俺とアストルフォの第四次聖杯戦争   作:裸エプロン閣下

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やっぱFate系って書いてるだけでも楽しいね。
ところで久々にFate/EXTRAやってたらモードレッドが
一回戦:盗賊王(みんな大好き? 元野盗将軍。王じゃねえけど)&シンジ
二回戦:神聖王(ローマ建国の王。伝説上だが)&ダン
三回戦:狂乱王(君が、死ぬまで、戦うのを、やめないっ! な被害者王)&ランルー
四回戦:魔導王(民草を統べるための知恵求めながら財政破たんさせた人)&?
五回戦:征服王(彼方にこそ栄え在り!)&葛っ木ー
六回戦:騎士王(言うまでもない)&少年王
七回戦:英雄王(愉悦っ!)&?
な面々と戦って王様として成長していくっていう話考えてましたw
ていうかぶっちゃけEXTRAのほうが戦略とかあんま考える必要ないから楽だったな。
※4話、セイバーの[激情]のランクをAからCに変えました。



ひきょうって何? 合戦に卑怯も武士道もないでしょ。 by切嗣

 セイバーのマスターはおそらく遠坂だろうな。あのステータスは他のマスターでは叩きだせないだろう。未確認の一人が名の売れた魔術師という話は聞かないし十中八九間違いない。触媒は俺が持っていたが何もオルファン一つではない。遠坂ほどの名家ならば簡単に取り寄せれるだろう。例えば……ローランが理性を失った際に脱いだ服とか。

 

 ローラン――フランスのシャルルマーニュ十二勇士の筆頭で聖剣デュランダルの担い手。『ローランの歌』『恋するオルランド』『狂えるオルランド』などの武勲詩で名を売る国民的大英雄で欧州にはローランの像がいくつもある。知名度に関しては世界的に知られているだろう。

 

「(そんな大英雄が……あれ?)」

「(うん……あれが)」

 

 罵詈荘厳を叩きながらアーチャーを追い詰める銀の剣士。表情はぶっ殺すと言わんばかりに目を見開いており、正直バーサーカーと言われても信じれそうだ。

 

「(……確かにこんなんだったら女のために祖国の帰還命令無視したり、女を取り合って同じパラディンと戦ったり、女にフラれて全裸で走り回ってもおかしくないな)」

「(あー…………うん)」

「(ローラン、というより十二勇士たちって度々どっか行くけどお前らなんで騎士になったの?)」

「(ほ、ほらっ、騎士っていったら一騎討ちだし、主君に仕えてこそ……)」

「(いや祖国の危機に女追いかけたり旅してるやつが主君に仕える必要ないし、傭兵やれよお前ら)」

「(……傭兵は、華がないじゃん)」

「(……おまえら騎士舐めてんだろ)」

 

 

 ※※※

 

 

「………………………………まずいな」

『………………………………まずいですね』

 

 遠坂時臣は工房で、言峰綺礼は借家――マスターが教会に居ついている訳にはいかない――で深いため息をついた。原因は自分たちのサーヴァントのことである。裏を明かすとセイバーのマスターは時臣で、アーチャーのマスターは時臣を補佐する言峰綺礼なのだ。だというのに何故このような事態になったかというと、相性が問題だった。

 アーチャーは召喚された場所が教会だと知ると、最低限の言葉を交わしただけで一方的に経路(ライン)を切り、どこかへ行ってしまった。そのため、言峰にはアーチャーの位置を把握できず、碌な交流もできなかったのだ。

 当初時臣はアーチャーを偵察に使い隙をついてサーヴァントたちを排除し、厄介な相手はセイバーで倒すというありきたり故に勝算の高い戦法で行くつもりだった。が、アーチャーがこちらの命令を聞こうとしない以上、この方針を排してセイバーを終盤まで温存する作戦で行くつもりだった。

ちなみにアーチャーにもセイバーにも同盟に関する話はしていない。アーチャーは己が捨て駒と知れば言峰を殺し時臣も殺しに行くことが分かっていたから。セイバーは口を滑らしそうで危なっかしい。

 しかし結果はご覧のとおり。温存しておくセイバーは勝手に外へ出歩き、あまつさえ有効利用するアーチャーと勝手に戦闘を始める始末となり、当初の予定は最初から破綻した。しかもアーチャーと違い[単独行動]を備えていないセイバーはここ遠坂邸から離れすぎたため、ランクに影響はないもののステータスが下がっている。アーチャーと戦う分には問題ないがバーサーカーやランサー相手には無理があり、最悪討たれる可能性も無くはない。

 

「令呪でアーチャーを止められないか? ローランは対魔力が高いため一つでは到底足りない」

『難しいでしょう。アーチャーも本人はBとはいえど宝具がA相当の[対魔力]を持っています。あくまで[対魔力]を持つのは外套ですが……』

「令呪を防ぐかもしれない、か……。仕方ない、しばらくは様子見だ」

『よろしいのですか?』

「それしかない……隙があったら令呪を使ってでも戻しておいてくれ」

 

 なぜこうなったのだろう。時臣は考える。英雄王を召喚するつもりだったが触媒は見つからず、綺礼に召喚させたサーヴァントは想像以上に扱いにくく、自分が召喚したサーヴァントは確かにステータスこそ最上位だがあまりにも猪武者で正直手におえない。

 頭を抱えて苦悩する。これならば性格が良いサーヴァントを選べばよかったと、心底後悔する。

 

 

※※※

 

 

「どうしたオラァ! 逃げんじゃねえよこの臆病者!」

「頭に乗り過ぎだぞ愚民っ!! この俺に対する不敬、万死に値する!」

 

 セイバーが黄金の柄の剣――デュランダルを振るう。対するアーチャーは先ほどのバーサーカー戦とは違い、しきりに距離をとって近づけさせないよう牽制を放つ。何しろ先ほどのバーサーカーと違い、セイバーは技量もステータスもアーチャーより高い。下手な立ち回りをすればその場で切り伏せられるだろう。

 

 加えてバーサーカー、セイバーと連戦しているアーチャーはセイバーよりも疲労が激しい。加えて先ほどのバーサーカーの様に一方的に攻められるのだから、なお性質が悪い。遠距離からの狙撃に優れたアーチャーが序盤から倒れるのであれば僥倖、宝具の類を発動して真名の手がかりだけでも残してほしい所だ。

 

「しゃおらぁ!」

「チィ!!」

 

 高速の踏込と共に右腕を切り飛ばそうと振るわれた豪剣をバックステップで避け動きを止めようと足を狙い、三矢放つがやはり切り払われ、アーチャーは不快さに盛大な舌打ちをする。

 

「挑発しといて逃げるだけかよ。恥ずかしい奴だなぁ」

「く、抜かせ。一度も当てれない愚民が何を得意げになっている」

 

 ひとしきり攻めたてて――一つも当たっていないが――スッキリしたのかようやく落ち着いたのかセイバーが剣を納める。その後もアーチャーはセイバーからは決して目線を逸らさず、少しずつ距離を取っていく。対するセイバーは気は抜かないものの既にアーチャーに関心がないらしく、今更になって辺りを見渡し状況把握をする。やはりローランは向こう見ずな性格らしい。こいつのマスターは心労が絶えんだろうと思いながらアストルフォに俺の背中に回るように促す。アストルフォが知っているなら当然ローランも知っているはずだ。

 しかし――それともやはりというべきか――アストルフォはそれを察せず普通に手を振り、ローランが喜色満面になってこちらに歩み寄ってくる。

 

「おお! お前も来てたのかア「その比類なき剣技、あなたがセイバーで?」……ああそうだ。俺がセイバーだ。で、お前はなんだよ」

「俺はライダー(・・・・)のマスター、シンヴェル・ストルフォス・クラムベルクだ」

 

 喜色満面でアストルフォに話しかけていたセイバーに水を差すとあからさまに不満な顔をこちらに見せてくる。しかし人のサーヴァントを真名で呼ぶなど……相手はもちろん、自分の生前の知り合いです、ってばらすようなものだぞこいつ。これで確実に遠坂にばれたが、今は他の奴等にもばれなかっただけましと思おう。やり取りでばれている気もしなくはないが……。

 

「やっほー、久しぶり」

「本当に久しぶりだな! だが……」

 

 そして仲良く談笑する二人。てかアストルフォ、先のランサーといいセイバーといい、なんでお前そんなに気楽に談笑できるの?

 

「……お前……」

「うん?」

「…………………………女、だったっけ……?」

「あー……これは、その……」

 

 ローランが胸を見ながら問いかけ、ひどく困惑するアストルフォ。

 そう言えば史実のアストルフォは男だったな。元が男なんて、抱くとき微塵も意識していなかったからすっかり忘れてたよ。あの柔らかい胸とか、いい匂いのする髪とかもう絶対女だと思うよ、元から。だけど男だと知ってた連中からすれば、そりゃ驚くだろうけど。それにしたって……なんか目がやばいんだがローランオイ。お前も騎士なら優雅たれよ。てかガン見止めろガン見、お前はアーチャー見てろよ。

と思ったら不機嫌極まりない顔でアーチャーが消えていっている。おそらくマスターが強制的に呼び戻したのだろう。

 

「オイセイバー。アーチャーが逃げたぞ」

「フーン。良かったな時臣、向こうが引いてくれたぞ!」

 

 中空に向かって誇らしげに叫ぶローラン。やはりこいつバカだ。遠坂がマスターってことと念話してたことばらしたよ。台詞から察するに遠坂はなるべくセイバーの消耗を最低限に抑えたいという事か。それはともかく、身を屈めてアストルフォを見つめるローランは……なんというかムカツク。アストルフォもなんら気にした様子がないのもイラついたので俺はアストルフォをこちらに引っ張る。既にアーチャーも居ない以上、これ以上長居する意味はない。

なのだが、こちらを睨んでくるローランが何か言いたいことがあるらしい。

 

「なんなんだセイバー。言いたいことでもあるのか」

「……お前はそいつの何だっ」

 

 話そうとしないのでこちらから聞いてやると、表情を先ほどのアーチャーの時と同等、いやそれ以上の激情で染め、こちらに一歩寄せてくるローラン。距離は一メートル程度、下手に動けば今にも襟首に掴み掛ろうとしてきそうだ。しかし俺はそんなことよりもこのローランの態度が気になった。これはもはや同郷という理由だけでは収まらないだろう。俺は観察力と思考速度を強化してその理由を探し出す。

 

「……なーるほど」

「……何がだよ」

 

 理由はすぐに分かった。おそらくローランはアストルフォに見とれているのだ。無理もない、男でも色を覚えるほどの美男子だったからな。だがフランスでは同性愛は犯罪だ。そして今は女だから色を覚えても全く問題ない。元よりフランスの騎士は女と見れば助けたり魅了せずにはいられないし。(超偏見)

 

「いや、別に」

 

 さりげなく右隣に立っているアストルフォの頭を撫でると、アストルフォはくすぐったそうな顔をして、ローランは歯を軋ませる。ほぼ確定と言っていいだろう。

 

「俺にとって彼女が何なのか、答えてあげよう。行動でね」

 

 俺は身体を屈ませて、撫でていた手を顎に添え、顔を上げて俺は――キスをした。

 

「な――ッ!」「あらっ」「ほぉ……」『はぁ……』

 

 その場にいた全員が仰天する。ローラン以外にもアインツベルンやケイネスが見ているが知ったことではない。俺はすぐさま舌を絡ませて蕩けさせる。普段はこんなに急いたことはせずにゆっくり楽しむのだが、今は見せつけることを目的としているため、ペースを速める。

 

「ふぁ、ちょっと……待っ、て……」

 

 息を次がせる暇も与えずに口内を蹂躙する。空いている左手を足の間に入れて(ねぶ)るように動かす。急に行為に入った俺たちに、周りは怒りで顔を赤くしたり、突然の行動で驚きを隠せなかったり、この場で行為に入ったことに瞠目したり、ぶれない俺の振る舞いに飽きれたり、と色々な反応をするが見ていることしか出来ないという点は皆一緒だった。そうして数分ほどしてアストルフォが打ち震え出したのでペースはそのままだが、より一層深く繋がるようにして一気に達させる。

 

「ンン――――ッ!」

 

 口内で舌を絡ませたままアストルフォは大きく痙攣する。震えが収まったところで顔を離すと絡ませていた舌が艶めかしい銀の橋を作る。橋が切れた後は濡れた左手の指を恍惚とした顔をするアストルフォの前に突きだし、舐めさせる。蕩けた表情で、上目づかいで、舌を絡ませるように指を舐める姿にこの場で抱きたくなるが自制する。

 

「さて、これで理解できたかな?」

「――――――――」

 

 再び数分、ようやく落ち着きを取り戻した皆に向かって投げかけた言葉だが、一番聞かせたかった男は未だに放心としている。少々衝撃が大きすぎたかと思ったが、どうやら怒りに打ち震えているだけらしい。蕩けたアストルフォではあれなので全身を強化して待機する。

 

 

 ※※※

 

 

 今のシンヴェルの一連の行動で、過ちは三つある。

 第一に、サーヴァントという存在を舐めたことだ。本人にその気はなくとも、心の奥底では確かにそう言った感情があった。シンヴェルの優れた強化能力はマスターでありながら弱いサーヴァントとも戦える強さを誇っており、彼が召喚したサーヴァントはアストルフォ。戦闘に向いた英霊ではなく、ステータスも低い。それがサーヴァントに対する楽観となった。加えてセイバーの敏捷のランクはBで、先ほど同程度の敏捷のバーサーカーとアーチャーの戦闘を見て目がそれなりに慣れており防げる自信があった。

 

 第二に、冷静さを少々失ったこと。普段の彼ならばわざわざ行為に入ることなく、キス程度で済ませたものだが、あえて軽度だが行為に入ってしまったこと。確かにこの挑発でローランは大きく動揺したが、させ過ぎたのだ。マスターにはステータスが見えるが一度も見ていない固有スキルまで見えるわけでは無いのだ。その為伝承で語られたローランの激情を見逃し、敏捷A+のバーサーカーが何故アーチャーとの戦闘ではBランク程度の動きしかできなかったのかにも気づけなかった。

 

 そして最後、こればかりはしょうがない。ローランがただアストルフォに見とれていると勘違いしたこと。アストルフォは彼が令呪を使用する前から女らしい髪飾りをしていて、その理由を『傷心のオルランド(・・・・・)の狂乱を鎮めるための不可抗力の友情の証』とのことだがなぜそんなことを(・・・・・・・・)する必要(・・・・)があった(・・・・)のだろうか。(・・・・・・)伝承ではローランは鼻から理性を注入されて戻った、と語られているが、それが過ちだったとしたらどうだろう。そもそも理性が戻ったところで結局失恋の痛みは消えていないのだ。

ここで話を少し変えるが、傷心を癒すのに一番手っ取り早い方法とはいったいなんだろうか。相手の事を忘れるというのもそうだが、一番は『新しい恋をする』ことではないだろうか。理性を注入したときに彼が元に戻ったということは、理性が戻ると同時に新しい恋を見つけたという事だろう。

 

 長々と語ってしまったので簡単にいうと、ローランは鼻から理性を注入されると同時にアストルフォ(・・・・・・)に恋をした(・・・・・)のである。

さて、ここで問題だが『女のために祖国の帰還命令無視したり、女を取り合って同じパラディンと戦ったり、女にフラれて全裸で走り回る』男の激情が生半可なものなのか。

答えは当然、そんなわけが無くスキル[激情]によって[狂化]したオルランド(・・・・・)は狂気に身を任せ憎き男を切り伏せようと猛威を振るう。

 

 

※※※

 

 

 ――予想より早い、と思った時にはすでにローランは眼前にいた。対応できない速度で振り下ろされたデュランダル、全身に強化を掛けていようとすべてを切り伏せるこの聖剣の前には無意味。避けるのも無理、カウンターなんてもっと無理だ。今の俺に出来るのは冷や汗をかきながら聖剣を観察する程度。聖剣が当たるまでの数瞬、昔を思い返すが小さい頃は訓練ばかりで、十二歳になってからは女を抱いた記憶ばかりで、最近のものだとケイネスをからかったり触媒集めたりしてた記憶ばかりだ。とりあえずこの戦いが終わったら走馬灯を見る時のため、もうちょっと楽しい思い出を作ろうと顔面を(・・・)バーサーカーに(・・・・・・・)殴られる(・・・・)オルランドを(・・・・・・)見ながら(・・・・)思った。

 

 刹那の記憶回想を終えると同時にオルランドが音速を超えてコンテナを五、六個壊しながら吹き飛んでいく。

 

「助かったよケイネス」

『例には及ばん。それに私は言ったはずだぞ、“互いの神秘をぶつけ合うその時を楽しみにしている”とな』

「……ああ、そうだったな」

 

 すまん、忘れていた。いやだって、そんな機会が訪れるとは中々思わんよ。これ戦争だよ。横やり万歳ハイエナ万歳奇襲万歳だしこれ。今のもそうだし。

 礼装の袖で冷や汗を拭いながらオルランドが吹き飛ばされた方角を見やると、既にオルランドはいなかった。セイバーを温存したかった遠坂にとってはこれ以上のダメージは避けたいだろうし。

 

 消えたローランから未だ無傷のアインツベルン陣営へ視線を移す。この場に集まった中で唯一如何なる戦闘にも巻き込まれていない。

 

「ここらで軽く競ってみるかい。他の組も軽く矛を交えたようだし」

 

 そう言いランサーが槍――ではなく双剣を虚空から取り出してこちらを挑発する。先ほど見た時少々陰のあった顔つきはもはや微塵もなく、ただ闘争を好む強者の顔があった。

 

「いや、遠慮しておくよ。先ほどので胆が冷えたからね」

 

 右手を肘より少し上に上げ、軽く流す。少しでもここでやる気にさせるような真似は避けたい。アストルフォも未だに蕩けてるし。好戦的だが無謀ではない。

 

「……まあ、そんな状態の奴と戦っても楽しみは薄いし……。バーサーカーとやってもいいんだけど、」

「それはだめよ」

 

 バーサーカーを見つめるランサーにアイリスフィールがやんわりと否を示す。ランサーも分かっていたようにへいへい、と頭を掻いて軽口をたたく。

 

「…………てことだし、今日は帰らせてもらうか。次に会う時を楽しみにさせてもらうぜ」

 

 背を向けて去るランサー、先ほどまで紳士風だった彼の型はもはや完全にこそげ落ちていた。おそらくこっちが地なのだろう。色のセンスにあの闘気、間違いないだろう。どうやら今回の聖杯戦争は今までよりもかなり苛烈になりそうだ。

 

「あ、そうだケイネス。同盟組まない?」

『何?』

「ほら、正々堂々戦うにしては敵が多すぎるし、俺たち以外を全員排除してから闘ったらどうだ」

『――一理ある。だがしかし、』

「お前のサーヴァントは確かに強力だが、それは戦況を一撃で変えられる宝具に耐えきれるほどではない」

『……それはそうだが……』

「対して俺のサーヴァントは宝具は多いが地力が高くない。悪くないと思うが」

 

 考える時間を与えない様、矢継ぎ早に話すことで思考する時間を奪う。実際メリットの方が大きいし、何も問題はない。

 

『……少し考えさせてくれ』

「むっ」

 

 帰ってきた返事は俺にとっては意外だった。人生順風満帆で交渉ごとには疎いほうのケイネスが熟考しただけでも驚きなのに、態々時間を置くということが信じられなかった。しかし別に急ぐことではないので構わない、と返す。

 

『今日中に決めておく。明日またここで会おう』

「二十時でいいかな?」

『分かった。それでは』

 

 そしてこの場に合った気配がすべて消えた。そこで張っていた気を緩め、アストルフォを正気に戻して帰路に着く。

 

 

 ※※※

 

 

「ランサー、あなたから見て彼らはどうだった?」

「どうって? そりゃ力量の事か?」

 

 豪快な操縦で車を操るアイリスフィールと助手席に座る紳士服に着替え、腕と足を組むランサー。帰路の途中で聞かれた言葉にランサーが確認の意図を込めてセリフを返し、肯定を聞いてから思い返して述べる。

 

「まず純粋な戦闘能力で厄介なのがバーサーカーだな。狂化し慣れているのか、随分定石に適った動きだったぜ」

 

 頭の中でバーサーカーの動きが甦る。あの大胆な動きはただのバーサーカーに出来るとは思えない。おそらく生前から既に狂っていたのだろう。

 

「次にセイバー。荒々しい動きだが剣士としての実力は滅茶苦茶高ぇ。俺でも勝てるかどうか分からん」

「あなたが? そこまで強いの?」

「おう、ありゃただの英雄じゃねえ。大英雄だよありゃ。ま、だからこそ腕が鳴るってもんだが」

 

 不利だというのにも拘らず、喜悦を浮かべるランサー。『この世で最も優れた騎士』である自分と同等以上の実力を誇るサーヴァントに出会えて、剣を交えれるということは彼にとって最上の喜びだ。

 

「あと良く分からんのがアーチャーとライダーだな」

「……ライダーは分からない訳でもないけど、アーチャーも?」

 

 強引なドリフトでカーブを曲がったため、重力が車内を襲うが微塵も揺れることなくランサーは淡々と喋る。

 

「ライダーの方は女の騎士ってのは別に問題ないんだが、いかんせん性格がよく分からねぇ。男ならまだしも、女ってのがああいう性格で、英霊にまで昇華出来るもんかねぇ……」

「そういう物かしら?」

「そういうもんだよ。男なら冒険譚だが女ならただの民話程度で終わっちまうもんなんだよ」

 

男なら華々しい冒険譚として名を残すが女の場合はよほどのことが無ければ一英雄のヒロインや一役者で終わってしまうものだ。無論、アタランテのような女の英雄もいるし、中には性別を偽った者もいる。

 

「あと、アーチャーだがあいつが一番曲者だと俺は思うぜ。あいつは勝つためには汚い手でも使う。だが体裁は繕うっていう矛盾した性格だ。ただのバカではなく、その矛と盾を両立させるスキル、あるいは宝具があるはずだ」

「……例えばカリスマとか?」

「いーや、ありゃもっと凶悪なものだな」

 

 顎に手を当てて考え込むアイリスフィール。ランサーとしてはそれより前を見てしっかり運転してほしい所である。別に事故を起こしたところで参事になる前に脱出ことは可能だが、二百キロを超えた速度で石――正確にはコンクリートだが――の壁に激突するのは勘弁してほしいし、対向車にぶつかるのは尚更ごめんである。

 

「でもきっと大丈夫ね――」

 

 カーブが多くなってきたところでようやく百キロ程度に落とし、車内が落ち着くとアイリスフィールがそう呟いた。

 

「――切嗣とこの世で最も優れた騎士、ベイリンの二人なら絶対聖杯を取ってくれるわ」

 

 ベイリン――野蛮、蛮人と称される双剣の剣士。アーサー王伝説に登場する騎士で呪いをかけられた剣を持ち続けたことで様々な不幸に追いやられ、最後には兄弟と知らず殺し合い同じ墓に埋葬されることを望み息絶えた男。

 それがロンギヌスを触媒に切嗣が呼び出したサーヴァント・ランサーの正体である。

 

「へ、そこまで言われちゃ取ってやらなきゃならねえな。淑女の願いを裏切っちゃ騎士の名が廃るな」

「やる気を出してもらえてよかったわ」

 

 ふふ、と優しく笑うアイリスフィール。

 

「あ、そう言えば――今日は紳士らしくエスコートしてくれんじゃなくって」

「あー……まだやんの?」

 

 それはアイリスフィールが日本へ来た時ランサーに頼んだ小さなお願い事。しかし粗暴で乱暴なランサーからすれば紳士なんてものは分からないし、結果“青春まっさかさりな年頃男子の口調”というある意味新鮮な物へと変わってしまった。ランサーとしては二度とやりたくないのだが、結局断りきれず慣れない口調で拙い会話を心掛けることとなった。

 

 

 ※※※

 

 

「舞弥、様子はどうだ」

『こちらは異常なし。遠坂、エルメロイ両名の拠点への例の物の設置は終わりました』

「何か変わったことは」

『特にありません。間桐は読み通り虫が大量にいたため近寄れませんでした』

 

 そこで時計に目をやる。短針はもう“4”と重なっていると言っても過言ではない。

 

「そうか。なら起動させる。時刻は04:00、すぐにだ」

『了解しました』

 

 冬木市内のビジネスホテルの一角で魔術師殺し、衛宮切嗣は自身の一部たる久宇舞弥から連絡を聞いていた。空は既に白みがかっている時間帯で、切嗣はもちろん、舞弥も休み暇も無しに動いていた。しかし二人からすれば今更徹夜程度、どうということでもない。そんなことよりも今は勝つことを最優先に動くことが大切だった。

 舞弥との連絡を切ると切嗣は外を眺めながら携帯の時計を確認、一連の番号を入力する。

 それから数秒、巨大質量が崩落する音と、圧倒的な爆音が周囲に響いた。前者は全長百五十メートルにも及ぶ冬木ハイアット・ホテルで、後者はこの地の管理者、すなわち遠坂邸で、だ。

 

 この日、二つの話題が冬木市一帯で何度も語られることとなった。

 ――冬木ハイアット・ホテル倒壊。

 ――冬木の名家たる遠坂と、その周囲一帯を巻き込む爆発。

 

 この二つの事件がそれぞれたった一人を殺すために行われた所業とは、関係者以外誰も知らない。

 

 

 ※※※

 

 

<サーヴァント>一部項目解放

【CLASS】セイバー

【マスター】遠坂時臣

 

【CLASS】アーチャー

【マスター】言峰綺礼

【宝具】

『蜷局を巻いたものの皮』レヴィアタン

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:1人

レヴィアタンの皮で作られた魔法の衣でランクA相当の対魔力を得る。

あくまで対魔力があるのは衣。

また、獣の王とされたレヴィアタンの皮は本能的に獣を退けるため[野生の本能]を持つ者の全ステータスを1ランク下げる。

 

【CLASS】ランサー

【マスター】衛宮切嗣

【真名】ベイリン

【固有スキル】

[呪い]:A+

ダヴィデの剣を抜いた為に受けた呪い。

常に騒乱の中心となり休まらない人生を送ることとなり、最終的には破滅する。

「自分の最も愛するものを殺害する」呪いは消えているのが唯一の救いだろう。

 

[魔力放出]:B

武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、

瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。

 

[勇猛]:B

威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。

また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

 

【CLASS】バーサーカー

【マスター】ケイネス・エルメロイ・アーチボルト

 




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