「都市伝説というものをアナタは信じますか?」
「初っ端から1話の冒頭コピりやがったか」
「ん?何か聞こえたような……まあいいや」
「おい」
「えっと……それで、えー、まあ、その都市伝説?っていうのは、あれよりは信憑性高いですよねー。ほら、あの、えっと……。…………」
「…怪奇現象?」
「あ、そうそうそれ、その皆既現象よりも信憑性が高くて……そう、たとえば、雑煮の餅食べるのに原稿用紙3枚使う猫とか?よくわかんないけど、多分それのことだと思う」
「うんわかった、まずはお前は第1話を執筆した俺並びに読者に向かって謝罪するべきだと思うが」
「あと誤字ってるぞ。それだとなんか全部隠れてたり、すでに確認存在されてる現象みたいになるからな」
「あと猫に関しては都市伝説でもなんでもねえから。もう松木お前殴っていい?」
「ん?なにか幻聴が…耳おかしいのかな」
「耳鼻科ではなく精神科にいった方がいいと俺は思うぞ」
「激しく同意」
「なにも聞こえねーなー。…ところであなたは学生ですか?私は学生です!」
「いや『元気』みたいに言うなよ」
「その書き出しで始まる文章を遺書として松木を消したいんだが、いいか?」
「かなりさけーんでみたー『元気でーす!』」
「なあお前さ、必ずどっかからネタ引っ張ってこねえと気が済まないの?」
「えー、それではみなさん、くれぐれも惑わされないよう…」
「結局そこまで引っ張って来たか」
「途中うろ覚えの上脱線しまくったけどな」
「第1話著者としては、殴りたい一心でございますよ、ええ」
「ぜひご協力お願いします!」
「「「惑わされてたのお前だったんかい!」」」
※基本ボケてる奴が松木、あとは山城、早咲、内海です。
〜〜〜〜〜〜〜〜
【松木
『廊下を走るな』。
おそらく、全国どの学校内でも見かける文句だろう。
どんなに自由な校風だろうが、どんなに荒れた学校であろうが、必ずこの類の言葉が記された張り紙が掲示板やら廊下やらに貼り出されていることだと思う(実際守られているかは別にして)。
いつもは俺だって、基本的にはこのお言葉を遵守しようと心がけつつ生活をして居る(実際守れているかは別にして)。
別に優等生ぶっているとかではない。と言うかむしろ、こんな当たり前のことを守ろうとしてすらいない奴が劣等生なだけで、当たり前のことを当たり前にやろうとしているやつは優等生でも劣等生でもなく、それこそ普通なやつだと思う(実際守れているかは別にして)。だって廊下走ると危ないもんね。一人すっ転ぶならまだしも、人にぶつかったら大変だしね。守らないとダメだよね(そういっている奴が実際守れているかは別にして)。
まあ、だがしかし(アニメのタイトルではない)。
それはあくまで、
つまり、今回ばかりは訳が違う。
『廊下を走るな』
この貼り紙に対し、
この状況でなに言ってんだ。ふざけるんじゃねえ。
後ろを振り返る。
するとそこには
「松木ぃぃぃ!!!待てやてめえおらぁぁぁ!!!」
変わり果てた副部長、山城唯斗の姿が!
まさに、ギョウソー・オブ・オニィである。
そして、おお、なんということだ!
その覇気たるや阿修羅の如く。逃げる俺を捕獲せんと脱兎の如き疾走で背後から迫ってくる。コワイ!
再び正面に向き直る。
もう一度言う。
『廊下を走るな』だと?ふざけるな。
そんなことしたら俺が死ぬわ!!!
廊下の直線もそろそろ終わりにさしかかり、松木は階段を下るべく、突き当たりの90度の角に備えた。
ーーーー山城ーーーー
俺は今、走っている。そりゃもう、全力で。
視界に捉えるは現文研部長、松木浩鳴。今俺の役8メートルほど前を走って逃げている。
だがあと少しで捕まえ………あ、階段下りやがった畜生!しかも無駄に速えなぁおい!
そもそもなぜ俺が奴を追っているのか。普段は廊下なんか走らないんだがな。でも今日ばかりは仕方がない。
発端は今から約5分前、図書室での会話だった。
〜〜〜〜〜
ーーーーー
〜〜〜〜〜
「おー、山城=サン、おっすおっす。」
「ニンジャスレイヤ○のネタ使うなっていつも言ってんだろが!」
「痛い痛い痛い、ギブギブごめんって!」
いつも通りまともな挨拶をせず図書室にやってきた部長にヘッドロックをかまし、松木は俺の腕をバシバシ叩いて降伏の意を示す。
いつもの流れだった。というか、いつもこんな調子なのだ。松木がやってきて、ボケをかましたりふざけたりする。それに対し部員(主に俺)が制裁を加え、部活を始めさせる。この部ができたときから変わっていない、もはや恒例の流れだった。疲れるっちゃ疲れるが、もう流石に慣れてきてしまった。………いや、慣れるのもどうなんだ。
ため息をつきつつ松木の首を締める力を強める。
「ぐええええ!いだい!参っだ参っだ!降参、降伏!我降伏す!」
先ほどまでジタバタやっていた松木も本気で苦しくなったのか動きを弱め、代わりに俺の腕を叩く力を強める。
俺はそんな松木の後頭部をやや下に見つつ、笑顔で言う。
「え、なに?幸福?我、幸福す、だって?そりゃよかったぜ、さすが
「俺はマゾじゃねえええええ!!!!!!!!!」
松木が叫ぶ。まあこれ以上騒がれても困るし、こっちもそこそこ楽しんだので松木を解放して、自分の席に戻る。
気道がようやく広がった松木はしばらくぜえぜえと息をしている。そしてようやく落ち着き、自分も椅子を引いて席に座る。
「あー、死ぬかと思った……。…っし、んじゃ部活やるかーーーーって、あれ、他の奴らは?」
どうやら今頃気づいた様子で、松木は訊いてきた。俺は後ろに椅子を傾けつつ、答える。
「ん?ああ、
「えー、まじかよー。2人じゃ何もやれねーよ」
「そうなるな」
「えーそうかー…………んじゃ、なにしようかー……」
おい、さっき何にもやれねーって言ってたのはどこのどいつだ。
内心でつっこみつつ、松木の方を見ずにテキトーに提案。
「普通に読書したら?」
「やだ。つまんない。」
おい。一応うちの部名は
「あ、そうだ!とりあえず近況報告でもしようぜ!」
と、唐突に松木が言い出した。
いきなりだなぁおい。
「何だそりゃ。やろうって言ってやることじゃねえだろ」
「いや、やることだろ。んじゃ言い方変えるか?『それじゃあまず、お互いの近況報告からね』。ほれ、どうよ?」
「ぐっ……!」
やべえ、なんかしっくりきた。
「何でも言い方次第ってことよ」
悔しいが、そうかもしれない。まあでも、どうせやることないのに変わりはないし、やっておくか、近況報告。
「んじゃ、まず副部長。最近何か変わりは?」
「特になし」
「さいですか」
はい俺のターン終了。……ん?さっきの言葉?何だよ、近況は報告しただろうが、変わりない、って。
自分の近況報告をわずか0.4秒で終わらせた俺は、次に部長こと松木に尋ねた。
「んじゃ松木、最近変わったことは?」
「ボーキとバケツ、それから開発資材が尽きた」
「うん、何の話かわからんがとりあえずわかった。それから?」
「うーん、他には………他には、ねぇ……」
松木が考える仕草をする。
「ないなら、もういいぞ?」
はっきり、めんどくさい。
「………あ、ちょっと待って、あったあった」
俺が遠回しに近況報告を終わらせようとすると、松木は慌てて何か思い出した。
「(……チッ)なんだ?さっさと言ってくれ」
「おい、あからさまに舌打ちすんな。えっと、確か昨日ね……」
「なんだなんだ」
適当に相槌を打つ。そして松木は、しれっと言い放った。
「LINEの友達の櫻_iって奴から2次元18禁画像約180枚が送られてきたから、とりあえず他の友達に横流ししておいた」
「うんうん、そうかー………っておい、ちょっと待てやてめぇおら」
危うくスルーするところだった。
「ん?なに?」
しかし、当の松木の方は『何か問題でも?』とでもいう風に平然としている。
「いや『なに?』じゃねえよ!なに18禁普通に取り扱ってんの!?」
「いや、俺が見つけたわけじゃなくてLINE友から送られてきただけだって」
「100歩譲ってそれでセーフってことにしてもだな、なんで横流しすんの!?」
「なんとなく」
「なんとなくでエロ画像流す奴があるか!それ受け取った奴はかつてない衝撃を受けたと思うよ!」
「退屈な日常に、せめてもの刺激を与えてやろうという心遣いから」
「たしかに刺激は必要だろうが、そっち方面の刺激は多分必要とされてなかったよ!」
「ついカッとなって」
「なにその犯罪理由みたいな!カッとなってエロ画像流す奴なんざこの世に居ねえよ!」
「遊ぶ金欲しさに」
「だからなんでそんな犯罪理由みたいなの!?しかも全く理由として成立してない!」
嵐のようなボケとツッコミの応酬にぜぇぜぇ、と息を荒げる。なにこれめっちゃ疲れる。多分今日1日の授業なんかよりよっぽど疲れたんじゃなかろうか。
しばらく息を整え、ようやく落ち着いてからもう一度松木に尋ねる。
「いいか松木、ふざけずに答えろよ」
「うに」
「死ね」
「ゴメン」
吐き捨てるようにそう言うと、松木が頭を地面に押し付け謝った。
もう一度訊く。
「ちゃんと答えろよ」
「はい」
「なぜ、送られてきた18禁画像を横流しした?」
今度は松木も、真面目な顔で考える。「うーん」「あー…」など唸りながら20秒間頭をひねる。
そして、
「面白そうだったから」
変わらず真面目な面持ちで答えやがった。
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「うおっ!」
いつもの鉄拳制裁を加えようとした俺の腕を、間一髪で避ける松木。
「松木、お前にはもうちょっと、きつい制裁が必要らしいなぁ!」
「う……」
松木に詰め寄る俺。松木は怯んだように後ずさる。そして次の瞬間。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
図書室から駆け出した。
「あっ、こら、まてやてめぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
急いでそれを追いかける。
こうして、放課後の追いかけっこが始まった。
〜〜〜〜〜
ーーーーー
〜〜〜〜〜
廊下を結構な速度で駆け下り、現在1階。
しかし、副部長の方もピタリとつけてくる。いつまで体力が持つだろうか。いや、止まるわけにはいかない。今止まったら、俺は確実に殺られる。その一思いで1階の廊下を走る。
いや……でも待てよ。なんで俺はこんな命がけで副部長から追われてんだ。
そう考えつつ、1階の端の方まで来る。
そろそろ体力も限界だ。このまま走り続けるのは流石にきつい。どうするか。
「(……隠れるか)」
1階の端にはトイレと階段、そして倉庫がある。階段と倉庫は廊下の直線部からは直接見えないから、倉庫に隠れてしまえば、向こうは俺が階段を上って行ったと思うだろう。うん、そうしよう。
廊下の直線が終わり、再び角を曲がる。そして、いつも扉が開いている倉庫に向かう。
「(うおりゃぁぁ!!)」
心の中でそう叫びながら、いつもドアが開いている倉庫に突入。入ったらすぐに扉の影に隠れ、息をひそめる。
そして3秒後。
「……っはあ、はあ、あいつ、また2階に行きやがったのか……!」
という声が聞こえ、次第に足跡が遠くなっていった。
「………っ、ぐはあー……!」
止めていた息を全て吐き出す。そして深呼吸。ようやく落ち着いた。
ついに、副部長の追撃を振り切った。我々は、勝利したのだ!(俺一人だけど」
ドアからこっそり廊下の様子を伺う。見たところ、誰もいない。胸をなでおろす。
「ふぅー…いない…っと…んじゃ、図書室で荷物回収して、悪いけど今日は帰ろっと……」
そんなつぶやきをしながら、一刻も早く図書室に向かおうと、駆け足に移行ーーーー仕掛けた、その時
「部長が先に帰ってもいいと思っているのかな、君は?」
ーーーー悪魔の声が、聞こえた。心臓が止まる寸前だった。
ぎぎぎ、と壊れたロボットのような動きで、声がした方ーーーー2階に通じる階段を、見る。
そこには。
「まだ今日の部活はこれからだろ…………な、部長さんや?」
副部長、山城唯斗がいた。
全身に冷や汗どころか脂汗がじっとりと滲み、カタカタ、と小刻みに震え出す。
そして、ようやくの態で声を絞り出す。
「副部長……………いたん、ですか」
山城はゆっくりと階段を3段ほど降りる。そして、ニヤニヤと笑いながら俺の問いに答える。
「たぶん疲れてきたお前なら、ここでその倉庫に逃げ込むと思っていたからな」
「………でもさっき、2階に……」
「足踏みして足音をだんだん小さくしていくやつだよ。でも正直、これに引っかかるとは思ってなかった。お前は幼稚園児か」
「なんだ、脅かすなよ…」
「いやぁ、すまんすまん」
「ははは…」
「ははは」
「………」
「………」
沈黙。ドアの隙間風の、ひゅうという音が聞こえる。遠くで誰かが話す声も聞こえる。それぐらいの静寂が、15秒ほど続いた。
そして俺はくるっと山城に背中を向けると、片手を上げつつ言った。
「んじゃ、俺は今日、チョットヨウジガアルカラ…………………お先!!!!!!!」
「行かせるかぁ!!」
「ぐごはぁっ!!!!!!!」
再び駆け出そうとした俺の背に、副部長の跳び蹴りがもろに命中し、俺は廊下に向かって前のめりにぶっ倒れ、そして意識も、吹っ飛んだ。
ーーーーーー
早咲「ーーーんでさ……って、よう副部長、来たか」
山城「うぃーっす、副部長、帰還しましたぜー」
内海「おう副部長、おかえりおかえり」
山城「ただいまただいま。んじゃ、今日の部活始めるかー」
早咲「了解……って、部長はいないのか?」
内海「確かに、部長がいないと部活できねえぞ」
山城「ん?ああ、大丈夫だ。部長ならちゃんといる」
早咲「は?どこに……?」
山城「ほれ」
内海「え?……って、うぉぉ!?なんだこのボロ雑巾!?」
早咲「いや待て、この頭とメガネの形……確かに部長だ!」
内海「ホントだ!何があったんだ部長!?」
山城「いや、気にしなくていいから。それより部活やろうぜ」
早咲&内海「そうだな」
山城「いや、お前らも結構冷たいな……」
早咲「いや、だって」
内海「部長だし」
山城「ははは…なんか部長が可哀想になってきたような…。まあいいや」
山城「それじゃ部長に変わりまして、今日の現文研、はじめまーす」
早咲&内海「よろしくおなしゃーす」
山城「んじゃ、今日の議題はーーー」
現代文学文化研究部は、今日も活動する。
著:部長(つぉとーと ID:100644)