異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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\ハイパー厨二テンション/
なお、残るクトゥルフ感は2〜3話の予定。


第27話 思い…だした

「ひぅ…ぁ…」

 

 上から感じる酷い圧迫感、それの元になっているやつを見た瞬間、覚悟はしていたのに私の口からはそんな声が漏れてしまう。

 

 ――探索者B、Dの一時的狂気の突入を確認――

 ――探索者AのSAN値の減少を確認――

 

 そんな声が聞こえる中、私は降りてくる邪神から目が離せない。タコみたいに巨大な頭、それを中心に悪魔みたいな羽とか触手とか変に光る鱗とか象みたいな身体とかそういうのが体育座りみたいに丸まっていて、それがゆっくりとだけど降りてきている。

 

(やっぱりよくない見ちゃダメだよこんなの発狂とかするのも何となく分かっちゃうし実際私も頭痛いし狂気なってないみたいだけどそれよりもそれよりも他のみんなの方が大変だし…って、そうじゃない!!)

 

「レーナさんとロイドは見てないよね!?」

 

 自分で自分の頭にパンチして、ゴチャゴチャになってた思考を吹き飛ばして大声で2人に聞く。

 

「うん、見てないよ。けどリュート君が!」

「あ、あぁ……」

 

 ロイドは両手で自分を抱えるようにして、変な声を漏らしながらガタガタと震えてる。ぐぬぬ、見ちゃった感じか。まあまだ大丈夫だろうとロイドは後回しでレーナさんの指差す方を見ると、リュートさんは頭を抱えて何かを早口でブツブツと呟いていた。まさか発狂しちゃってたりするぱてぃーん?一応リュートさんの言ってる事を聞いてみ……る……と。

 

「えぁぅ……はぅ…」

 

  な、なんかロリの魅力を延々とブツブツ喋ってるんだけど。リュートさんなら大丈夫だと思ってたけど駄目だったか。あぅ……絶対今の私、他の人から見たら顔真っ赤だよ。

 

「あぁもう、動けるの私1人!?」

 

 リュートさんもロイドもろくに動けるような状態じゃないし、レーナさんはあの幼女背負ってるから戦うなんて出来ない。上から降りてきてるから時間もそんなにないし…

 

「眩め、封、閉ざせ。急急如律令(オーダー)!」

「イオリちゃん、何するつもりなの?」

「時間稼ぎ!」

 

 鎌を適当に地面に突き立て、私は魔法で意識を奪ったロイドを支える。そしてロイドの右腕を持ち上げ、降下中のクトゥルフに照準を定める。

 

「光よ!」

 

 私が使った唯光るだけの魔法で、ロイドの腕の影が伸びクトゥルフ全体に重なる。効くかわからないけど、発動準備は整った!

 

「製作者権限で強制発動!新たな天地を望むか(・・・・・・・・・)?」

 

 私のその声をトリガーにして、ゴッッッ‼︎‼︎‼︎ という世界の抉れる音が炸裂した。実際にタナトニウムやらなんやらの暴走で次元がゴチャッとなるから間違ってはない。

 そして、それに巻き込まれてあっさりクトゥルフが消滅する。

 

「え、は? いや、とりあえず逃げないと! レーナさんはみんなと壁際に!!」

「分かった!」

 

 私が作った義手が凄いのかそれともあのクトゥルフがショボいのか、たった1発で吹き飛んだクトゥルフにびっくりしながらも、私はとりあえず逃げる準備を始める。

 適当にロイドを地面に横たえ、突き刺してある大鎌を握りしめる。

 

「どうせならやっちゃえ! 五分で成功するんだから!」

 

 ちょっと前リュートさんに言った通り、そこまで成功率は高くない。けど、何もしないであぼーんなんて最悪だ。

 そんな考えの下、吸収してあった私が制御できないレベルの魔力を無理矢理使い、暴走気味だけど転移の魔法を組み立てていく。

 

 ――模造生物(レプリカ)・■■◾︎■■の完全消滅を確認しました――

 ――再召喚まで後1分――

 

 よし、それなら間に合う! 何せあと数秒で転移は出来るようになるんだから! 問題なのはこんなのを残したまま脱出する事だけど、まあ外なら勝機がない事もない。地形は変わるけど。

 そんな甘い考えは、次の瞬間粉砕された。

 

 ――探索者Aの魔法の脅威度が更新されました――

 ――封印は不可と推定。妨害のため、太極・無限中学二年生地獄を展開します――

 

 私の手元で暴走した魔力が爆発する。大鎌を中心にして魔法を使っていたお陰で私が勢いよく吹き飛ぶくらいの規模で済んだけど、せっかくの服は無残にボロボロになっちゃったしかなり怪我もした。

 今の私の格好はもう大破した艦娘な感じだ。そんな中でも大鎌を手放さなかったのは褒めて欲しい。

 

「っくぅ……」

「イオリちゃん!」

 

 叩きつけられた壁から、落ちてバシャッと倒れている私にレーナさんが駆け寄ってくる中、私は別の事を考えていた。

 

(何さ無限中学二年生地獄って正田卿じゃん、絶対ここ地球から来た誰かが作ってた感じだよ。それなら多分厨二な感じで詠唱すれば大丈夫なんだろうけど、今までの事を考えるとどうせこれじゃ終わらないんでしょどうせぇっ!?)

 

 そしてそんな私のやけっぱちな勘は見事に的中し、更にこちらを追い詰めるような声が流れた。

 

 ――召喚終了までの時間稼ぎとして、神話生物の召喚を開始します――

 

 そんな声とともに遠くに、いつだったかリュートさんが倒したバックベアードさんみたいな奴とか、さっき倒した肉塊+触手の奴とか、インスマスな奴らとかテケリ・リさんとか色々な奴が落ちてくる。

 

「ふふふ、ドン千め絶対に許さない」

 

 ふらふらしながらも、私は大鎌を支えにして立ち上がる。

 私がいつだったか読んだラノベで、過剰な回復は呪いと変わんないって言ってたけど確かにそうだなって思う。だってもう、痛さも血の跡も残ってるのに傷自体は塞がっちゃってるんだもん。

 

「イオリちゃん、怪我は!?」

「大丈夫、もう塞がった。今度の転移はちゃんと成功させるから…」

 

 地面にしっかりと大鎌を突き立て、喋る詠唱とは別に右手で文字を書けるように魔力を込める。本当は左手も使いたいけど、今回は大鎌を持ってないといけないからパスだ。

 

「イオリちゃん、そんなに無茶しなくても大丈夫だから!」

「さっき思い出したばっかだけど、私って元男だからね。こういう時に無茶を成功させてこそってやつでしょ」

 

 残り40秒弱、私は無理して笑いながらそういう。だってそうしないと、今すぐにでも泣いちゃって動けなくなっちゃいそうで、心が折れちゃいそうで。

 

「今のイオリちゃんは女の子でしょ!」

 

 レーナさんが叫ぶ。

 

「そうだよ! そうだけど、リュートさんもレーナさんもロイドも! 私がわがまま言って付いてきてもらったんだよ!? なら脱出出来る可能性がある以上無茶してでもやるしかないじゃん!! こんな所で死にたくないし死んでほしくないんだよ!! みんな好きなんだもん‼︎‼︎」

 

 ロイドに関してはlikeの方だけど、みんなが好きなのには変わりない。今までみたいにふざけて怒られたり美味しくご飯を食べたり、そういう平和な日常っていうのはこっちの世界に来てからリュートさん達としか出来なかったんだから‼︎

 

「イオリちゃん……」

 

  レーナさんが驚いた目で私を見てくるけど、正直時間がないから無視する。顔は真っ赤だろうし、今の口開くと何言い出すか分からないからってのもあるけどね。

 

この身は悠久を生きし者。

 ゆえに誰もが我を置き去り先に行く

 追い縋りたいが追いつけない。

 才は届かず、生の瞬間が異なる差を埋めたいと願う

 ゆえに足を引くのだ――水底の魔性!

 

 迫ってくる神話生物を前に、私は最早叫ぶように詠唱する。それに反応して私の影が揺らめく。こんな広域で相手を止める事の出来る魔法なんて、さっきの太極なんて聞いちゃった所為でこれしか思い出せない。時間的にも相手的にも詠唱はこっちだ。

 なんて事を思いながら、右手では()()()()()()で文字を綴る!

 

 我、望郷を訴えたり 我、懐郷を訴えたり 遥か 彼方 千里 彼方 万里、万里、遠き、故郷よ この手に届かぬ、在りし場所よ

 

波立て遊べよ拷問城の食人影(チェイテ・ハンガリア・ナハツェーラー)ァァァァッ!!

 

 私と大鎌の影が枝分かれして広がり、それに触れた神話生物達が全て動きを止める。無茶な魔力での魔法の行使のせいか、皮膚が切れて血が出て再生するのが繰り返され、痛さを我慢してそこまで頑張っているのに並行して魔法を使っているせいか長くは止めていられそうにない。

 残り時間だって20秒切ったけど、それでも十二分に文字は書き上げられる!

 

 我、妄執を訴えたり 我、憎悪を訴えたり この想いを以って、隔つ距離を繋ぎ給え

 

 そこまで書き終えると、文字が収束し私達全員の足元に魔法陣が広がる。所々に紫のスパークが走っているけど、ギリギリ安定してるし多分問題なし!!

 

開け! 移ろいの門(イレイティックポータ)!!

 

 私が全力で作った魔法陣が下から持ち上がっていき、私達を転移させていく。私自身も転移出来ているのはあくまで酷似した魔法だからで……

 

「っ、きゃぁっ!?」

 

 転移が終了する間際、私は何かに阻まれたみたいに魔法陣から弾き出されてしまった。そして同じように、レーナさんが背負っていた筈の幼女も私の隣に倒れている。

 そして広がる光景は相変わらず神話生物、クトゥルフも完全に召喚されてしまっている。

 

「あは、ははは……」

 

 もうキレタ。完全にプッチーンって奴だ。




大魔王は逃げられない。
祭祀一切夜叉羅刹食血肉者とか言う、厨二感溢れるBGMを聞きながら書いてたらこうなってた(白目)

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