ソードアート・オンラインIF ver.アインクラッド   作:モコモコ毛玉

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エピローグ

 

 浮遊城アインクラッドの五十層を攻略して数日後の深夜、どうして僕はあんなメッセージを彼に送ってしまったのだろうか――頭では『何時もの冗談めかしたメッセージを今すぐ送れ』・『彼も疲れているのだから来る筈がないし来てほしくもない』と呟きながら、心の中では淡い期待を願っていた。

 

 メッセージを送った彼が宿に居るなら、そこから此処までは走れば五分とない。

 何をしているんだと思いながらも月明かりに照らされる街並みを見渡していれば視界の隅に見慣れた黒が目に入る。

 

「来て、くれたんだ――」

 

 屋根から顔を覗かせて、下にいた黒の存在にポツリ。

 零した独り言が聞こえているとは思わなくて、その動揺を悟られない様に努めながら僕は元々座っていた場所に戻って再び一人で月を眺めていると、下から上がってきたキリトは僕の隣に腰を下ろした。

 

「ここ、月が綺麗に見えるんだよね……。僕も、少し前に気づいたんだけどさ」

 

 別に、無言の間を耐えかねて言ったワケじゃない。何か違う言葉を言わないと、吐き出してしまいそうだったから――だからいつもみたいに笑おうとしたのに、どうして今に限って上手くいかないのかなぁ。

 情けなさに、自分でも表情が険しくなっているのがわかってしまう。

 

  "無理に笑う必要は、ないんじゃないか――?"

 

 こんな姿、見せたくないのに。君はどうしてそんな優しい言葉を言っちゃうのかな。

 

 この感情を吐き出してしまえたら、どれだけ楽になれるのだろう。零れ落ちそうになる感情を、俯き、歯を噛み締めて黙らせる。

 

  "甘えて一体何になる" 、 "泣き言を漏らすな" 、 "僕にそんな資格はない" 。

 

「ごめんね、ちょっと待って」

 

 幾ら斬り刻んでも消えないソレに耐えきれなくて、僕は伸ばしていた足を曲げ、膝を抱えてうずくまる。こんな僕の顔、見られたくなかった。

 

  "どうして、皆死んじゃうのかな――。"

 

 最初のボス戦からずっと用心に用心を重ねてレベルを上げても、僕が出たボス戦では毎回少なからず死者が生まれた。

 

  "何で後少しの手が届かないのかな――。"

 

 僕は周りよりレベルが高いから他のプレイヤーを守らないといけないのに、伸ばした手は届かず、目の前で命が砕けていく。

 

「こんな事 "わかりきってはいたけどさ" ……。目の前で起きるのは、やっぱり堪えるよ――僕だって、人間なんだ」

 

  "――僕だって、普通を夢見たかった。"

 

 叶わないなんてわかってる。もう棄てた夢なんだって解ってる。本当なら、こうして立ち止まってる時間もないのに。

 

 一度解(ほつ)れた糸は中々戻せなくて、これ以上弱いところを見せたくない一心で必死に縛り上げるのにどれくらいかかったのだろうか。

 

「ごめんね、ありがとう。もう大丈夫――またね」

 

 ただ隣にいて話しを聞いてくれたキリトにそれだけ言って、僕は足早に屋根に上がった時に足早にした窓から室内へ戻る。

 時計を見れば深夜の一時で、この時間なら誰もいない筈と冷水で顔を冷やす為に洗面所へ行きたくて寝室のドアノブに手を伸ばしたら、勝手に扉が開いた。

 

「シャルテ。なんか、ちょっと寝れないから――」

 

 偶々泊まりにきていた寝間着姿のリズベットがそこにいて、僕の顔を見るなり言葉を失っていた。本当に、どうしてこうもタイミングが悪いのだろう。

 

「んっ、僕も寝つけなくて……ちょっとだけ気分転換に飲み物飲んだら直ぐに戻るから。先にベッドに潜ってても良いよ」

 

「わかったわ……じゃあ、先にお邪魔してるわね」

 

 彼女が通り過ぎるまでがヤケに長く感じて、扉が閉まる音を耳にしてからは『ちゃんと誤魔化せているだろうか』・『眠たげな顔に違和感はなく作れたか』を延々と頭の中で自問自答を繰り返しながらたどり着いた洗面所で、僕は右手で短剣を握って自分の左腕にゆっくりと刃を落とす。

 激痛に漏れ出してしまいそうな声を噛み殺して、弱くて泣き虫な自分の叫びを斬り刻む。

 

 ――どうか、もう二度とこんな事がありません様に。

 

 帰り道、寝室の前で深呼吸を一つ。心に残った『痛いよ』なんて言葉を踏みにじり、僕はゆっくりと扉を開けた。

 

「飲み物にしては遅かったわね……」

 

「飲もうとしたら冷蔵庫に何もなくてさ、ギルドストレージを漁ってたんだよ。……結局無くて水で我慢した」

 

  "大丈夫――僕はまだ、ちゃんと笑える。"

 

 





 《後書き》

 はじめまして。ソードアート・オンラインを原作とする二次小説、ソードアート・オンラインIF(仮題)をかかせていただいてるモコモコ毛玉という者です。
 こうして後書きなる物を書くのは初めてですので緊張しております、が、まずはここまで読み進めてくださった読者の方々に感謝すると共にこの場を提供してくださるハーメルン様へ心から感謝を。

 これにてソードアート・オンラインIF《上》が完結しました。これから先、シャルテがどんな道を行き、どのような結末を迎えるのかを見守っていただければ幸いです。

 それで、その……本当は催促するのはあまりよろしくないと思いつつ、読み終わっての感想・意見・批評・質問などがもしありましたらよろしくお願いします! と、ここに記してみます。


つきましては後書きを利用して《上》終了時のシャルテのレベルなどを。

lv72(振り分けpt 216)

HP 10900

(ボーナス加算前)
筋力値(STR) 72
敏捷値(AGI) 144


防具1
ライトクロース
<店売り>

防具2
コモンフーデット
<クエスト品>



ライトレザーグリーヴ
<店売り>

装飾品
ウルズのマフラー[未鑑定]
<プレイヤーメイド:ウルズ>

[使用スキルスロット:四つ]
短剣
隠蔽
体術
完全武器防御

《完全武器防御/パーフェクト・パリング》
 武器防御の上位互換にあたるエクストラスキル。解放条件は規定回数の武器防御。
 効果は通常の武器防御時に多少のタイミングの遅れも許容し、成功時には耐久度減少が緩和される。又、タイミングがシビアだが素手でのパリングが可能となる。

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