!!」

 

必死の剣幕で引き止めるエルザ。二年前にも確かに似たような無茶な依頼を評議会に押し付けられた。その時はギルドにたどり着いて一週間寝込んだほどに憔悴していたのだった。

 

「心配すんな、この俺がそう簡単にやられるかよ。おっさん、今回は俺個人も興味がある。しばらくあんたの手の平で踊ってやるが二度はねえぞ。そん時は俺聖十やめるからな」

「承知した。ではたのんだぞ。史上最高のローレライよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後書きです。最後まで読んでいただき、お疲れ様でした。いかがだったでしょうか?今回はほぼ原作通りとなりました。次回からはオリジナル【最後の精霊王】編です。前作をお読みになられた方は新鮮味がないかもしれませんがあの頃の駄文よりは上手く書きます。それでは励みになりますので感想、評価よろしくお願いします。面白かったの一言でも構いません。よろしくお願いします
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