異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
《炎纏》から部分獣化(目と耳と尻尾)まで多種多様なパフをかけながら屋根の上を走って私がダンジョンの付近に到着した時、そこはとても酷い状況になっていた。
ダンジョンの入り口からワラワラと出てくる虫を昨日のおじさん達みたいな人達が街の方に溢れないように止めており、空を飛んでいこうとする魔物を魔法で撃墜しているのだが、いかんせん人数が足りないようで討ち漏らしが少しずつ出ているようだった。
「虫の魔物を一掃します! 気をつけてください!!」
マイク剣改をちゃんとマイクとして使って注意を呼びかけた後、ダンジョンの入り口に向かって飛び上がった私は、とっておきの一つの魔法……いや、魔導? を発動させた。多分この元ネタはリュートさんでも分からない筈だ。
「《
私の周囲の空間から大量の炎が吹き上がり、空中地上地下構わず縦横無尽に炎が駆け回っていく。
まだ私の技量が足りないせいか、オレンジ色の炎は数秒で消え去ってしまったけど、その数秒で目に映る範囲の虫を灰にするのは結構簡単な事だった。最低でもこれくらいはやらないと、真似したとも言えないからね。
「もう少しで援軍が来るから、もうちょっと頑張って下さい!!」
危ねえじゃねえかとかなんとか言ってる文句を無視して、そのままダンジョンの入り口に飛び込む。……入り口、所々デロって溶けてたりガラスみたいになってたけど仕方ないよね。
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「ふっ飛べ、うぞーむぞーっ!!」
大鎌を持っていない左手を中心に回転していた3つの魔法陣が拡大拡散、その中心から発射された光の衝撃波がひしめいていた魔物を吹き飛ばす。
「ってもう! 魔物多すぎ!!」
まだたった8階層目だと言うのに、かなり時間がかかってしまっている。といってもカップラーメンが出来るくらいだが。
「あぁもう、加勢が遅れて死んじゃう人が居たりしたらトラウマものだし……ええい、やっちゃえ!」
幸いにもここはダンジョン、どんな大魔法を使ってMPが消し飛ぼうと(ほぼ)永遠にMPは回復出来る。どこかからここに入った時に聞こえた声とはまた違った啜り泣く声が聞こえた気がしたけど、そんなのは知った事じゃない。
「《タナトニウムランサー》!」
私が頭に叩き込まれた情報の中で、危険度がMAXのタナトニウムという空想上の金属を槍状に成形して、結構離れた場所に打ち出す。それは、どこぞの蒼い鋼なアニメに出てくる侵食魚雷のように、バシュゥゥゥンっという音を出して、ダンジョンの床に大穴を開けた。
「次の階まで……空いてるみたいだね。よし、行けそう!」
私が穴の縁からひょっこりと下を覗き込むと、その大穴の下にはきちんと次の階層が広がっていた。自分でやっといてなんだけど、もうコレダンジョン攻略じゃないね。
「まあいっか。《タナトニウムランサー・マルチショット》!」
ぴょんと穴に飛び降りて、私は更に魔法でダンジョンを突き破っていく。なんだろう、これすっごい楽しい。
「イヤッホオォォォオオォウ!」
そんな風に叫びながら落下して行って、数えて15層目。そこに広がっていた光景もダンジョンの入り口と同じ……いや、それよりも酷かった。
黒光りする巨大カブトムシ、倒れている色々な人達。所謂レイド戦でもしてたのかな? そしてフラフラになりながらも立っているロイド。
……今、何気にロイドって悪運が強いなぁって思った。
「はぁ!?」
「昨日ぶりだね、ロイド!」
そのままズダンと着地して、私は刀身のひびから光を漏らす大鎌をカブトムシに向ける。一応私としては、なんでボス部屋にいるの? とか、なんでシンディさん達がいないの? とか、
「色々聞きたい事はあるんだけど、まずはあのカブトムシを倒すって事でいいかな?」
「あぁ、だけど俺はもう碌に動けないぞ?」
「休んでて《ハイヒール・
とりあえずステータスを見ても危なかったので、《エクスヒール》1歩手前の回復魔法をロイドにかけておく。そんな事をしている間も、カブトムシからは目を離さない。SとSSの間くらいのこのカブトムシから目を離すのは、いくら私でも無理!
「と、まあ。よくも私の知り合いを……しかも唯一の名前を覚えている男の子をこんなにしてくれたよね」
因みにリュートさんは例外ね、だって私の保護者みたいな立場の人だし。うん、今度パパーとか言ってあげてもいいかもしれない。
「許さないんだから」
ロイドが好きとか、そういう感情はこれっぽっちも……いや、小指の爪の先の垢くらい(ゲーム的に言うなら初期値?)はあるかもだけどまあそうじゃない。けど、自分の知り合いがボロボロにされてるのを見て、黙ってられる程私は性格が良くはないんだよねぇ。
「ギギギィィィ!」
「その角に甲殻に、全部置いてけえぇぇ!」
まあ、本心はこっちなのだが
ダンジョンコア(さようなら ロリに狩られる 私かな)