いや本当は今日ゲーム攻略で一日潰す予定だったんですけど初っ端から結構なお気に入り数だったからついヒャッハー! しちゃって……。それに早いうちに投稿していけばきっと閲覧数も増えるはず。
昨日は宿を取る予定だったが外食しまくったら宿代が消し飛んでしまったので道行く人――夫が単身赴任で性欲を持て余してる感じのスーツ姿のキリッとした女性――に催眠術で泊めてもらい、夜には3P(こっちは催眠術は使ってない。遊び人のスペック舐めんな)を楽しんだ。
「日本の飯は旨いな! これに比べたら祖国の飯は並み以下だな」
そして現在、新幹線で冬木へ移動中。駅と言う駅で駅弁を食べながら、酒を飲みながら、時たまアストルフォ(現代風衣装に着替えさせた)を抱きながら移りゆく景色を見ている。日本というから農村とかそう言った感じの建築物を見たかったがそう言うのはやはり少ないらしい。代わりに山や川などの風景を楽しんでいく。祖国のフットパスに通ずるものがあるな。
あと飯美味い。弁当、食わずにはいられない!
「確かに美味しいけどいくら何でも食べすぎでしょ」
「おいおい、まだ全然だろ」
「弁当七十七個を、お酒三リットルを全然と言うのは無理があるよ」
「ふむ……」
対面するように座るアストルフォに言われちらり、と隣の席にある弁当の空箱が大量に入った大きなゴミ袋を見る。あと床下に積まれた酒瓶の群れも。
「まだ腹三分目というところだが」
「どこに入ってどこから出てるの!?」
「そこは俺の魔術回路の特性だよ」
「……そう言えば君の魔術の特性について聞いていなかったね。教えてよ」
「構わんよ。隠すことでもないし」
幸いここには
「誰のせいだと思ってるの」
「酒気の所為だよ」
「持ち込んだのは」
「俺だが」
「……ハァ」
その溜息はなんだよと言ってやりたくなるが意味がないので抑える。弁当を食べるのを一端止める。
「俺の、というよりクラムベルクは代々三重の属性を持つ」
「それって結構すごいんだよね」
「ああ、二重でも珍しいのにこちらは代々当たり前のように三重だからな。だがどんな属性だろうと魔術回路の特性は同じ、増進、停滞、減退に限られる」
「それは……なんとも偏屈だね」
「確かにな。だがそれは逆に言えば、クラムベルク家の魔術系統に合わない魔術師が生まれることはないということだ。しかしそれだけしか使えないクラムベルクは汎用性という面では他家に大きく劣る。故に他家との繋がりが強く、アーチボルトやエーデルフェルトとはクラムベルクが二代目のころから繋がっている」
「でもクラムベルクは前回はエーデルフェルトと、今回はアーチボルトと戦うんでしょう? それでも繋がりを保てるの?」
「保てるさ。基本的に御三家――アインツベルン・遠坂・間桐――以外はそこまで聖杯に執着はしていないんだよ」
「あれ? じゃあなんで参加しているの?」
「単純に武名を求めに。後は己の力量の証明かな」
事実ケイネスは聖杯戦争のことを自分の箔付けとしか考えていないからな。それはそれで構わないが、御三家の執着を舐めるのは危険だ。最悪ケイネスは今回で命を落とす。
「助けてあげないの?」
「まああんな
「……君ってホント正直だね」
「当たり前だろ。俺なんだから」
ほとんど理屈になっていないようなセリフだがそれで納得したようだ。こんなことで納得するあたり、やはり蒸発していると言われるだけはあるんだな。
「君も蒸発しててもおかしくないくらいお調子者だけどね。それで、どういった魔術を使うの?」
「
「他は?」
「ない」
「……………………え?」
「ない。クラムベルクは自己という存在を極めた先にこそ根源はあるという考えで、強化、弱化、定着化ということに関しては世界一と言っても過言ではない代わりにそれ以外は属性などに左右されず誰でも使えるものしか使えない」
「…………本当に偏屈で、地味だね」
「言うなよ。クラムベルクは歴史は長いのにそれで蛆虫どもに脳筋ってバカにされてるんだから。一応、魔術協会のロードなんだがな」
俺だってケイネスみたいに水銀操ってみたいなーって思う時はあるんだよ。でも出来ないんだよ。クラムベルクは全員そんなのだから。あ、でも戦闘能力は高いよガチで。一度埋葬機関と殺りあったことあるけど撃退したし。といってもこっちはボロボロで、目的の物をこっちが奪取したから戦う理由が無くなったからなんだけどね。あれから武術習い始めたんだよね。
「だからクラムベルクは全員大食漢で、
「出るのは遅いのにね」
「だから親父も昔はこのくらいは普通だったんだよ。クラムベルクが他より裕福なのもこういう事情があったからだ」
「(あ、スルーした)大体わかったけど――戦えるの?」
アストルフォが真剣な顔で聞いてくる。結局のところ本当に気になる点はそこだったらしい。理性が蒸発している、という文句は何度も聞いたが決してバカと言うわけでは無いらしいな。お調子者だが、確かに英雄だな。
「無論だ。身体能力なら本気を出せば――」
そこでアストルフォを見る。頭の中に広がるアストルフォのステータスは幸運を除いて軒並み低い。知名度次第では
まあその辺りの考察はともかく、何が言いたいかといえば。
「お前を身体能力という点でなら上回るのは、楽勝だな」
「……面と面を向かって言われるのは、ちょっと嫌だな」
拗ねたのか顔を背けて窓の景色を眺める。可愛い反応だな。少し腕を伸ばして小さな頭に手を置いて撫でてやる。うん、癒される。
――次は○○駅―、次は○○駅―。
「お、新しい駅か。駅弁買ってくる」
「まだ食べるんだ……」
「当然、うまいからな」
※※※
「さて、どのようなサーヴァントを召喚しようか……」
私こと、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは珍しく書物庫で調べ物をしている。魔術関連の書物ならばアーチボルト家の蔵書で済む話だが、今回は聖杯戦争で召喚する英霊に関すること。そうなると単純に書籍数が多い時計塔の方がいいだろうと思い参った次第だ。事実ここで見つけた書物の中にはかなり詳しい事が書いてあった。亡霊の類に関わる
「やはり召喚するなら三騎士――セイバーかアーチャー、ランサーだな。しかし……」
セイバーはローランが、アーチャーはトリスタンが、ランサーはディルムッドが。三騎士に適合するすべての英霊の触媒を持っているシンヴィルがいるし、御三家もこぞって狙うだろう。基本、英霊を触媒なしで呼ぶとまず相性のいい英霊が召喚される。無論私のように優秀な魔術師ならば、そこらの凡百の英霊でも十分な性能を発揮させることが可能だ。しかしそれは本当に危険な策だ。相性のみを厳選したため明らかに弱いサーヴァントでは並み程度しか発揮できぬ。
御三家も家中一の魔術師をマスターに立てるのは当然。加えて聖杯戦争で優先的に令呪が授けられるため、当然触媒は前もって強力な英霊の物を確保しているだろう。そこに触媒の買い占めという方法でさらにサーヴァントを絞り込ませるという方法を選んだシンヴェル。意図はともかく、御三家も触媒を買い占めている彼の動きを察した以上、似たような事をしていてもおかしくなく、出回っている英霊の触媒は数は当然、質も良い物はないだろう。
「(しかし、時計塔にも触媒はあるし、最悪アーチボルト家のコネクションを辿れば……)」
時計塔講師の私ならば持ち出すことはおそらく不可能だが、召喚のため一時的に借りることは容易い。そして九代続く名門中の名門、アーチボルト家ならば優先的に買い付けることも可能である。
「ケイネス様、ゲオルギウスは如何でしょうか。極東でもそれなりの知名度があるはずです」
「ふむ…………いやダメだ。シンヴェルの工房で既に発見した。視野に入れておくがやはり避けたい」
「はぁ……」
触媒を用意したからといって確実に得たいサーヴァントが得られるわけでは無い。例えば、かのアーサー王を呼ぶために彼が騎士たちと共に語り合った円卓を触媒に使ったとしよう。その時召喚されるのはアーサー王が召喚される可能性が高いがそれは何百分の一が十三分の一――文献で相違があるが時計塔では円卓の騎士は十二人と定めている――に変わるだけだ。しかも触媒に該当する英霊のクラスが埋まっている場合は、触媒は意味なく、相性で決められる。つまるところ触媒はあくまで絞り込みなのだ。無論、一人の英霊にしか関わりが無い触媒であるなら間違いなく狙った通りの英霊が呼べるがそんなものは多くない。ましてそれが世界的に知名度が高く強力な英霊であるならなおさらである。
しかもそういう物に限ってシンヴェルがこぞって買い占めた為、三騎士に該当するものはもうないと言っても過言ではないだろう。
「となると、バーサーカーか」
「は?」
「バーサーカーだ。バーサーカーに適性のあるサーヴァントを探してくれ」
「はい!」
バーサーカーにすればいかに弱い英霊でも狂化されることで強く出来る。そして私ほどの優秀な魔道師ならばさらに強化できる。今までのバーサーカーのマスターたちは魔力を使いすぎて自滅したらしいがこのケイネス・エルメロイ・アーチボルトがそのような失敗を犯すはずが無い。それにアーチボルト家には私専用の、一級の魔力炉が三器もある。自滅はまずないだろう。
ちなみに先程から手伝っているのは私の生徒たちだ。他にも来ている者がいるがほとんどは家の歴史に胡坐をかいたボンクラか、媚を売ろうとする下賤なものでしかないため数えていない。
「いっそのことクラムベルクの工房からとってきたらどうですかね」
「お、いいなそれ。どうせ強化しか使えないような魔術師だし、工房の備えもたかが知れてるな」
「そういやあの脳筋も聖杯戦争に参加するんだって? じゃあ俺も参戦できるかな」
「御三家含めても後二人、参戦できるんだし」
実際奴らは私の調べ物の手伝いなどせず下種染みた事を言っている始末である。魔術師としての技量も並み程度のこのような者どもが、この時計塔に足を踏み入れる資格などないに等しい。権威主義は構わんが色眼鏡をつけず、真に招き入れる資格がある者だけを厳選してほしいものだ。
このような連中がこの時計塔を、しいては自らの家の名を腐らせている自覚が少しでもあればいいのだが。
※※※
「……色眼鏡つけているのはあんたも一緒だろ」
ウェイバー・ベルベッドは資料に目を走らせるケイネスの耳に入らない小さな声でそう呟いた。真に招き入れる資格云々はウェイバーも納得できるが色眼鏡という点において、積み重ねた歴史の浅いものをバカにするのはケイネスも一緒である。事実ウェイバーはケイネスに貶されたことは一度や二度ではない。講義でわからないことを質問するたびに『この程度の事も分からないのか』と鼻で笑われたこともある。
ちなみにこれはウェイバーに限ったことではなく、彼同様に歴史の浅い魔術師にも、歴史があってもダメな魔術師にも経験があることなのだがそれを彼が知る機会はなかった。
そんなケイネスが嫌いなウェイバー・ベルベットが何故、ケイネスの事を手伝っているのかというと、大成するにはどうすればいいだろう、と書物庫で考えている最中ケイネス――正確にはその取り巻きに強制的に手伝わされたのだ。その際『聖杯戦争』という単語を聞いてそれらを調べ、参戦する決意を示しケイネス同様、自分が召喚する英霊の厳選をしているのだ。事実ウェイバーはケイネスが発言した『バーサーカーに適性のある英霊』についてなど頓着もしていない。
「(でも、たとえ調べても僕程度の家じゃ、触媒なんて手に入らないよな……)」
ベルベット家はまだ三代と、魔術師としての歴史はとても浅い。故にさほど財産に蓄えがあるわけがなく、魔術の世界でも繋がりは少ない。故に触媒など望むべくもなく、得られるものではない為、このようなことは本質的には無意味なのだ。
「(する意味もないし、降霊の魔術でも練習するか……)」
ちょうどウェイバーに手伝いを強制させていた魔術師も出て行った為、ウェイバーもそれに続いていく。そしてその何気ない行動が彼を聖杯戦争へと誘ったのだ。
※※※
僕も小さい頃はマンガや小説のヒーローという存在に憧れていた。運命に恵まれた存在ってやつに。勇気があって、力があって、世界に選ばれている。そういう存在に。でも十歳にもなるとそんなものは偶像だと気付いて、その頃になると跡継ぎとして魔術に勤しんで、魔術の才能を認めさせようとしていた。その時の僕はきっと死ぬまで同じようなことをやって、同じことを子に受け継がせるんだな、って思っていた。時計塔に入れた今もそのことは変わらないって、思っていた。
そう、思っていたんだ。
最初の転機は、書物庫を出てすぐの事だ。管財課の配達員の一人が僕にシンヴェル先生の荷物を渡してきたのだ。何でも『講師連中がいるような地下には危なくていけない』と。実際下の方では放し飼いにされた悪霊もいるし、酷い時など身の丈に合わぬ悪魔やキメラを作って使い魔に出来ず、工房を抜け出したのが暴れ回って大騒ぎになったこともあった。そのあたりの事を考えて、『僕なら犠牲になってもいいのかよ』と言ってやりたくもあったが、先生に聖杯戦争に関して聞きたかったので了承した。
次の転機は、シンヴェル先生は
そして最後の転機、僕がそれを部屋に入った直後に落としてしまったこと。その際に鋭い音が響いて、僕は中の物が割れたんじゃないかと思い中身を確認した。正直勝手に空けるなんて、悪い事をしたとは思うがそれもある意味運命だったのだろう。中身は触媒だった。ご丁寧に同封された書類に書いてあったことを掻い摘んで話すと『誤った触媒を売ってしまったお詫びにこれを差し上げます』ということだった。触媒の英霊には聞き覚えが無かったが、手に入る余地のなかった触媒を手に入れた僕はその日のうちに時計塔を出て日本へ向かった――聖杯戦争に参加するために。
※※※
「参ったな……。聖杯戦争まであと少しだというのに、英雄王の触媒の所在が知れないとは……」
『聖堂教会の方でも秘密裏に探索はさせているが……』
暗く狭い。それが普通の魔術師の工房で、遠坂時臣はターンテーブルと針の代わりに大粒の宝石を垂らした蓄音機と向き合い、その蓄音機から発せられる声と対話していた。相手は言峰璃正――第四次聖杯戦争の監督役である。中立の立場でいなければならない監督役がマスターである時臣と接触するなど、当然タブーである。
しかしこのことは璃正は当然、聖堂教会すらも関与していることだ。聖堂教会はここ『冬木の聖杯』を神の血を受け止めた『本物の聖杯』でない以上、聖杯戦争へ関与する気がない。それを監督役と言うマスターでもない、あくまで中立者の進行役を据えることで示している。しかしそれは『冬木の聖杯』がどうなってもいい、というわけでは無い。もし聖杯を聖堂教会に仇なすものが聖杯を手に入れようとしても聖堂教会にはそれを止める術がない。かといってそのような事態を容認できるはずもないわけである。故に聖堂教会は聖杯を託すに
聖堂教会は魔術師の根源へいたるという渇望に関して、興味を全く示していない。そして時臣はこの聖杯戦争で唯一というべきであろう、根源を目指す真正の魔術師であった。聖堂教会としてはそんな願望のために万能の釜を使い捨ててくれる者がいるなら、是非とも取ってもらいたいところである
「一応、万が一に備えて代わりの触媒は手に入れたが、やはり英雄王と比べると些か格が落ちる」
『……綺礼にサーヴァントを召喚させないで正解でしたね』
「ええ。まさかこんなことになるとは思っていなかったが……幸いだった」
本来、綺礼にはアサシンを召喚させて諜報に徹するようにするつもりだったが、その段階で英雄王の聖遺物が見つからないという報告を受けて様子見にしておくつもりだったが、今の状態では諜報ではなく、積極的に戦わせ、援護させる方針に変更する必要がある。
『綺礼への触媒はあれで?』
「ええ、例のサーヴァントを」
『…………』
この老神父にしては珍しく歯切れが悪い。無理もないだろう、なぜなら綺礼が召喚するサーヴァントは
「苦労をおかけします」
『いや、時臣君が謝ることではない』
「一応、こちらも限界までは待ちますが……」
『今から見つけても、おそらく間に合わないでしょう……』
「その確率の方が高いですね……」
遠坂家には代々『うっかり』という呪いがある。完璧な計画であろうと
故に、今回のミスも何かうっかりしてやらかしたのだろうかと思わずにはいられなかった。
時臣はこれが凛にも、そして桜にも継がれているのだろうか、と不安に思った。
※※※
アインツベルンの礼拝堂の中、凍りついた滝を思わせる白髭の老人が執念を燃やしながら二人を見やる。
「かねてよりコーンウォールで探索させていた聖遺物はついに見つからなかった。しかし、同じ英霊を呼べる可能性が高い聖遺物の入手に成功した」
厳かな声と共に手で示された祭壇の上には槍があった。恐らくかなり古い、しかし一切の汚れが見受けられない神聖な槍。それを見てアイリスフィールはおろか、切嗣までもが驚愕する。
「これは――!」
「セイバーとして召喚することは叶わぬし、確実に召喚できる自信もないが、強力なサーヴァントを得ることは間違いないだろう。これを触媒に英霊を呼び出し、六名のサーヴァントとマスターを蹴散らし、必ずや第三魔法
そう言い放ち、アハト翁は返事を聞かずに背を向ける。目に見えてわかる不機嫌さは、目的の聖遺物が手に入らなかったことに対する心情を如実に示していた。
「これって、間違いなく……」
「ああ――ロンギヌスだろう」
ロンギヌス――イエス・キリストを刺した聖槍であり、聖堂教会が躍起になって手に入れようとする聖遺物である。確かにこれを使えば強力な英霊を呼び出すことが出来るだろう。
「しかし、ご老人も大変無茶をする」
「ええ、こんなこと聖堂教会に知れたら……」
「間違いなく、代行者や埋葬機関、果てには聖堂騎士も連れて攻めてくるだろう」
切嗣の言葉にアイリスフィールが震える。実際に彼らを見たことがない彼女ですらこれだ。切嗣も内心では穏やかではないだろう。もしこのことが漏れれば聖杯戦争どころではないし、この城にいるものは皆殺しになるだろう――愛しい我が子、イリヤスフィールも含めて。
「あの老人の事だ。おそらく抜かりはないだろうが……」
やはり切嗣も歯切れが悪かった。やはり不安が残るのだろう。自分たちが聖杯戦争に赴いている間にアインツベルンが倒れ、イリヤが殺されるようなことがあれば……そう思うと竦んでしまいそうになる。
「大丈夫よ。きっと……」
そう言うアイリスフィールの言葉には何の意味もないが、
「……ああ。そうだな」
少なくとも、その一言で切嗣は立て直し、聖槍を手に取って私室へ向かう。
※※※
「さて、結論から言うとおそらくこれではアーサー王を呼ぶことは不可能だろう。だが明らかに弱いサーヴァントを掴まされる可能性はこれで無くなった」
「ええ。例え呼び出した英霊が弱くてもロンギヌス事態、知名度としては世界最高峰だから、英霊もそれに釣られるように知名度の補正を受けるはずだわ」
「僕としては正直、騎士王のような高潔な英霊を引かされるよりは幾ばくかマシだったね――なんだ、もう届いていたのか」
そう言う切嗣の目の前にはラップトップ式のコンピューターがあった。電子メールのページを開き報告書を表示させた。アイリスフィールは夫から懇切丁寧な説明を受けたが結局、画面に映っている文字しか理解できていない状態だ。
「判明したのは五名、上々だな。遠坂からは当主の遠坂時臣が、間桐からは落伍者を無理やり底上げしてマスターに仕立てたのか。外来は時計塔から二人、降霊科講師のロード、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトに存在科講師のロードにして執行者の、シンヴェル・ストルフォス・クラムベルクか。どちらも名門中の名門か、厄介なものだ。聖堂教会からは派遣が一人、言峰綺礼。…………間違いなく、遠坂と繋がっているな」
「え? どうして……?」
最後の一人の調査内容に軽く目を通してそう断ずる切嗣にアイリスフィールが疑問を示す。画面から読み取るのに慣れていないため少々遅れて、同じように目を通すが特におかしなところはない。
「こいつの父親――言峰璃正だが今度の聖杯戦争の監督役で、こっちの情報も調べてある。こいつは遠坂時臣と親交があるそうだ」
そう言って横からプリントアウトされた資料を差し出される。そこには確かに書かれていた。しかもそれは先代――第三次聖杯戦争以前からである。
「それからここ、『三年前から遠坂時臣に師事し、その後に令呪を授かったことで師と決裂』と書かれている」
「それは……魔術師なら普通じゃないかしら」
「こいつは魔術師じゃない。あくまで聖堂教会の代行者だ」
あ、とアイリスフィールが口にする。ここが盲点だったらしい。聖杯のために裏切るなんて考え、聖職者の言峰綺礼では思いつくはずがない。
「それじゃあ、一番危険なのは遠坂時臣と言峰綺礼の二人だけ?」
「いや、言峰綺礼だけだ。間桐の急増マスターは問題ないし、遠坂やアーチボルトの当主は確かに強いが恐ろしくはない」
「クラムベルクの方は?」
「彼とは一度共闘したことがある。驚異の身体能力を誇っていたが技術の方が稚拙だった。無論、今はそんなことないらしいがやりようはある」
「…………クラムベルクの方が言峰綺礼よりも厄介じゃないかしら」
身体能力という点ならばたとえ凄腕の代行者だろうと肉体戦闘を主としてきたクラムベルクには劣るだろと、アイリスフィールは考えていた。
「確かに単純に身体能力という点では言峰綺礼よりクラムベルクの方が強いが、やはり言峰綺礼が一番危険だ」
そう言い放つ彼の背中は、とても小さく見えた。まるで震える子供のように。実際、彼は理性だけが誰よりも現実を見据えている大人で、心はきっと子供のままなのだろう。
アイリスフィールにその不安を取り除く術はない。
「――大丈夫、あなたは絶対勝てるわ」
だが、それを一時的に忘れさせることは出来た。切嗣の小さく震える背中をそっと抱きしめる。彼女にはそれしかできない。でもそれが、それだけが妻の役割なのだと思っていた。
※※※
弁当が三ケタに、酒が五リットルを超えたあたりでさすがに自重した。今は手に入れた資料に目を通しているところである。諜報員を各地に送って探らせたものでマスターの情報が記されている。判明したのはケイネスを抜いて三人。アインツベルンはさすがに探れなかったそうだ。
「――遠坂時臣に間桐雁夜。そして――言峰綺礼か」
「知り合い?」
意を込めた発言の真意をくみ取り聞いてくるアストルフォ。先ほどまで拗ねていたが今はそんな様子もなく普通に振る舞っている。
「以前執行者の仕事で殺し合ったことがある。何か拳法を使う相手で苦戦を強いられたよ。今はもう負ける気はしないがな」
「ふーん。それだけ?」
「いや、それだけなら記憶には残していない。俺が気になったのはこの男の在り方でな。この男、まるで何にも関心がないように感じたんだよ」
「何にも? 信仰心も?」
「ああ、おそらく信仰心もだ。この男は何に対しても他人事で、興味が無いんだよ。恐らく感情と言う物がかなり希薄なんだろう。空虚だな」
「本当に何も、か。結構危険そうだね」
俺はそれに大きく首肯した。
「こういった輩は本当に危険だ――こりゃあケイネス、放っておいたら確実に死ぬな」
魔術の腕は俺より、言峰綺礼より格段にケイネスのほうが上だ。しかし戦争は単純な優劣で決まる物はないのだ。機運に戦況、疲労状態や予想だにしない奇襲。そう言ったものに全く縁のないケイネスでは勝ち抜くことは絶対に無理だろう。
「仕方がない。適当な理由付けて早い段階で同盟組んでやるか」
「大変だね」
「全くだよ」
座ってばかりで体がなまって来たので全身を軽く揉み解して立ち上がる。そしてアストルフォに言ってのけた。――さて、一発やりますか、と。
「また!? もうこれで四回目だよ!?」
「さっき言っただろ、勃つのが早いって」
駄々をこねるアストルフォを連れて再び出ようとしたところで誰もいないことに気づき、その場でプレイに入ることにした。
お気軽に感想どうぞ!
※オリジナル設定
分類:魔術
オリジナルで作った魔術。読んで字の如く相手や物を弱くする。筋力でも頭の回転速度でも神経の伝達速度でも。ただし対象には触れていることが条件。初歩的な魔術だがクラムベルクはこの魔術の練度がきわめて高く、対魔力がC以上ないと防ぐことが不可能である。
分類:魔術
弱化同様、オリジナル魔術。こちらも読んで字の如く物体の状態や身体情報を留めさせる。
例えば新聞紙に定着化をかけたまま水の中に入れても新聞紙は濡れず、かけたときと同じ状態を保つ。
例えば人に定着化をかけ続ければその人は成長すること排泄することも、傷つくことも、老いることもなく過ごすことができる。ただし定着化も触れていることが条件で、他人にかければ確かに不老不死の様な状態になるが保てなくなるほどのダメージを受ければ解けるし、魔力量も保とうとするので生産されず、魔力を使うこともできない。
自分に定着化をかけようとしても魔力量を保とうとするため極々一瞬しかできない。
こちらも対魔力がC以上ないと防ぐことが不可能である。
>文献で相違があるが時計塔では円卓の騎士は十二人と定めている
分類:時計塔・歴史関連
こちらもオリジナル。史実では円卓は300とも言われている。
「300人座れる円卓とかどんだけだよ!」と調べて思ったがマーリンの魔術云々のくだりで納得しましたw
>触媒に該当する英霊のクラスが埋まっている場合は、触媒は意味なく、相性で決められる
分類:自己解釈
なるべく同じ地域の英霊が召喚されるであろうが、基本的にはそういう認識で通します。
分類:時計塔・科目
作中で語る通り、物質の存在の根底について探究する科。ウェイバーの言うとおりかなりためになる。ケイネスの水銀然り、切嗣の起源然り、時臣の宝石然り。物質を深く知ることでその特徴を把握し、己にあった礼装を作るなど、適当ではなくガチで重要な科目だったりする。でも人気が低い。やっぱり地味だからね。
>死体を降霊科の狂人どもに売り飛ばしているだろうから
分類:時計塔・道徳
時計塔は地下に行けば行くほど頭のおかしい魔術厨が跋扈しています。そういった輩には名門のボンクラの遺体から魔術回路を取り出して自分に移植したり、生贄に何かを召喚したりとするために結構な値段で買ってくれます。
>死んでる三人みたいに盗りに来る連中がくるかもしれないので
分類:時計塔・道徳
研究熱心な彼らは自分の研究は教えない癖に他人のものは為になるなら奪います。その為大抵の人は工房の入り口に魔術的な防犯(と書いての殺人と読む)魔術をかけておきます。
>彼とは一度共闘したことがある
分類:対人関係
執行者の仕事で組んだことがある。切嗣からすればナタリアや舞弥を除けば誰かと共闘するのは極めて稀なので覚えていた。共闘と言っても大したことはしていない。
>以前執行者の仕事で殺し合ったことがある。
分類:対人関係
一応聖堂教会とは不可侵(笑)してるけど邪魔になるなら普通に殺し合います。