現代文學思想研究部録   作:紫畝 幽扇

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部録>>2

山城(やましろ) 唯斗(ゆいと)かく語りき】

 

俺は山城唯斗。某市立中学に通う二年生だ。今はこうして、学内にある広さ蔵書量ともに平凡というなんてことない図書室のカウンター内で優雅に本を読むという当番日限定の日課をこなしているのだが。

 

「よっしゃあー!本の整理終わったぜー!」

「はい、次お願いしますね!」

「!?」

 

見ての通り、(心の目で見てください)同じ図書委員の松木(まつき)浩鳴(ひろなき)の手によって図書室が荒れ果てている。

ていうか、それを見てて何も言わない委員長も問題ありだよね!?

 

…………コホン、少し熱くなってしまった。それもあの松木(・・)のせいで。

この言い回しでわかった人もいるだろうが、俺と松木はいわゆるライバル的な関係にある……のだろうか?まあ、多分そうだ。言っとくが、学力面だけだぞ?性格とか諸々は言うまでもない。

まあ委員長が注意しないなら、図書委員第二学年学年長のこの俺(無駄に学内権力を振りかざそうと気取る馬鹿)が言うしかないだろうな。

 

「おい、松木」

「へい、どうしたでやんすか〜?山城君や」

「まず、その言い方やめろ。あと図書室を荒らすな。手間が余計かかるだろ。これ以上は言わせんな」

「へいへい」

「ま、つ、き、く、ん?」

「なんだよ、そのお、も、て、な、○、みたいな感じのやつ……」

「なんか言ったか?」

「……なんでもないです、はい」

 

はい、松木鎮圧成功〜。

と、ひと段落したところでそろそろ始めましょうかね。

 

「はい始めるよー!皆の衆、集まれ!!!」

 

俺の一言で、それまで図書室各所に散らばっていた部員が俺の目の前にある長机に着席する。

 

「図書室ではあんまり大きな声を出さないで!!!」

 

例によって図書委員長の注意が飛んでくるが、委員長の声など俺は馬耳東風である。

つーか、松木には注意しない癖に俺には毎回言ってくるんだよな。なんか心が寂しくなっちまうぜ。

 

「おい、部長。はよ立て」

「おう、そんじゃあ現文研始めま〜す」

 

こんな感じで、俺たち現代文學思想研究部(げんだいぶんがくしそうけんきゅうぶ)、略して現文研(げんぶんけん)は今日もスタートする。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「部長、今日の議題はなんだ?」

 

俺の問いかけに、部長はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに顔に笑みを浮かべた。

ああ、聞かない方が良かったか?

 

「ふふっ、聞いて驚けっ!!!なんと今日の議題はっ!!!」

「どーせ部長のことだ。いつも通り議論にすらならんつまんねえ議題を出すんだろ?」

「だよな。なんせあの(・・)部長だからな」

「………………(涙目)」

 

俺たち(松木以外の部員)が松木の愚痴をバッチリ聞こえるように言っていると、松木が涙目でこちらを見ていた。

仲間になりたそうではないがな。

まあ、流石に言い過ぎたか。ここはちょいとフォローしてやらないと可哀想だな。

 

「で、今日の議題はなんだ?」

「お、おう。では改めて、今日の議題はっ!」

「『我が現代文學思想研究部の方針について』だそうだ」

「俺の一週間前から知恵を絞って考えた議題くらい自分で言わせてくれよっ!」

「いや、知るかよ」

 

俺と松木のよく分からんうちに始まる漫才的な何かもいつも通りだな。フォローも我ながら完璧!

 

「お前らなぁ、開始早々他の部員をほっといてなにやってんだよ〜。白目剥いてんぞ」

「「え?」」

 

書記の内海(うつみ)に言われて部員たちを見回すと、全員の目が白くなっていた。

 

「すまん」

「まあいいけどよ、今日の議題なかなか議論になりそうじゃないか?」

「そういえばそうだな。方針なんてこの部活にはないと思ってたけどな」

「今日は久々に語り合えそうだぜ!」

「いや、ここって語り合うような場所だったのか?」

「君たち、先程からうるさいぞっ!!!」

 

どんどん会話がヒートアップしてきていい感じのところに、突然怒鳴り声が図書室内に響き渡った。なんだよ、部外者が水を差すんじゃ……あ、校長!?

あの生徒に対して滅多に顔を出さない校長がなんで図書室なんかに……。

もしや、俺たちの声が下の校長室まで行っちゃってた?これは、やらかしちまったな。

 

「ここは図書室だ。ちょっとはTKOというものを考えたまえ」

「…………すいません、校長先生。以後気をつけます」

 

校長よ、もしかしてTPOと言いたかったのでは?なんで、芸人さんについて考えないといけないんだよ。ネタならばっちこいだけどな。

 

「うむ、ならいい。これからも読書に励むのだぞ」

「はい」

 

校長は結局、TKOなる謎の言葉だけを残して図書室を去って行った。で、残された俺たちはというと、

 

「なんか、今日はもう解散にしねえか?」

「んだな。そんな心境じゃなくなっちまったし」

 

解散の流れになっていた。まさか校長、直接言わずに生徒たち自身から解散するように仕向けたというのか!?やるな……。どうやら校長の手腕を見誤っていたようだ。

と、俺が一人勝手に感心していると、松木の顔が曇っていた。

 

「…………」

「ん、どうした?松木」

「お、お、」

「お?」

「俺の一週間を返せえええ!!!」

 

この後、顧問(数学教師の方)に騒ぐなと怒られたのはまた別のおはなし。




著:副部長(紫畝 幽扇 ID:100110)
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