ここからやらないと最終回に持っていけないので(笑)
では、どーぞ!!
6月も終わりを迎え、本格的に夏へと進む季節。7月初旬の太陽は6月の時よりも暑さを増して、外を歩くのも嫌になってくる。むしむしした、嫌な空気が、2階の教室中を充満する。早くも6月の始めに設置した扇風機は、風力を強くしても、全然涼しく感じなくて、ほぼ無いのと同じだ。
そんななか、多分だが、俺だけが寒いと感じているだろう。
背筋から、冷や汗が止まることがなく、滝のようにだがだがと流れる。理由はいたって簡単だ。
誰かが視ているのである。
─いや、フツーはさ、たかが視線でこんなになるのは、あり得ないと思うだろ? あぁ、俺も思ったさ。だけど………さっきから止まんないんだよ…寒気が、さ……。
毎時間、背中を観察されている…いや、監禁されているような気がしてたまらないんだ。しかも、授業中だけではない。
朝、学校に着いて椅子に座ったとき、授業中、移動中、昼食中、休み時間、掃除中、そして…下校中。
ずっと、背後から視線を感じるんだ。勇気をもって、後ろを見ると、案の定誰もいない。さすがに不味いと思った俺は、ある人物に相談してみることにした。その人物とは──
「まもる君。僕に任せてよ!」
小さい体に、トンっと手を当てて、ニッコリしながら胸を張っているのは、ひかる。女の子みたいな顔の可愛い『男』だ。顔が可愛いことから、女子からはひかるちゃんと呼ばれているが、本人はあまり気にしていないようだった。
「キャー!! ひかるちゃんが…ひかるちゃんがぁ!!!」
「かあーい! かあーーい!! 私、もう、なにも要らないよぉ!!!」
「ちょっと、天国行ってくる。」
女子たちが、歓声の声をあげながら叫ぶ。息をハァハァいわせる人もいれば、貧血で倒れる人もいた。同じクラスにいる優と茜は、顔を紅潮させて、静かに悶えている。
男子たちは、男だとわかっていても、鼻血を出す者や、とにかく沸き上がる感情を抑えるために、必死にして机をバンバンと叩くものも現れるほどだ。あさとよっシーの様子を伺ってみると、あさは顔を赤く染めて机をとにかく叩いていた。机を強く叩きすぎて、掌が真っ赤になるほどだった。よっシーの方は、前の事(鈍感男は生きることの大切さを知ったを参照)があったのにも関わらず、「うぉーーーー!!!!」と、叫んでいた。
なんなんだ…このクラス……。
でも確かに、ひかるはぶっちゃけ可愛い。男として生まれたことが、勿体ないくらいに可愛い。でもやはり、ひかるは男だ。
「ひかる、ありがとう。」
「まもる君が困ってるんだもん。見逃せないよ! それに、許せないしね、そんな奴……」
一瞬、ひかるの顔が、ニヤッっとした、顔になったような気がした。その顔に、背筋がゾクッとするような感覚が襲う。…あれ?…これって………
俺がチラッとひかるを見てみると、可愛らしく首を傾けて「ん?」と言ってきたので、俺は「なんでもない。」とだけ返した。やっぱり、気のせいだったみたいだ。よかった。
「対策として、これから僕と一緒に行動してもらいたいんだけど。いいかな?」
微笑んだまま、ひかるはそう言った。
「あぁ、もちろんだ。頼む。」
俺もつられて微笑んだ。やっぱり、ひかるに頼んで正解だったな。
俺がひかるに頼んだ理由は二つある。
一つは、単純に、あさとよっシーに相談できるような内容では無いからだ。
もし、あさとよっシーに相談したとする。あさの場合は、俺の話を聞いたときに、取り敢えずビビるだろう。ビビりにビビった後は「き、ききき、気のせいだろ?」と、暗示のように問いかけてくるに違いない。ってことで、あさには相談不可能。よっシーは、もぅ、論外だ。相談しても、煩く騒いで、一気に話が広まる。そして、「真守なら、大丈夫だ。」と、言って、終わらせるだろう。
なので、ひかるに相談したのだ。
別に女子に相談すれば効率がいいかもしれないが、ちょっと難しい。なので、話しやすく、仲が良いひかるを選択したのだ。
二つ目は、ひかるがこう言うの得意そうだったからである。ただ、そう直感した。それだけだ。
「それじゃあ、改めてよろしくね、まもる君!!」
笑顔で言うひかるは、誰が見ても紛れもなく可愛い顔をしていた。
──────────
[一時間目]
俺はひかるから1つ提案されたことを実行している最中だ。
その提案とは、ノートに時刻や症状を記入することだ。記入内容は
①時間を詳しく書くこと。
②何回目なのか。
③どこから視線を感じるのか。
④どんな感じの視線なのか。
⑤いま、どんな気持ち(症状)なのか。
の、5項目である。
……因みに現在の状況をかくとこんな感じだ。
①午前9時41分。
②1回目。あっ、今視線感じた。ので、2回。
③背中から。もっと詳しく言うと、左後ろから。
④監視しているような、そんな感じ。
⑤背筋が凍ってる。あと、寒い。
これからも記入していこうと思う。
[二時間目]
今はあまり得意じゃない数学の授業中だ。それでも俺への視線は変わらず感じる。
①午前10時30分。
②二時間目だけで5回目。
③一時間目と同じ感じ。
④一時間目と同じ感じ。
⑤一時間目と同じ感じ。
[三時間目]
ヤバい…気がする…。これ以上書いてはいけないきがする。ヤバい。ひかると一緒にいても視線が感じるのだ。一緒にいればいるほど近く感じる。
①午後11時1分。
②これで43回目。
③同じ。
④同じ。
⑤同じ。
[四時間目]
書く気さえおきない…どうしよう。昼休みにひかるに相談しないと…。
①午後12時7分。
②114回。
③同じ。
④同じ。
⑤同じ。
──────────
「っと、結構ヤバいねまもる君。そう思わない?」
「俺の精神状態の方がヤバい気がする…」
あのあと、本能的にマズイと思った俺は、四時間目の授業が終わったあとにダッシュでひかるのところにむかったのだ。
ひかるは俺が書き留めた記録本をパタンと閉じると、自分の椅子に深く座り直して、唸りながら考え始めた。腕を組んで、眉を寄せて考えているせいか眉間に少しシワができている。そして、数分考えてから、ひかるは俺に1つの提案をした。
「う~ん。危なかった時のために、一応僕とメアドを交換しておこう? そうすれば無くなる気がするんだよね。僕。」
「そ、そうなのか?」
「うん! そうだよ。」
悩んだ末に出した結論が、ひかるとメアドを交換する。であった。
うぇ? そんなんだけでいいのか? という俺の思いが強かった。 いや、だってさ、あれだぜ? ほら、四時間目だけで3桁越すんだよ? スゴくない? 相当俺に恨みを抱えてるやつだよね? ね?
「まもる君。恨みを抱えている奴もいると思うけど、歪んだ感情もあると思うんだよね。僕。」
俺の心を見透かしたかのように、ひかるはさっきの考える表情から、何かを知っているような…気がついたような顔で、俺に向かって言った。
「歪んだ感情って、例えばどんなのだ?」
参考までに聞いてみたかったので、俺はひかるの方を向いて言ってみると、ひかるはニヤリと不敵に笑うと、俺にその答えを教えてくれた。
「まもる君の事が大好きすぎて、そうなることもあるんだよ?」
「そ、そうなのか……」
俺の事が大好きすぎて…か。嬉しいようで、恐いな。それ。
「んじゃ、僕はお昼を食べに行くから、まもる君も一緒に行こう?」
「あぁ、そうするよ。」
俺は弁当を持って、俺よりも小さいひかるの背中が、とても大きく見えて安心感を抱きながらその背中についていった。
──────────
[五時間目]
──何故だ?
ひかるの言ったとうり、メアドを交換し終わった時から、何だか視線を感じなくなってきたのだ。
もしかして、俺とひかるとの行動を見た犯人は、何かしらの感情が芽生えて、俺のことを追うのをやめたのだろうか。それとも、一時的にやめて、数日後にまた同じようにするのか……いや、どう考えても最初の考えに違いない…!!
俺のことを何かの感情を抱いたままの犯人は、俺とひかるが仲よさそうにしているのを目撃し、安心したのか、あるいはもう嫌になったのか…ひかるに迷惑をかけたくなかったのか…そんな感じの理由で、俺のことを追い回すのをやめたのだ。うん。きっとそうにちがいない!!!
ってわけだか、しっかりと記録はしておこうと思う。
①午後1時。
②131回。
③左後ろから。
④なんか、先程と比べたら優しくなったような気がした。
⑤何も感じない。寒気もしない。ってか、どっちかというと暖かい?
[六時間目]
体育館でただいま記入中だ。五時間目以降、冷たい視線はなくなったが、20分に1回目のペースで視線は感じる。でも、その視線はなんか、暖かいし、四時間目のときと比べると圧倒的に視線を感じる回数が少ない。そんな状況だがいったん記入することにしよう。
①午後2時9分。
②134回
③体育だからか、よくわからない。
④五時間目と同じ。
⑤五時間目と同じ。
──────────
「うん、うん! 良かったねまもる君!!」
「あぁ、これもひかるのお陰だ。」
六時間目の授業を終え、ひかるのもとに記録本を手渡すと、ひかるは黙って本を開き、黙読した。そのあとに、安心しきった顔を俺に向けて、心底嬉しそうに微笑んだ。
「始めはどうなるかと思ったけど…やっぱりひかるはとても頼りになる。また困ったら助けてくれるか?」
あさと、よっシーにも、勿論頼りにしている。でも、こんな感じの悩みなら、きっとひかるが最適なのであろう。実際に解決してくれたも同然なんだ。ホント、ひかるに頼って大正解だった。
今日の経験で、ひかるはとても頼れる存在と認識した俺は、少し恥ずかしさを混ぜながらも、笑顔で訊いてみると、ひかるは快く頷いてくれた。
「モチロンだよ!!」
可愛らしくも、整った顔から、ひかり輝く笑顔が今、咲いたのだった。
ひかるside
僕は家に帰ると、ひとまず自分の部屋に向かった。部屋について早々、手荷物を机の上に放り投げ、制服を脱いでハンガーに制服をかけてから、無言でベッドにダイブした。
「へへへぇ…まもる君、結構やるね。でも、本当に恋愛面で超鈍感なんだね。」
普通の人なら、恋愛に関するものが多いので真っ先に疑うと思っていたけれど、全然そっちに結び付かなくて、とても呆れてしまった。でも、そんなまもる君も大好きだよ♪ そんなことを思いながら、机の上に目を向けた。
机の上に置いてあるのは、まもる君が今日視線を感じたのを記録したノートが置いてある。水色と白のストライプ模様でとても可愛らしいノートだ。そんなノートに書いてある内容は…全てがボクのコトである。つまり…
──ボクが
ボクはまず、まもる君と
『ボクの存在を必要としてくれること。』
今回の件は、全てボクがまもる君と
まもる君はとてつもなくモテる。鈍感のクセにかっこよくて、優しくて、周りがみれて。そんな彼がボクは大好きなんだ。愛してるんだ。だから、まもる君をボクのモノにするために考えたのが今回の作戦なんだ!
──スゴいでしょ!!
まもる君の事をずっと見ることが普通になってきちゃったから、メアドを交換したあとは辛かったけど、メアドを手にいれただけでも良かったことにしよおっと。
「えへへ、まもる君。携帯を開いたとたんに君の顔が観られるのが嬉しくて仕方ないし、メアドを手にいれたし、残るは…アハハハ。」
携帯を右手でギュッと携帯を握りしめてみる。ボクの携帯の待受画面は、図書室で隠し撮りしたまもる君になっている。画面越しに写っているまもる君の額にキスをしてから、ボクは携帯を静かに閉じた。
ふふふっ、まーもーるー君っ♪
待っててねー?
ボクは部屋で優しく携帯を抱き締めながら、次の作戦を考え始めるのだった。
ひかる「僕とボクでは、違うからね。」
作者「そう…なの?」
ひかる「そうだよ? 貴方が作ったんだよね? しっかりしてよー。」
ってことです。(笑)
感想&指摘よろしくお願いします!!