異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
ぐぬ、ロリコンと食べりゅ教と釘宮病とが化学反応して何かが出来そう。
「変態、デリカシーっていうのを考えてよ」
「デリカシーって、なんだ?」
「…繊細さとか思いやり」
右の頬に真っ赤な紅葉マークのついたロイドと、私は怒ってますよーという雰囲気を出して歩いていく。まだ来てないのは神様のせいなのかそれとも年齢的にまだなのかは分からないけど、やっぱりそういうのを聞くのってよくないと思うんだ!!
「でもまあ、そろそろダンジョン着くからいいけどさぁ…これからは気を付けてよね?」
「あ、あぁ」
そんなことを話しながら神殿風の建物の前に出ると、そこには予想よりも大勢の人が集まっていた。こ、これは1人で来てたら流されてたかもしれない。
「とりあえず、並ぼっか」
「そうするしかなさそうだな」
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と、そんな感じで並んでいたのだが…
「私としては、子供二人でダンジョンに入るのは容認出来ません」
思いっきりダンジョンに入るのを止められていた。だから待機するための場所で絶賛話し合い中である。能力的には良いらしいけど、私としては許せないってこの出張ギルドの受付嬢さんは言ってるんだよね。
「でも私達、SとBランクの冒険者ですよ? 身長はちっちゃいですけど」
「Sランクって言っても、貴女は鍛冶師でしょう?」
「魔法ならSランクオーバーらしいですよ? 私」
普通のSランク冒険者の人は、隕石を降らせたり足元を噴火させたりは出来ないらしい。そういうのを出来るのは、SSでも上位の実力の人(魔法特化)とかSSSランクとかの人外だけなんだって。
「それでも、ダンジョンの中では危険です! 前衛がそこの子しかいないですし、貴女自身は……」
「一番得意なのは大鎌ですけど、二刀流、槌、片手剣……その他の武器でも、B〜Aランク相当の動きは出来ますよ? 使うための武器なら沢山持ってますし」
武芸者の卵っていうEXスキル、武器を作りすぎてゲットした大量のスキルが集まって出来たアレのお陰で器用貧乏レベルでならほぼ全部の武器が使える。元々使ってた二刀流と戦鎚……あとちゃっかり銃は別だし、大鎌に至っては死神っていう最上級スキルになってるけどね。
「そこの君も止めなくていの? この子が大怪我しちゃうかもしれないんだよ!?」
「いや、イオリは俺よりよっぽど強いし実戦経験もありますし。イオリが大怪我するような状況になったら、俺は多分死んでますよ?」
余りにも普通にロイドがそう言ったせいか、一瞬受付嬢の人が固まった。というかまあ、致命傷以外なら数秒で治せるんだよね私。
「うぅ、あぁもう!! それなら5階層、5階層までです! それ以上は今度保護者の方と一緒に来てください!」
「やったー、行こ! ロイド」
そうやってエイナさん(仮)を突破してダンジョンに入ったまでは良かったのだが、1階層に入って数分で1度私の意識はプツンと途切れた。
◇
その異常が起こったのは、俺とイオリがダンジョンに入ってからほんの数分後の、飛び出してきた大きめのカエル型の魔物を倒した時の事だった。
「そういえばカエルって確か、鶏肉のささみみたいな感じで食べられるらしいよねー。毒とかには気をつけな……きゃ」
イオリがカエルを仕舞ってる間、いつも通り隣に立って周囲の警戒をしていたのだが、イオリの動きがピタリと止まった。
「大丈夫か? ダメそうなら、今からでも帰るのは遅くないと思うぞ?」
「……」
そう話しかけても、先ほどとは違って返事すらない。なんだか心配になって前に回り込んで顔を覗いてみると、イオリは虚ろな表情でどこだか分からない所に目を向けていた。
「え、本当に大丈夫か!? おーい!」
顔の前で手を振ってたけれど、これでも一切の反応を示さない。これは本格的に大変な事なんじゃ……そう疑い始めた頃、ポツリとイオリが呟いた。
「呼ばれてる………行かなきゃ」
「どこの誰にだ!?」
やはり俺のその問いかけには反応せず、手に持った銃というらしい金属の塊を大鎌へと変えてイオリは呟いた。
「
その声は小さかったが妙に頭に響き、同時に何かとてつもなく嫌な予感がした。そして、薄っすらと血の匂いが漂い始めてきているこの感じは、前に俺がイオリを突き飛ばした時と同じだ。
「
その言葉が呟かれた瞬間、イオリと構える大鎌がひび割れ、決して広くはないこの通路に濃すぎる血の匂いが爆発的に広がった。そして飛び出していこうとするイオリの手をしっかりと握る。よく分からないけどそうしないといけない気がしたんだ。
「ひるがえりて来たれ、幾重にもその身を刻め・・・ヘイスト」
相変わらず抑揚の無いイオリの声が聞こえたと思った瞬間、もの凄い勢いで引っ張られその衝撃でか俺の意識は途切れた。
◇
「あれ?」
私が意識を取り戻したのは、よく分からない通路の真ん中だった。足元には水が少し溜まり苔が生えているから、多分ダンジョンの中ってことで…うん、ディメンションによるとまだ1階層みたい。
因みに簡単にこのダンジョンの説明をすると、ドラクエ9の宝の地図の水系。
「とりあえずロイド、起きてー」
私が大鎌を持っていた反対の左手に、結構ボロボロになりながらもしがみついていたロイドを回復しながらペチペチとほっぺを叩く。とりあえずロイドが起きてくれれば、この何故か形成を使っている状況とか目の前のディメンションでも分からない空間の謎もある程度分かるかもそしれない。
「うっ……」
そうやって二、三回ペチペチしているとロイドが目を覚ました。起きなかったら傷口に塩でもすり込もうと思ったのが効いたのかな?
「元に……戻ったのか」
「ふぇ? どういう事?」
「いきなり『呼ばれてる、行かなきゃ』って言った後、虚ろな表情で走り出したんだ。覚えてないのか?」
「うん」
ふむふむ、私は何かに呼ばれてここまで来たと。絶対腕輪関連だよなぁ……という事はこの謎空間は少なくとも確認はしないと行けないだろうし……
「はぁ……起きてばっかりで悪いけどロイド、この先戦闘になるかもしれないから準備して。これ終わったら帰るから」
「わ、分かった」
ロイドが剣を抜き終えるのを待って、形成したままの状態で大鎌を使い壁を吹き飛ばす。覗いてみると、そこは今まで居た通路となんら変わりない空間だった。強いて言えば、水が多少深いくらいだろうか?
「《危機感知》が反応してる……」
そう、ロイドが言う通り私の魔眼も危険をずっと訴えてるのだ。一見何もないただの隠し部屋のように思えるけども。
「ん? なんか変な色のやつが見えたような…」
そこまで考えたとき魔眼がキチンとした情報を映し出した。
===《刺突・水、闇系統魔法/威力・中/範囲・大/分裂槍/脅威度 84》===
「
全力で使った私の防御魔法の障壁に、玉虫色の何かがガンガンと当たって弾けていく。え、いや、嘘でしょ? こんな吐き気が出てくる頭の痛さなんてまさか……ええい、とりあえず解析!!
《ショゴス》
頭痛が強くなり、いつもと違って簡易的に表示されたその名前を見て私の疑問は確信に変わった。
「アイエエエ!? クトゥルフ? クトゥルフナンデ!?」
そんな事を叫びながらロイドの手を引いて部屋から出ようする間にも、久しぶりに聞くスキルの取得音が鳴り響く。こんな事を言えてるって案外余裕があるのかもしれない。
ーースキル 精神攻撃大耐性 がレベル5になりましたーー
ーースキル 精神攻撃大耐性 がレベル6になりましたーー
ーースキル 精神汚染大耐性 を取得しましたーー
ーースキル 精神汚染大耐性 がレベル4になりましたーー
…………
「《金属精製・アダマンタイト》! からの《錬金》《錬金》《錬金》!!」
元の通路に転がり出て、自分で開けた大穴を完全に塞いだところで今まで手を引いてはいたものの完全に意識の外にいたロイドの事を思い出す。
「ロイド、大丈夫?変な物とか見えてたり変な音とか聞こえてたりしない!?」
「大丈夫、だから、そんな、ガクガク、揺さぶらないで」
「へ、あ、そうなの?よかった…本当に良かった……」
そう呟きながら私はペタンと座り込んだ。色々びしょびしょになるけど別にいい、だってその方が誤魔化せるし。気が抜けたら…ね。
因みに、精神攻撃大耐性はLV 9に精神汚染大耐性はLV 7に上昇していた。
C(クトゥルフ)R(リアリティ)S(ショック)