異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
流石に帰省先の電波が壊滅してるなんて思わなかった…
しかも親戚の人達がいる前で電波の無い携帯を使ってたら怪しまれるから書き貯めも出来ないし…只々疲れました…
「ロ〜イド〜とや〜りた〜いな〜、てっかげん無っしの〜ガっチバっトル〜。ズッドン、バッコン、ドッカンと〜」
なんとなく着てみた紫の着物と、それに合いそうだったから差した番傘をくるくると回しながら、シトシトと雨の降る街の中を歩く。
歩くたびに鈴の付いた髪飾りがリンと鳴って、中々に風情がある感じだ。
「よくもまあ、普通の童謡をそんな凄く殺伐としたものに変えられるよね」
「イオリちゃんが歌ってると、それでも明るく聞こえるから不思議だよね」
パシャパシャと足元の水溜りを踏みながら歩いている私に、相合傘をしているリュートさんとレーナさんがそう言ってくる。
なんか知らないけど、私が昨日に引き続いてロイドのリハビリをしてきた後食材の買い出しをしている間に、この2人はデートをしてたらしい。ちょっと私、今なら
「だって私の本心なんだもん♪ 多分引き受けてくれるだろうし」
「こうやって聞くと、イオリちゃんとロイド君って付き合ってるみたいだね」
「なに言ってるのレーナさん? そんな訳ないじゃん」
「ロイド君、多分イオリさんの事好きだろうけどなぁ」
「ないない」
リュートさんがそんな事を呟いてるけど流石に無いでしょ。だって5歳差だよ5歳差?
まあでも、もしそうだとしたら殺し愛夫婦か……特異点に堕ちそう(kkk感)というか、改めて考えると私の渇望ってなんだろう? 死にたくはないけど
「まあいいか。それよりもさ、昨日指輪のサンプル渡したけど決まった? 決まってるなら今日辺りに完成させるけど……」
「流石にもうちょっと待って欲しいかなぁ……」
「イオリさんが、サンプルとかいって30種類くらい持ってくるからだよ」
「てへ☆」
だって探せばそれくらいあると思わない? 指輪の材料組み合わせって。それにしてもまだ決まってないのか……どこかの鍛冶屋さんの工房? を貸してもらって
そんな事を考えていた私に、ふとリュートさんが質問してきた。
「そういえばイオリさんって、次の目的地とかってあるの?」
「うん! この前リュートさんが言ってた【水神の大迷宮】!」
「人間界に、近い場所だね」
「らしいね〜」
レーナさんが私だと微妙としか表現出来ない顔をしてそう言う。
今日ギルドで聞いてきた話だけど、この大迷宮っていうのは10ヶ所あって、獣人界から見て一番右側にあるのが火属性の迷宮で、空間、呪い、龍、生活を除いて私のメモの順番通り左回りに並んでるらしい。
かなり円形に近い形で並んでるらしいけど、ちょこちょこズレはあるみたい。そしてここからだと結構遠めの場所に水の迷宮はあって……とここまで考えが巡った時に、ふと私の頭に? マークが浮かんだ。
「って、あれ? どうやって行けばいいんだろう?」
どうやらいつぞやのライドファングみたいな乗り物は無いらしいし、私とフローで運べるのもサイズ的に私含め3人が限界だ。ロイドがパーティーに入ったからそれはキツイ。
そう私が頭を悩ませていると、リュートさんが若干呆れた感じのため息を吐いた。
「一応、ヴィマーナが有るんだけど」
「え? でもそれって、確か魔力が持たないから無理だったんじゃ……」
確かそんな事を、獣人界に入った頃に言っていたような記憶がある。だから一応選択肢から外していたんだけど。
「一応、僕だって進歩はするよ。イオリさんみたいに突然変異する訳じゃないけど」
「そんな、突然変異だなんて……」
「褒めてないからね。あとくねくねしない」
「はーい」
顔に空いている片手を当ててくねくねしてみたが、即座にダメ出しされてしまった。むぅ、そんなに似合わなかったか。
「それと、レーナと同じで僕も人間界にはあんまり近寄りたくないかな」
「やっぱりそれって、リュートさんがレーナさんを助けたっていうやつ?」
「そうだよ、イオリちゃん。リュートくんが来るのがもう少しでも遅かったらって思うと、今でも怖いんだよ……私」
自分を抱くようにしてレーナさんがそう言った。多分私じゃ想像もつかないような事があったんだろうけど、この気まずい沈黙はなんかやだし……あ、
「そういえば私も、最近奴隷商の人に捕まったんだった」
そう私がポツリとこぼした言葉に、二人がとても驚いた表情になる。
「イオリちゃんが?」
「自分から行ったとかじゃなくて?」
「うん。森の中でハンモックを張ってお昼寝してたんだけど、起きたら手枷足枷にボロ服と首輪付けられて鎖で繋がれてた」
いや〜あの時は焦った。目が覚めたら奴隷っぽい格好で牢屋の中に居たんだもん。何より大鎌が背中になかったし。
「それでどうなったの?」
「えっとね、ドラゴンパワーで鎖を引きちぎって牢屋をぶっ壊した後、外に出てみたら……」
「出てみたら?」
興味津々といった感じでリュートさんが聞いてくる。あれは正直言って私もびっくりしたんだけど……
「私が閉じ込められてたのは地下だったんだけど、上部の建物は全部瓦礫になってて、数人気絶した人が倒れてて、近くの空中にこの大鎌が浮かんでたんだよ。しかも赤黒いオーラを纏って」
そう言って私は大鎌をポンポンと叩く。これはリュートさん達には言わないけど、その後からテキストが『聖遺物では無いので創造とかは出来ない』から『場に染み込んだ数多の負の感情や魔物などの魂を喰らった事で聖遺物と化した』に変わってたんだよね。創造は多分自分の渇望が分かんないから使えないけど。
「で、その後とりあえず倒れてる人を縛り上げて、瓦礫の中から証拠品を探したり、捕まってた人達を助けて一緒にご飯を食べたり、その後近くの町にみんなで向かったりしたんだけど……どうしたの?」
リュートさん達が引きつった笑みを浮かべていたので話を止める。あれ? 私何か変な事言ったかな?
「イオリちゃん、よくそんな怖い物背負っていられるね」
「ん? だって造る時からこうなるかなって思ってたし」
「それじゃあイオリさん、『聖遺物』って言うんならその……やっぱり人を?」
リュートさんが恐る恐るといった感じで聞いてくる。いや、多分あの施設にいた人達をパクパクしたんだろうけど……
「いや、定期的に魔物を狩ってれば大丈夫みたいだよ」
「良かった……」
リュートさんが心底ホッとした表情になる。
うん、シリアスっぽい雰囲気はどうにか押し流せたっぽい。
良かったっぽい。
イオリちゃんの渇望ってなんなのか作者自身も分からない件。
いや、一応少しは候補はあるけどね?