俺とアストルフォの第四次聖杯戦争   作:裸エプロン閣下

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必ず……っ、必ず助ける…!! byシンヴェル

 

 現在、ケイネス達が泊まるホテルは騒然としていた。宿泊客が従業員に詰め寄り何があったかを叫ぶように訊ね、従業員はそれに碌な返事も返せず原因の究明に奔走する。

 

 ――まさかホテルでクレイモアが作動したとは思わないだろう。

 

「内出血程度か……。ライダー、ソラウの様子は?」

「左腕以外は問題ないよ。腕の方も止血は終えたし」

「そうか……」

 

 アストルフォによって床で処置をされているソラウ、今彼女は左手を失っていた。クレイモアはドアを開ければ作動するように仕掛けられており、ソラウはそれにまんまとかかったわけだ。幸い俺が炸裂する寸前で蹴ったため左手だけで済んだが、その際の衝撃でソラウは気を失っている。痛みを感じずに済んだという意味では良かったのだろう。

なお、蹴った際に俺もクレイモアの弾を受けてはいるが耐久をかなり強化したのでちょっとひどい内出血程度で済んでいる。

 

「この場に留まる意味もない。腕を着けるために帰るぞ」

「着ける?」

「……義手があるんだよ」

 

 童話の眠り姫のようなソラウを背負い、中庭を駆け塀を飛び越え街中に姿を暗ます。クレイモアに隠匿の魔術が掛けられていたことを考えると下手人が近くにいるはずなので、『自分の存在』を弱化して気配を消していく。これなら尾行の心配もいらないだろう。

 

 

 ※※※

 

 

『申し訳ありません。ソラウ・ヌゥザレ・ソフィアリの暗殺に失敗しました。追跡も同様です』

「構わない。成功しようと失敗しようと結果に変わりはない」

 

 舞弥からきた連絡を聞き、迫りくる月霊髄液の攻撃を躱す切嗣。激高させたため先ほど以上の速度でこちらを追撃してくるが、近づきすぎて動きが単調な『突き刺す』動作にばかりなっている。これが一流の騎士ならば見切ることなど不可能だが月霊髄液は形状を六脚状に変えており、刺突は全てその足から繰り出されるため予備動作が分かりやすい。さらに狙う場所が精確なためほんの少し動くだけで紙一重で躱せる。

 

「何故だっ、なぜ当たらん!?」

 

 そしてケイネスにはそれが分からない。いかに優れた魔術師であろうとあくまで彼は魔術を学問と見る学者。装備と魔術ばかりに目が行き、技術面に関する知識がなく何度も同じ行動を繰り返すだけで一撃たりともかすらない。

 だからと言って、切嗣が有利なわけでは無い。依然としてキャリコの弾は通らず、コンテンダーも装填し直す余裕はない。

 

(だが問題はない。元々こいつを倒すのに銃器は向かないことは分かっていた)

 

 切嗣はケイネスがここを戦場に選ぶことを察していた。だからそのための準備は既に整えてある。冷静さを失っているケイネスはもはや逃走を選ぶことは無く、こちらの動きを疑いもしない。

 もはやケイネスは狩人の獲物ではなく、出荷を待つ家畜でしかない。

 

「逃げても無駄だ! 細切れにしてくれる!」

 

 目的の場所まであと少し。はやる気持ちは一切なく、静かに淡々と処理場へと向かっていく。

 

 

 ※※※

 

 

「これでよし」

 

 ソファに横たわるソラウに着けた元の腕となんら変わらぬ義手を眺め、手に持った肉包丁を棄てる。切り口が弾丸によるものなので手首を切り落とすのに使用した。ソラウの痛覚神経と意識は極限まで弱め、肉包丁の切れ味も最大限に高めたため痛みで跳ね起きることも無かった。

 

「ソラウが起きるころには完全に定着しているだろうし、あとはケイネスを探しに行くぞ。――もうドンパチやってるようだしな」

 

 窓の外からある場所を眺める。住宅街から外れた工場地帯、そこの一角で戦闘の気配を感じる。すべてを薙ぎ払わんと激しい闘気と荒々しくも鋭い闘志。どちらも獣のそれに近い。

 

「片方はバーサーカーだよね。もう片方はセイバーかランサーかな?」

「まずランサーで間違いないだろう。遠坂に発信器を使うという発想はない。時間もないし、ヒポグリフで行くぞ」

 

 基本魔術師は歴史を重ねれば重ねるほど魔術のみに頼る傾向が強い。歴史は浅いが誇り高い遠坂が機械の類を使ってくることはない。

 俺? 俺はほら、家系の特徴故、魔術ほとんど碌に使えないから頼らざるを得ないんだよ。

 などと言い訳しつつヒポグリフに乗り込む、――寸前で戻り親父からの礼装が入った箱を取り出す。これから戦うことになるのだから装備しておいた方がいいだろう。サイズ的に何が入っているか想像し辛いが、期待しつつ箱を開ける。

 

「ガントレット……?」

 

 中に入っていたのは両手両足分、四つのガントレット。とりあえず解析してどのような効果があるかを調べる。そしてガントレットを手に取り装備する。秘められている効果は『魔術伝導率の強化』、強化などの魔術の巡りを良くするものだ。肉体戦闘を主とする人間にはかなり便利な物だろう。

掌を握ったり広げたりして着心地を確かめて再びアストルフォのところへ行き、ヒポグリフに跨る。手綱を握るのがアストルフォなので俺は後ろになることに少々も気恥ずかしさを覚えた。

 

「バーサーカーが戦闘中だったらお前の『触れれば転倒!(トラップ・オブ・アルガリア)』を使い援護しろ。それと、危なくなったら『この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)』で蹴散らせ。その際の魔力消費に関しては心配する必要はないが、乱発は避けろよ」

「りょーかいっ!」

 

 ヒポグリフが飛ぶのと同時に風が肩を切る。しかし抵抗は一切感じない快適な飛行。ただ空気抵抗をどうにかするだけならば俺でもできるが、今の猛スピードでできるかと言われれば不可能だし、そもそも魔術師は滑空したりすることはできるが飛ぶことはできない。つまり何が言いたいかというと、とってもレアな体験だという事だ。

 もう少しこのままでいたいが、急ぎでなおかつ距離も大して離れていないため既に着陸準備までしている状態である。

 

 距離感もはや二十メートル、俺なら余裕で目視できる距離。見ればランサーとバーサーカーが戦闘していた。

 

 距離感十メートル、ランサーがこちらに気付き双剣をこちらに投擲してくるが、手綱を少し動かすだけで躱して見せる。そのまま着陸を待つことなく飛び降りる。

 

「打ち合わせ通りに行くぞ!」

「分かってるよ!」

 

 着陸すると同時に俺たちは左右に分かれ、ランサーの思考を揺さぶってみるが、

 

「迷うかよっ!」

 

 微塵も迷うことなくこちらへ肉薄してくる。思えば先の 投擲も気づくのと同時だった。バーサーカーとも戦いながらあんな真似をすることからどうにもランサーは本能的な人間らしい。すべてを本能で判断、いや察するから動きが早い。しかし今回に限って言えば焦り過ぎだし、舐めすぎだ。

 

 一瞬で道を塞ぎように立ち、残った剣で首を貫かんと突きを放ってくる。突きといえば槍だが、剣での突きも超一流だ。ランサーとして召喚されただけはある。

 

gravity(重力) enchant(加圧)

 

 美しい美術品は、小さな傷が一つ入っただけでも簡単に判るものだ。優れた技量も、そこに不確定要素が混ざれば一気にバランスは崩れる。それが十倍の重力ならばなおさら。

 

 重力加圧――強化の魔術で重力を強化する単純なものだ。これはあくまで敵サーヴァントではなく重力であるため、対魔力で防ぐことが出来ない。接戦であれば戦況を一気に変えることもできる一手だ。ちなみに、石化の呪いで重圧を加える者もいるが、俺にそういった芸当はできない。あと乱発もできない。この魔術に使う魔力量は俺の総魔力の三割強だからだ。 

 

 僅かに軌道の逸れたランサーの必殺の一撃を薄皮一枚切ることで避け、次の手を打たれる前にアストルフォが『触れれば転倒!(トラップ・オブ・アルガリア)』を叩き込み、バーサーカーが殴り飛ばす。状況から見て完璧なタイミングに違いないが、さすがは英雄というべきか僅かに全身――正確には上半身のみだが――を逸らすことで衝撃を半減してみせた。その腕に称賛の口笛を鳴らし、後のことを二人に任せて駆け抜ける。

 

「後は任せたぞ!」

 

 簡潔な言葉を残して廃工場へ入る直前、切られた薄皮に何かが接触し、わずかに走った痛みに顔を顰める。そこで自分がいつの間にか、冷や汗をかいていたことに気付いた。そしてほぼ同時に背後の狂乱の気配が止んだ。

 

 全魔力を速力に注ぎ込み、俺は過去最高の威力で走り抜けた。

 

 ――手遅れになる前に。

 

 

 ※※※

 

 

「お遊びもおしまいだ。そんなもので聖杯戦争を勝ち抜けると甘く見ていた己を呪うのだな」

 

 あの後も一進一退、互いに有効打を決めることなくずるずると移動し続け、現在ケイネスが追い詰めた形となっている。細長い部屋は周囲のパイプや何かの袋が八つ当たり気味に六脚状の月霊髄液に斬られており、底も深い造りになっており濁った水が溜まっていた。

 

「もはやチェックメイト。泣いて許しを請いてみるか?」

 

 追い詰めたことで上機嫌になったためか、頬を歪ませる。今の彼の表情は紛れもなく狩る者のそれだった。

 

「チェックメイト、か。それはこちらのほうだよ」

 

 しかしあくまで倒れるのはお前、と言わんばかりの切嗣の態度に怪訝そうな表情に変える。

 切嗣の正面にはケイネスが、背後には壁がある。切嗣には壁を破壊できる手立ては無く、ここから逃走するためには月霊髄液を突破する必要がある。さすがのケイネスもそのくらいは判断できる。だからこそ、腑に落ちない。確かに先ほど月霊髄液の守りを突破されたが、あんなものは所詮子供だまし、二度も通じる手ではない。

 念のため、月霊髄液を自律から主導に切り替え、不審な動きをすればすぐさま行動できるよう、左右一本ずつだけを残し、いつでも攻撃できる準備をさせる。

 

 威嚇するように、脚を高く掲げてみたが相も変わらず無反応。身じろぎひとつしない姿に、追い詰めているはずのケイネスの方が逆に追い込まれているような錯覚すら感じる。そんなはずはない、とかぶりを振って更なるプレッシャーを与えるため月霊髄液を一歩進ませた、次の瞬間、切嗣の腕が恐るべき速度で懐へ潜り込み、弾丸を手に取った。

 

 ――薬室解放、薬莢排出、装填、薬室開閉。

 これらの動作を一秒にも満たない間に終え、銃口をケイネスに向ける。歩ませたばかりで安定しない月霊髄液の上でケイネスは迫りくる死の恐怖に目を見開き、無我夢中で攻撃を指示する。水銀のレイピアは主の意に答え銃弾と切嗣に対して正確無比にして神速の突きを放ち、そのうちの一つがコンテンダーの弾に命中、圧倒的な威力に穂先を陥没させながらも切嗣に向かって走る。

 その一連の動きをまるでスロー再生のように眺め、自身の勝利を確信し歓喜の涙を流し捕食者のように口を開き咆哮を挙げる。

 

「チェックメイトだ」

 

 そう告げたのはケイネスではなかった。ひらりと水銀の刺突を躱し三角跳びの要領で天上のパイプにぶら下がる。その際、切嗣の懐から何かが落ちていったがケイネスにはそれが手榴弾には見えず、放置してもいいものと取り、壁に突き刺さった四脚を纏め、薙刀のような形状にし天井ごと切り裂こうと振り上げる。それに対して抵抗するそぶりを見せない切嗣を見上げ、勝利を確信し――途端、全身を駆け巡る衝撃によって意識を失った。

 

 

 ※※※

 

 

 ――勝負あった。

 髪を逆立て全身を痙攣させる敗者を見下ろし、自らの勝利を確信する。

 発信器を持ち帰っていたことで居場所は把握できていた。古風な貴族主義者だから、粛清のためにこちらを人気のない所へ誘いだし、じわじわと嬲ってくることも予測できていた。だからこちらはその近隣で条件を満たす場所を全て洗い出し、ライフラインを整えておき必要なものを用意する。

 あとは簡単だ。仕掛けた罠におびき寄せて作動させる。今回は水と改造スタンガンを使った感電だが他にも罠があったりする。

 

『新手が来た、ライダーだ! そっちにも一人行ったからさっさと終わらせろ!』

『分かった。あとは退け』

 

 キャリコの弾倉が尽きたため右手でコンテンダーを装填する。ちょうど違法改造したスタンガンも配線がショートし壊れ、ケイネスが煙を上げながら水面に叩きつけられた。見るも無残な姿になったケイネスに狙いを定め発砲する。逡巡なんてものはない、復帰の可能性があるのならば一人とて生かしておくわけにはいかない。

 意識のないケイネスに防ぐ手立ては無く、バーサーカーにマスターを守るという知能は無い。ケイネスの死を確信し、発砲するが、

 

「――ッ!?」

 

 何かが高速で通り過ぎていき、コンテンダーの銃弾を弾いた。僕が狙いを外したという事はない。激しい波しぶきがそれを示している。

 

「いってぇ……、限界超えた速度なんて出すもんじゃねえな……。制御出来ねえ」

 

 声が聞こえた方向へ左手のキャリコを向ける。無論、弾はない、ただの威嚇である。視線の先にはブロンズの髪をショートカットにした長身の男――もう一人のロード、シンヴェル・ストルフォス・クラムベルクが額を抑えていた。その体は筋骨隆々、とまではいかないがかなりついているほうだ。同じ戦闘者でも、卑怯卑劣を常道とする暗殺者の僕と、真っ向から打ち合い敵を叩きのめす格闘家の彼では全く違う。おそらくこの距離でやり合えば負ける……っ!

 

「……初めましてだな。お前が魔術師殺し(メイガスマーダー)――衛宮切嗣か」

「……そうだが」

 

 非常に緩やかな動きでこちらへ顔を向ける。碌に警戒心のないその動きはおそらくキャリコに弾が入っていないことを確信しているのだろう。

 そして向こうはこちらを覚えていないようだ。たかが一回共闘した程度、当然と言えば当然だろう。それが功をなすかはさておき、問題は現状をどうやって切り抜けるかだ。

 

 実力未知数のライダーに単純な数値なら最高峰のスペックを誇るバーサーカー。戦闘能力に関しては言峰綺礼以上のシンヴェル。…………まともに戦えば確実に負けるだろう。最善策は三倍速で逃げることだが、そもそもその三倍速を上回ることが出来てもおかしくない奴相手では無駄に手札をばらすだけになる可能性も高い。

 

 手持ちは手榴弾とフラッシュバンとコンバットナイフのみ。この建物に仕掛けられ罠は残り三つ。それらを駆使しても成功率は三割程度。だがケイネスを助けに来たのであれば僕を追うよりそちらを優先するなら五割強……ッ!

 いまだ運否天賦の領域だがここは何としてでも逃げ切ってみせる!

 

「何か悩んでるようだが、俺は今ここでお前と戦う気はないぞ」

「……何?」

 

 必死に打開策を模索する最中、そんなセリフが聞こえた。この有利な状況で戦う気はないなど、一瞬僕の頭が可笑しくなってそんな妄言を幻聴したのではと疑うが向こうはどうも本気の様だ。

 

「俺は今回ケイネスを助けに来ただけだ。殺す気がなければ戦う気はないぞ」

「……本気か?」

「冗談を言って何になる」

 

 証明のためか、大胆にも両手を広げ戦う気が無い事を示す。こちらも本気であると察し、威嚇にならないキャリコを下げる。下手なことをして戦いに持ち込むわけにはいかなかった。

 

「分かった、早く持って帰ってくれ。それと、バーサーカーとライダーもどうにかしてほしい」

「…………いいだろう」

 

 やはり、ただで帰るつもりは無かったらしい。ある程度ランサーの情報を手に入れる、あるいは倒す気だったか。一度言い含めた以上、手出しはしないだろうが……。

 一応言質は取ったが注意を払い、人一人背負っているとは思えない速度で駆けていく姿を見てようやく僕は気を抜く。

 本音を言えばケイネスはここで始末しておきたかった。戦闘者としては間違いなく最下位だが、マスターとしての実力は最高峰。あの桁違いのバーサーカーをあれほど巧く使いこなし、その上でそれを何ら苦に思っていない魔術行使。捨て置けない。

 ……唯一マシな点はバーサーカー以外のサーヴァントとは相性が悪い点だろう。学者肌のケイネスにとってサーヴァントはあくまで使い魔(どうぐ)だ。まともな意思疎通などできやしないだろう。

 

 

 ※※※

 

 

 暴風の如く荒れ狂っていたバーサーカーの動きが止まる。その異常性から彼のマスターであるケイネスが倒されたことを周囲の者は理解した。

 

「バーサーカーが止まったか……。こんな情けねえ状態でもてめえを相手にするには十分だぞ、ライダー」

 

 残った上半身を血に染め、圧倒的に不利な状況にあるにも関わらず笑って見せるランサーに、同じく血に塗れ数多くの負傷を負うバーサーカー、そして無傷のライダー。

 圧倒的に有利な立ち位置にあるライダーだが、戦うどころか槍すら構えていない。バーサーカーとランサーの戦闘に入り込めないという理由もあるが、曲がりなりにも騎士であり、名誉も華もない横取りのような勝利は望んでいないのである。

 

 無論、サーヴァントとしてはマスターの勝利を第一に考え、ここでランサーを倒すべきではあるが、サーヴァントは主の命令に唯々諾々と従う傀儡というわけでは無い。各々が叶えたい願いを持ち、信念を持ち、誇りを持つ。そしてライダー、アストルフォは誇りを持つが故にランサーに手を出さない。

 それに、彼のマスターたるシンヴェルは別段気にしないだろうと確信している。

 

『アストルフォ、撤退だ。帰るぞ』

 

 噂をすればなんとやらか、想像通りの動きである。

 

「用事無くなったから帰るねー」

 

 たったそれだけ告げてランサーに背を向ける。相変わらず立ったままのバーサーカーも、背後で目を丸くするランサーも無視して軽やかな足取りで駆けていく。さながらデートへ向かう乙女のように。…………本人が聞いたら全力で否定しそうだが。

 

「……意味分かんねえ……」

 

 一人だけ取り残されたような空気の中でランサーがそう呟き、腕を伸ばして倒れた。

 

「アイリスフィ-ル、もういいぞ」

 

 物陰で隠れているアイリスフィールに一言告げて泡のように消えていった。

 足のない感覚というのが彼には耐え切れなかったのだ。

 

 

 ※※※

 

 

「やはり折れてやがるか……。しかしコンテンダーか。手甲がなかったら死んでたかもしれんな」

 

 先ほど銃弾を弾いた時に折れた右中指に治癒を掛けながらケイネスを背負い素早く戦場から離れる。それから五分ほどでアストルフォがやって来た。ヤッホー、などと言い呑気そうな姿に俺は思わず脱力してしまう。見ればそれらしい戦闘痕もない。パスで大体のことはわかるが、実際に見て怪我がないことを確認し胸を撫で下ろす。というか、冷静に考えればバーサーカーとランサーの戦闘に入れるほどの技量はアストルフォには無い。

 

「ケイネスが倒れ、バーサーカーが消滅した以上ここにいる意味はない。帰るぞ」

「バーサーカー消滅してなかったよ」

 

 なんでこの子はそういう重要なことをさらりと言ってくれるかな。撫で下ろした胸を再び上げて状況の確認に移る。ケイネスの魔術回路は水と風の二重属性であり、強力な電撃によって強制停止状態となっているため現在は魔力を生成できていない。だというのに消滅していない事実に何故、という疑問を持ちながらケイネスの身体に解析の魔術を通す。

 

 俺は基本、死体の身元判定や吸血鬼など特性がばらつく輩の弱点を探ること以外は人に使わない。 誰だって自分のプライベートを除かれていい気はしないからだ。しかし今回はそんなことを言える状況ではない。

 

 解析を通した結果、バーサーカーは確かに消滅していなかった。依然としてケイネスとはパスが繋がっていた。ただし、魔力は一切供給されていない。そしてそのパスからバーサーカーにも解析の魔術を通し、もう一つパスが繋がっていることを確認した。

 

「ああ、そういうことかー……」 

 

 ケイネスのタネが割れた。どうも変則的な契約をしていたらしくケイネス:ソラウ=三:七程度の比率で魔力を供給していたそうだ。それならケイネスの分は少し燃費の高い使い魔程度で済み、月霊髄液でも軽く使える。バーサーカーの操作に関しても多少魔力を浪費しても構わないわけだ。これはかなりのアドバンテージだろう。

 もっとも、負けた今となっては無意味だが。

 

「サーヴァントがいるならまだ負けじゃないよね?」

「負けだよ」

 

 アストルフォの言に首を振り、明瞭に否定を示す。

 

「ケイネスが供給できないのだからその皺寄せはソラウに行く。そして現界しているだけでも最高峰のステータスを誇るバーサーカーの魔力消費は並みではない。このままでは十分も経たないうちにソラウは死ぬから、結局バーサーカーの脱落は防げない。だからパスを限界まで弱化させ、負荷で切断する」

 

 ケイネスには悪いと思うが見殺しにするわけにはいかない。それにソラウが死んで一番悲しみのはこいつだ。

 心の中でケイネスに謝罪し、パスを弱化させる。その後過大な負荷によるパスが容易く切れる。

 

 ――あっけないものだが、いまのでバーサーカーのサーヴァント・ベルセルクは確かに消滅した。

 

「……荒れるね」

「ああ、そうだな」

 

 今聖杯戦争成功ステータスのバーサーカーが脱落することでほとんどのサーヴァントを上回るセイバーに、如何なる局面にも対応できるアーチャーも動き始めるだろう。アサシンは姿を見せず、ランサー陣営は再び城に籠城する。となれば狙われるのは当然俺たちである。

 

「ここからが本当の戦争だろうな」

 

 

 ※※※

 

 

【CLASS】バーサーカー

【マスター】ケイネス・エルメロイ・アーチボルト

【真名】ベルセルク

【性別】男

【身長・体重】229cm・205kg

【属性】混沌・狂

【ステータス】筋力:A+ 耐久:A+ 敏捷:A+ 魔力:B 幸運:B 宝具:B

【クラス別スキル】

[狂化]:EX

全てのパラメーターを1ランクアップさせるが、大半の理性を失いマスターの命令も聞かず、令呪すらも無視する可能性がある。

ベルセルクはバーサーカーの語源となった英霊、最高峰のランクを持つ。

 

【固有スキル】

[神々の加護]:B

軍神オーディンの加護。

精神干渉、及び痛覚によるペナルティを無効化する。

 

[威圧]:B

敵を威嚇するスキル。スキルのランクより相手の筋力・耐久・敏捷ステータスが一つでも下回っている場合、該当するステータスを1ランクダウンさせる。

[対魔力][カリスマ]など、一部スキルで抵抗、回避が可能。

 

[野生の本能]:B

自然界に生きる獣に近い危機管理能力と生存本能。

闘争の気配がある地点を瞬時に察知する。

また、相手の攻撃に対して回避判定を得る。

 

[勇猛]:A

威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。

また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

ただし、現在は狂化している為、能力を発揮できない。

 

【宝具】

『獣心武神』ウールヴヘジン

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

軍神オーディンから加護を受けたベルセルクは戦闘時は野獣のような振る舞いで鬼神の如く戦った。

相手から一定ダメージ受けるごとに魔力・幸運を除くステータスが1ランクアップするが、暴走状態になりマスターの命令を受け付けにくくなり、使用後魔力・幸運を除くステータスが1ワンク下がる。

 

 




シンヴェルの容姿に関する記述が出たの今回が初なんですよね……。
そして今後は本格的な戦闘が入ってきますが……アストルフォは宝具の情報が少ない……。特にライダークラスの要となるヒポグリフの効果が分からないとかなりきつい。
同様で以前言ったモードレットも無理だし……。

夏まで待つとして、それまでは進撃の巨人かオリ鯖で原作エクストラでもやるかね……。いや相手の分もオリ鯖作ったけど……。迷うな……。

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