てへペロッ♪
優「流石に私でも引いたな…」
グサッ…
それではどうぞ!!
「……これは…何だ?」
ただいま真守は、命の危機に直面している。
鈍感男こと、塚崎 真守は、目の前の机に置かれてある、どす黒い色をした、『物体』を指差し、その物体を作ったであろう、葵 優に訊いてみた。
「冗談はよしてよ。どこからどうみても、お弁当だよ!」
純粋な優の笑顔が、俺の心をギュッと、締め付けた。
見間違いだと、思った俺は、微かな希望を持って、目を擦った。……が、もちろん変わらない。
可愛いらしいピンクの花柄の包みからは、得たいの知れないオーラを放っている、多分…手作り弁当なのであろう物が、静かに置いてある。青いケースに入っているものを、目を凝らして見てみると、定番の卵焼き?…が、輝く黄金色を失い、黒く、なおかつ、ぐちゃぐちゃになった状態で入っていった。
──しかし、悲劇は卵焼きだけではすまなかったのだ。
ウインナーは、形はまずまずだが、紫色に変色している。…いや、マジで。
「あの…ウインナーって、赤くないっけか?」
確認のために、ニコニコしている優に訊いてみた。すると、ニコニコした顔のまま、俺に絶望を告げる。
「赤色だと定番だから、那須の汁に浸してみたんだ!」
嬉しそうに言われた。太陽に負けないくらいの、輝く笑顔で、そう言われたら、みんなはなんて返事する? 教えてほしい。俺は、今まさに、困っている。俺は何て返せばいいんだ? あと、ウインナーを那須の汁に浸すって美味しいの? 俺、初めて聞いたぜ。ウインナーを那須の汁に浸すってこと。
…なぜ、こうなったのか、俺にはどうしてもわからない。
─あっ、思い当たるのが、1つだけあった。ってか思い出した。
それを思い出した俺は、深い溜め息を吐いて、自分の顔を掌で覆った。
それは、昨日の放課後に遡る。
「ねぇ、真守くん。真守くんって、いつも誰がお弁当作ってるの?」
短学活が終わり、部活に向かおうとしたとき、突如、優に呼び止められてそう言われた。
俺は、荷物を鞄に詰めながら、優に返事を返した。
「大抵は母さんだけど、たまに朝早く起きたときは、俺が家族全員分つくるけどな。」
「へぇー! 真守くんって、料理もできるんだね…そうだ! 明日、私の料理を食べてみてくれる? 悪かったところがあったら、ソコをなおすから。ね?」
俺はこのとき、母さんに頼まれた仕事を丁度思い出して、優の言葉を流してしまったのだ。
「あぁ、いいよ。」
この一言が、俺の人生を変えるとは知らずに───
──あぁ、死んだな。
昨日の自分を殴りたくて仕方がない。なぜあのとき俺は、聞き流してしまったのだろう…あはは、あははは……もう一度言わせてほしい。
──死んだな。
絶望の淵にいる俺に、優しい天使の手がさしのべられてきた。
「なぁ、教室で食べるのもあれだし、屋上でくぉーぜ?」
あさだった。
苦笑いを浮かべているあさは、自分の弁当箱を大事そうに両手で持ち、教室のドア付近に移動した。
よっシーはと言うと、俺の肩に無言でポンッと手を置いてから首を左右に振ってから、あさに続いて教室を出た。
…よっシー、顔、死んでたな。
「諦めろ」とでも言わんばかりに、首を振り、口は固く結ばれ、目はいつもの元気さを失い。死んだ魚のようになっていた。
そういえば、優とよっシーは小学校の頃からずっと同じクラスらしく、仲良く話しているのもよく見かける。でも、お弁当に関しては、何も話さなかったなー。あっ、でも。1回だけ、屋上で弁当の話題が出たときに話してたなー。確か。
『優の飯はな、食わない方が良いぞ。』
『えっ、何で?』
『葵さん、めちゃくちゃ料理上手そうだけど?』
『アイツの飯食ったら、1週間は何も食べたくなくなるぞ? まぁ、それほどヤバイんだ。』
1週間かぁー。俺生きてるかなー。
そんな失礼なことを考えていると、優は俺の服の袖をちょんちょんと引っ張っり、俺を見ながら「行こう!」って言ってきた。
スゴく可愛らしい笑顔なのに、今の俺からしたら悪魔の笑顔に見えた。
「お、おう。さっさと終わらせるか。」
「むぅ、終わらせるかって、どういう事かな、真守くん?」
「いやだなー。さっさと食べようってことだよ。」
今にも涙が出そうなのに、声が震えて仕方ない。
そんな俺をジト目で見つめてくる優の腕を掴んで教室を出た。教室から出るときに茜の冷たいような視線が背中にビシバシ刺さったが、気づかないフリをした。
昼休みの賑やかな廊下を二人で歩いていると、優は何か不安そうな声で話しかけてきた。
「真守くんってさ、その、料理ができる人と、できない人だと、どっちの方が好み?」
チラリと優の方を見ると、お弁当が入っている包みをギュッと握り締めて、俯きながら歩いていた。先程の会話からして、優は自分が料理することが苦手なのだと自覚しているらしい。
「ん~。」
廊下の天井を見ながら考えていると、ふと、優が歩くのを止めて、その場に立ち止まった。
「優? どうした?」
「やっぱり…料理できる人の方がいいよね。」
「優?」
「ごめんね、真守くん、もぅ…食べなくていいよ。こんな不味いお弁当食べたらお腹壊すし、あはは、ごめんね。…おいしく…ないよね。」
今にも泣き出しそうな、か弱い震えた声で、優は小さく呟いた。肩も震え、手に持っているお弁当を強く握りすぎて、手が白くなっている。
「捨ててくる。」
「はぁ、なにいってるんだ、不味いわけ無いだろ。」
「嘘なんてつかなくていいよ!! 不味いことぐらい自分が一番知ってるよ!!!」
俺に向かって優は叫んだ。目にはたくさんの涙を浮かべていて、大粒の涙が真っ赤な頬を伝って、静かに冷たい廊下の床に落ちた。
優がいきなり大声で叫んだからなのか、周りにいた人たちが急に静かになって、俺と優の事をまじまじと見ていた。
俺はひとまず優の手首を握って、一通りのない階段の踊り場に移動した。あのままだと周りの視線が痛いし、何より、優が泣いている所を人前に見せたくない。あぁ、俺なにやってんだよ。女の子泣かせるとか最低だな…。
誰もいないことを確認してから、俺はひとまず息を吐いた。そうしてから、優の頭を優しく撫でながら、俺の想いを伝える。
「確かに俺は、優の料理は上手いとは思っていない。」
俺がそう言うと、更に優の目からな涙が溢れた。ストレートに『不味い』と言われたら、誰だってそうなるに決まっている。俺だってそうだ。でも…
「味とか、見た目とか、そんなのは関係ない。料理に込められてる想いが、俺は一番大切だと思う。だから…」
優が握っているお弁当を俺は貰うと、包みを開き弁当の蓋をあけて、箸を取りだし、先ほど見た紫色のウインナーを箸でつまみ上げると、そのままパクりと口に含んだ。
「あっ、だっ、ダメだよ真守くんっ!! お腹壊しちゃうよ!!!」
優が驚いて俺からお弁当を奪おうとするが、俺は優がお弁当を奪おうとするのを避けながら、モグモグと食べ続けた。そしてとうとう俺は、優の手作りお弁当を完食した。
「確かに、見た目も良いと言えないし、味も少し変だ。でも、それ以上に、優の想いがたくさん詰まってて美味しく感じた。そして、何よりも……嬉しくなった。俺のために弁当を作ってくれたことが、何よりも嬉しかった。」
笑顔で言って魅せると、今度は涙でぐしゃぐしゃになった顔で、嬉し泣きをした。目と鼻が真っ赤になって、鼻をすすって、声が漏れて、それでも優は、嬉しそうだった。
「真守くんのっ…ひっく、ばか……グスッ…」
「また、作ってくれよな。優。」
優の頬に伝ってきた涙を、俺の人差し指ですくうと、今までにないくらい、輝かしいいい笑顔で、優は頷いた。
「うんっ!」
~オマケ~
そのあと、優が泣き止むまでその場にとどまっていたが、俺はなにかを忘れているような気がしてならなかった。
ん~。なんだっけかな。忘れちゃったわ。
一人で思い出そうとしていたら、泣き止んだ優が俺に抱きついてきた。突然の行動に頭がついていけず、数秒間黙ってしまったが、現状を理解してきた俺は、顔に赤みが差してきた上に、俺の脳みそが、危険信号を送ってきた。
「ちょっ、な、ななななな、何やってんだよ優ッ!?」
「ん、もう少しこうさせて。」
俺の胸に頬をスリスリさせてくる優から、とても甘い匂いがしてきたり、女の子特有のなんか、その、柔らかい肌がフニフニしてて、何か…ヤバい。心臓がめっちゃバグバクしてて煩いし。なんだよこの状況!?
「ふふっ、真守くん…ありがとう。」
そう言うと、優は俺から離れて笑顔で言った。
「これから、もっとたくさん料理の練習して、真守くんのハートを奪っちゃっうからね!」
手を銃の形にして俺に向ける優は、とても楽しそうだった。その雰囲気につられて、俺は笑顔で挑発する。
「奪ってみろよ、俺のハート。まぁ、その前に基礎からやった方がいい気がするけどな。」
「なっ、なにをー!」
俺と優は、一緒に廊下を歩いて教室に向かった。…あれ、やっぱり何か忘れているような気がするけど……まぁ、いっか!
そのあと、屋上に来なかった件について、あさとよっシーが問い詰めてきたのは、また、別のお話。
何でこうなった…
最初の笑いはどこいった…
好きな人にお弁当を渡すのって勇気いりますよねー。
まぁ、作者はお弁当作るなら手作りではなく冷凍食品をたくさん詰めますがね…(泣)
指摘&感想よろしくお願いします!!