異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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kkkと戦陣館がやりたいが為に、Vitaとソフトを買った人←作者
パラロス?知らない。

あとそれで遅れました、すみませんm(_ _)m
100話目なのに…


閑話-14 人間界の今

「ちっ、ここも一足遅かったか。タクミ! あとどれくらいで転移できるっ!?」

「かなりの長距離なんで、もう少しかかります!」

「委員長! あんまり持たないよ!」

「分かってる!」

 

 暗い夜道を走りながら、《転移門》を発動する為に魔力を練り上げていく。今更ながらに気がついた事だが、余りにも長距離を転移するのには大量の魔力と詠唱破棄のスキルが有っても時間がかかる。

 そしてそんな俺たちに多数の風切り音と共に、矢の雨が降り注ぎその後ろからは《火球》の魔法が迫ってくる。

 

「《水遁・水流壁》!」

「おらぁ!」

 

《転移門》にかかりっきりで他の魔法が使えない僕の代わりに、鈴華とアルディートさんがそれぞれ防御する。鈴華の生み出した水流の壁で《火球》が打ち消され、それを突破してきた弓矢はアルディートさんが剣圧で薙ぎ払う。

 

「準備出来ました、長距離転移いきます! 3、2、1!」

 

 そしてその走っている勢いのままに俺たちは転移門をくぐり、【リフン】の街に転移した。三人だけなのは、あまり大々的には動けないのと、俺のMPの問題だ。

 

 

 

「あぁっ! 七大罪スキルってこんなに厄介な奴なの!? テンプレか!!」

「結局今回の街も、結局ダメだったものね」

 

 そう、結局今回転移して行った街も、全員が海堂のスキル【七大罪・色欲】の効果で洗脳されてしまっていた。しかもその洗脳が、こちらに対する異常なまでの敵意を植え付けるだけというからタチが悪い。

 

「今のところ、無事な街はここを含めて5箇所。いつかは物も足りなくなるだろうし」

「じり貧……よね」

 

 山ちゃん先生のスキルでダンジョン化した街が5つ、僕達勇者が16人、アルディートさんとSランクのパーティーが6つで23……いや、この前1人頼まれて信頼できる人? の来る場所に送ったから22人。そしてそれ以外の冒険者の人達が、今洗脳を広げている海堂に対抗している全戦力だった。

 ダンジョンはDPとかいうよく分からない仕組みで動いているらしいが、安全なのは確かだ。

 

「本当、これからどうなる事やら」

 

 今ここに至るまで何があったのか、ちょっと昔話をしたいと思う。いや、昔話って言うほどでもないか、ほんの数ヶ月前の事なんだし。

 

 ◇

 

 獣人達との戦争を中断させ海堂達を避けながら撤退していた俺たちは、時折魔物の襲撃やレベルの割に異様な強さの黒い霧が纏わり付いた王都の騎士団の人達を撃破しながら、サーマスの近くにあるオルトューナというそこそこの大都市に逃げ込んだ。

 消耗品やら武器やら色々な物が不足しているこの状況、防衛設備も整っているこの街ならしばらくは安心できるだろう、というアルディートさんの判断に異論はなく、街の人達も友好的だった為俺を含むクラスメイトのみんなも安心して気を抜いていた。いや、気を抜ける筈だった。

 

 

 

 その日の深夜、嫌な予感がして目を覚ました俺が宿の部屋から見たのは、紅蓮に燃える街並みとその手に何かしらの物を持って暴れている黒い霧を纏った住民の姿だった。

 その黒い霧は僕達勇者にしか見えない物らしいけど、明らかに洗脳されてる人から見えるものだった。

 

「一体何が……? いや、もしかしなくても海堂だろうけどなんで? 距離もまだあった筈……」

 

 そんな予想外の光景に、多少呆然としてしまっていると部屋のドアが勢いよく開け放たれ、鈴華さんが飛び込んできた。

 

「委員長は委員長だよね!? 大丈夫だよね!?」

「何が何だかわからないけど、とりあえず俺は俺だよ」

 

 そう言った俺を、鈴華さんが何故かじっと覗き込んでくる。名前呼びに変わった事もあって、こんなに顔が近くにあるとすごくドキドキするというか、なんか意識しちゃうというか。

 

「大丈夫……みたいね。とりあえず逃げるよ委員長!! 街から脱出しろってギルマスさんも言ってた!」

「とりあえずわかった!」

 

 時間が無さそうなので、異次元収納の中から鞘に入ったままの剣だけを取り出して、前を走る鈴華さんに付いて走っていく。

 昼間は普通だった街の人は魔法で吹き飛ばし、それを越えてくる兵士の人達はある程度加減して剣を叩きつける。

 

「何がどうなってるのか、鈴華さんは知ってるの?」

「私も詳しくは知らない! けど、そこら辺にいる人に解析を使えば予想は出来るよ!」

 

 そう言われたので急いで解析を使ってみると、表示された状態異常の欄に【感染・洗脳】【感染・催眠】と書かれていた。

 

「洗脳って……しかも感染って……デタラメじゃん」

「一応ある程度の力を持ってる人には移らないみたいだから、北側の城門に残ってる人は集合なんだって!」

 

 そして、俺たちはオルトューナの街から脱出した。

 

「離せぇ! テメェら離しやがれ!」

「クソがぁ!」

 

 脱出した先の北の城門は、酷い状況だった。人は百人いるかいないかで、そのうち何人かは鎖に巻かれて拘束されている。そしてその全員が口汚ない言葉で罵っている。

 

「ようやく来たかお前ら」

「アルディートさん! 一体、今はどんな状況なんですか!?」

「まあ落ち着け、今からそれは説明する」

 

 キッと真面目な表情になったアルディートさんが、こちらを見て言う。

 

「ギルドの文献を漁ってきて分かった事だが、多分この現状は七大罪スキルっていうやつが原因だ」

「七大罪スキル、ですか?」

「あぁ、お前の持ってる忍耐のスキルの対極のやつだな。洗脳と感染ときたからにはおそらく色欲と嫉妬だろう」

「色欲と嫉妬……その洗脳は解けないんですか?」

「無理だな。通常の回復魔法は一切効果が無かった」

 

 鈴華さんは何かしら思うところがあったのか、少し考え込んでいる。七大罪か……小説だとそんなに主人公の危機感とか分からなかったけど、ここまで酷いなんて。

 

「まあ詳しい話は追々だ。この色欲の効果にかからねえのは、俺と復讐の対象……まあ状況から察するにお前らだな、それしかいない。移動ばかりになるが、違う街を目指す」

「それでも結局、ここと同じようになっちゃうんじゃないですか?」

 

 俺が言おうとした事を鈴華さんが先に言った。結局逃げ込んでもここと同じになったら意味がないんじゃないか? 

 

「それに関しては大丈夫だ。ここでは間に合わなかったが、お前らの先公のスキルで街をダンジョン化しちまえばどうにかなる」

「そ、そうなんですか、分かりました。それじゃあ、他の人達の集合を待って出発ですか?」

「いや、今ここにいる奴らの準備が整ったら出発だ。他の奴らはもう手遅れだ、お前らも早く準備しとけよ」

 

 そう言ってアルディートさんは去っていった。

 いきなり色々な情報が出てきたせいで頭の中が混乱しているが、とりあえずもう手遅れな人が多いこと、逃げないとこちらがやられるという事だけは分かった。

 

 ◇

 

 そしてその後色々な街を転々として、落ち着いたのがこの【リフン】の街だったという事だ。

 他の大陸に逃げればいいかとも考えたが、僕が飛ばせるのは他人1人が限界だ。その上人族は戦争をしたせいで魔族からも獣人からも敵視されている。

 これが今の、詰んでるんじゃないかと思える人間界の現状だった。


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