千雨降り千草萌ゆる   作:感満

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34話

 予選を終えた千雨は、アルとは合流せずに受付を済ませて龍宮神社を後にする。

 できるだけ早く魔法関係者やネギ達の前から消えたかったからだ。

 

「おい、待てそこの」

 

 後ろから声がかかるが、気がつかないふりをして通りすぎる。

 

「貴様だ、コスプレ剣士」

 

 目の前に立ちはだかる影。しかし聞こえないふりをして横を通り過ぎようとした。

 その瞬間に目の前でなにかが光った。

 とっさにしゃがんでそれを回避する。

 

「お前に言っているんだ貧乳」

「貧乳!?それはあなたに言われたくありません!」

「気がついているではないか」

「あ……」

 

 挑発に容易に引っ掛かり、振り向いて抗議する千雨。

 エヴァはニヤリと唇の端をつり上げ、問いかける。

 

「貴様、中々の合気だったな。流派はどこのものだ?」

「貴女にお伝えしても伝わらないでしょうが、妙神山にて修行をさせていただいている身となります。基本は剣を使わせていただいている身ですが、武芸に関しては一通り嗜んでいますので」

「妙神山か。茶々丸、知っているか?」

「データベースによると、1991年から1999年まで連載されていた漫画の流派となります。こちらのお方のコスプレ衣装のキャラクターは小竜姫と言い、登録名は現存している投稿サイトの名前をもじったものかと思われます」

「つまり、話す気はないと言うことか」

「ちなみに生体スキャンをしたところ彼女の胸は本来平均値以上であり、このキャラのコスプレのためにサラシで押し潰しているものと思われます」

「えぇい!そんなことは聞いとらんわこのボケロボ!」

「あぁ、いけません。そんなに巻いては」

 

 エヴァが茶々丸の後ろにまわり、ネジを強引に回して魔力を供給する。

 その隙に離脱しようとした千雨だったが、それはエヴァによって阻止される。

 

「まて貴様、まだ話は終わっておらんぞ。先程の動きは私が研鑽して編み出した流れに極似している。どこでそれを習ったのかキリキリはいてもらおうか」

 

 確かに、あちらのエヴァンジェリン本人に鍛えられたもののため間違ってはいない。

 しかし、それをここで口に出すわけにはいかない。

 

「手解きいただいた方がいます」

「ソイツは誰だ」

 

 千雨は左右を見渡し、目当ての人物がいないか探す。

 目的の人物は、千雨が探しているのを見つけるとこちらへと手を振ってきた。

 

「あそこにいる方です」

「む……」

 

 千雨が指差した先を見ようとしたエヴァだが、周りの喧騒は収まっておらず、人混みに紛れて見えなかった。

 茶々丸に命令し、肩車をしてもらって目当ての人物を見る。

 そこには、フードが微かにはだけ顔が僅かに見えるアルのすがたがあった。

 

「あいつは!?」

「あそこにおられるクウネル・サンダースさんに習いました。詳しいことはあちらに聞いてください。それでは」

「あっ、おい!待て!」

 

 アルと千雨はお互い反対の道へ別れていく。

 エヴァは追いかけようとするも、どっちを追いかけるのか迷っているうちに両方の姿が消えてしまっていた。

 

「くそ。どちらも逃がしてしまった」

「いえ、そうでもありません」

 

 くやしがるエヴァに茶々丸が告げる。

 

「コスプレしていた方は、長谷川千雨さんです」

 

 

 

 

 

 

 エヴァたちから逃れた後に、千雨は図書館島の奥部には戻らず、学園内を巡り回っていた。

 神木にできるだけ近寄らずに目的の人物と、その機会を探る。

 

「……いた」

 

 適当に食事を済ませ、夕方から夜になろうというところ。

 お目当ての状況が生まれていた。

 

「小太郎君。じゃあ、いくよ?」

 

 ネギと小太郎が過去へと戻るところだった。

 気がつかれないようにしながら、探知の札を周囲にばらまく。

 数瞬後、ネギはその場から消えた。

 

「あの魔法具の反応は少しは追えたか?」

 

 札に刻み込まれた魔力の流れを確認しながら、千雨はだれもいなくなった地面へと近づく。

 

「ネギ先生が使えるということは、超のみが使えるものではない。あの一族だけが使える可能性も考えられるけど、私が見てもアルビレオが見ても特有のものは見つけられなかった。わからない以上使えると見て動かないと意味がない。小太郎と一緒に移動したということは複数の人物との転移が可能。そもそもあの時計がフェイクで私自身が超の持っているものに巻き込まれた可能性も」

「疑り深いネ、千雨さんは」

 

 後ろから聞こえてくる声にとっさに振り向く千雨。

 そこには、先ほど龍宮神社にいた時と同じ服装をした超が立っていた。

 

「武道大会の主催者の方ですか。こんなところでどうしたのですか?」

「千雨さん。いくら姿を変えても友達は忘れないヨ。コスプレしてるとわかっていれば特徴くらい区別できるネ」

 

 小竜姫として振る舞う千雨に超が語りかけた。

 それに舌打ちで返す千雨。

 

「そうかよ。それで、わざわざ私の前に姿現してどういうことだ?」

「“あっち”の千雨さんはすこし短気ネ」

 

 超の発言に眉を潜める。

 

「全部ご存じってことか。お前はお前の目的があったんじゃねぇのか?」

「そうネ。ワタシもいきなりの事でビックリしてるヨ。けど、そちらの世界の行く末を聞いた分、調整することができたからよかったヨ。どうネ?千雨さん。私と組まないか?」

 

 超は千雨へと提案する。

 それに千雨は警戒しながらも視線で先を促した。

 

「貴女の目標は元の世界に帰る事。それに使う魔力を渡しても、私の計画は実現可能な予定ヨ。今年の大発光はそれだけの強い魔力が含まれている。それならば、貴女と敵対することにはならない。私の事を邪魔しない。『イレギュラーが発生しない』事が私の一番の望みネ」

「それですむわけないだろ?“あっち”の超がわざわざ私をここに送ったんだ。私がなにもしなければ何かしらのリアクションがあるだろう?」

「それはこちらで何とかするよ。あちらはワタシだったとしても一人ネ。こっちには茶々丸もいるし他の手段も色々ある。同じワタシなら抑えることは容易ヨ」

 

 自信を持って答える超。それを見て千雨は首を横に振った。

 

「だめだ、信用できない。私はお前を信用している。だからこそ、その程度でお前が行動を起こさない、起こせないなんて思えないからな。私はワタシの手段でやらせてもらう」

「交渉、決裂ネ」

 

 超が独り言のように呟く。そして、どちらも少しずつ体勢を変えていく。

 

「いいのかな?千雨さんは予選でお疲れだと思たガ」

「お前をここで潰せるんなら、そっちの方が手っ取り早い。それより、ここでドンパチやってると魔法先生達がやって来るぜ。そっちにとっては不都合なんじゃないか?」

「それはそっちも一緒じゃないカ?あんな化物と一緒にいるくらいには」

 

 射程内に距離を詰める超。射程外へと距離をとる千雨。

 ジリ、ジリと制空権を取り合う二人。

 千雨は取り出した剣を右手に構え、左手を腰付近にだらりと下げている。

 超は八極拳の構えをし、歩の位置を整えていた。

 全てが止まったかのようにピタリと二人が止まる。

 

 

 一瞬。

 超が踏み込み、千雨の懐に入る。

 剣と身体の間に入り込んだ超。

 千雨は剣を構えたまま反応ができていなかった。

 超がその勢いのまま、千雨を殴る。

 そして、その拳は千雨の身体を一直線に貫いた。

 遅れて、千雨が爆発する。

 残ったのは真ん中が千切れ穴の空いた人型の身代わり符。

 超はそれを拾い上げる。

 

「千雨さん、再見」

 

 そして、超は服を脱ぎ捨てると夜の闇に消えていった。

 

 

 

 

「危なかった。本当に面倒くさい」

「おや、お帰りなさい」

 

 制服を着た千雨が図書館島深部の扉を通る。

 そこには、本を読みながら寛いでいるアルが待っていた。

 

「で、どうだったんですか?」

「どれが本当かわからないけど、一応わかったこともある」

「すると?」

「私の世界の超もこっちに来ているっていうことだ」

「そうですね。貴女との会話を聞かせていただきましたが、こちらの超さんとあちらの超さんは既に接触済みのようですし、お互い全て知っているとみて動いた方が良さそうですね」

 

 アルの問いに千雨は一瞬固まった。そして右手で頭をガシガシと掻くと、テーブル越しにアルの向かいの椅子へと腰かけた。

 

「そうとは限らないんだよなぁ」

「けれど、そうでなければ先ほどの会話は成立しませんよ」

「あぁ、それは分かってる。けどな」

 

 アルと目を合わせながら、千雨は自分自身確認するように呟いた。

 

「あの超は“あっち”の超だよ」

 

 

 

 

 

 




アイマスエキスポに出す方の進捗優先のため不定期になります。
現在図書館島ゴーレムと初戦終了したところ。
吸血鬼騒ぎまで200Pくらいで出そうかと思ってましたが、
現在130Pなのでページ増やすか図書館島編終わったらデレの9月やったライブの前日譚を読みきりで挟んで200Pにするか迷ってます。
※12月15日(日)の方に当選しております。
とあるサークルへの書籍委託兼売り子をやる形になります。
正式な案内は活動報告か総集編投稿するかして案内します。
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