タブレットがすべて悪いんです。
月の始めは調子がよくて…!!
アプリを一瞬で開けるからっ!!
すべてはこいつが悪いんでs…茜「それではどうぞ。」
茜side
「おはよう、茜。」
教室に入ってすぐに見たのは、アイツの顔だった。
「おはよう…真守。」
ウチがそんな感じで返すと、何も考えていないのか、それともただ単にアホなのか分からないが、真守は無邪気な笑顔を浮かべて、ニカッと、ウチに笑って魅せた。
あぁ、コイツはこの笑顔で、何人の人を殺めてしまったのだろうか……。 可哀想に…勿論、やられた人に向けて言っている。真守のことなんか知るか。
ウチは自分の席に行こうとするものの、突然、真守がウチの目の前に現れたので、つい「ひゃっ!?」と言う声が漏れてしまった。
「そういえば茜、数学のプリントっていつまでだっけ?」
ただいま、ウチの顔の目の前に、真守の顔が間近にあるので、ドキドキが止まらない状況だ。こんな時に話しかけられても、ウチは黙って俯くことしかできないのだ。なぜか恥ずかしくて、緊張して、いつも意識してしまう現象に悩まされているのに、更に意識してしまって、空回りになりそうだったから。だからウチはなぜかニヤける口を必死で堪え、そんな情けない顔が見られないように、静かに俯くのである。
──何なんだ…『コレ』は……
なぜ、真守と居ると嬉しいんだ? 意味がわからないのだが…
何なんだこれはぁーー!!!!
「茜?」
「っ!?////」
ウチは真守の肩を両手で押して道を強制的に作ると、そそくさと自分の席に向かった。すれ違い様に真守の顔を盗み見してみると、驚いたような顔をしていた。
そりゃそうだ。ウチもあんなことされたら驚くに決まっている。でも、今のウチには、真守の顔をみて、目をみて話すことが、何だか恥ずかしくてできないのだ。ホント、何なんだ、この胸の中にある、フワフワとしたような、締め付けられるような…変な感情は。経験したことがないぞ…何かの病気なのか? 新型のインフルエンザなのか? う~ん。よくわからないな。
自分の席に着くと、茅根がウチの席に近づいてそして、ウチの目の前で立ち止まった。
「おはよう脳筋ヤロー。」
「おはよう外見不良中身キチガイ茅根。」
ウチは笑顔でそう言い返したが、残念なら茅根も笑顔だった。なんだ、今日はてっきり泣くかと期待したんだが…。
ウチと茅根はいつもこんな風にして挨拶をする。周りからみたらとてつもなくヤバい雰囲気が漂っている風に見えるが、まぁ、朝の挨拶の時だけは実際に漂っている。近づくだけで泣くぞ。なんにせ…
「本番はここからだぞ? わかってるのか? お前こそ脳筋なのではないのか?」
「フンッ、確かに英語『は』お前の方が点数はいいが、そんなに差はないだろう? さて、どっちが脳筋でしょうか?」
「脳筋っていった方が脳筋だろ。この脳筋め。最近全然出番が来なかったくせに。」
「なっ…それは俺じゃなく、作者にいえよ。俺に何かの嫉妬でもしてんのか? 普通に考えろよおバカさん。」
「お前に嫉妬することなんてないだろ、出番が全然ないくせに…このモブキャラ。」
「黙れ。」
「はい、論破っ!」
そしてウチは、足下にある茅根の右脛を制服越しから結構強めに蹴った。
「イダァッ!?」
茅根は痛さのあまりに後ろ側に飛び跳ねてしまい、災難なことに、後ろにあった机の角に自らの肘をガツンとぶつけた。脛と自分の肘に痛みを感じているのか、茅根はその場にしゃがみこんでしまう。
「いっつぅー。」
「今日もウチの勝ちだな。」
「くっそー。何なんだよ、いきなり攻撃すんじゃねーよ。」
痛そうに脛と肘を抑える茅根を、満足げに数秒間眺めてから、ウチは優しく微笑んだ。
「朝の恒例行事で一度も負けたことが無いからな。そのお祝いに脛を軽く蹴ってみたんだ。その様子だと…効果は抜群ってことだな。」
「それを笑顔で言うことかよ…ってか、軽くって…ドンだけ力強ぇーんだよお前は……」
軽くってのはモチロン嘘である。正直あれは、結構本気で蹴ったんだが、まだまだ余裕な表情なのは、やはり男と、女の体つきの問題なのだろう。前まで喧嘩に明け暮れていた茅根との違いは、やはり経験の差と体作りの差なんだなと、改めて思う。
「…んで、話変わるけど、茜は好きなヤツとか居んのか?」
「……………ハァ!?」
不味い、つい大声を出してしまって、クラスの皆がウチと茅根の方を向くが、すぐにどうでもいいと思ったのか、それぞれの会話に戻った。
誰も追求しなかったことにひとまず安堵して、恥ずかしい思いをした元凶を睨み付ける。
すると、「やっぱりな」と言わんばかりに、茅根はニヤニヤした顔つきになる。
「おっと、そんなに睨むなってば。睨むってことは好きなヤツがいるんだな…」
「ばっ!? そ、そんなことは…ない……。」
最初は強い口調で言えたものの、後半は自信が無くなって、自然と張り上げていた声が一回り小さくなった。何故なんだ? 強く否定することができない。
友達から聞いたことがある。
人は誰かを好きになると、毎日が楽しくてしかたがないと。憧れの人とすれ違ったり、視線があったりするだけでも、心臓がドキドキしたり、話しかけられると嬉しくなったり、憧れの人が知らない女性と話をしていると悲しくなったり。さまざまな感情がうまれるが、正直よくわからない。
なんにせ、ウチは今まで【恋】というモノを経験していないからだ。
男子と話すことの、どこにそんな感情が生まれるんだ? なんで緊張するのか、よくわからない。
──好き。ってなんなんだ?
そもそもウチには好きと言えるような人がいない。…いないはずだ……たぶん…?
チラっと、真守をみてみた。
今は自分の机に寄りかかって、朝一と義成の3人でおしゃべりに花を咲かせている。そのなかでも、自分の瞳が、真守だけを映してしまう。自分の目なのに、なぜかそっちが気になるのだ。
あっ、クラスの女子が、真守に話しかけた。
真守は楽しそうに笑顔でその女の子と話をしている。みんなに向ける笑顔が優しい顔が、今はなぜか憎い。
その笑顔をウチに向けてくれればいいのに…真守なんて大嫌いだ。
ってか、そもそもなんでウチは、真守をみたんだろう…ウム、よくわからない…
そんなことを思っていると、ウチの肩をチョンチョンとつつかれたので、振り向いてみると、とてつもなくドアップした茅根の少し悔しそうな顔があった。
「うわっ!?」と、声を出しながら後ろに下がろうとしたものの、椅子に座っていたため、ガタッと音を上げて転びそうになってしまった。
「ちっ、俺は負けねーからな。」
「なっ、なにがだよ!?」
「ん、全部に決まってんだろーが。俺はぜってぇーに奪うからな。」
最後にウチをみながら、茅根はニコッと微笑んだ。
~放課後~
サヤと一緒に、すっかり赤くなった空の下で帰り道を歩いていた。暑くなりつつあるこの時期、部活をやっていないウチたちは、汗をたくさん流すわけでもなく、帰宅していた。
いつものように駄弁りながら歩き、ネタが尽きて一息していた時、サヤはなにか決心したような目になった。
その姿に、なにか嫌な予感を感じた。聞いては聞けないような、後悔するような、そんな感じの予感。ウチは首をふってそんな思考を停止させるが、残念ながらその予感は的中することになる。
「茜ちゃん、私ね………真守君のことが好きなんだ。」
歩きながら空を見上げながら、サヤはそういった。
「えっ?」
動いていた自分の脚が、何かに引っ張られるかのように、その場に立ち止まり、動けなくなる。コンクリートの地面に草が生えて、ウチの脚に絡み付いて、全く動くことができない、そんな感じ。
暑いはずの空気が凍り、何も感じられなくなる。汗が頬をつたり、静に地面に落ちた。コンクリートに汗が染み込むのと同様、サヤの言葉はウチの心に染み込んだ。一分一秒がとても長くて、長くて、長くて…
「茜ちゃん、私は絶対に負けないから。」
あぁ、これ、どこかで聞いたことがある。どこだっけか?
全然頭が追い付けなくて、ただただ呆然と立ち尽くした。脚が動かない。動けない。心臓が脈打ってうるさい。そして、心がとてつもなく悲しい。
──サヤも真守のことが好きなんだ…
サヤ……「も」?
「あっ、そうなんだ。」
止まっていた時計が動き出すかのように、ウチの固まっていた頭が一つの答えを導きだした。
──これが『好き』なんだ。
ウチは緊張している顔のサヤをみて、息を吐きながら笑って魅せた。
「もちろんだ。ウチだってサヤにも負けない!」
ライバルがいるから、親友がいたから、ウチは初めての感触を味わえることができた。 どっちかが負けるか、どっちも負けるか…ホントは怖くて嫌なはずなのに、気持ちの整理が必要なのに、なぜかウチは嬉しくなった。だって、サヤが正直に話してくれたんだ、ライバルって認めてくれたんだ、初めての気持ちに気づけて嬉しいんだ!
男っぽくて、全然女の子じゃないウチでも、ちゃんと好きな人ができて、恋することができて、本当に嬉しいんだ。
だから、サヤにこう言うんだ。
「サヤ、ありがとう。」
二人で顔を見合わせて同時に笑った。
サヤの真剣な宣戦布告を聞いて、ウチも宣戦布告をして、二人で笑ながら帰る。そのときに、新たな決意がウチの中で大きく芽生えたのだった。
好きな人でてこーい!
そう願う作者です。
感想&指摘よろしくお願いしまーす!!